3月 新宿区後援事業 新宿フレンズ講演会

  障害年金の仕組みと申請の仕方

 
                講師 社会保険労務士 中浦 正樹先生

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【分かりにくい障害年金】

 年金は分かりづらいといわれますが、障害年金はその中でも特に分かりにくいものです。つまり、老齢年金は、一定の年齢になればもらえますし、年金の種類や加入期間、納入した金額等で幾らになるかがはっきり決まっています。

 ところが障害年金は、たとえ障害の状態になっても、障害の程度や、障害の診断を受けた時に保険料を納めていたかなど、いろんな要件がたくさんあります。個々人の状態によるので、最終的には個別に判断するしかないのです。

 今日は、今の年金制度はどういうシステムになっているのか、障害年金にはどんな種類があって、どういう要件を満たせば受けられのるかという、基礎の部分をお話しします。

【憲法で保障された権利】

 憲法25条2項は生存権で、「国は、全ての生活部面について、社会福祉、社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めなければならない」と定められています。そして1項には「全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。

 私たちが加入している社会保険には、国民年金、厚生年金、健康保険、雇用保険等々があります。また社会保険とは別に、社会福祉の関連法、生活保護法、児童福祉法といった法律もあります。これらは全て、憲法25条2項で定められている生存権に基づいて法制化されているのです。

 障害年金を受けることを引け目に感じる必要はありませんし、全ての障害者は年金に頼らなければならないわけでもありません。要件を満たしていれば、年金を受ける受けないは皆さんの心ひとつ、皆さんに選ぶ権利があります。

【2階建ての1階部分は全員加入】

 年金には国民年金、厚生年金、共済年金などがあり、旧年金はそれぞれ別の制度で運営されていました。新年金では20〜60歳の人は皆、1階部分である基礎年金=国民年金に加入することになっています。

 民間の会社に勤めている会社員は厚生年金と同時に国民年金にも入っており、公務員は共済年金と国民年金というように、いわゆるサラリーマンは二階建ての加入になっているので、年金を貰うときも二階建ての両方から貰えます。

 自営業者、農業・漁業従事者は国民年金だけ、つまり一階部分の加入のみなので、貰うのも一階部分だけです。

【障害年金の種類】

障害基礎年金

 基礎年金=国民年金と覚えて下さい。一階部分です。国民年金の障害基礎年金には1級と2級があります。1級は比較的重い障害、2級はそれよりも軽いとされています。

 障害基礎年金は、国民年金の被保険者期間中(加入中ということ)、または被保険者の資格を失ったあとの60歳以上65歳未満で、日本在住で、初診日のある傷病によって、初診日から1年6ヵ月経った日あるいは1年6ヵ月たたない間に治った日(ともに障害認定日という)に、1級または2級の障害の状態にある場合は、障害基礎年金が支給されます。この「治った日」というのは、病気やケガが完治して障害が残った場合、また、症状が固定し治療効果が期待できなくなった場合が「治った」ものとみなされます。

 初診日が20歳以上で、初診日前に国民年金保険料を納めなければならない期間がある場合は、一定の保険料納付要件を満たしていなければなりません。

障害厚生年金

 厚生年金の被保険者期間中に初診日のある傷病によって、障害認定日に1級または2級の障害の状態にある場合は、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。3級の障害の状態にある場合は、厚生年金保険独自の障害厚生年金(3級)が支給されます。

 また、厚生年金の被保険者期間中に初診日のある傷病が5年以内に治り、3級よりやや軽い障害が残ったときは、厚生年金保険独自の障害手当金(一時金)が支給されます。国民年金よりも厚生年金のほうが給付の範囲が広くなっています。いずれの場合も障害基礎年金と同じ、一定の保険料納付要件を満たしていなければなりません。

【障害年金の用語】

年金制度を理解するには、いくつかのキーワードを正しく理解する必要があります。

(1)初診日
 障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診察を受けた日を初診日といいます。また、初診日に加入している年金制度から障害年金を支給する制度を初診日主義といいます。例えば、サラリーマンのときに初診日があれば、国民年金と同時に厚生年金にも入っているので二階建ての年金を受けられます。初診日に加入している所から障害年金を受けるということです。

(2) 障害認定日
 障害を定めるべき日のことで、原則として初診日から1年6ヵ月を経過した日、あるいはその期間内に治った日を障害認定日といいます。

「治った」とは、体の器質的な欠損、変形または後遺症があっても、医学的に傷病が治癒したと認められる場合をいいます。つまり症状が固定し、それ以上の回復の見込みがなくなったときをいいます。例えば、手足の切断は、原則として切断をした日、人工骨頭・人工関節・は挿入置換した日が障害認定日となります。

(3) 保険料納付要件 
 1)原則 初診日前に国民年金の保険料を納付しなければならない期間があるときは、保険料納付済期間と保険料免除期間(学生納付特例および若年者納付猶予期間を含む)が、初診日の属する月の前々月までの保険料を納付しなければならない期間の3分の2以上あること。つまり保険料を滞納した期間が3分の1を超えないことで、全部納めていないともらえないのではありません。

 2)特例 初診日が平成28年4月1日前の場合は、1年間に保険料の滞納がないこと。これは平成8年にできた法律です。平成18年に見直して、10年延長されました。

(4) 障害等級 
 1級・・・身体機能の障害や病状により、他人の介護がなければほとんど日常生活ができない程度のもの。 

 2級・・・必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活はきわめて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの。

 3級・・・労働が著しい制限を受けるか、労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。厚生年金ですから働くことに支障が出て、収入が下がった所を補填するという考え方で、これがサラリーマン年金の特徴です。働いていても障害厚生年金は受けることができます。

【障害年金を請求するには】

(1) 認定日請求の年金(一般的な請求)
 初診日から1年6ヵ月たったところが認定日です。そこで障害の状態に該当すれば、障害年金を請求することによって認定日の翌月から支給されます。最もオーソドックスな貰い方です。

(2) 認定日請求の遡及年金
 障害認定日時点には何らかの理由で請求せずに、1年以上経過してから、認定日に遡って請求することを言います。この場合は、認定日以後3ヵ月以内の診断書と、請求時点の診断書が必要です。なお、年金は5年前の分までは、遡って支給されます。

(3) 事後重症の年金
 初診日から1年6ヵ月経った障害認定日に障害の状態に該当しないこともあります。若いうちに発症したけれども仕事ができたりして障害等級には該当しなかったが、だんだん悪化してきて該当するようになったケースなどです。

 認定日に該当しないから障害年金が一生もらえないことはありません。以前に請求した時は却下されても、その後悪化したら請求して下さい。事後重症の年金は請求した翌月から支給されます。請求して初めて年金がもらえるので、該当しているのに請求しないと不利益をこうむることになりますので気をつけて下さい。

 障害年金を請求できるのは、65歳になる前日までです。65歳になると老齢年金になるためです。

 20歳前に初診日がある場合(無拠出の年金)

 初診日から1年6ヵ月経った時点の認定日が20歳前か後かで、年金の支給開始時期が異なります。

 20歳前に認定日が来た場合、20歳になった時点で障害認定をします。20歳後が認定日の場合、該当していれば翌月から支給されます。ただし、ここで障害認定されなくても、後に悪化したのであれば事後重症ということで年金を請求できます。

【障害年金の額はいくら?】

障害基礎年金
 国民年金の保険料は一律です。ですから、もらえる額も定額という考え方です。障害基礎年金は、1・2級共に定額です。
 2級の792,100円は老齢基礎年金の満額と同じです。国民年金は20歳から60歳まで40年かけるとこの金額がもらえます。1級の方は障害が重いので2級の1.25倍です。

 それから、子がいる場合には子の加算があります。年金法上の子どもというのは、18歳になった最初の3月31日までの子、すなわち一般的には高校卒業までに限られます。
 ただし障害等級の1級・2級に該当する子の場合は、20歳未満であれば年金法上の子になります。年金法上の子といえば、この2つだけです。

(1) 障害厚生年金

1)厚生年金の保険料は給料によって違います。ですから障害厚生年金の額は報酬比例の年金額です。報酬比例というのは、障害認定日の月までの給料の平均で計算します。加入した月が300月(25年)ないときは300月分で計算されます。所得保障の意味も含まれています。

2)1級、2級の障害の状態にある人は、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。また、配偶者がある場合は配偶者加算がつきます。

3)3級については、障害基礎年金は支給されず報酬比例だけの額になります。

【年金請求のポイント】

 請求する前に、障害年金に詳しい人に話を聞くとよいでしょう。精神科の相談窓口や、地域生活支援センター、家族会にも詳しい人がいるでしょう。障害年金の場合は、社会保険事務所の窓口だけでは分かりにくいことがあるからです。

(1)請求窓口・・・初診日に加入していた制度により原則として次の通りです。

(2)初診日の確認・・・障害年金は初診日主義、初診日の特定が障害年金請求手続きの出発点です。

(3)障害の状態を確認・・・障害認定基準に該当しているかどうかを主治医に確認してもらいます。病院のワーカーやドクターは基本的な認定基準を理解しているはずです。

(4)年金加入歴の調査と請求書類の入手・・・事前に請求窓口に出向き、年金加入歴を調べ、初診日の加入制度や保険料納付要件をチェックするとともに申請書類を入手します。裁定請求書に添付する診断書は〈年金請求用の書類〉が用意されています。なおその際には、どの時点の診断書が必要か確認することも重要です。また、年金手帳を持参して下さい。本人以外の人が調べる場合は委任状が必要になります。

【特別障害給付金とは】

<対象者>

1)昭和61年3月以前に国民年金に任意加入していなかった、厚生年金保険や共済組合に加入していた人の配偶者であった人。

2)平成3年3月以前に国民年金に任意加入していなかった学生であった人。

3)上記1)2)に該当する人で、その当時の病気や怪我などが原因で、現在一定の障害にある人が対象です。

この制度は任意加入だった時代に加入していなかった人を救うための措置です。

<支給額 平成20年度>

障害基礎年金1級に相当する人・・・月額50,000円(平成21年度は月額50,700円)

2級に相当する人・・・月額40,000円(平成21年度は月額40,560円)

請求手続きは住所地の市区町村の国民年金窓口で行います。なお、審査・認定・支給に関する事務は、社会保険事務局が行います。

【おわりに】

 障害者にとっても、少しでも住みやすい世の中になってほしいと思います。これは私の考えですが、そもそも障害年金を老後の年金の範疇に入れているというのはいかがなものかと思います。遺族年金や障害年金は別のセーフティーネットを用意するのがいいと考えています。

 そうした意味で、今の制度がいいのかどうかは、制度を知らないと判断ができません。だから社会保障制度のことを、皆さんもぜひ関心を持って知っていただきたいと思います。

 社会保険労務士を縮めて「社労士」と言いますが、私は社会を明るくする「社朗士」でありたいと思っています。

 また、私は自らを社会保険の「伝道士」と呼んでいます。法律は知らないと損をすることがたくさんあります。一般の人たちがそのようなことのないよう、社会保険などの知識を少しでも多くの方々に伝えたいと願っています。

 今起きている年金の問題は、制度の不備や、社会保険庁や政治家のせいもあるでしょう。でも国民も年金をはじめとした社会保障制度に関心を持たないで来てしまったことも、要因のひとつではないかと思います。自分が払った保険料や税金が、本当に自分たちのために使われているのかどうかをチェックしないといけません。

 本当に国民のためになる社会保障制度をつくるためにも、これからは国民も知識を持たなければならないし、知識の普及のために私たち社会保険労務士は頑張っていますので、年金について分からないこと、困ったことがあったら、遠慮なく相談してください。

 本日はありがとうございました。
                                                     

平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
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新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

 さくらが散り、若葉が小さな頭を見せてきた。その青さが何ともまぶしい。

 今月の講演は難しい「年金」がテーマであった。中浦先生も冒頭「わかりにくい障害年金」という言葉で始められた。本来なら簡単なはずの年金問題が何故難しくなるのか。一つに年金の受給に当たっては様々な条件があり、一人ひとりがその条件の詳しい内容を知らないことであろう。さらに、その表現においても前近代的な名称をいまだに使って、余計に難しくしている。

 その一つが「無拠出年金」。これは二十歳前に障害を負った人を救おうという考えで、保険料を払わなくても貰える年金。これも簡単に「二十歳前皆年金」とした方がわかりがいい。だが、それ以上に問題なのが、この制度を知らずに皆、二十歳の誕生日を素通りしてしまうことである。

 「二十歳を過ぎたら皆年金保険」がどれくらい若者たちに浸透しているのか。子供から大人に変わる二十歳。彼ら自ら保険料を払おうという意識がどれだけあるだろうか。

 そして、発症する。二十一歳。「あなたは保険料未納者、ゆえに障害年金は出ません」。これが今の日本の年金事情だ。

 医療においても同様。思春期の血気盛んな年頃。だが、その年代が最も精神の病の高発症期である。そして、誰もが言う「あの時、少しでも病気の知識があれば」。年金も同様である。「あの時、保険料を払っておけばよかった」と。最近のバカ騒ぎの成人式を見て思う。子供から大人に変わる大きな違いは何なのかを最後の教えとして伝えるべきではないか。ここでもまた教育の貧困を感じる。                               

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