新宿区後援・10月新宿フレンズ講演会

 統合失調症の再発を防ぐ 入院と通院の判断

       慶應義塾大学医学部精神神経科学教室 新村秀人先生

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 いかにして再発を防ぐかは重要な問題で、皆さんも強い関心をお持ちと思います。また、治療の場は外来通院・入院いずれが良いのか迷う方も多いことでしょう。(この会場で)入院の経験がある方・ご家族の方はどのくらいいますか? およそ7割ほどですね。

【外来通院の適応・入院の適応】

 通院・入院は慎重に決める必要があります。通院の利点は、日常生活を維持しつつ治療を受けられること。入院の利点は、医師の観察のもと集中的に治療を受けられることです。

外来通院の適応 

・急性期であれ慢性期であれ、病気の症状が軽い

・医師の説明を理解できる

・本人が病気について理解している

・主治医を信頼し治療を進めていこうという信頼関係がある

・薬を自分で管理して規則正しく服用できる

このような場合は必ずしも入院は必要ではなく、外来治療で充分です。

入院の適応

・自殺の危険が高い

入院時は刃物やヒモ類など危険なものは預かる。入院病棟は設備も安全に配慮して設計されています。

・興奮がひどく、自傷他害(自分や他人を傷つける)の恐れがある

・幻覚妄想がひどく、家を飛び出す

行方がわからなくなる恐れもあります。

・外来受診や治療を拒む。薬を飲まない

・外来治療を続けたが、改善しない

・入院治療を要する身体合併症がある

過量服薬による意識障害や、飛び降りによる骨折も含む。

・食事をとらない、とれない

点滴など栄養管理の治療も必要です。

・家族とのトラブルや仕事の失敗などのストレスに対する休養

互いに距離をとって休む事ができます。

・生活リズムが非常に乱れている

昼夜逆転など、環境要因もあり、薬だけで治すのが難しい場合。

・適切なサポート体制(症状緩和や、自傷他害の防止)が得られない。

・入院治療に目標があり、それが入院によりある程度達成できると予測される(治療可能性がある)。

「とりあえず入院」というのは退院のゴールが見えなくなるのでお勧めできません。例えば「症状が落ち着いたら退院」、「これぐらいのことができれば退院」、減薬や変薬など、何か良い変化を目標にすることが大事です。

入院のメリット

・担当医が毎日あるいは週に1〜2回定期的に面接するので、診察の頻度が上がる

外来通院の頻度は、薬物効果の確認の必要性、不安の程度、通院の便を総合して決定しますが、1〜2週間に1回、または1か月に1回程度が多いでしょう。

・薬の調整をすばやく、きめ細かくできる

薬は何日か飲まないと効果が分からないが、入院では通院よりも早く薬の調整が出来ます。

・副作用が出たときに迅速に対応できる

・病状評価が詳しくできる

病棟でスタッフが毎日見ているので、どんな事が一日の中で起きているか把握できます。

・検査をまとめて受けられる

・点滴などの身体処置が可能である

・興奮や暴力への対応が可能である 

 閉鎖病棟や隔離室で対応できます。

入院のデメリット

・入院への抵抗感が強いときは、一時的に症状が悪化することがありうる

・急性期では、入院して症状が落ち着くまでに概ね3ヵ月から数ヵ月かかるが、入院が何年もの長期になった場合、社会生活能力の低下をきたす可能性がある

【精神保健福祉法に基づく入院の形態】

任意入院:入院は、できるだけ本人の同意に基づき行われる必要があります。任意入院の場合、本人が同意して書類にサインしないと入院はできません。

医療保護入院:医療と保護のために入院が必要であるのに、本人が入院に同意しないときには、保護者の同意により入院させることができます。保護者には、後見人、配偶者、親権を行う者、成人していて結婚していないときは扶養義務者がなることができます。

措置入院:自治体首長の命令により、2人以上の精神保健指定医の診察の結果、自傷他害の恐れのある者であって、医療・保護のために入院が必要との意見が一致した時には、都道府県の設置した病院もしくは指定病院に入院させる事ができます。

【精神神経科の医療機関のタイプと特徴】

通院・入院いずれにせよ病院を選択する時には、各医療機関の特徴を知ることが大切です。

・精神科病院

 かつては「病人を社会から隔離する」という色彩が濃く、閉鎖病棟しかない病院、新しい医療や設備を取り入れていない病院もありました。しかし現在では、「治療して社会復帰を目指す」という流れに変り、病棟の建物を工夫する、マンパワーを充実し社会復帰施設を作る、スタッフ教育に力を入れるなど、近代的な病院が増えました。

利点は、重症患者を治療できること、閉鎖病棟や隔離室を備え、看護師・作業療法士・PSWなどの専門スタッフが揃っていることです。

・総合病院

 内科・外科・脳外科など複数の科が併設されていますので、身体疾患を伴う場合、心身の疾患の治療を一つの医療機関で行うことができます。

しかし総合病院のうち精神科医がいる病院は半分以下で、精神科の入院設備を備えている総合病院はもっと少なく、あったとしても殆どが小規模でベッド数が少ないのです。

・大学病院

 教育・研究の機能を持つ総合病院で、そのため高度な検査技術や最先端の医療設備が整っています。

・クリニック

 外来中心で入院設備がないところがほとんどです。経営規模では、精神科医1人だけのところから、複数の医師・看護師・ケースワーカーなどスタッフが充実しているところまであります。診療内容も、診察だけのところもあれば、デイケア・訪問看護・往診をするところまでさまざまです。

【退院に向けての注意点】

・復帰を焦らせない:退院や職場・学校などへの復帰にむけて本人に焦らせない、また、周りも焦らないことが大切です。病院で良くなった状態と、自宅で問題なく過ごせる状態との間には、ワンステップの違いがあります。調子が良くなったばかりの状態で退院して、いきなり仕事・学校に復帰すると、ストレスが大きく悪化や再発の可能性があります。 

・家族付き添いで外出・外泊してみる:本人に自宅での生活を改めて体験してもらいます。家族は、本人の自宅での様子を見て安心を得るでしょうし、もし自宅で落ち着かない様子なら担当医に相談できます。

・治療薬の自己管理を練習する:退院後の服薬継続・再発予防のために、入院中から薬をたとえば1週間分を自分で保管し、決まった時間に規則正しく服薬する習慣を確立しておくと、自己管理に結びつきます。

・退院後の通院形態を相談しておく:退院前に担当医と退院後の通院について相談し、初めは週に1回受診、そのあとは2週に1回、1ヵ月に1回と延ばしていくか、デイケアに参加するかなどについて、あらかじめ本人と話し合っておきます。

・地域の社会資源を調べておく:家族は本人の入院中に、地元の保健所や役所等に相談して、自立支援医療の手続きや、生活支援センター・作業所・就労支援センター等、のちのち本人が通所できる施設の情報を得て、できれば見学をしておくと良いでしょう。

【再発の原因と理由】

 再発してしまうのは、本人または周囲の人の病気への理解が不足している場合が大きいでしょう。そのため服薬を勝手に止めてしまう。薬を飲まないと副作用もなくなるので、体が軽く感じられて快調と思ってしまいますが、1ヵ月以上経つと眠れないなどで悪化し始めることが多いのです。薬を止めた直後の「調子が良い」は、そのまま受け取らないことが大事です。

【病気の理解や自覚が再発予防に】

 よく「病識を持たせるには、どうしたらいいですか?」という質問を受けます。再発予防のために、治療者や家族があの手この手で病気であることの説明や説得を繰り返しますが、「病識」は本人自身が体得・習得していかなければならない側面もあります。

 病気に対して自覚し、病気を受け入れていく過程は、病気の勢いや病状、本人の立場や環境といった様々な要素が関係するため一人一人違います。「もう、あんな思いはこりごりだ。」とはじめから積極的に治療を受ける場合もあれば、何回もの再発を繰り返す中で、ようやく受け入れてゆく場合もあります。

病識がない場合

 病識がなく、自主的に服薬することが困難で、再発を繰り返すことがあります。こうした場合にはデポ剤(1ヵ月タイプと2週間タイプがあり、効果が持続する注射)が有効です。また、看護師や保健師の訪問を通じて治療継続を説得することもあります。しかし、デポ剤は外来に来なければできず、訪問看護も拒否されるとそれ以上の関係構築は困難になってしまいます。

【まとめ】

1再発予防

 病気の理解と自覚が大切。薬を継続して飲むこと。ストレスを避けて無理せず生活を整えること。これらが重要であり効果的です。

2入院か外来通院か

 入院の適応かどうか、そのときの状況において入院のメリットとデメリットは何かを考え、本人・家族・主治医で話し合いましょう。

3入院してできること

 きめ細かい検査・治療・ケア、身体管理、興奮暴力への対応ができます。何のための入院かを考えることが大切です。

*参考文献『家族のための統合失調症入門』(白石弘巳、河出書房新社、2005年)ほか
                                〜了〜

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
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新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

一気に冬が近づいて来たような感じがする。十月の頭は半袖で、末にはコートを着ている。時の流れを肌で知ったような十月であった。

 新村先生から非常にプリミティブなお話を伺った。特にこの病気を最近知ったという方には情報満載であったと思う。

 小生も息子の場合を振り返って「そうだったなぁ」と、いやまだ安心はできないが、そんな思いで講演を聞いていた。

 =再発してしまうのは、本人または周囲の人の病気への理解が不足している場合が大きいでしょう。そのため服薬を勝手に止めてしまう。=そう、息子の再発は、親子ともどもこの理論?によって薬を止めて、再発した。3回もである。=薬を止めた直後の「調子が良い」は、そのまま受け取らないことが大事です。=このことを身を以って体験した。だから、家族ミーティングで「薬を止めたらグーンとよくなった」という話は注意が必要である。

 そして、もう一つ「もう、あんな思いはこりごりだ。」まさに息子の言葉通りの表現である。彼が病気を理解し、自覚し、病気を受け入れて、薬を常用するようになったのは、この言葉を発して以降である。

 保護室から閉鎖病棟を体験した彼ならではの言葉であろう。その間五年という月日が流れた。それからである。彼は外向きの行動を徐々に体験して行った。区のチャレンジワークから始まり、他区の作業所に通い、一般企業に障害者枠で勤めたこともあった。

 やがて二十年になろうとしている。今、彼の第二のチャレンジが始まった。グループホームへの入居である。遅い口ではあるが、父親としては頑張って欲しいと三拝九拝している。          嵜

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