新宿区後援・新宿フレンズ2月講演会

   上手な精神科受診の仕方

   講師 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室  新村秀人先生 

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冒頭より、早くも質問票が提出されていました。
    以下、新村先生のコメントです。

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 早速、質問が寄せられています。「いい病院とは?」「受診を拒否している」「診断名が医師で違う」「本人に病名を伝えるか?」「主治医を変えたい」など。今日はこれらについて話します。

【精神科医のいる医療機関とは】

 精神科、神経科、心療内科、心療科、メンタルヘルス科など様々な名称の科があります。

 精神科・神経科:基本的には、精神科医が診療するのは、この2つの科です。

 心療内科:本来は内科で、精神的要因で体に症状が出ている身体疾患(喘息や胃潰瘍などの心身症)が専門です。しかし、精神科の看板をかかげると敷居が高いので心療内科とし、軽い鬱病などを診ている場合もあり、混乱の原因です。中には統合失調症の診察に慣れていない場合があります。

 神経内科:精神疾患は扱いません。脳の器質性疾患、つまり脳出血や脳梗塞、パーキンソン病などを専門とし、精神科とはまったく違う診療科です。

【「いい病院」とは?】

 名医がいる、新しい施設、評判の治療法、治療成績がいい等が思い浮かぶでしょう。しかし、既に多くの患者さんが通院中で、じっくり診察してもらえないこともあります。その患者さんにとって「いい病院」はケースバイケースで変わってくるので、一口には言えませんが、以下のようなことが大切でしょう。

受診し易い:長いつきあいになる病気なので、自宅から通える距離にあり、通院し易いこと。

適切な医療が受けられる:病気の状態に応じて選ぶこと。緊急入院を希望する場合は、今ベッドが空いている病院になります。入院が必要になりそうな場合には、入院施設のある病院を選びます。身体疾患の治療も必要な場合は、総合病院や大学病院を。症状が軽く、通学や仕事を続けながら治療するには、クリニックがよいでしょう。

信頼できる:安心して任せられると思える医療機関は「いい病院」の条件の一つでしょう。

 しかし、最初はどの病院に行けばよいのか分かりません。精神科医療の噂や口コミなどの情報は少なく、偏っているおそれもあります。よくわからなかったら、保健所や精神保健福祉センターの窓口で、精神担当の保健師、精神保健福祉士(PSW)など専門家に相談する方法もあります。また、患者会の全国組織「全国精神障害者団体連合会(全精連)」、「地域精神保健福祉機構(コンボ)」、「全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)」などの精神科関連の団体や地域の家族会などに問い合わせて、地域の医療機関の情報を得るのもよいでしょう。

【本人が病院に行きたがらない時は?】

 統合失調症は、自分が病気だという自覚(病識)がない場合が多く、発症直後の幻覚妄想が激しい時期は、受診を拒否することもしばしばです。しかし、家族が「精神科の病院に連れて行けば何とかなるだろう」と考えて本人に何も説明せず、あるいは騙して連れて行くと、本人が病院や家族に不信感を抱き、その後の治療が円滑に進まない結果になることも起きます。

 本人の不安を掻き立てないようにし、安全に気を配り、受診の必要性について一貫した態度をとってください。本人の治療意欲がないと、よい回復は望めません。治療開始の際には、家族の力がある程度強く働いたとしても、症状が落ち着くまでの間に、本人が治療に前向きになれるようにしたいものです。

 家族は焦りや苛立ちから「黙って言うことを聞きなさい」「いつまでも家族を手こずらせるんだ」などと言いがちですが、言い争いは逆効果で感情的な亀裂が生じ、ますます家族の言葉に耳を貸さず、「俺のどこが病気なんだ!」と怒り出し、暴力を振るうなど意固地になってしまいます。一方、逃げ腰や、腫れ物に触るような対応は、かえって本人の不安を強めます。

【初めての診察】

 初めての精神科受診は、本人も家族も緊張するものですし、医療者側も正しい評価をしようと緊張感をもって臨みます。初診の時に医師は、今どのようなことが起こっているのかの情報を得て、当座の診立てをします。初診ですぐに病名診断は出来ないのが普通で、大枠を話して、とりあえず「今辛い症状に効果のある薬を飲みましょう」というような話になります。

 本人と家族が一緒に受診しても、「今までの経緯を本人とは別のところで話したい」という家族が多いのですが、別々に話すと、本人は何を話しているのか不安になります。

 幻覚や妄想が活発な患者さんでも、自分に関する説明はよく覚えているものです。きちんと療養すれば回復可能であるとの説明を聞き、安心感を持ってもらえると、後の治療が円滑に進みます。

【精神科の診断】

 脳の疾患といっても、脳腫瘍や脳内出血ならばCTスキャンなどの機器を用いて病巣を確認できますが、うつ病や統合失調症は残念ながら、脳波、CTスキャン、血液検査だけでは診断できません。

精神科でもCTや血液の検査はしますが、それは精神疾患以外の病気である可能性を否定するために行います。例えば、血液中のナトリウムが非常に高い、感染症による脳炎といった体の異常でも統合失調症と似たような状態となることがあります。体の病気が精神症状に現れている場合は、まず身体疾患の治療をしなければなりません。

精神疾患は、患者の話す言葉の内容、態度、ふるまいなどを総合的に判断して診断します。診断基準は、世界保健機構(WHO) のICD-10とアメリカ精神医学会(APA) のDSM-?-TRがあり、この両者は多くの共通点を持ちます。

 診察では、幻覚妄想、興奮、陰性症状などの期間が1か月以上続いていないか、違法薬物やアルコールの影響はないか。考えが伝わるとか、他人と自分とむやみに関連付けていないか、体の感覚が変でないか、噂する幻聴がないか、自分が皇族とか有名タレントとか超人的な力を持つなどと思い込んだりしていないか、考えが止まったり、まとまりのない思考がないか、同じ姿勢で動けない、引きこもりがないか等々を診ます。(なお、引きこもりだからといって統合失調症とは言えません。引きこもりにも、いろんな診断がつく可能性があり、自閉症などの発達障害、知的障害、統合失調症などが考えられます。もちろん、病気の診断がつかない人もいます。)

【診察時に聞かれること】

 医師から診察の時に聞かれることは以下のようなことです

既往歴:これまでどんな病気にかかったか。長く継続して服用した薬、大きな怪我、手術、入院の有無。

生活暦:家族構成、生まれた場所、養育者、どこで育ったか、転居の経験、乳幼児期・保育園や幼稚園・小中学校・高校で特記すべきこと(学校での様子、友達、学校の成績、挫折の経験など)。成人の場合は、職業歴(最初の職場、勤務年数、転職回数)、婚姻歴や離婚歴、子どもの数、喫煙・飲酒の有無。

家族歴:家族の病気(特に精神科関係)、自殺者の有無など。

現病歴:何に困っているのか、現在の症状が始まった時期、最初の症状や問題行動がどのように起きて、それが、いつ、どう変わったか。これまでに相談した機関。治療を受けたか。治療内容とその結果どう変わったか。

 初診時には、本人は病気のために余裕がないし、家族も緊張しているので、要領よく答えるのは難しいかもしれません。医師は診断のために多くの情報が欲しいのですが、初診時に全部聞けるとは限りません。充分に時間をとれない場合もあるので、医師が必要とする情報を少しでも得ることができるように、家族が上記のことを箇条書きでメモに書いてくれると助かります。また、お薬手帳や薬局でもらう説明書をとっておくと、服用した薬の名前や量が分かり便利です。

 診察の後、医師から説明されるのは、症状と考えられる診断名、休息の重要性、定期的な服薬で回復可能なこと、薬は数週間かけてゆっくり効いてくること、薬の副作用、今後予想される経過、日々の生活で注意することなどです。初診時にこれらの説明をすべて行うのは難しいので、必要な説明を先に行い、病状が落ち着くにつれて徐々に説明を追加していくのが一般的です。

【病名を本人に告げるか】

 病気に関する情報提供を行う場合、病名告知の問題を避けては通れません。本人が病気を充分理解して、治療を納得して受ける必要があるからです。インフォームド・コンセント(医師の説明を受け納得した上での同意)という考え方からも、病名の告知は重要です。

 しかし病識が全くなく、幻覚や妄想が強く、本人が混乱している時期には、きちんと理解できませんし、病気の説明が症状を強めるおそれもあります。また、中途半端にただ病名だけを告げると、本人にとってつらい体験となる可能性もあります。病名告知は、本人が受け入れられる状態かどうか、家族の意見も聞いた上で、時期を選び、本人の気持ちを配慮しつつ、病気への対処法や治療の有効性についての情報提供を行うなどの慎重な配慮が必要です。

【通院か入院か】

 現在、統合失調症の治療は、通院治療が基本です。継続的な治療を要する精神疾患の場合、外来で治療を受けながら、本人の日常生活を維持できるようにするのが望ましいと思います。

 集中的な治療が必要な場合、入院治療は外来より早く症状が落ち着くと考えられます。しかし、一概に外来より入院の方がよいとは限りません。入院に対する抵抗感が非常に強い場合は、一時的に症状が悪化することもあります。入院し症状が落ち着くのには、おおむね3か月くらいはかかります。入院があまりに長期に及ぶと自宅での生活のブランクができてしまい、本人の社会性や生活能力の低下など、さまざまな支障も出てきます。

 「通院か入院か」は、治療を続けながら主治医とよく話し合い、メリット・デメリットを考えて選択しましょう。

【外来診療では】

 外来では、主治医と本人との面談(問診)が中心です。通院を続けるうちに「本当にこの薬で効いているのか?」「これは副作用だろうか?」と疑問が出てきた場合は、そのままにしないで主治医に問いかけることが大切です。

 それには、聞きたいことに対する回答を得るだけでなく、安心を引き出すすなわち医師との気持ちよいコミュニケーションを成立させることが大事です。精神疾患があると、人とのコミュニケーションに繊細となりがちですが、素直な気持ちを主治医に伝えましょう。

 とは言え、診察時間は短いことが多いので、質問を箇条書きにして医師に見せると診察の時間が有効に利用できます。また、自分が言いたいことを伝えるのも大事ですが、主治医が聞きたいこと、病気の治療に大切なことは何かを知っていると、ポイントを押さえた話ができます。

外来で主治医が確認したいことは、

 症状:調子、気分、不安、心配、気になること。

 身体の健康状態:よく眠れているか、体がだるくないか、食欲があるか、便秘や下痢をしていないか。

 服薬状態:薬をスムーズに飲めているか、薬はどのくらい余っているか、副作用はないか。

 生活の様子:リラックスできているか、のんびり楽しめる時間や場所があるか、家族とはうまくいっているか。

 薬は余っていたらちゃんと伝えてください。そうでないと医師は飲んでいることを前提に考えて、効いてないからと増薬する可能性もあるからです。

【よい主治医とは】

 「精神科のいい先生は?」という問いに答えるのは、手術の治療成績などはないので判断は非常に難しいでしょう。患者の気持ちや思いをゆっくり傾聴して受けとめ、気持ちを和らげ、回復に熱意を持つ医師は良い医師といえます。しかし、そのような「よい」と評判の医師の元には多くの患者さんが詰めかけるので、1日に100人も来たら1人1人に丁寧な診察ができない場合もあるでしょう。

 また、ある人が「よい医師」と思っても、他の人が同じように感じるとは限りません。相性の問題もあり、例えば欠点も含めてズバッとストレートに指摘する医師が「いい」と思う患者さんがいる一方、このような指摘を批判と受けとり傷ついてしまう患者さんもいます。

 どちらにせよ、コミュニケーションをうまく取れる医師は、その患者にとっての「よい医師」です。

 「主治医が充分な説明をしない場合、薬の数や量がむやみに多い場合、「主治医を信頼できない」と本人が受診を拒否している場合などは、主治医を変えたいと思う場合もあると思います。ただし、本人が主治医を信頼しているのに、家族の考えで無理に転医させることは避けた方が良いでしょう。

 このようなことを考えた上で最終的に転医を決めた場合は、病院を変わりたい旨を率直に主治医に話して、紹介状を貰ってください。前の主治医に気兼ねして紹介状をもらわない場合、次に診察する医師にうまく情報が伝わらず、それまで続けてきた治療が中断するため、マイナス面が大きくなる可能性があります。

 よりよい治療を進めるためには、本人・主治医・家族が互いに歩み寄り、穏やかで良好な関係を築き上げられるといいと思います。

* 参考文献「家族のための統合失調症入門」(白石弘巳・河出書房新社・1600円)
                                    〜了〜

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
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新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

 いやー、今回の東北沖大地震には驚いた。当方も車での仕事の帰り道では神奈川県から7時間かかって、ようやく自社に辿り着いた。途中、通勤帰りで歩くサラリーマンたちのまさに民族大移動的行進の姿を見たとき、これがもし、東京近辺で起きたらどんなことになっただろうと、想像するとゾッとした。

 時時刻刻と伝わってくるニュースから、死者の数が増えるのを聞き、事の甚大さが伝わってきた。亡くなられた方には心からご冥福を祈りたい。

 さて、今月は新村先生から「上手な精神科受診の仕方」と題して、お話を伺った。その内容は一から十まで、精神科の全てを語っていただいたような気がする。中でも医療スタッフとの関係づくりまで及び、「良い関係を作っていくという発想が大切です」というのが特に大切であろうと思う。

 よく質問で「いい先生にめぐり会うにはどうすればいいでしょう」というのがある。私は息子の主治医として十名くらいの先生と行きあって来た。約一名を除いて、どの先生とも続けていっていいと思っている。

 新村先生のいう「良い関係」を作って行くためには、主治医だって同じ人間である訳だし、こちらの態度によって変化し得る。だとしたら、「良い関係」を作るべく、こちらも変化しなければならないのではないか。

 新村先生は最後に「今の主治医を自分にとっての「よい医師」に変えていくことが望ましいでしょう。」と述べている。その通りだと思う。主治医を変えて、自分に合った医師を探す時間よりも、自分を変えて、さらに主治医の気持ちを変えていった方が、はるかに時間も苦労も少ないことに気がつくべきであろう。                          

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