新宿区後援・12月新宿フレンズ講演会

   統合失調症と紛らわしい病気


    講師 統合大学医学部精神神経医学講座教授 水野雅文先生


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【「あさイチ」に出演】

 NHKの「あさイチ」という番組ディレクターから、「若い人が統合失調症を発症しても気付かれず、治療の遅れることがよくあるので、番組で取り上げたい」というお話があり、12月4日に放映されました。娘さんが病気の随筆家のベニシアさん、お笑いコンビの「松本ハウス」も出演。ハウス加賀谷さんは中学から高校の頃に自己臭症を発病、その後、お笑いで活躍したあとに、また調子を崩して入院・治療、10年ぶりに復活したそうです。

 加賀谷さんはプロだけあって本番時のテンションは凄い。本当に爆発するようなエネルギーで漫才をやりますが、待ち時間にはコンビの松本キックさんや私と治療の話や関わり方を真剣に打ち合わせておられ、むしろ静かな方でした。

 大事なことは、「治療をしっかり継続して、自分らしく生きていくにはどうしたらよいか」に尽きるわけですが、加賀谷さんは、私が普段、診察室で控えめに言っているようなこと、「薬は絶対に飲まなければならない」「主治医に黙って減らしてはいけない」とか、しっかり力説されるので、私は殆ど口を挟む必要はないほどでした。

 同じ週にNHK教育の「今日の健康」でも統合失調症の良い番組がありましたが、全く関わりのない方が、夜の11時に統合失調症の番組を見る方は少ないでしょう。ディレクターには「病気に対する誤解や偏見、アンティスティグマを無くし、病気の早期発見に繋げるには、全く精神疾患と無関係な方が思わず見てしまうような番組を作ってください」とお願いしました。この「あさイチ」はバラエティー番組で、視聴率が最高14.4%、局側からは「1400万人の方が見ていました!」とのこと。患者は全国で100万人ぐらいですから、相当数の方に統合失調症について知らせることが出来た、こういう形でのテレビ報道が増えて欲しいと願いました。

【躁うつ病・うつ病・認知症との類似】

 さて、今日のテーマは統合失調症に類似の病気についてです。統合失調症の症状としてはご存知のように陽性症状と陰性症状があります。陽性症状は普段ないものがある。例えば何か声が聞こえる、いつもより過剰に元気があるなどです。それに対して陰性症状は普段あるものがない。注意力、意欲、感情がなくなり平板になるなどです。もう1つ大きな特徴の一つが認知機能障害です。この3つが統合失調症の特徴と言われていわれています。

 陽性症状では、躁うつ病との区別が難しいと言われます。躁うつ病は、躁の時も、また、うつの時も感情部分の調子の悪さが目立つものですが、これも統合失調症と重なりがあります。
 陰性症状ではうつ病と重なります。うつ病の症状の中には感情面の症状のほかに意欲の障害、エネルギーの低下で、自ら行動する意欲が低下してしまっていますが、統合失調症の陰性症状と似ていると言えなくもないでしょう。 

 近年、統合失調症の機能の障害で注目されているのは認知機能障害です。人の心の機能を知・情・意に分けると、統合失調症は情・意の部分の調子が悪くて、知の部分はさほど侵されていないと言われていました。そこに問題があれば別の病気の可能性、例えば認知症などではないかと考えられていました。ところが検査機器機械が進歩して、やはり統合失調症でも認知機能の障害があるのでないかと言われるようになりました。

 その他にも注意力、物事の段取りを決める実行機能も低下します。プラン、計画を立てる、注意機能も受身の注意だけではなくて、例えばサッカーで自分がパスをする相手を瞬時に捉えて、動く方向に蹴る一連の動作、こういったものが全体的にやや落ちてくる。この「やや」は本当にごく僅かですが、しかし人の日常生活は基本的にこの認知機能の連続ですから、ここに少しでもダメージがあると日常生活が非常にやりづらくなります。

 脳の機能そのものを活性化するための認知機能トレーニングや認知機能リハビリテーションを、東邦大学大森病院のイルボスコ(デイケア)ではグループでやっています。これは言わば脳トレですが、漢字テストや数独などのパズルよりも、もう少し正解がないような頭を柔軟に使って面白い答えを考え付くようなクイズを皆で作り、それを毎日練習することで臨機応変、行間を読むなど頭を柔らかくする治療の一環として行っています。

 認知障害が認知症と区別がつかないというのは40代後半から50代の人に統合失調症の症状が出た場合には、認知症に発展する病態なのか、統合失調症か、うつ病の範囲かは慎重な区別を要します。

