12月定例会 拡大家族交流会

「妄想・幻聴・幻覚とは何か?

                        その理論と対応」

               講師 東邦大学医学部 教授 水野雅文 先生



【はじめに】

 今日は「妄想・幻聴・幻覚とは何か?その対応は?」というお題をいただいております。先に私がお話をして、その後それに関連することでもしないことでもご質問をいただいてお話をするというふうに進めたいと思います。

幻覚というのは知覚の障害と言われています。読んで字のとおり幻の知覚です。知覚というのは五感を通して入ってくるもので、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といろいろございます。このどれについても幻ということで、そのために「対象なき知覚」とよく言われています。

【妄想とは】

 それに対して妄想というのは、これは修正不能な確信といったらいいでしょうか。あるいは訂正不能と書いてある本もあります。ある方が思い込んでいることに対して、事実ではないわけですね。でも確信をしている。修正不能というのは、周りの人がそうではないのよといっても、本人はご飯に毒が入っていると思ったり、誰かが私の後をついてくると思ったりするものです。この誰かが私の後をついてくるといったときに、そういうのは根拠なく突然思うのではなく、何か音が聞こえるとか、闇の中に隠れる人陰を見たりとか、そんなことが原因になっている場合には二次性の妄想といいます。

【幻覚の原因】

 先ほどお話しましたように、ご意見が異なる方もいらっしゃるかと思いますが、医学的な立場でお話しするならば幻覚も基本的には脳の中で起こっているものです。脳の中のひとつのプロセスと考えるのが医学の立場でございます。たとえば他にも宗教的な立場であるとかあるいは比較文化的な意味で宗教とは少し違うかもしれませんが、神様と交信できるとか、いろんな方が歴史的にもいらっしゃいますので医学的には心はどこにあるのといわれたら脳の中と答えるのと同じ意味で、幻覚は脳の中で起こっているというのを今日のお話の前提としたいと思います。

【誰にでも起こりうる幻覚】

 それから、大事なのは幻覚というのはこれだけあったから病気というものではないんですね。こんな例があります。皆さんの中で、さっきの説明をご理解いただけた方、確認のために。わからなかった方は?・・・皆さん一応ご理解いただけたようですね。では、この中で幻覚を体験したことのある方、手を挙げていただけますか。ああ、いらっしゃいますね。普通15〜20%くらいはいるんですよね。視聴者参加番組なんかでやりますと。私自身も子どもの頃寝ようと思うと天井のシミがいろんなものに見えてきたり、隅のほうでごそごそいっているような感じがしたりですね、そういう体験がありまして、なんとなく人事じゃないなという感じなんですが。

【人間の感覚と幻覚】

 聴覚と視覚は人間の五感の中でかなり重要ですよね。においも大事です、腐ったものを食べてしまったりしますから。それから触覚の中で代表的なものは痛みですよね。痛みがない方も実際いらして、どれくらいないかというと痛覚神経の末梢がぜんぜんないんです。そうすると子どものときに高いところから飛び降りて見せたりとか、おなかが痛くてもすぐに言わないので手遅れになってしまったりとか。そういう子どもが育って、他人が血を出して痛いといっているのを見て痛いといってみたり、いろんな変化があるのですが。こういうふうに五感というのは人間を守る上でとても大事なのですが、やはりなんと言っても積極的な情報量として圧倒的に多いのは視覚と聴覚だろうと思います。

【幻覚はどこにあるのか】

 そういうことを前置きとして幻覚がどこにあるのかという話です。本当の意味で自然に発生する幻覚がどういうものなのかは良く分かっていないんですが、統合失調症の方の中に幻覚が多いというのは昔から分かっていて、それは脳の中の問題だろうと。統合失調症という概念がまとまったのは今から100年以上前なんですが、当時から精神科医は脳の中に原因を探そうと思って研究をしていました。統合失調症になって亡くなった方の脳を出して大きさを測ったり顕微鏡で見たりなどを50年ほどやっていたのですが、結局今から50年前の確か1952年にローマで国際神経病理学会があったときに統合失調症の脳は健康な脳と比べても少なくとも形態学的にはなんら変わりはないという結論が出ました。

【会場からの質問】

質問:実際の出来事との関連はあるのか 

 一般的に考えて先ほどの声の認識と同じで、聞いたこともない声についてこれは誰の声ですということは合理性は乏しいですね。ですから聴こえている声が幻聴であっても誰々の声だというのであれば、聴いたことのある人の声であれば記憶があるわけですから、この声は誰の声だなと認識していることはあると思うんですが、聴覚については音は名前が付いていませんのでなかなか確信を持つのは難しいですよね。

質問:家族はその症状にどう付き合ったらいいか

 これは難しいのですが。否定したくなるけどどう声をかけたらいいですか、という質問なんですが、否定したくなるのはごもっともで周りの人には聞こえていませんから、やむを得ないと思いますが、大事なことは本人には聴こえているということです。ごく普通の日常会話、人間関係の中で自分が確信を持っていることを誰かに否定される場合に否定のしようというものがあるじゃないですか。頭ごなしであるとか、かなり配慮をする否定の仕方とか、あるいは共感しながら否定するとか、代案を出すとかいろんな否定の仕方がありますから、これは病気だから特別な配慮がいるかということ以前にある人がこれは聴こえているんだと主張したらそれにはやっぱりどんなふうに付き合ったらいいかというのはさほど特殊な問題ではないと思います。

(概略記述)



新宿家族会へのお誘い 

 新宿家族会では毎月第3土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

 平成十九年が明けた。紙上を借りて新年のご挨拶を申し上げます。

 さて、新年になると昨年のことを言いたくなる。昨年の新宿フレンズの動きではなんと言っても「夜の家族会」である。これまでの家族会と言えば参加できるのは家族か当事者に限っていた。今回の夜の会ではそれを打ち破ったことが最大の特徴である。

 現実に家族はもとより、当事者、PSW、保健師といった人たちが参加してくれた。そして何よりも嬉しかったのは、当事者たちから「ここに来ると何でもしゃべれる。気が落ち着く」といった感想を聞いたことである。こうしたことから当事者の気持と家族や精神医療に携わる人たちの気持の交流が図られ、医療面や福祉面でその効果が表れて欲しい。

 精神の全般としては「障害者自立支援法」が施行され、各地でさまざまな反応があった。特に精神障害者の日常の活動の場である作業所や生活支援センターへの補助金の扱いである。

 常識では考えられない福祉予算の削減であるが、これも強引に押し付けられると徐々に浸透して、いつの間にか当たり前のことになるという日本の社会風土である。一方では8百兆円という国債、つまり借金を抱え、新年度予算で30兆円を越すか越さないかが取りざたされている国会である。はたまた、大臣クラスの議員の政治資金の使い道のいい加減さが指摘された。

 果たして、こうした問題を外国ではどう判断されるだろうか。国によって違いはあるだろうが、日本人は鷹揚なのか、裕福なのか。あの平和に見えたタイで首相の蓄財などの問題からクーデターが起き、84%の国民から支持されているという。新年に当たって、物騒な話になったが平和を祈念する気持は変らない。                                

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp