12月勉強会より
   再発を防ぐために

         講師 慶應義塾大学精神神経科 水野雅文先生

再発というからには、一度お加減が悪くなって入院して薬を飲んだりして大変な想いをしたあと、一旦落ち着きます。それがもう一度悪くなってしまうのを「再発」と呼んでいます。ですから最初からいつの間にからかずっと調子が悪いという方の場合はどこから再発ということは言えません。イメージとしては統合失調症でも同じようなことがありますが、「そう」「うつ」ですね。「そう」があったり、「うつ」があったりというふうに再発ということが起きてしまいますが、そういう場合も再発といいます。

再発事態はなんとか防ぎたいわけですが、しかしお薬を飲んでいても思いがけず再発が起きてしまうことがあります。それがどうして起きてしまうのか、さらにどうしたら再発が早期に見つけられるか、そういうことを今日はお話していきたいと思います。最後にはこのテキストにある「早期警告サイン」をうまく活用する方法を見つけて、このワークシートを完成させていただきたいと思います。

「早期発見/早期治療」

精神疾患の初発と同様に再発の場合もですね、できるだけ早く気がついて、早く手当をした方が明らかにその後の経過がいいことはよく知られています。

そこで、どうして再発が起きてしまうかというお話をするときに、以前お話しました「脆弱性ストレスモデル」の図を思い出していただきたいと思います。

再発というのは、一つにはもともとある日常的(恒常的)なストレスと、突発的に起きるストレス(ライフイベント)が重なったときに、ストレスに耐えられる(いき値)と脳の抵抗力を含めたラインが上まっていれば大丈夫なわけです。ですからこのラインを上にあげるには生物学的なものでは薬です。もう一つはストレスの山の部分に対応できる力をもつこと。この組みあわせがうまくいけば、少しくらいのストレスではなかなか再発しないという状況が維持されます。

しかし、薬をきちんと飲んでいても、突発的に大きなライフイベントがきた時にこのラインから飛び出してしまうようなことがあります。これが再発の引き金となる場合が多いです。

では、実際にどのような突発的なライフイベントがあるかと言えば、例えば引っ越し、学校が変わるとか、就職する、結婚というような人生の転機となるようなことです。でも、もっと身近な問題でも、例えば風邪引いたとか、深酒したとか徹夜したといった小さいものも含めて、普段の状態を何か揺るがすようなもの、要するに普段との違いというものがあることです。ストレスとは普段との違いとか差というものであると言えます。そういう普段との違いをうまくかわす行動のパターンとか、薬を変化させるなどが器用にできると再発という大きな転覆は遠ざけることができます。

ですから日常生活を活発にすればするほど、当然このストレスはいろんところからいろんな種類ものがきますから、再発の率は増えるわけです。しかし、その再発を怖がるあまり、ずっとじっとしていたのでは無味乾燥な人生となってしまうことでもあります。そうしますと、その方の人生にとって何が一番いいかということをよく考えながらその線を見極めていくとことであろうと思います。

ご本人自身が身につけてもらいたいストレスをかわす技術と薬をきちんと飲む習慣、これが再発を防ぐためのとても大切なことだと思います。

きょうはその場合、ストレスをどうしたらかわせるか、それからもしストレスが来てしまった場合に起こる自分の変化、例えば症状とか予徴とか、あるいはサインというものを知り、どうしたら対処できるか、早く見つけられるか、これを相談していこうということになります。

ここで大事なことは、一人の方が再発を繰り返すような場合、こういう時はあるパターンがあります。言葉は悪いですが「いつか来た道」というような悪いパターンというのがあります。それを上手に前にあった苦い経験というのを生かしていくことで同じことの繰り返しを避けるということがとても大事なような気がします。

ですから、これまで一度も経験したことないような体験が再発のときにどーんと出てくるということが少なくて、実はご本人も周りの方も「最初に悪くなったときもあのようだった」というようなことが再発のサインとなることが多いようです。再発は辛い体験ですから思いだしたくはないことではありますが、次への教訓としてご家族の中でも「あの時もそうだった」と思いだして、それを再発のサインとして見直していただくことが大事だろうと思います。たとえそうした記憶がない、新たな病気となってしまって再発となった場合でも「再発を防ごう」という視点で見れば前に得た教訓を生かすということは大事です。

ストレスの身体的反応

これには「不眠」というのがあります。不眠には眠れないだけではなくて、途中で目が覚めてしまうこと、朝早く目が覚めてしまう、それから熟睡感がない、といったことが含まれます。それから「食欲の(こう)進または減退」「不安感」「緊張感」「イライラ」「頭痛」「腰痛や肩こり」「疲労感」というのが一般的な症状で、皆さんご家族の方でも経験することです。

ここが厄介なことで、こうした症状は精神科だけに見られる特徴的な症状ではありませんし、ましてや症状からこれは精神科にいくべきというふうなサインや特徴ではありません。心の病というのも始まりは一般的な身体の病気とほぼ同じ症状だということです。

ですから、それがサインであるというのは後になって考えると「ああ、あの時は変だった」と言えるようなもので、起こっている最中には「まあ、疲れればこういうこともあるさ」というように捉えることが普通です。そこがこの病気の難しいところです。

ですから、ご自分たちで疲れと時に起こる症状と、何かストレスがかかってメンタルヘルスの面で調子が悪くなった時にその方がいうものと、これを区別しておく必要があります。

私たちが診察の場面で、患者さんが自分が困っていることを述べるときに、自分の知っている言葉で解釈しようとしますが、例えば「憂鬱」とか「不安」「焦燥感」といった言葉です。患者さんのなかには病院なれしていて、精神科医のいった言葉を使って「私は憂鬱症で・・・」などとおっしゃる方もおりますが、それは患者さんが思っている「憂鬱症」で、私たち一般が判断する「憂鬱」と必ずしも一致しない場合があります。それはほかに言葉が見つからないからで、「頭痛」といっても、実際は「頭が重くて、ぼんやりしていて、首のあたりが詰まるような感じだ」というと私たちに本当のことが伝わるということがあります。「頭痛です」とだけでは痛み止めの薬を出されて終わってしまうことになりかねません。

それと同じようにご本人がいつも不快感を感じる初期の再発症状というのは、ご本人にしか語れない体験なのですが、それを病院や地域の専門スタッフの前で説明するのは大変ですが、家族の方でしたらそういう際の「例のいつものやつ」といった言葉で説明できる症状が再発のきっかけだったりします。ですから、そういう体験(ストレス)と運動したあとの疲れとはよく聞いてみるとか、ご本人が意識することで区別がつくものです。そういうことからも以前に学んだ「アクティブ・リスニング」を普段から心がけていただいて、症状と疲れの区別をなさるようにしていただきたいものです。

「警告サイン」

皆さんにとって過度なストレスにさらされていることを示す警告サインとはどんなものですか?

これは皆さんがきょう帰って、おうちの中で患者さんから、調子が悪くなるときのサインはそれぞれ違いますから、聞いておくようにしてください。その際、メンタルヘルスのことをターゲットにして聞くのではなく、「これから風邪が流行るので、体調を崩さないように、いまから健康管理の話をしておこうか」というような切り出しで「再発の警告サイン」を知ることをお勧めします。

また、継続的に高いストレスにさらされていると、心臓病、(たん息)、(胃かいよう)、糖尿病、てんかん、癌なども悪化を進めることになります。心の病もこれと同じです。早め早めの対処ということではどんな病気にも共通して言えます。

ストレス以外の再発の原因

例えば風邪などの身体上の健康問題からの再発とか、アルコール、シンナー、覚醒剤など、抗精神病薬を飲まれている方がこうした薬物を併用することによって再発となります。特に抗精神病薬を飲まれている方が頭がすっきりしないということで、こっそりシンナー、覚醒剤、あるいはほかにいろいろある薬物を飲むことがあります。これらの併用は違法というだけでなく精神障害の再発では重症に陥る場合がありますから絶対に使用しないように気をつけてください。

「早期警告サイン」

ストレスの高い状態が続いていますと、結局もともとはこころの病というような抽象的な言い方をしていますが、「脳の問題」です。やはり疲労というのは脳に同じようにストレスをかけてきます。再発は先程も言いましたが、その人には大体同じようなサインで始まるということがあります。それを知っておくことで、それに対する対処方法を見つけておくことが大切です。

まず、他の方の場合を知って参考にしておくとよろしいかと思います。

1)仕事、趣味、友人との交流に興味がなくなる

特に身体的な病気でもないのに、きょうは調子が悪いといって職場を休んでしまう場合があります。このような場合、本当に身体的な病気があるのか、メンタルヘルスんl問題か、よく見極める必要があります。趣味では生活支援センターやデイケアに通っていた人が行かなくなってしまったという場合も要注意です。私の患者さんで、生活支援センターに通っていた人が、そこで話合いをもったときに自分の意見が通らなかったことで翌日から通えなくなり、再発につながってしまったという方がいました。外部での行動が想いもよらぬ事態を招く場合もあります。

2)家族や友人といつものように関われなくなる

それまで家族と話ができていたのに、自分の部屋に閉じこもってしまう場合などがあります。

3)忘れっぽくなる、集中力がなくなる

一度覚えたものを忘れる場合と、集中力が欠けて覚えられないことから、それを忘れっぽいと判断してしてしまうのか、いずれにしても以前とは違った状態となったときに要注意です。

4)リラックスできなくなる、眠れなくなる

眠れなくなる、というのは大きなサインです。脳は目が覚めているときは絶えず活動しています。いま皆さんの脳でものを見て、音を聞き分け、匂い、温度などあらゆる感覚の機能をは働かせています。つまり脳を使っています。しかし、ここで脳がくたびれてしまうと脳を休ませなければなりません。脳を休ませるには何といっても「睡眠」です。そこで不眠でずっと脳が休むことができなければ、それは結果的に、メンタルヘルスの面で非常に大きな問題となることは想像に難くないでしょう。

5)極端におしゃべりになったり、無口になったりする

無口になるというケースは多いですね。

6)周囲の状況が以前と変わってしまったように感じる

7)感じ方が変わったように思える

8)緊張したりイライラすることが多くなる

9)頭痛や身体の一部の痛みが続く

といったことが再発のサインとしてよく聞くものです。

では、ここで皆さんの場合はどんな警告サインがあるか考えてみてください。

(皆さんが実際に書いてみる)

いかがでしょうか。皆さんから発表して頂けますか。

参加者1 私の場合は食事の後、本人が咳込み、ひどいときはトイレに駆けこんで嘔吐します。これは本人が何らかのストレスを抱え込み始めたと感じ、それなりの対応なり言葉をかけて、彼のストレスを和らげる努力をしています。

参加者2 再発を一度経験しています。そのときのことを思い出すと娘は「独り言」を言うようになりました。内容は支離滅裂なものです。

参加者3 いま思い出しましたが入院する前、本人が「胸が痛い」と言って病院へ行きました。

参加者4 娘ですが、自分の身体の不調をやたら気にする時は危険信号です。そういう時は夜もやたらトイレに立ったり、生理のことも気になると言い出したりします。

参加者5 不眠と言うか、寝付きが悪くなるということがあります。テレビで興奮するような番組を見たあと、寝付きが悪くなります。

参加者5 うち子の場合も不眠というのでしょうか、夜中「部屋の中に虫が飛んでる」といって私を起こします。

参加者6 薬を3週間も飲まなくなって、不眠が続きました。

先生   そのきっかけはなんでしたか?

参加者6 食欲がなくなり、不眠もありました。もの忘れもあって自分は痴呆症ではないかと言いました。

参加者7 結婚問題が話に上った時に再発につながりました。

参加者8 目が吊あがって、言葉が横柄になります。わけの判らない質問攻めをしてきます。そういう時は薬も飲まなくなります。

先生   薬を飲まなくなるきっかけはなんですか?

参加者8 薬を飲むとかったるい、朝起きられない、行動ができない、ベッドで横になっているのがいやだ、といった理由を言います。

先生   きょうのテーマとは若干ずれますが、その薬の件について触れますと、これは精神科の薬の弱点でもあるのですが、薬との相性は個別的なことが多いものですから、そうした経験を生かして、具合のいいときにご本人を通じて、またご家族からも主治医の先生にどんどん話をしてご本人に合った薬を探していってほしいと思います。それから以前は合っていたと言っていたのに最近飲みにくい、重たくなったと言い出した時は、これはご本人の言い方が正しいことが多いです。それは回復に近づいてくれば薬が重たくなります。こういう場合でしたらお薬は減らすべきでしょう。それをそのままにして量も内容も換えずにいると、本人には負担増となり、「だったら一気に止めちゃえ」となって全然飲まなくなって、何か月後に大きな再発になる場合があります。こういうときこそ、より大事に捉えていったほうがいいです。最近は新しい薬もどんどん出てきていますし、小さなことですが重要なことです。

参加者9 うちの場合、人から見られているような気がする、と言い出したら要注意です。

参加者10 本人が弟の健康を気づかうということが見られます。具合のいいときはそんなことはありません。ただ、それが即再発につながるものではありませんが、何か本人には普段とは違う状況にあるな、と考えています。

参加者11 うちの場合も薬が飲めなくなることで再発しました。薬が合っていなかったのでしょか。

先生  そこのところは微妙です。なかなかご本人にぴったり合った薬を見つけ出すのは困難なことである程度のところで妥協していただくことも必要です。

はい、皆さんの発表をお聞きしていて、よく観察していらっしゃるなと感じました。

警告サインの見つけてからどうするか

さて、皆さんある程度の警告サインを見つけることはできました。問題は見つけてからどうするかということが目的です。その前にテキストにテツオさんの例がでています。テツオさんは入院する2週間くらい前から不眠とか、集中力欠如、他人との会話がおっくうだ、といった状況でした。

これをもう少し詳しくみてみると、テツオさんのサインは次のようなものでした。

テツオさんの警告サイン

1 睡眠が2時間以上減ることが3日間続く

2 読書が5分以上できなくなる

3 部屋に4時間以上閉じこもることが3日間続く

とありますが、どれも具体的に数値を使って述べられています。1番は一般的に言って「不眠」ですね。これまでの安定していた生活から1日2時間の睡眠が減るということは、つまり寝付きが悪くなったということです。

2番は5分も落ち着いた状態にいられない、つまり一つのことに集中できないということだといえます。それが3日間以上続くようだったら、とか新聞が全ページに目が通せないようだったらというような具体的な数値で集中力欠如の判断をしています。

3番の部屋に4時間以上閉じこもっているというのは、要するに食事のとき以外は家族と顔を会わせないという状況を数値で表しています。

例えばご本人がお薬を飲まなくなったら病院へ行って先生と相談しようといっても、そうなってしまってからではご本人は病院へ行くのをいやがってしまうということがあります。あるいは薬を飲むのもいやがるとかですね、そういうことは良くありますよね。悪くなってしまうとそれまで素直に薬飲んでいた本人が、飲まなくなってしまいます。周りの人はまだ大丈夫、まだ大丈夫と日一日と過ぎて、1週間、2週間経って、気がついてみると再発になってしまったケースが多々あります。ですから警告サインの対策はご本人の具合がいいときに行います。

ですから、こうした時には厳密に時間とか日数とかを決めて、それが現実に現れたら第3者の介入を得る、という大事になると思います。第3者とは主治医のほかに地域の保健師さんだとか看護師さん、ワーカーさんなどですね。

これは各ご家庭で第3者の介入が当てになる方ばかりではないと思いますが、是非こうしたサインを早期に見つけて、こうした状況を外れてしまったら対策を取ってほしいとものです。

そして対策に従って行動を起こすということはご家族も躊躇しないで決めておくということが大事だと思います。そんな時、本人の顔をみていたりとか、自分の忙しさを考えてしまうと、つい先延ばしになりがちです。これはどちらのお家でもそうですが、きょうのテーマはそれをしないためにこうした対策を取ろうということですから、ぜひ皆さんも実行していただきたいと思います。

それから、第3者の介入で思い出しましたが、私が関係している港区では訪問看護ステーションで精神科の分野も積極的に行っているところを見つけました。恐らく新宿区でも行っていると思いますので、利用を検討されたらいかがでしょう。

では、早期警告サインが見つかったらという問題に入っていきます。

このテキストに書いてある「私は・」というのはご本人を想定しており実際そうあって欲しいものです。

従って、早期サインの対策はご本人がどうにかできるもので決めておかないと、例えば、ご本人が病状を悪化させてしまって、家族任せになってしまってはこれは早期ではないです。

実際にはいろいろ段階がありますが、まず・・・

1)私の担当スタッフ、もしくは主治医にすぐ連絡する

2)処方されている通りに薬を飲んでいることを再確認する

4)過度にストレスを感じる原因があったかを確認する

5)日常生活で常に感じているストレスがないかどうか確認する

5番は具体的には先の心配で、デイケアなどで来週遠足があって、それが気になるとか、お父さんが会社の問題で家庭の中でも不機嫌だとか、そうした日常生活の中でのストレスを検討してみることです。

ですから、眠れなくなったといった時、頓服のお薬を飲むと、これは対処方法の一つとしてよろしいのですが、しかし、考えてみると同じ状態でずっと具合が良くて、お薬も飲んでいた、ストレスもこなしていたという方が急に眠れなくなったとしたら、これには必ずどこかに原因があるはずです。私たちでもそうですね。何か心配事があるとか、外で人との会話で一言胸につかえているものがあるとか、いろいろなことがあります。

それを解消しないで、お薬飲んで、例えば強い薬を飲めば寝られることは当然ですが、しかし、翌日朝起きたときにその気持ちは残っていて、実はストレス解消には全然なっていなかったということがあります。

ですから、まず、こうした場合ストレスを解消しておくということが大事です。それで例えば眠れなくなるほどのストレスというのは、皆さんような健康な方でしたら、いつの間にか忙しさの中で忘れて解消してしまうことができます。

ところが、患者さんはこうした解消ができないから病気であるとも言えます。心の病気と言うのは自分一人で、わだかまった問題を順序よく整理して解決していくことが苦手なのです。ある種不器用な方に限って、ストレスを溜め込んで症状を表してしまっているわけですから、例えば眠れない人でしたら、一緒に話し合ってあげたりとか、気持ちの上で共感してあげることが、抱えているストレスを解消することに繋がります。これでお薬を使わずに眠れればいい結果となるわけですから、こうしたことを実現させるために普段から心掛けていることが題字です。

それも始めて起こってくるような症状だと、その場でいい考えが湧きませんが、何回目かの調子を崩すひとが、いつも悪くなるときは眠れなくなる、あるいは独り言をいうようになる、というような警告サインを表すわけですから、それらの原因をよく話し合いをして、解消を図っていくことを目指していくということが、望まれます。

皆さんがお薬を減らしたいと考えますが、それには長期間に渡って安定していることが条件になってきます。そうしたとき、手間ひま惜しまず、小さなところから地道にみていくということが大事です。

テキストには、このあと早期警告サインについてのワークシートがついていますので、皆さんはご家庭でご本人と一緒に記入し、手近な場所に貼っておくことをお勧めします。そして何枚かコピーして定期的に書き換えることが大切です。

では、これでテーマについてのお話は終わります。

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捕足 訪問看護ステーションについて

先生 港区には約10ケ所ほど民間の訪問看護ステーションがあります。この施設の役目は主に看護士が患者さんのお宅に伺って、例えば在宅酸素療法をやっている方とか、点滴を行っている方に身体医療的なケアをするということです。

これは主治医のオーダーで看護士が訪問看護として出かけていくというものです。しかし、これまで精神科での関りは少ないというのが現状でした。

海外では認知行動療法とか、家族の方のサポートとかを訪問した上で行っています。

しかし、日本ではまだ現状では根付いていないという状況です。それが港区ではたまたま1ケ所のセンターが、身体疾患に対して活動して看護士さんが、精神の分野でも活動の幅を広げていることです。その内容はお薬の服用の確認などから徐々に拡大されていくことが予想されます。

1日3回単身者の方に訪問して薬の服用の確認をするような作業です。こうした施設が今後増えていけば、家族の中に第3者の意見を呼び込むことができますし、患者さんへのアドバイスや、家族より説得力があるという点で有効な面が生かされると思います。

このシステムを利用するには主治医の処方が必要となります。その利用基準については地区によって異なると思いますが、皆さんもお住まいの地区の中にそうしたセンターがあるかどうかを探し、直接詳しいことをお聞きするといいでしょう。

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質問コーナー

質問1 精神科において、現在診察を受けている病院ではなく、別な病院に電話での診療の相談を受けたいと思うのですが、可能でしょうか?

先生 つまり、それはセカンドオピニオンを求めるということでしょうが、私たちの活動(みなとネットワーク)の中で試みたことがありますが、1時間、患者さんと対面しただけでの意見というは無理であることがわかりました。例えば顕微鏡写真とか、データについての意見を求められればそれは可能だと思いますが、精神科の場合、人物を対象にしており、そのような短い時間で判断することは危険であることがわかったのです。従って、電話での相談でセカンドオピニオンは増して困難と言えます。ま、そうした中で一般論との比較でのお話はできます。

質問2 それと関連して、転院の際、それまでの主治医の紹介状がないと次の病院では受け入れてもらえないのでしょうか?

先生 受け入れないということはありませんが、紹介状はあったほうが、次の治療ステップに進む上で必要です。最近のお医者さんは転院希望に対してはそれほどこだわりはないと思いますから、それは相談されたほうがいいと思います。

質問3 質問ではなく、ご報告として、そして皆さんにご参考までに申し上げます。息子は退院しまして、当初4週間分の薬を3週間で飲んでしまいました。そこできょうのテキスト「精神科リハビリテーション・ワークブック」の126ページにあります「週間行動記録表」をつけるように息子に言いました。そしたら几帳面な息子は薬を飲んだ時間まできちんと書いて、以後、薬の誤飲はなくなり、めきめき回復してきまして、この表を主治医に見せましたら主治医も感心してくれました。いまでは独りで通院できるようになり、このテキストを書いてくれた水野先生に感謝とご報告と思って参りました。

先生 ありがとうございます。よかったですね。

質問4 私は最近ヒアリングヴォイシスの会で講演を聞くチャンスがあって参加してきました。幻聴は誰にでもあり、それが快い言葉か、いやな言葉が聞こえるかで病的なものとなったりするそうですが、これについてもう少し詳しく知りたいと思います。

先生 声が聞こえるのは精神疾患の方だけなく、健康な方でも熱がでたりした場合には聞こえることがあります。オランダのテレビ局が大規模アンケートをとったらかなりの割合で聞こえるという方がいたそうです。それがきっかけで幻聴を受け入れようという運動が始まりました。日本でも岡山にその会があり、幻聴体験を患者さんと健常者とで共有していこうという運動をしているグループがあります。それを病気の面からみると、声が聞こえているということが症状ではなくて、声が聞こえていることさえ取り除けばいい、というものでもないわけです。また、声が聞こえることを受け入れることは大切なことですが、だからといって聞こえることを大事にしていこうというのもいかがなものかと思います。やはり、症状である部分もあるわけで、その症状と対処方法は重要なことなので、慎重に関っていくことが大事です。

きょうのテキストでも以前「持続する幻聴への対処法」として学びましたが、多くの患者さんが幻聴によって困るとそれに対してなんとか対処しようとします。これをコーピングといいますが、これを上手に行うには「聞こえる」とはどういうことかを理論的に知ることも必要ということと、周囲の人も共有すべきとして理論的に書かれた本が、先程どなたかが発表された「正体不明の声」という原田先生が書かれた本です。

質問5 最近、漢方療法、通電療法がこの病気に効果がなくもない、という声を聞きますが、先生はどのようにお考えですか?

先生 私は漢方についてほとんどタッチしたことがありませんので、これについてはお答えできません。通電についてはある時期においては効果があると言えます。つまり、お薬は口から飲んで胃で溶けて吸収されて、血液で運ばれて効きめを現しますから、早くても30分かかります。本当の効果はそれから1週間から2週間かかります。それに対して電気は目の前で効果が現れます。これは目の前で自殺しようとしている患者さん、こういうケースは精神科の現場ではいくらでもあります。そのときにご本人を保護するには即効果が現われることが必要なわけですから、そのような場合電気ということになります。それから電気は安全ということが言えます。静脈注射での緊急の鎮静治療を行いますと心臓や肺に非常に負担がかります。時には心肺停止といったこともおきます。電気の場合はありません。但し、骨折とかの副作用が出る場合もありますが。命への影響は非常に少ないと言えます。

(紙面の都合で終わります)


勉強会講演記録CDの2枚目が完成しました。
フレンズ編集室では講師の先生方の講演記録を生の声で聞いていただこうと、CD制作を行っていきます。
まず第1弾として、9月勉強会で講演していだいた曽根晴雄さんです。
タイトル『ちょっと私の話を聞いてください』  
 =聞けば見えてくる・精神分裂病当事者が語る患者の本音=

 家族は患者本人の気持ちを知っているようで理解できていません。二十数年間この病気と戦って来た曽根さんが、自らの体験をもとに訴える精神病者の苦悩、怒り、病気のこと、希望、それはすべての精神の病いに侵された人たちの声を代弁しています。
 また、当事者仲間の先輩として語る内容は、回復しつつある皆さんのお子さんが聞いても大いに励まされます。
 そして誰よりも聞いてもらいたいのは、分裂病を全く知らない人たちです。”もしあなたのお子さんが病気になったら”という目的の他に、各地で取りざたされる障害者の事件の度に生まれる誤解や偏見を防ぐためにです。一般の方に呼びかけてください。

第2弾は
「心の病を克服 そして ホームヘルプ事業へ」 
大石洋一さんです。
収録分数;61分 CDラジカセ、パソコン、カーステレオ等で聞けます。
価格;各¥1,200(送料共、2枚同時申込の場合2,270円)
   申し込みはフレンズ事務局へ E-mailでお申し込みください。frenz@big.or.jp
発売:平成14年1月
企画・制作 新宿家族会フレンズ編集室
(新宿家族会創立30周年記念事業)室
(新宿家族会創立30周年記念事業)

編集後記 

 今年も早3週間が過ぎ、あと49週で来年である。小生、徒歩健康法を兼ね、自宅から歩いて2度も明治神宮に初詣に出かけた。きっとダイエットの願いが叶うと思う。
 そんな中で、ちょっと記憶に残ることとして、1月3日の新聞に宝島社が出した全面広告がある。
 「呼び名を変えれば、日本も変わる(かも)」というタイトル。
 「名は体をあらわす」とはよく言ったもの。今までの呼び名を変えたら、中身もそれにつられて古い何かが変わり始めるかもしれません。難しい構造改革の道は、まず「呼称改革」から。さあ、貴方なら、何の呼び名をどう変えますか?」
 という説明が付け加えられていた。その例題として、消費する→景気貢献する。 公的資金→失策穴埋め金。官僚→公僕員。そして、私の目を引いたのは、ひきこもり→天才予備軍、である。
 ひきこもりイコール・スキゾフレニアではないが、無関係ではないだろう。世の人たちがこのような感覚で精神障害を見てくれたら、我々の世界も大きく広がるだろうと。そして、こうした広告が出てくる時代になったのかと、僅かだが、希望がもてた。
 今年の正月は北朝鮮の問題を除いて、まずまずの滑り出しだ。

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