4月 新宿区後援事業 新宿フレンズ講演会

   精神科の薬について・1、および

  新発売予定のリスパダールコンスタ

            講師 慶應大学精神神経科精神薬理研究室 仁王進太郎先生

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【薬はきちんと服用を】

 統合失調症の治療の中心となる薬を抗精神病薬といいます。統合失調症の症状には幻覚・幻聴・妄想、考えを上手くまとめることができない、意欲がわかないなどがあります。薬はこれらの症状の改善をするとともに、飲み続けることで再発予防をしていきます。

 再発予防というのは、統合失調症は慢性疾患だからです。よく比較されるのが糖尿病や高血圧で、どちらも薬を毎日飲み続けていて、止めると血糖値や血圧が上がります。統合失調症も同様に、服薬を止めると再発率が上がります。

【精神科の薬の種類】

 統合失調症の症状を調節する薬としては、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬、副作用止めとして抗パーキンソン病薬や下剤、これらがよく処方されます。

○主剤となる抗精神病薬

 脳の中には神経の伝達を助けるドーパミンという化学物質があります。神経伝達物質のドーパミンの活動が過剰になると妄想や幻聴が起きると考えられており、抗精神病薬は、出過ぎたドーパミンをもう一方の神経が受ける部分、つまり受容体に蓋をしてドーパミンが過剰に伝わらないようにします。

 抗精神病薬は二つに分けられ、10年前に登場したリスパダール(リスペリドン)より後の薬を新規抗精神病薬といいます。これより前の薬、セレネース、ドグマチール等は従来型抗精神病薬と呼ばれています。

*従来型(定型)抗精神病薬:投与量によって、高力価薬と低力価薬に分けることがあります。商品名でいうと、セレネース、ハロステン、リントン、フルメジンは高力価の薬で、陽性症状に対する作用が比較的強いのです。

それに対してウインタミン、コントミン、ヒルナミン、レボトミンは低力価の薬で比較的鎮静作用が強い薬なので、寝る前に飲むと睡眠の助けになったり、調子のよくない昼間に飲むと気持ちが落ち着くという作用があります。

*新規(非定型)抗精神病薬:リスペリドンの登場は1990年代の前半です。今使える非定  型抗精神病薬はリスパダール、セロクエル、ルーラン、ジプレキサ、エビリファイ、ロナセンの6種類があります。

 従来型抗精神病薬よりも長い間にわたって安全に飲めるともいわれています。陽性症状への効果に加えて、気持ちを上手く\現できない、意欲がわかない、などの陰性症状に対する効果もあるといわれています。

○症状を調節する薬

*抗不安薬:強い不安感や緊張感を和らげるために使います。よく処方されるものとして、ワイパックス、デパス、コンスタン、メイラックスなどです。

*抗うつ薬:うつ症状が出ている場合に、憂鬱な気分を和らげて、意欲を高めるために使います。統合失調症の場合、落ち込んでいときに服用すると気持ちが高ぶり過ぎてしまうという恐れもあります。

*睡眠薬:よく眠れない、寝つきがよくない、早朝に目が覚めてしまう、昼夜逆転など、睡眠のリズムが狂った場合に使います。その作用時間によって、長時間・中間・短時間・超短時間型に分けられ、症状にあわせて処方されます。

○副作用を抑える薬

*抗パーキンソン病薬:定型抗精神病薬を飲んでいると、手の震えや身体がこわばるなどの副作用が出ることがあるので、それを和らげるために処方されることがあります。アキネトン、タスモリン、アーテンなどです。

*下剤:抗精神病薬、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬の副作用として便秘が起きたときに処方されます。

【抗精神病薬の副作用】

 本来の効果(主作用)以外の反応のことを一般に副作用と呼んでいます。同じ薬をのんだときに全員に必ず出るものではなく、人によって現れる症状や程度も違います。

○錐体外路症状

 抗精神病薬の代表的な副作用です。薬によってドーパミンの活動が抑制されすぎると、スムーズな体の動きがしにくくなることがあります。錐体外路症状には次のようなものがあります。

*アカシジア:足がムズムズする症状です。特に寝る前が多いようです。昼間でもじっと座っていられなくて、絶えず足を動かしていたり、歩き回ったりします。本人にとってとても辛い症状で、避けたい副作用のひとつです。

対処法として抗パーキンソン病薬を使用したり、他のタイプの薬に切り替えたり、βブロッカーといって高血圧の薬やベンゾジアゼピン系の抗不安薬を足すこともあります。

*パーキンソン様症状:手足の筋肉が緊張する、身体が前かがみになる、歩き方が小刻みになる、動作が鈍くなる、手や指先が震える、などの症状です。

*ジストニア:顔や首が強くこわばる、目が上を向いたまま正面を向かない、首が反り返る、舌が出たままになる、などの症状です。

出る時期によって大きく二つに分かれ、薬の飲み始めや増したときに出ると急性ジストニア、飲み始めて5年10年たって突然出てくるものを遅発性ジストニアといいます。急性の場合は薬の調整で比較的改善しやすいのですが、遅発性ジストニアの場合は改善しにくいといわれます。

*ジスキネジア:ジストニアと一緒に出ることもありますが、ジストニアは突っ張ったり固まったり緊張し、ジスキネジアはいつも動いている感じです。口がモゴモゴ動いたりします。ジストニアは本人がつらいのですが、ジスキネジアは本人が意識しないこともあるようです。

○悪性症候群

 最も気をつけなければいけない副作用は悪性症候群です。高熱が出たり、身体が硬直したり、汗を多量にかくことがあれば、急遽、入院治療が必要になります。

 薬をのみ始めてから2週間以内に発症するケースが多く、特に身体が疲れているときや、精神状態が不安定で食事や水分を充分に摂取していないときに、強い薬を服用すると生じやすいといわれています。

 発生頻度は抗精神病薬を使っている人の1%と稀ですが、発症すると非常に危険な状態になりますから気をつけて下さい。

*口が褐く、便秘、尿が出にくい

*立ちくらみ、血圧低下/ボーっとする、いつも眠い、だるい/物忘れがひどい

*体重増加

*糖尿病/高脂血症

*高プロラクチン血症

*その他

*水中毒:のどの渇きから、1日に水分を5リットルも10リットルも飲む場合があります。血液中のナトリウム等のバランスが悪くなるので、必ず医師と相談してください。

*発疹・かゆみ:これはどの薬でも起きやすい副作用で、抗精神病薬に限ったことではありません。

【薬と飲酒・喫煙】

 ニコチンを摂取すると肝臓の代謝が少し変わり、肝臓にある薬を分解する酵素を活性化します。つまりニコチンは薬の分解・排出を促進させる作用があるので、喫煙によって効果が落ちる抗精神病薬もあります。タバコは精神病薬だけでなく一般の病気の薬の、一部の薬剤にこの影響を及ぼします。

 アルコールは、一般に薬と一緒に摂取しないで下さい。肝臓の持つアルコールを分解する働きと薬を分解する働きが、お互いに邪魔しあうために、眠気やふらつき、立ちくらみなどの副作用がおきやすくなり、薬の効きが強すぎたり弱すぎたりしてしまいます。これも精神病薬に限ったことではありませんが、ことに危険な場合があります。

新発売になるリスパダールの
注射製剤・リスパダール・コンスタの特徴

 この4月に、リスパダール・コンスタ(時効性注射製剤・Long Acting Injection:以下LAI)が承認され、6月には発売になる予定です。このリスパダールコンスタは、非定型抗精神病薬では、初めてのLAIです。

 今までのデポ剤とは、油で溶かした薬を筋肉に注射すると、ほぼ2週間から1ヵ月の間、徐々に体の中に溶け出して薬効を保つというものです。デカン酸ハロペリドール(商品名ハロマンス/ネオペリドール)、デカン酸フルフェナジン(商品名フルデカシン)の2種類がありました。

 今度のコンスタは、丸いマイクロスフェアという特殊なポリマーにリスペリドンの粒々がついていて、体内で水和してリスペリドンの粒々が徐々に溶け出す構造になっています。油分を使用していないので、筋肉注射をしても痛みがなく、赤くなったり腫れたり硬結もできない人が多いようです。

 剤型には25mg、37.5mg、50mgがあり、25mgがおよその計算上、経口薬1日2mgに、37.5mgが3mgに、50mgは4mgに当たります。ともに2〜3週目に血中濃度が高くなります。そのため、2週間に1度ずつ注射することになります。

 経口薬は、血中濃度が激しく上下しますが、LAIのように長く効果を保つ時効性の場合は、その揺れ幅(血中濃度の上下)が少なくゆるやかになります。ドーパミンD2受容体をどのくらいブロックしているかということですが、先にも話したように、6〜8割くらいブロックするのが良く、9割以上ブロックすると副作用が出、6割以下では幻覚妄想が取れないのです。コンスタの場合、ほぼこの値の域内を長く保つようです。


【継続しやすく再発率が低い】

 さて、コンスタ発売前の、リスパダール経口薬との比較データを見てみましょう。

 統合失調症では、再発予防が重要です。薬を飲み続けることで次の再発を防ぎます。患者さんに「継続服用の理由は?」と聞くと、55%が再発予防を意識して服薬しています。退院後720日での治療(薬)の継続率調査では、経口薬63%に対し、コンスタの注射を2週間に1度受けている人は82%が継続していました。

 再発率でみても、経口薬が52.6%に対し、コンスタは11.5%です。別の研究で1年後の再発率では、経口薬50%に対し、コンスタは18%。2年後は経口薬が約75%に対し、コンスタ23%と、コンスタを選択したほうが、再発率も少なくなっています。

 薬をきちんと飲んでいると再発率が低く、処方された薬を100%服薬している人の再入院率はわずか8.3%ですが、飲み足りない人も、また、飲み過ぎの人も再発率が高いのです。大切さを自覚して自主管理していることをアドヒアランスといいますが、服薬の自覚が薄い人の入院率が26%、救急来院率10%くらいなのに対し、良好な人は入院率12%、救急は7%くらいです。

【症状も改善される】

 また、コンスタを使うと、再発予防だけでなく症状も改良されることが分かっています。

 医師がみて精神症状の重症度を評価するPANSS総スコアが、経口からコンスタに変えただけでよくなるのです。経口薬は飲み忘れや、止めてしまうために悪くなるのかもしれないこと、また血中濃度の差が大きいためもあるでしょう。コンスタは筋肉内での薬剤放出がゆっくりのため、血中濃度が平均化されることが、症状の安定につながると考えられます。

 このことは、それまで飲んでいた服薬量に関わらず、症状が改善されているからです。経口リスペリドン4mg以下を服薬の人がコンスタ使用で、症状の改善が見られたのは、PANSS総スコアでみると、70,3→58,4、4〜6mgで70.8→63.1、6mg以上で80.1→71.4に改善されています。

 また、患者本人がQOL(生活の質)に関する項目を採点したSF-36という指標では、生活が改善したと主観的スコアもアップしており、周りから見た症状改善だけでなく、患者さん本人の感じ方もよくなっていることが分かりました。

 それはまた、患者に取ったアンケートで、経口薬が良い27.4%、コンスタが良い72.6% と、当事者自身がコンスタを選択していることからも分かります。毎日薬を飲むという意識から解放されることと、体の感じ方も良いのかもしれません。

【コンスタの利点・問題点】

・錐体外路症状が出にくい:これは経口薬に比べて、血中濃度の変化が少なく比較的安定するため、副作用が出やすいところまで血中濃度が上がることが無いためでしょう。

・プロラクチン(乳腺の発育・乳汁産生ホルモン)が上がりにくい:注射の4週間後、経口リスペリドンでは6.7ng/ml増えていますが、コンスタでは−13.4ng/mlとむしろ減っています。これも血中濃度が安定していることからと考えられます。

・体重変化はやや増加傾向:ジプレキサ(オランザピン)やセロクエル(クエチアピン)ほどには増えませんが、気をつけなくてはなりません。

・併用薬が減る:副作用止めの抗コリン薬、抗うつ薬、精神安定剤、睡眠薬などが減っています。症状が安定するため、他の薬もいらなくなってきたのではないかと考えられます。

・通院頻度が2週に1度:2週間に一度通わなくてはならないので、現在、2週に一度の44,7%の人にとっては変わりません。しかし、月1回の32.2%の人は、回数が増えると言うことになります。

・頭痛が若干起きる人も:頭痛はプラセボ(偽薬)の10%に対し、コンスタの25mgは15%、50mgは21%に増えていますので、起きる人もいるということです。その場合も、精神障害は抑えられています。

・副作用が出れば続いてしまう:コンスタの副作用は経口薬に比べ少ないのですが、問題点として、副作用に対しては1日1回飲めば副作用は1日で治まりますが、デポ剤の場合は1度注射をすれば、2週間出てしまうことにはなります。

そのためもあり、日本において承認された用法・用量には、前薬の用量に関わらず初回量は25mgより開始することとなっています。

【第一選択肢への可能性も】

 こうしてデータを取ってみると、リスパダールコンスタは、再発予防にも効果的、症状も改善され、患者自身の感じ方も良く、副作用も少ないのですから、今までのデポ剤(特効性注射薬)が、服薬をしないで困るから注射をする、経口薬服用不良の患者に使用する、という考え方を変えていくことになるでしょう。最近海外ではこういった事情もあって、デポ剤とは呼ばずにLAIという表現が増えました。

 しかし、経口薬を毎日飲むか、2週間に一度注射かとなると、毎日でも服薬は患者の自由によるわけです。薬を飲むことで、きちんと病気と向き合っているとも言えます。つまりコンスタは2週間に一度の注射を、医師におまかせにするのではなく、当事者自身も家族も、医師とともに病気と向き合う場面だと自覚するための機会にしてください。

 毎日服薬しなくてはならないわずらわしさ、薬を飲むたびに病気を感じさせられることが、2週間に1回の投薬で、解放されるとも言えます。

 もともとは、デポ剤はいいイメージがなく、強制的に注射しましょうという感じでした。

 今までのデポ剤も血中濃度が一定になるなどのいい効果はあったのですが、会社があまりデータを出してこなかったのです。

 今回、初めての非定型薬として6月に発売される予定なので、こうしたデータも出、いわゆる第1選択肢としての非定型の抗精神病薬に、リスパダールコンスタも加えてよいのではないか。むしろ第1選択される可能性のある薬と考えられるようになったと言えます。

                                               --了--
                                                     

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
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編集後記

 今月のテーマ「リスパ・デポ剤(コンスタ)」は恐らく一般への発表では我がフレンズが第1号であろう。精神科の第一の課題「拒薬」への対応として、また、それ以上に薬効の安定化といったメリットがあるリスパダール・コンスタは今後精神科の治療に大きな期待が持てるのではないか。

 さて、最近のテレビから考えさせられる出来事を知らされた。一つはタレント・清水由貴子さんの死である。詳しいことはわからないが、母親の介護の疲れからであろうと伝えられている。

 介護問題は日増しに話題として、あるいは事件としても増えている。考えてみれば、我々精神科の患者さんを抱えている者からすれば、介護という点ではかなり近いところにいる。個人的にはようやくわが子は病識を持ち、服薬管理を行い、職業訓練に出かけるようになった。しかし、家族会例会では、急性期にあるお子さんの対応に苦慮し、逃げ出したい、と訴える人もいる。

 もう一つはやはりタレントの長門裕之さんの例だ。奥様の病気ゆえの発言に決して腹を立てず、むしろ土下座して謝罪している。

 よかれと勧めた食事を奥様が嘔吐していた。それは、健常者の長門氏の押し付けの介護であった。また、奥様も長門氏の親切を裏切りたくない努力であったのだろう。

 そして、長門氏は「介護する人は強くなってはいけない」「敬語や幼児語はいけない」「彼女はオレを頼っている」と述べている。こうした言葉を自ら生み出すには、それなりの苦労と忍耐と頑丈な精神力、そして明るさであろう。最後に言った。「楽しいね」と。          

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