【診断には成長の経過が重要】

 こうした病気は、横断面と言って、ある日だけを見ると確かに似ているところはある。しかし続けて診察すれば前の様子が分かるし、初診でも誰か家族などが一緒に来れば、経時的な変化を聞ける。病気の診断とは、ある日の症状だけではなくて、それまでどういう経過であったかが重要です。

 例えば躁うつ病の場合には、エピソードという言い方をしますが、あるところから具合の悪さが始まり、だんだん悪化して、底を打ってまた浮上するという山と谷のような動きをしますから、うつが回復中か沈んでいるかなど、話を聞きながら統合失調症とは違った経過の部分を区別します。

 その時はうつ病のように見えても、話を聴いてみると学生時代はアクティブでリュックを背負って海外旅行へ1人で行ったとか、野宿したとか、およそその人らしくないエピソードがよく出て来ます。「あの頃は元気でした」という話が診察を進めていく中で出てくる。そのうち本当に元気が出てきて、電話が多くなったり浪費したりという躁病の症状が表れ、ようやく躁うつ病だという診断がつくことがあります。

 ですから今日は紛らわしい症状であっても、それぞれの病気の鑑別診断、つまり区別については、患者家族の皆さんが、その時々の症状だけで一喜一憂しないで、長い目で見てどんな経過をたどって来たのか、実は診察室の中では、長い話は次の患者さんのご機嫌が悪くなるので中々聞き出せない。長い経過を家族がまとめてメモを持ってきてくれると分かりやすい。経過が診断の上で大事だということを知っておいて頂きたいと思います。

【体の病気と違法薬物】

 さて、治療は症状に対して行いますから、病名はその経過を見て考えればよいわけで、あわてて決定する必要はないのですが、気にしなくてはいけない症状や区別すべき病気があります。それは、体の病気です。膠原病・脳炎・脳の髄膜炎など、脳や体を冒す病気になって、その症状が普段の精神症状に上乗せされることがあります。ですから体の病気は、精神症状のあるなしに限らず鑑別しなくてはなりません。

 もう1つ、若い人には脱法ドラッグによる精神症状があります。覚醒剤は幻覚・妄想を起こして統合失調症と区別し難い症状が起き、強い依存性があります。

 海外では精神疾患の始まり、あるいは調子が悪くなってきたときに、しばしばマリファナや違法薬物の依存や乱用が重なっています。精神病の初期段階それは服薬治療では、本人の自覚としてぼんやりと、寝起きや二日酔いのように感じる。これを晴らすため運動しよう、コーヒーを飲んでカフェインで脳を刺激する。煙草を吸ってニコチンで覚醒作用を求める。それが高じてハーブなどの脱法ドラッグにまで手を出すことが起きます。売る方は頭がすっきりするとか、肌がきれいになる、勉強できるようになる、頭の回転が良くなるとか言って近づいてくる。日本でも中学生5万人の調査で、120人が経験ありと報じられていました。

違法薬物は、統合失調症の発症年齢と近い年代に危険があるので、しっかり鑑別すべきで、診断時に「使ってはいけないお薬を使ったことはありますか」と必ず確認します。

                                        〜了〜

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
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新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
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編集後記

あけましておめでとうございます。皆さんの正月はどんなだったであろうか。 

 正月の新聞の一抱えもある分量には毎年、配達人の苦労が思いやられる。新聞と言えば、昨年暮れ、キャロライン・ケネディさんの「障害者支援 日本の力を示す好機」(朝日)で、オリンピックとパラリンピックについて、日本の最新鋭の技術で障害を持つ人々にスポーツを楽しんでもらえるのではないか、と述べている。ケネディ家は障害を持つ人々のスポーツ活動を支援してきたことで知られる。

 そして、水野先生のテレビ出演で、精神科の話題がさらに一般へ浸透したのではないだろうか。水野先生が常に言っている言葉に「精神科をもっと広告しなきゃだめだ」を地(自)で行ってくれたといえよう。小生も出身はギョーカイであった。いや、今もその端くれで生きていると言っていいだろう。

 水野先生のいう「全く精神科の病気とは無関係な方が思わず見てしまう」ことこそ広告の真骨頂であろう。考えてみれば我々も皆、無関係の立場にいたわけである。それが=ある日突然=というのが精神科の一般的経過である。

 誰でもかかり得る精神科の病。そしてかかってしまってからは悲惨な毎日。誰もが言う、こんな苦しみは私だけでいいと。しかし現実は毎日のように新しい患者が出現している。百人に一人という数字は増えこそすれ、減ってはいない。何かが間違ってはいないだろうか。キャロラインさんの言葉通り、日本の最新鋭の技術を持ってしても変わらないこのデータはどうしようもないことなのか。

 私たちにできること、それはこの病気を特殊なものとせずに視ていくことではないか。 

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp