新宿区後援・3月新宿フレンズ講演会

    

家族の役割・家族会の役割

講師 元・全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと) 理事長 川崎洋子さん

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【被害者の痛みの共有を】
 今年は東日本大震災の5年目で、報道特集のなかで東京や大阪の方から「もう忘れたよ」とか「我々には関係ないこと」という意見が出ていて、非常に疑問に思いました。しかし、被害者でないと分からないこともあると思います。

 地下鉄サリン事件も皆さんはもう関係ないと思われるかもしれませんが、実は私の娘がこの被害者です。20年も経っていますが、今も元気な生活を送れていません。そういう被害者の立場ですから地下鉄サリン事件については忘れられません。

 今回の東日本大震災についても2回ほど現地訪問をし、精神障害者の家族が置かれている苛酷な立場を見聞きして、同じ家族として忘れてはいけないという思いです。大震災のニュースが流れ、「みんなねっと」として何ができるか、まずは家族の安否確認が大問題でしたが電話が全く通じません。現地に行かなければと思っても道が寸断、列車も動いていない。まだ行くべきでないと言われました。

 東京に帰って全国の家族会に義捐金を募集、集まった600万円を被災県にお渡ししました。その後もう1度、内閣府の委員として岩手を訪問する機会があり、県庁で今までに把握したデータを見ると、障害者の死亡率が一般に比べて3倍でした。

【わが家の場合−発症から自立へ】
 さて、私は大学の文学部を出て出版社に勤務しているときに、今46歳になる息子が10代後半で発症し、入院もしました。職場仲間には子供が病気であることをしっかり伝えて、病院から連絡があったら駆けつけられる体制にしました。理解のある職場で定年近くまで仕事を続けました。

 皆さんもお子さんの発症については、何がなんだか分からないというのが最初だと思います。長男は高校3年の不登校が発症だろうと言われましたが、大学受験の時期だったので部屋に閉じこもっても青年期の悩みと思っていました。だんだんと自殺未遂などを図るようになり、やっと医療に繋がりました。不登校の間には友達や先生の支援があり、授業のレポートを届けてくれましたが、ピンポンと鳴らして息子を呼びますが一切反応しません。先生の訪問にも押入れに入って出てこない。閉ざされた心を解くことはできませんでした。

 私は病院のケースワーカーから教えられて家族会に入りました。「ご存知の方がいるかもしれませんよ」と言われましたが、なんとご近所のお父さんがいました。こんな身近に同じような病気の家族を抱えた人がいることを実感し、家族会活動は必要だと思ったのです。

 発症当時、父親は昼夜逆転の息子に対して朝は蒲団を剥いだり、「五体満足で仕事をできないわけがない」という考えなので、息子は再発を繰り返しました。主治医からは「お父さんと離れた生活をしたらどうか」と言われました。それで、家族会でグループホームのことを知り、息子はそこに入所しました。いまは3年前からアパートで独り暮らしをしています。適度な距離感が保てるためか、最近は「誕生日おめでとう」というメールが父親宛に届いたり、父親からは「たまには家に遊びにおいでよ」という会話ができるようになりました。

 グループホームにいると、周りの当事者の良い刺激があります。息子は風呂にも入らず床屋にも行かず髭モジャモジャで、「それじゃ指名手配の人と間違われるよ」と言われました。するとてきめん、風呂にも入り、月に1度は床屋に行くようになりました。

 発症した最初の5年間は、1年の半分は入院という生活でしたが、グループホームに入所して以降、1度も入院していません。ホームでは大声を張り上げても職員はしっかりと受け止めてくれました。近所の子供の声に「うるせえ」と何度も怒鳴り、子供の親が警察に通報してパトカーがきても、職員は間に入ってきちんと謝らせてくれたそうです。第三者に任せることによって、当事者も自立でき、家族の負担も軽くなるのですね。

【家族会のなりたち】
 最初にできたのは、病院家族会です。1960年頃から抗精神病薬が使用されるようになって、退院する人がかなり出てきました。ところが退院しても行く場所がない。また、家族は今までは病院に預けてしまえばいいと、正しい精神疾患の理解をしていなかった。そのため50%が再発して入院という回転ドア状態がありました。

 そこで病院の医師が、家族にもしっかり理解してもらおう、一緒に治療に参加してもらう必要があると考えて家族会を始め、正しい病気の理解と対応を家族に教えるようにしました。
 その目的は、家族に正しく病気を理解してもらい、治療に協力し、治療者の1人であることがベースにあります。それまでは病院に預けると1度もこない家族が多かったのですが、面会に来る家族が増えて、色々と家族の実情を踏まえることができるようになりました。いま病院の家族会は、退院する人が増えたこともあり、減ってきているのが実情です。

 また、新宿フレンズも私共が普通にいう家族会とちょっと趣を異にしています。非常に会員数が多く、それもインターネットを見て会員が参加していること、地域だけでなく色んなところから集まっていることをお聞きして、こういう家族会もあるのかなと思いました。全国組織の「みんなねっと」の代表者だったときに、北海道から九州まで47都道府県を回りましたが、このような家族会は今まで接したことがない家族会です。

 家族会は保健所の主導が多かったと思います。私も大田区の雪谷保健所の家族会に所属していますが、保健所の担当保健師からは「家族会は自助活動ですよ。保健師は自立するための支えで、しっかりと自立してほしい」と言われました。自立するまでの保健所のサポートは必要ではないかと思いますが、現在は保健所の全国的統廃合で保健所主導の家族会はなくなりつつあり、東京でも多摩地区では自立している家族会が多くあります。保健所主導では予算もつきますが、使用目的が限られるなどの制約も多いのです。

【家族会の組織構成】
 病院家族会・地域家族会を私たちは「単会」と呼びます。地域の単会が47都道府県連合会を作り、新宿フレンズも東京つくし会に属しています。つくし会には52の単会が加入していて、現在会員数は1,300名ぐらいです。その上に全国組織として「みんなねっと(全国精神保健福祉会連合会)」があり、47都道府県連が会員で、約13,000名が賛助会員として登録されています。

 それぞれの役割があって、まず単会は地域に働きかける。障害者自立支援法から障害者総合支援法になって、福祉のサービスは市区町村に投げかけられています。ですから福祉サービスを良くするためには、区市町村が動かないと状況は変りません。精神関連の働きかけをするのは家族会と当事者ですが、当事者はなかなかできない。家族会が代弁して、行政に対して要望書を出したり働きかけて、環境・状況を良くするための活動をしています。皆さんも、ぜひ地元の家族会にも参加してください。

 東京つくし会としては、都に要請します。東京都は、都の単独(都単)事業があり、例えば三障害が自立支援法で一元化されたのですが、実際はなかなかサービスも改善されず、障害者福祉手当は精神障害者には出ていません。例えば大田区の場合は知的・身体障害者には毎月17,000円ぐらい出ています。本当は都の条例を変えなければダメなので、つくし会として要望していますが、都条例はなかなか変わらない。せめて大田区では平等にと家族会が働きかけ、この4月から1級だけ支給されることになりました。これを突破口にして2級3級への要望を続けていかなければと思っています。

【家族会の役割−悩みの共有・病気の理解・社会への働きかけ】
 家族会の役割とは、1.に同じ悩みを持つもの同士の支えあいです。家族会でも相談を受けていると思いますが、「みんなねっと」は日本財団から援助金を貰って家族による家族のための電話相談(03-6907-9212?)を、水曜日の10~15時にしています。

 家族相談の良さは「ああよかった、分かってもらえた」という共感です。保健所も相談の窓口があり病気や福祉について教えてはくれますし、相談支援事業所もありますが、ここは福祉サービスの計画相談と計画作成で、日常的な悩みを聞いて共感という家族会とは違います。

 家族会での「分かりますよ」の一言が安心感を生むのです。息子の初発のとき、パトカーを呼び、3人の警官が来て、「お母さん、どうしようもないときは手錠をかけますよ」と言われ、返事の仕様がなかったことがあります。興奮状態になっている息子をなんとか医療につなげたいという思いでしたが、あの辛さ…。家族は大変な状況を体験しているからこそ、ご家族の思いには「そう、分かります」という共感が生まれると思います。

2.は病気を正しく理解して対応を学ぶこと。大きな声を張り上げたりすると家族はおろおろし、本人はどんどんエスカレートします。本人の怒りは1番に母親に向かいます。「自分のことを分かってほしい」という思いなのですが、それが暴力・暴言で出てしまう。何本も骨を折ったというお母さんの話も聞きます。

3.家族会の役割は運動体です。今の制度を変えなくては私達の状況は変らない。国の委員会も区の委員会も家族会が参加して、家族の話を聴いてもらう。国連の障害者権利条約のスローガンにン「“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」とあります。これがベースの障害者差別解消法も4月から施行されますが、各市区町村のマニュアル作りの協議会には、家族会のメンバーも参加しています。

 社会には、何が差別か分からない人が一杯います。制度上の差別は一杯あります。「精神障害者の何が差別なの?」と言われたこともあります。正しく理解されていないし、1番大きいのは偏見です。周りの人の偏見を問題にしがちですが、家族自身も偏見を持っています。家族から病気をオープンにしていかないと解決しません。地方に行くと大きな敷地の離れに精神障害者を住まわせている。言わば座敷牢に閉じ込めて、ご近所には何も言わない。声を張り上げようと隣は遠いから心配は要らない。長く入院させているご家族は「息子は死にました」と言う人もいて、本当に悲しい事実だと思います。

【家族の役割−必要なサービスにつなぐ】
 わが家の問題とだけ考えるのでは状況は変りません。「うちの子は良くなったから、もう家族会は関係ない」という人がいます。精神疾患、特に統合失調症については、寛解はあっても全快はありません。寛解して20年間、何もなかった人が突如再発することもあります。家族会で知識を得ていれば、そんな時も素早い対応ができます。制度も色々変わり、今までの知識と違う社会になっていくので、しっかり目を向けていくことです。

 「親亡き後」はどこの家族会でも話が出ます。「親あるうちから本人の自立を目指してください」と言います。今、何ができるかというと、「わが子は何ができるかできないか」それをしっかり理解すること。例えば地域で色々なサービスが使えます。今は私が息子に2週間に1回電話して通院や食事をしているかを聞いていますが、高齢化したらできなくなる。息子には、ヘルパーさんを派遣して家事食事のサービスや訪問看護ステーションの訪問を受けて薬の管理もしてもらおうねと話しています。食事はコンビニだっていい、社会資源の1つとして活用すればいいと思います。息子は金銭管理ができますが、できない人もいます。わが子にはどのサービスを利用したら生活できるか、今の時点で考えてほしいと思います。

 精神障害者の所得の問題は今後の課題です。6万余円の2級の年金だけでアパートを借りることは無理で、わが家でもアパート代は親が出しています。生活費は本人ががんばって2級の年金で生活していますが、もしアパート代が出せなくなったら生活保護を受けることができます。

 生活保護に対する抵抗はなくす、預金は幾らあっても騙し取られる恐れがあります。信託銀行に預けて月々定額を子供に振り込んでもらうこともできます。お金や日常生活についてはしっかりとお子さんと話しておいて頂きたいと思います。

【本人の思いを大切に】
 1番大切なのは、本人の自己決定を中心に考えることです。わが家の場合、高校は何とか卒業できましたが、親には大学は行ったほうが良いという思いが常にありました。たまたま本人が「大学でも行こうかな」とつぶやいたときに、ここだとばかり案内書を沢山取り寄せて、どこでも好きなところへ行ったらいいんじゃないのと話しました。それがダメで、2度と大学のことは言わなくなりました。しっかりと本人が決めたら寄り添いながら考えることが大切で、親の思いだけで進めては本人の自己決定を削ぐことになります。

 この病気の人は非常にプライドの高い人が多い。例えば息子の時代は作業所というと内職的なことばかりで、息子は「やってられないよ」と。本当はそれしかできなかったと思いますが、その辺の折り合いは難しく、息子はグループホームでも引きこもっていました。アパートに生活するようになって、アパート代を親から出して貰わなければならなくなって、始めてこれは何とかしなければいけないと週1回ですが作業所に繋がって、お弁当の空箱回収を始めています。人に会わないで済む作業で格好な仕事だと思います。それを「もう1、2回増やそう、それで自信がついたら配達に回って配達先の人と会話ができるようになれば良いね」と職員から言ってもらっているようです。

 本当にじれったいほど進むのが遅いです。家族はどうしても早く早くと思ってしまいます。私はこれから出かけるというときに30分は待ちます。出かける前に鞄の中の荷物や戸締りのチェックを1つずつしたり。親はじっと我慢しないと、当事者の思いを受け止める事はできないと思います。

 最後に、先ほども言いましたが、親あるうちの自立をしっかり考えていただきたいと思います。私の近くに住む女性は、父親以外に身寄りもなく、土地も住まいも父親名義なので、父親が亡くなった後に生活保護を受けて、その場所で生活していました。ところがある日突然「貴女は相続人である」という通知が来ました。びっくりして戸籍謄本を取り調べたところ、父親に姉がいて、特養で亡くなり遺産相続人の1人であると分かったのです。しかし、長く特養にいてお金が残っているとは思えないし、負の遺産なら相続権放棄をしたほうが良いかもしれない。弁護士に頼めばお金がかかる。法テラスも使えますが、生活保護を受けているからワーカーに相談しなさいということにしています。まったく寝耳に水で、彼女は具合が悪くなって1か月入院しました。

 このように何がいつ起るか分からないので、相談者を持っていることが必要です。保健所の 保健師、事業所の職員、生活保護のワーカーなど家族外の人、親族ではない第三者が良いと思います。家族会でも、例えば通院できない人がいて、医師の了解を得て、高齢のお母さんに付き添って薬を貰えたということもありました。限度はありますが、家族会が個々人にできることはあると思います。

この病気の人は、寿命が普通の人よりも10~15年少ないという発表がありました。ならば生きている間は幸せだなという思いを子供にさせたいと願っています。     〜了〜

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        

 
新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記 

 四月と言えば新入社員や新入生といった言葉が浮かぶ。新たな世界に入る人たちが大勢いるだろう。春はやはり新鮮さを感じさせる。

 今月は元・みんなねっとの理事長を務められた川崎洋子さんの登場である。若いと思っていたが、なんと私と同年齢であった。そして、さらに驚いたのが私の場合と同じような息子さんを抱えていたことだ。その回復への道筋が私の息子の場合と酷似している。

 発症の時期も高校3年の不登校から、そしてグループホームへ入所し、いまはアパートで独り暮らしと、私の息子と同じ道を歩んでいる。

 しかし、川崎さんから聞きたかったのは息子さんのことではない。家族会とは何かという問題である。私が最初に家族会というものに入ったのが、全家連の家族教室に通ったことからだった。とにかく判らないことだらけであった。当時精神分裂病と称されていたこの病気は、言葉だけは知っていた程度の知識であった。そこで、私たち家族教室の学友?は何でも質問した。薬のこと、睡眠のこと、暴力のこと等々。

 一つひとつ判って来て、私は落ちついた。家族会とはそういうものではないだろうか。川崎さんは「分かりますよ」の一言が安心感を生むのだと言っている。そして、患者本人には「そうか、辛いね」と共感を基本に考え、もう一つ大事なことに、我々運命共同体としての運動体として考えることであると。それには、家族から病気をオープンにすることであるとしている。

 さらに、家族会は親あるうちに自立を考えることにが最大の課題であるとしている。私もそろそろ、そんな歳を迎えているのである。                   

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp