12月 家族会例会より
  
抗精神病薬の副作用と対処方法

           講師 慶應義塾大学精神神経科 水野雅文先生

きょうは薬のくすり、つまり抗精神病薬の副作用についてのお話です。薬の名前で言いますとアキネトン、アーテン、といったものが副作用を抑える薬です。
これは副作用を抑えるために飲む薬で、飲まずにすめば飲まないほうがいいというものです。というのは、副作用止めの薬にも副作用があります。多くの精神科医はあまり飲む薬が多いと患者さんが薬ぎらいになってしまわないか、といった心配をします。

そこでコンプライアンス(患者が指示通りに薬を飲むこと)を考えてアキネトンを使います。医師によってはセレネースなどの抗精神病薬(主剤)に最初からいっしょに出す方もいます。ですから患者さんによってはアキネトンを主剤と思って飲んでいる方もいます。
こういうことは欧米ではまずありません。それよりも副作用が出た場合は現在服用している薬を十分に検討し、場合によっては薬を変えてでも、アキネトンのような副作用止めを使用することを避けます。

これからは日本でもこうした考え方が主流になりつつあります。副作用止めの薬にはこのアキネトン、アーテン、といった2、3種類くらいで、その薬として内容もほとんど同じです。
 そこで、きょうは、薬を使わないで副作用を抑える方法、副作用の対処方法についてお話をしてみたいと思います。
まず抗精神病薬の効果について・・・
(今回はスライドによって講義をしてくださいました。ここに再現して表示させていただきました。但しフレンズ紙面上の都合で後半部分を省略させていただきました。)

1抗精神病薬の効果
* 気持ちが安らぎ、穏やかになる
* 神経過敏、幻聴、幻覚等が軽くなる
* いらいら、物や人にあたる気持ちが軽くなる
* 薬の効果は一時的で血中濃度が低くなれば効果は続かない

抗精神病薬というのは、1回注射すると全部解決してしまうというものではありません。1回飲んだ薬というのは一定時間しか持ちません。それは薬の成分が血中に溶けてその濃度が時間とともに薄くなっていきますから、薬の効果は下がってきます。

では、薬を飲んだあと、どうなるか。
服薬した結果
* 病状の回復
* 睡眠が改善
* 入院している場合は退院が早まる
* より安定した生活が送れる
* 再発の危険性が減る

これらは薬の効果のよい面として期待されるものです。

従来の定型抗精神病薬
* 力価で考える     力価とは薬の用量のことです。
* 高力価薬:少量でも効果がある薬
_ セレネース、インプロメンなど
* 低力価薬:多量に投与しないと効果が出ない薬
_ コントミン(ウィンタミン)、レボトミン(ヒルナミン)、メレリルなど
・ ・・ドパミン遮断薬

力価というのは薬の強さの目安となるものです。セレネース、インプロメンといった薬は2ミリとか3ミリと小さな単位で使います。こうした少ない量で使う薬を「力価が高い」といいます。少量でも効果が高いといえるものです。そこで「高力価薬」と呼んでいます。
一方、コントミン、レボトミン、メルリルなどは量を多く使わないと効果がでない薬があります。それが「低力価薬」です。薬局からもらう薬の明細書を見ると、ある薬は2ミリ、3ミリなのに一方に150ミリ、300ミリなんていう数字が示されています。これは、高力価薬と低力価薬の違いと考えてくさい。
いずれにしても、昔からこれらは定型抗精神病薬と呼ばれ、ドーパミンという脳内の神経細胞の間を飛んでいる化学物質の動きをブロック(遮断)することが特徴であるとされた薬です。

高力価薬
* 内臓には影響少ない
* パーキンソン症状出やすい
* 鎮静は弱い
低力価薬
* 抗コリン作用強い
* 鎮静効果あり
* 肝障害、循環器系副作用あり

力価からみた抗精神病薬の高力価薬の副作用では、抗コリン作用という腸管、消化管、唾液腺などの動きをコントロールする作用が比較的弱いです。セレネース、インプロメントといった薬は内臓に及ぼす影響は比較的少ないといえます。ですから便秘の副作用も少ないといわれています。その一方でパーキンソン症状というのが出やすいとされています。パーキンソン症状は加齢によっても起こる症状で、猫背、ひざの曲がり、手の振りが小さくなる、表情の変化が少なくなる、といった症状です。パーキンソン病というのは脳の中の黒質と線状体の間をドーパミンという物質が飛んでいるわけですが、このドーパミンの分泌が悪くなってしまう、そういう病気です。

抗精神病薬の高力価の薬においては、ドーパミンをブロックする働きによって治療効果が現れるわけですが、これが黒質と線状体の間で効果が強く現れるとパーキンソン症状になるということです。そして鎮静作用、精神運動興奮を鎮めるという作用は高力価薬は低いとされています。
これに対し、低力価薬は高コリン作用が強く便秘、口の渇きといった副作用があります。また鎮静効果があります。興奮していて暴れているときなどに効果的です。クロルプロマジンとかを使って鎮静を図ることができます。次に低力価薬には肝障害、循環器系副作用といって、薬は肝臓で代謝することが一般的ですが、力価が低い薬はどうしても薬を大量に飲みます。そこで肝臓に負担がかかることになります。

副作用出現の影響
* ユーザーの方やその家族に恐怖感や不安感を抱かせる
* 医師は、副作用が出現した際の情報提供をきちんとすべきである
 ユーザーの方に安心感
 _副作用による服薬自己中断を防ぐ

副作用が出ますと、ユーザーやその家族は現象に驚き、恐怖感、不安感を抱き心配します。ですから医師は、副作用が出た場合の情報提供はやるべきです。最近はあちこちの病院で処方内容の説明書を出しています。それでご家族は安心、あるいは納得することができますが、精神科の場合、患者本人に知らせたくないとか、知ったために却って心配となり、自分で薬を止めてしまうケースもあります。ですから、こうした時に副作用についての内容と対処方法を知っていればそうしたこともなくなると思いますので、大事なことだと思います。
<中略>
次から次へと優れた新薬が発売されてきていますが、薬物療法だけでは精神病は治らないということをしっかり認識していただきたいと思います。薬物による治療はあくまで問題解決の手段の一つに過ぎません。薬には治療効果、再発予防効果が確かにありますが、薬物療法に過剰な期待をしないことです。大切なことはご家族の皆さんがどれだけご本人の状態を理解し、ご本人自身の回復への意欲を引き出して、それに対して支えていくことだと思います。それではこれで私のお話は終わらせていただきます。

(都合により先生のお話の一部を省略させていただき、質疑応答にさせていただきます)

質問1 セレネース、アキネトン、コントミン等を飲んでいますが、最近、薬の量が増えましたら生理が無くなってしまいました。主治医に「薬のせいか」と聞いたら「抑制作用がある」「ホルモンと関係する」というだけでよくわかりません。このままでいいのでしょうか。
それから、朝、不安定になるのですが、これは薬が切れるせいでしょうか。
先生 薬の量や組み合わせについては、患者さんを診ていないので何ともいえませんが、一般的に薬の量が増えればプロラクチンの量が増えてしまいますので、生理が無くなるようなことは多々あります。その対処では薬を変えるか、量を減らすということですが、短い期間であれば様子を見てからでもいいでしょう。しかし長く続くようであれば主治医の先生と相談された方がいいでしょう。
特にセレネースについては類似の薬が多くありますので、それを使うのもいいでしょう。しかし、変えたくすりにもプロラクチンを上げてしまうものもあります。また、ある人には上がりやすく、他の人では上がらないということもありますから、こればっかりは飲んでみないとわからないということも事実です。
このとき大切なことは、病気の最も治したい症状を中心に考えてください。副作用のことばかりを考えて、本来の治療の目的を失わないようにすることが大切です。ただ、困ったことが起こった時にはなるべく別なものにどんどん変えていくということも大事です。

質問2 15歳の息子ですが、幻聴が主な症状ですが、最初セレネースを飲んでいたのですが、口をクチャクチャするということで薬を非定型に変えて、リスパダールと(ルーラン)です。それで口のクチャクチャは一時的に治ったのですが、また症状が出てきたことから主治医がセレネースも加えて、複合的に飲むようになりました。そこで、薬を変えたり、量を変化させるというのは、どのようなことを目安で行うものなのでしょうか。

先生 主治医の先生は少量の薬で、微妙な変化で治療している様子がうかがえます。でも完全というわけにはいかないところが難しいわけです。特に口に現れる副作用は目立ちますが、先ほどもいいましたように、15歳という年齢も加味して考えますと、本来の症状の治療を最優先にして考えるべきだろうと思います。
それと抗精神病薬というのはジスキネジアという副作用が出やすく、避けにくいものです。残念ながらそういう状況にあるわけですから、副作用のために本来の症状の薬を減らすというのはリスクが大きいと思います。ですからご家族にはそれは受け入れてもらうしかないと思います。
それから、薬を変える方法は以前の勉強会でも申し上げましたが、基本的にはそれまでの薬に上乗せして、それから元の薬を引いていくというやり方ですね。ですから薬を変えるときは1度増えます。この重なる期間は全体量が少なければ短いですし、多ければ長い期間を要します。それは濃度の問題ですね。一般的には4〜5ミリ程度で2ヶ月くらいです。

質問3 先ほどの講義の中で、抗ヒスタミン作用の中で、眠気、だるさ、疲れやすさということをいわれましたが、私の息子は長年同じ薬を飲んでいます。それと最近コーヒー、コーラを飲む量が増えてきました。そのせいか体重も増えてきました。中年の領域に入ってきた年頃になってきたので、生活習慣病の面も考えなくちゃいけなくなったのかなと。そうしたときに抗精神病薬を中心とすべきか、生活面を優先して考えるべきか迷っています。

先生 難しい問題ですね。長年同じ薬を飲んでいて、症状も変わっていないということであれば、薬の量は減らしていけるはずです。しかも長い期間に蓄積された薬の量というものもありますから、むしろ減らすべきといえます。それで減らせば、眠気、だるさ、疲れやすさというものも減りますから、それに伴ってコーヒーやコーラといったカフェインの量も減ると思います。あとは運動を増やすということですが、これは目的をもった運動がいいです。例えば買物とか。タバコなども軽い銘柄に変えたり、無糖タイプのコーヒーに変えるといったことも必要でしょう。

質問4 現在64歳になる女性ですが、モノが飲み込めないという症状が出ました。心配したのは嚥下不良でモノがまったく食べられない状態になって、それで入院もしました。これも錐体外路系の症状ということでしょうか。
もう一つは物忘れがひどくなったということです。あるいは痴呆なのか。主治医は集中力の欠乏ということをいいます。これらは抗精神病薬の副作用ではないのでしょうか。アキネトンは長く飲んでいます。

先生 そうですね、複合的に関係しているとは思いますが難しいです。アキネトンは量が多いと明らかに覚えにくくなるという副作用がでます。ですが、高齢になってからの発病ということもありますし、抗精神病薬を飲み始めた段階でパーキンソン症状も出ていたものと思われます。これらをすべて無くす方法での治療は無理といえます。

質問者 抗精神病薬そのものの影響なのか、副作用の影響なのか・・・。

先生  両方でしょう。

質問者 それから肝不全、腎不全といったことに関連して、血液検査も必要なんでしょうね。

先生  ええ。いま日本で発売になっている薬は「顆粒球減少症」という白血球の中のあるものが極端に減って、それで重症の感染症に至るという副作用はありません。しかし、海外で発売されている「クロザピン」という薬は陰性症状に効果があるといわれていますが、日本では発売されていません。なぜかというと、飲んでいるときに白血球の中の顆粒球が極端に、しかも急速に減ってしまうという副作用もあって、日本でも20年も前に治験したときに死亡例が出てしまいました。ところが海外では第1選択薬として使われています。そこで、海外ではこの薬を飲んでいる方は毎週、血液検査を行うことにしています。

質問5 先生のお話の中で抗精神病薬と非定形精神病薬という言葉が出てきましたが、その違いはなんでしょうか。

先生  抗精神病薬には定型精神病薬と非定型精神病薬というのがあります。それで定型というのはドーパミンに働きかける薬で、それ以外に働きかける薬を非定型精神病薬と呼んでいます。この中に過去3年くらいの間に発売となった4剤の薬を新規非定型抗精神病薬と呼んでいます。

質問6 先生のお話の中で抗精神病薬と非定形型精神病薬という言葉が出てきましたが、その違いはなんでしょうか。

先生  抗精神病薬には定型精神病薬と非定型精神病薬というのがあります。それで定形というのはドーパミンに働きかける薬で、それ以外にも働きかける薬を非定型精神病薬と呼んでいます。この中に過去3年くらいの間に発売となった4剤の薬を新規非定型抗精神病薬と呼んでいます。

質問者  最近主治医からジプレキサに変えるということで、変えました。24時間効果があるということで夕方1回飲むことになっていますが、夕方になると神経質になって、薬、薬というほどです。ただ、薬の効果ははっきり出て、症状はとてもよくなりました。でも、気になるのは睡眠時間が非常に長いことです。毎晩9時には寝て、翌朝10時頃に起きるという毎日です。13時間も寝ていて問題ないでしょうか。しかし、翌日通院とかの用事があるときはキチっと起きます。

先生  用事があれば起きられることが大事なことです。これは患者さんでなくても日曜日に用事もないのに早く起きるというのは辛いことで、それと同じことです。ですから、どうしても早く起きることを望まれるのでしたら、何か用事を作ることでしょう。
それから13時間の睡眠時間はちょっと長いと思います。あまり睡眠時間が長いと生活意欲が減退します。理想的には8時間睡眠で昼寝をする、それもウトウト程度を行うのが理想的と思います。
精神科で睡眠不足というのは1時間しか寝ていないとか、全く眠れない日が3日続いたというような場合であって、8時間寝れば睡眠不足とはいえないです。

質問7  私のところでは安定剤と睡眠薬を必ず1錠飲まないと眠れないということでずっと飲んでいます。何か気になることがあると眠れないので、先生に相談したところ2週間分の睡眠薬が出されました。睡眠薬というのは毎日飲んでいて問題ないのでしょうか。

先生  薬は飲まない方がいいのですが、治療上必要だから飲むわけで、それが不幸にして長く続く場合があるということだと思います。
もう一つ言えることは、ご本人が何か気になることがあって、眠れないからといって睡眠薬を飲むことで、とりあえず眠れたとします。しかし問題はご本人の気になる部分は何も解決されていませんね。逆に薬が増えたというマイナス面があります。ですから、まず、ご本人の眠れない原因、気になることが何なのか、その心配を解いてあげること、これが本来のあるべき治療だと思います。


勉強会講演記録CDの2枚目が完成しました。
フレンズ編集室では講師の先生方の講演記録を生の声で聞いていただこうと、CD制作を行っていきます。
まず第1弾として、9月勉強会で講演していだいた曽根晴雄さんです。
タイトル『ちょっと私の話を聞いてください』  
 =聞けば見えてくる・精神分裂病当事者が語る患者の本音=

 家族は患者本人の気持ちを知っているようで理解できていません。二十数年間この病気と戦って来た曽根さんが、自らの体験をもとに訴える精神病者の苦悩、怒り、病気のこと、希望、それはすべての精神の病いに侵された人たちの声を代弁しています。
 また、当事者仲間の先輩として語る内容は、回復しつつある皆さんのお子さんが聞いても大いに励まされます。
 そして誰よりも聞いてもらいたいのは、分裂病を全く知らない人たちです。”もしあなたのお子さんが病気になったら”という目的の他に、各地で取りざたされる障害者の事件の度に生まれる誤解や偏見を防ぐためにです。一般の方に呼びかけてください。

第2弾は
「心の病を克服 そして ホームヘルプ事業へ」 
大石洋一さんです。
収録分数;61分 CDラジカセ、パソコン、カーステレオ等で聞けます。
価格;各¥1,200(送料共、2枚同時申込の場合2,270円)
   申し込みはフレンズ事務局へ E-mailでお申し込みください。frenz@big.or.jp
発売:平成14年1月
企画・制作 新宿家族会フレンズ編集室
(新宿家族会創立30周年記念事業)

編集後記
 
 今回は水野先生からすばらしいプレゼントを頂いた。講議に使われたスライドはコンピュータで作成されたもので、いつも黒板と白墨に慣れている新宿家族会勉強会会場がが一気にIT教室と化した感があった。
 水野先生が永年の治療経験からまとめあげた「抗精神病薬の副作用について」の情報をそっくり頂いてしまった。紙面を借りて改めてお礼を申し上げたい。
 CD出版に全面協力してくれた新潟県の曽根さんから毎日のように電話やファックスが届いている。それはこちらからお願いした曽根さんの履歴を表わすような写真や資料をお願いしたからだ。そんな曽根さんと電話で話している最中に池袋通り魔事件の犯人に死刑判決のニュースがテレビで流れていた。 やはり「責任能力あり」が判決の決めてになったという。精神障害者が曽根さんもいう、イライラし、心身喪失症状の発現状態にあるとき、いかなる責任があるというのだろう。
  一方で官僚の汚職、脱税、談合、金目当てや飲酒運転での殺人。それと比べて今回の死刑は考えさせられる。疑わしきは罰せずの裁判の原則はなくなったのだろうか・・・ 

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp