新宿区後援・5月新宿フレンズ講演会

     統合失調症治療の新たな発見

        講師 東京都精神医学総合研究所 
            統合失調症・うつ病プロジェクトリーダー  糸川 昌成先生

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 私は新宿生まれの新宿育ちで、先ほど実家に寄ってから新宿フレンズに来ました。

 今日は、統合失調症の遺伝子に関わる最先端の研究の話です。少し難しいのですが、4章に分けて、できるだけ分かりやすくお話しいたします。

【1:遺伝子研究の概説−DNAとは?】

 まず、統合失調症は遺伝するか? 統合失調症の双子の研究(ゴッデスマン1991)では、1匹の精子と1個の卵子が受精して誕生した一卵性双生児の統合失調症の患者、つまり「100%DNA(遺伝子)が同じ兄弟がふたりとも発症しているかどうか」を聞いたら、「兄弟ふたりとも統合失調症」と答えた一卵性双子は48%でした。ということは100%DNAが同じでも、半分強の52%の双子は、片方は統合失調症ではない。となると遺伝は半分くらいしか関係しないとも考えられます。

 DNAが100%同じでも、半分の人は発症しない。環境の影響は大きく、遺伝だけで統合失調症が決まるわけではない。しかし、二卵性よりも、一卵性の方が兄弟揃って発症している割合が多いということは、やっぱりDNAが関係している。しかし100%DNAで決まっているわけではないのです。
・DNAが100%一緒の一卵性双生児でも半分強は発症しない。環境要因が大きい

・DNAが同じではない二卵性双生児の方が発症率は低い。やはりDNAは関係している

・「氏も育ちも=遺伝も環境も発症に影響する」が答え

DNAと遺伝子

 顕微鏡で見ると、生物は体全部が細胞でできています。その細胞1個1個の中に核という球体があり、その中の染色体に二重らせんのリボンの形をした遺伝子DNAがあって、2本のリボンが4種類の塩基で橋桁のように結ばれています。
  この4種類の塩基、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の並び方が、アミノ酸を作る遺伝暗号になっているのです。例えば、GCAと塩基が3つ並んだらアラニンというアミノ酸を作りなさいという暗号です。塩基の並び方によってアミノ酸が組まれ、それが数珠繋ぎになってタンパク質ができています。

 アミノ酸の並び方を決めているのが塩基配列です。ところが、ところどころ塩基の並び方が部分的に違う。これを「多型」といい、遺伝子の個人差のことです。そのために血液型、髪の毛の色、背の高さ、病気のかかりやすさ、みな塩基の並び方が部分的に違っているための体質の個人差だと言われています。遺伝子の配列を読んで、どこか1ヵ所アミノ酸の配列が違っているところがないかを探る、これが私の研究テーマです。
・遺伝子は4種類の塩基、A、T、G、Cの並び方がアミノ酸の遺伝暗号になっている

・4種類の塩基の並び方で、さまざまなアミノ酸、タンパク質が作られる

・塩基の並び方が1ヵ所だけ違う。これを「多型」といい、体質の個人差をつくる

脳と神経

 腦を顕微鏡で見ると、神経細胞がヒトデのような形をしていて、細胞の真ん中に核があります。神経細胞の長い尻尾のような軸索を電気が伝わってドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質を噴出させて、腦はものを感じたり考えたりしているのです。

 軸索と隣の神経の間は隙間(シナプス)が空いていて、この隙間でセロトニン神経にはセロトニンが噴き出し、ドーパミン神経にはドーパミンが噴き出します。流れた神経伝達物質を受け止める役目を果たすのが受容体、ドーパミンが噴出されるとドーパミン受容体の中にスポッと入り、下から電気が流れます。

 ドーパミン受容体というタンパク質は443個のアミノ酸が連なってできています。その1ヵ所だけ塩基配列が違うと、ドーパミンが入った時にすごく強い電気信号が出てしまう。これが幻聴や妄想の原因で、だから薬で蓋をすると幻聴が収まる…というのがドーパミン仮説です。
・抗精神病薬は、ドーパミンと構造が似ており、ドーパミン受容体に入って蓋をする

・ドーパミン受容体の443個のアミノ酸の配列の1ヵ所に変異がある多型だと、電気信号が流れすぎて、妄想・幻聴が起きるのではないか(ドーパミン仮説)

【2:ドーパミン受容体の遺伝子解析】

 ここからが本題です。今から24年前の1989年、東京医科歯科大の精神科に入局した私に融道男(とおる みちお)教授が言いました。「統合失調症患者のドーパミンD2受容体遺伝子にある多型を見つけることで、この病気の原因が分かる。原因が分かれば根本的な治療法も分かる。筑波大の有波忠雄先生のところには遺伝子解析の技術があるそうだ。ぜひ行ってくれないか」という話でした。

 さて、ドーパミンD2受容体遺伝子は全8巻の分冊みたいに、第1巻から8巻まであり、第6、7、8巻あたりが細胞内にループを描いた受容体部分の遺伝情報なので、統合失調症の遺伝子研究では一番大事だと思われていました。

 DNAは二重らせんですが、90度以上に温度を上げると、2本鎖がほどけて1本になる。そして温度をゆっくり下げると元の2本鎖にもどる。人工的に合成したD2受容体遺伝子を少量試験管に入れると、そこだけ温度を下げたとき倍の4本になる。もう1回温度を上げて、また温度を下げていくと8本になる。倍々に増えていくのです。温度を上下30回すると1万倍に増えるためD2受容体遺伝子だけ取り出すことができます。それに化学処理をしてDNAシークエンサーで光を当てますと、A、T、G、Cが4色の蛍光色で出て、その塩基配列を見ていきます。

D2受容体に初めて多型を発見

 ATGCを下から上に読んで健常な人のアミノ酸と比較していくのですが、「あれ、TCCのセリンのはずが、TGCのシステインに変わっている。これは多型ではないか!」。午前0時過ぎ、興奮して有波先生に電話をしました。「大変です。多型がありました」。翌日、1時間早く出勤された教授はX線フィルムを見て「これは本当かもしれない」と言われたのです。

 その後、156人の統合失調症患者と300人の健常者で、311番目のアミノ酸セリン(Ser)がシステイン(Cys) に変わっている頻度を調べました。443あるアミノ酸では塩基配列は3つで1つのアミノ酸の暗号ですから、443×3で1300もの塩基配列から、たった1個を見つけなければならない。ですが、311番目と分かれば1ヵ所を見ればいいので、あっという間に156人、300人分を読めたのです。

 すると健常者の約3.5%に対して、統合失調症患者は9%の人がシステインを持っていた。つまり2.7倍の頻度でシステインが出てきたから、システインの多型を持っていると統合失調症に2.7倍なり易いという解釈が成り立ちます。

 私たちが発見したD2受容体の311番が、統合失調症のリスク遺伝子として世界で初めて認定されたのは2003年、実に10年かけて決着したのです。

システイン・タイプの特徴は?

 遺伝子というのは血液型と同じように2個ずつ持つのですが、両親からセリンをもらったセリン/セリン・タイプ。片親からのセリン/システイン・タイプ。両親からシステインをもらったシステイン/システイン・タイプがあります。それが統合失調症で何人いるか。システイン・タイプは健常者では1.8%、統合失調症では5.4%でした。統計上、統合失調症患者にはシステイン・タイプが多い事を表しています。

 患者に妄想や幻覚があるかでは、セリン・タイプとシステイン・タイプの差はなかったのです。しかし思考滅裂患者の感情の平板化や精神運動抑制の値では、偶然でない確からしさでシステインを持った患者さんが軽症でした。僕が感じた「独特の人当りの柔らかさ」とは、「陰性症状が軽い」ことだったのです。

 それで入院期間を調べたところ、セリン/セリン・タイプの平均在院期間は12年。でも、セリン/システイン・タイプは平均3年、システイン/システイン・タイプはなんと1年で退院している。システインの多型の人は、発症率は高いものの、陰性症状が軽くて治りのいいタイプであると分かりました。

・ドーパミン受容体の311番目で、セリンであるべきところがシステインに入れ替わっている多型を発見。世界で初めての発見だった

・このS311Cの遺伝子の多型は、有意に統合失調症で高い頻度で認められた

・S311Cを持っている患者は、有意に陰性症状が軽く入院期間が短かい

【3:抗精神病薬の可能性と未来】

脳の萎縮を防ぐ早期治療

 統合失調症は生卵のまま幻聴や妄想が聞こえるので、機能性精神疾患だと言われてきました。ところが最近、統合失調症の脳にも器質変化があるという論文が、出始めました。健常者でも年を取れば脳は徐々に萎縮しますが、MRIを3年間隔で2回撮って脳のどの場所が何パーセントくらい萎縮したかの研究(トンプソン2001)では、統合失調症患者は萎縮が大きいのです。つまり、アルツハイマーと同様に器質性疾患であったのです。

  腦が縮むと脳室が拡大します。この脳室を測った研究(リバーマン2001)では、健常者の若干の拡大に比べ、予後不良群(再発を繰り返している)は、脳室が大きく空いて器質変化が早く進行していました。ところが、服薬をして再発を抑えていた統合失調症患者は健常者と同じです。つまり抗精神病薬によって再発を予防することが、器質変化を防ぐ可能性を示唆しています。

 統合失調症は、早期に発見して早期に服薬すれば、脳の萎縮を早く食い止め、陰性症状を進めさせない可能性が、最近分かってきたのです。

・統合失調症の脳の萎縮・脳室拡大が認められ、器質性疾患の側面もあることが分かってきた

・早期発見して抗精神病薬による早期治療・再発予防が、脳の萎縮を予防する可能性がある

 

個々人に合わせたオーダーメイド医療

 クロルプロマジン発見から60年,これからの薬物療法はオーダーメイド医療(テーラーメイド医療)です。個人によって薬の効果はずいぶん違います。Aさんはジプレキサだけで入院せずに治った。Bさんはジプレキサで良くならず、リスパダール、エビリファイ、コントミン、それでも入退院を繰り返している。同じ統合失調症の病名なのに何で治りが悪いのか、という話はよく聞きます。2つが考えられます。

1)原因が異なる 常染色体は、1番染色体から22番染色体まで大きい順に番号を付け、それに性染色体のX染色体とY染色体があります。その染色体で健常者と異なる頻度で多型が集中する個所があり、そこに統合失調症に関連する遺伝子があるのではないかと言われている場所があります。世界各地のグループが、2002年に6番染色体からはディスバインディン、8番染色体からはニューレグリン1、13番染色体からはG72という脆弱性遺伝子を発見しました。

 関連する染色体がいろんなところにあるのは、統合失調症はいろんな原因があるからではないかと考える研究者もいます。幻覚と妄想があるから統合失調症だというのは大雑把な診断で、複数の異なった原因の疾患が含まれている可能性がある。たとえば、ある染色体が原因ならリスパダールが効果を出すけれど、別の染色体が原因の人には効果がないかもしれないということなのです。ですから未来のオーダーメイド医療とは、まず、どの原因かを調べて薬を出す、「ではAさんは1番染色体、Bさんには6番染色体の原因に効く薬を」という医療です。

2)薬剤の作用部位の個人差 ドーパミン受容体にドーパミンが結合すると、電気信号が出る。抗精神病薬を飲むと、例えばコントミンが受容体に蓋をしてドーパミンを跳ね返すので、電子信号が出なくなり幻聴が治まります。ところが遺伝子多型でドーパミン受容体のアミノ酸が変わっていると、薬がくっつきにくくなったり、蓋をしても隙間があるので、完全にドーパミンを跳ね返せずに電子信号が漏れ出てしまう。こういう人は薬効が悪いわけです。

・薬効の個人差は、原因の違い、あるいは受容体の多型に基づく可能性がある

・原因や個人差を遺伝子で調べ、効果のある服薬をするオーダーメイド医療が必要

・未来はオーダーメイド医療ができるように、世界中の学者が研究中

【4:カルボニルストレスと統合失調症】

 M病院で診療中、患者Xさんとの出会いがありました。Xさんは抗精神病薬が効きにくく、長期に入院されている大変気の毒な状態でしたが、非常に特徴的な症状を持っていたので、研究にご協力いただきました。

塩基配列がズレている症例を発見

 その頃、注目されていたのは6番染色体。複数の研究グループが位置的に統合失調症の遺伝子があると繰り返し報告しており、その場所に脆弱性遺伝子ディスバイディンがあったとの2002年の発表で世界中が注目していたのです。しかし、僕はGLO1(グリオキサラーゼ1)が注目をあつめた6番染色体の近くにあったので研究しました。

 そうしたら、XさんのGLO1の第1巻の塩基配列が、ふつうTACの配列なのにTAACで、Aが1個多かったのです。アデニンの挿入という大変珍しい変異の発見でした。

 塩基配列にアデニンが1個挿入されたので、アミノ酸の暗号にズレが生じます(フレームシフト変異)。すると、本来のアミノ酸と全然違うでたらめなアミノ酸の配列になったため、CTAになるべき個所がTAAになってしまった。このTAAは本来、遺伝子の一番後ろにあって「もうこれ以上アミノ酸を翻訳しない」というタンパク質の合成停止信号になるのです。その結果、本来は全長184アミノ酸からなるGLO1が、Xさんの場合、途中でストップしたために42アミノ酸しかできず、健常者と比べ、50%のタンパク質しか作られていないということが分かったのです。それでは機能も50%低下していないだろうか。

・統合失調症の症例1からAGEs の解毒酵素GLO1に、アデニンが挿入された変異を発見

・そのためフレームシフト変異が起きたことを発見

・184アミノ酸のGLO1が、42アミノ酸となり健常者比50%のタンパク質減が起きた

酸化ストレスの解毒物質が減っていた

 カルボニル化合物とグルタチオンと患者さんの赤血球由来のGLO1の3つを試験管に入れて、人間の体温と同じ37度Cに温める実験をしました。すると試験管の中で体内と同じように解毒が働き始めて、試験管の中で乳酸がどんどん増えてくる。その乳酸を測定すると、健常者は順調に乳酸が増えていましたが、患者Xさんは乳酸の増えが非常に悪く半分しかできてない。つまり酵素活性が半分に減っていることが判明したわけです。

 カルボニル化合物の解毒がうまくいっていないので、XさんではAGEが増えている。増えたAGEを解毒するために、ビタミンB6がカルボニル化合物と結合して腎排泄を進めているのでないか。そう予測を立ててもう一度、Xさんの血液でAGEとビタミンB6を測ると、健常者と比べてAGEが3.7倍に増え、そのAGEを解毒するために消費されるので、ビタミンB6は健常者の20%以下まで減っていることが分かりました。

まとめると、

・カルボニル化合物の解毒酵素であるGLO1の活性が50%減っていたために解毒システムがうまく働かず、AGEが3.7倍増した1例を発見

・増えたAGEを解毒するためにビタミンB6が消費され、20%まで低下したことを発見 

統合失調症の16.7%がカルボニル性と判明

 このXさんの特徴は、染色体がTACの配列なのに、TAACでAが1個多かったために、フレームシフトでアミノ酸の読み間違いが起き、タンパク質が50%しか作られなかったという珍しい原因でした。では、このカルボニルストレス性の統合失調症は、たった1人の患者Xさんで偶然起きていることなのか。

 そこで202人の松沢病院の患者さんと、187人の看護師と研究所の職員を年齢と性別の分布を一緒にして、同意を得てDNAを解析しました。グルタミン/グルタミン・タイプと、グルタミン/アラニン・タイプと、両親からアラニンをもらったアラニン/アラニン・タイプ。するとアラニン/アラニン・タイプの4人は全員が統合失調症で、健常者は1人もいませんでした。20年前にシステインがD2受容体のリスクファクターだと分かった時と同様に、アラニン型もリスクファクターと考えられました。

 パンスという臨床症状の評価尺度では、陽性症状7項目、陰性症状7項目について評価するのですが、AGEの高いカルボニルストレス性の患者さんは、特に陰性症状を中心に重篤な患者さんが多いということが判明しました。さっきのD2受容体の場合と大違いで、重症で治りが悪いのです。また発症年齢が若いほどAGEが高いことが分かりました。

・45例の統合失調症と61人の健常者のAGEとビタミンB6の測定結果、統合失調症では有意差でAGEが高く、ビタミンB6が低下

・統合失調症の16.7%で、遺伝的に酵素活性が低いカルボニルストレスを認め、ビタミンB6が低下

・カルボニルストレス性統合失調症は、特に陰性症状が重篤

ビタミンB6の治験が始まる

 カルボニルストレスのある患者さんは重症な人が多い。ということは治療によって症状が改善したらAGEが下がるのではないかという研究をいま始めたところです。重症の入院患者と、軽症の外来通院患者のAGEを比較したら、やはり外来患者はAGEが低いです。また別人の比較でなく、5人に入院中と退院後の2回採血させてもらったら、全員退院した時にはAGEが減っていました。ところが2回目の採血時に退院できていなかった別の患者さんは減っていない。GLO1の活性とビタミンB6も測ったら、退院した人は全員、十分に活性が戻っている数値が有意差で出ました。

 次は治療の研究です。カルボニルストレス性の統合失調症では、ビタミンB6の欠乏が見られたのだから、ビタミンB6を補充したら、症状がよくなるのではないだろうか。

ただし、皆さん注意してください。《薬局に行ってビタミンB6を買って飲ませないでください!》。ビタミンB6というのはピリドキサミン、ピリドキサール、ピリドキシンの化合物で、国内で承認されているのはピリドキサールのみなのです。カルボニルを補足してAGEの排泄を促進するのはピリドキサミンで、我が国では未承認。治験中なのでもうしばらく待ってください。

 さて、余談になります。この女性は(写真示す)大へん子供が好きで、保母になる夢を持っていました。昭和35年に銀行員の妻になって東京で暮らし、翌年に男の子を出産しました。

 子供が好きだった彼女は幸せの絶頂だったはずなんです。ところがこの頃から、自分の悪口を言う声が聞こえてくるようになりました。残念なことに統合失調症を発症してしまったのです。男の子には、母親は統合失調症で入院しているという事実は固く伏せられたまま、夫の母親と姉に引き取られ、何も知らずにすくすくと育ちました。

 小学生になった頃、彼は不思議に思って、お祖母さんに訊きました。「どうして僕にはお母さんがいないの」お祖母さんは大変困った顔をしました。統合失調症で精神科病院に入院しているとは答えられずに嘘をつきました。「お母さんは病気で死んでしまったんだよ」。

 この頃から少年は将来、医者になって病気を治そうと考えました。彼は医大に入り、外科医になろうと一生懸命勉強していました。

 大学6年生の時、実習で学んだ精神科の病棟で統合失調症を知り、彼は誓いました。「僕は精神科医になって、研究をして原因を解明し、必ず治療薬を開発して、皆さんをこの病院から退院させてあげます」。

 そして約束を果たすべく、ついに世界で初めてD2受容体の変異を発見し、カルボニルストレス性統合失調症の活性型ビタミンB6の治療を目指して治験をしているわけです。

 臨床医がなぜ研究をするのかというテーマで20年間の話をしました。それは25年前に患者さんと交わした約束を果たそうとする長い旅だったわけです。母とは会えずに、母は生を終えました。明日は母の13回忌です。

【質疑応答】
Q 薬を飲むと幻聴はなくなりますか?

A ドーパミン神経が過剰に働いている場合、抗精神病薬は効くはずなんです。でも、効かない人もいた。つまり統合失調症は1つの原因ではなく、ドーパミン仮説では説明がつかない人もいた。そのできない人に抗精神病薬以外の物質、今回は特殊なビタミンB6を使って治療しようという臨床試験中なのです。おそらく統合失調症は7つか8つの症候群だと思います。今回はその一角に切り込めた可能性が示唆されます。世界中で統合失調症の研究は日進月歩です。今の薬が効かない方も、新しい原因が発見され治療薬が開発される可能性が十分ありますから、希望を失わないでください。

                                   〜了〜

<メタ解析>(meta-analysis)とは過去に行われた複数の研究結果を統合し、より信頼性の高い結果を求めること、またはそのための手法や統計解析のこと。

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

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新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

 すっかり夏の感である。季節が変わっても変わらない生活を強いられている人たち、福島、三陸地方の人たちのことを考えると胸が痛い。
 糸川先生から難しい話を面白く聞いた。そのテープ起しは当初2万字を超えていたのである。それを1万5千字に削った。16ページ立てのフレンズは今号が初めてだ。
 さて、その糸川先生のお話は4部構成で語られた。そして新宿フレンズのために作られたパワーポイントは何と127枚。アニメーションがあり、ビデオがあり、と作風にも苦労して作られた。その甲斐あってか、おぼろげながら遺伝子のことに興味を持つことができた。
 多型。恥ずかしい話だが私は初めて聞いた言葉である。しかし、糸川先生は遺伝子の中に多型を求めて半生を送ってきた。世界の研究者と論文合戦を繰り広げながら、夜を徹して求めて来た。
 我々がいい薬はないか、もっと確かな効能のある薬はないかと叫んでいる陰で、精神科の先生たちというのはこんな苦労していたのか、とつくづく思う。
 そして、いまビタミンB6が有効である、と言ったところだけが独り歩きしている恐れがある。その説明は今号の「質疑応答」最後の質問者への回答で先生は答えている。
 「ドーパミン仮説では説明がつかない人もいた。そのできない人に抗精神病薬以外の物質、今回は特殊なビタミンB6を使って治療しようという臨床試験中なのです。」
 確かに不思議な病気である。人によって治療法が違う。薬が違う。治る人、治らない人がいる。しかし、希望が持てた。糸川先生のような意気軒昂な先生がいることを知って。
                                           

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp