11月家族会勉強会

     急場をどうしのぐか

           〜再発と救急医療〜

        講師 東京都立中部総合精神保健福祉センター  野津 眞先生



それでは、お手元に私が作った急場の医療をどうしのぐかというレジュメがありますので、これに沿って話を進めたいと思います。

 まず、なぜそういう急場になるかということなのですが、普通でも親子喧嘩、夫婦喧嘩ということはあるものですが、ときには暴力沙汰になることもないことはないかもしれません。こころの病気の場合は、だいたいが病気の再発ですよね。それはうつ病なんかでも激しい行動を起こす人もありますが、たいていは統合失調症が再発する。再発することによって、いろいろな行動上の異常が起きてくる。それをまわりでみているとおだやかじゃいられないわけです。

 その再発ですが、再発は実際にはそんなに少なくないんですね。2割以上といえます。長い経過ですと、10代から20代で発病した方が、治療をすればある程度落ち着くんですが、ライフイベントといいますが、入学試験を受けるだとか就職をして研修を受けるとか、恋人ができるとか結婚するとか子供ができるとか、いろいろな人生上の出来事がありますよね。このライフイベントをきっかけに再発するということがしばしばあります。

 そういう再発の条件というのは、なぜ発病したかということを考えると、おそらく、もともと神経経路の働きにある種のもろさがあって、そこに生活史上のストレスがかかることによって発病するという考え方がいま割合とられているわけです。おそらく再発も同じようなことが考えられているわけですね。

 その再発を予防するためには、薬を長期間飲んでもらうということをやるんですが、みなさんも高血圧、糖尿病など慢性の病気をお持ちの方はあると思うんですが、毎日毎日薬を飲むって結構大変ですよね。毎日飲むのは結構な負担で、1日3回、4回飲めといわれて忘れずに飲むのって大変です。ついつい1、2回抜けたりして、お薬が十分でなくなると、周りで見ていると、本人は明るい顔をしているんだけど、行動の量がずっと増えてきて少し心配なんだけど、本人がだいじょうぶだいじょうぶというから家族にしてみればまさか薬飲んでないなんて思わないし、よくなったのかななんて期待をもっちゃうんですね。

 それで1−2週間するとだんだん神経過敏になって、あれほど穏やかだった目つきがつりあがったようになり、怖い顔つきになって、なにか言うと口答えをするとか、動作が荒々しくなる。これが微小サインですね。はっきり幻覚や妄想が出ているというところまではいきませんが、感覚過敏になってくる、目つきもあんまりよくないし、眠る時間が短い時間ですんでしまう。夜なかなか寝ないのに、朝は早く起きるとか、そんなふうな形で行動が変化してくる。これが再発のきざしですね。

 再発は時間の問題ですね。そのうち忘れてしまったはずの昔の妄想が同じような形でぶり返してきます。ふしぎなもので、昔持っていた妄想というのは、治療するとある程度消えるんですけど、再発するとまた戻ってくるんですね。そんなふうにして再発状態になってしまうと、場合によっては入院治療が必要になる場合もあります。外来でも薬を飲んでくれればその段階で引き返せるのですが、つきぬけてしまった場合、本人はもう絶対薬を飲むとはいわないですから、かわいそうですが、またちょっと入院してもらうことが必要になることがあります。

 再発の原因として、いろいろなライフイベントとストレス。薬を飲まないこと。ライフイベントとかストレスに対してうまくかわしていくような力があれば、たとえば親との間でけんかになる。けんかするというのは結構なストレスですよね、たいていはささいな一言がきっかけなんで、どうしてそんなこというんだよというところから始まることが多いんですが、そのささいな一言をかわしたり、上手に受け流すようなことを相互にできればだいぶんちがうんでしょうけれど、どうもそのあたりが不器用で、ささいな一言でまた言ったなお前とか烈火のごとく怒ったりする。

 ストレスをうまくかわせるような技術を身につけてもらえばまたちょっとちがうんでしょうけどね。みなさんがよくご存知のSSTというのがありますよね。ソーシャルスキルズトレーニング。これの目的のひとつはストレスをうまくかわしたり処理したりするのを身につけることにあって、たとえば親とけんかになる場合はいったいどの一言が悪化させるのかということを分析した上で、その言葉をいわないですますようにする方法とか。

 あるいは子供の側から見れば、親はだいたいが、がんこで言うことをきいてくれないと思ってますので、どうしたらその誤解が解けるとか。逆に親のほうからみてどういうところが腹にすえかねるのかとか、そういうふうにいっしょにずっといるといらいらしたりしますよね。日中もずっといてコーヒー飲んじゃタバコすっているとか見ると、やっぱり親としてはいらいらしてしまうんですよね。ましてやご近所に同級生がいて立派なサラリーマンになっていたりすると、親としては不憫だと思うと同時に、この子がしっかりしていればと、口に出さなくても思っちゃうとか、言っちゃいけないと思いながら、なんとか働いてみたらとか。だらだらしてどうしたの、とか言っちゃうんですよね。

 これは親心ですから仕方ないんですけど、ところがそれが本人からみると非常につらい。そんなことで行き違いが起きて、ストレスがますます増大する。家庭内の緊張そのものが高くなる。そこでしばしば言われるのが、EE(エクスプレスト エモーション)。これはつい家族が言わなきゃいいのにとおもいながらついつい言ってしまうような非難や批判的なことがらや、逆に本人に対してかなり同調してしまうと。本人の不安とか混乱に巻き込まれてしまうというようなことがあって、いずれにせよ安定した関係、安定した家庭内の関係がうまく保てないような、感情表出ですね。

 家族の側がもっているある種否定的な感情が言葉のはしばしに出てくることによって、患者さんの側は日常的に刺激されてしまうんですね。それが再発につながりやすいというところで、再発の要因は、1つには日常生活でさけられないようなストレス問題、またそれを処理できる能力があるかないか。それから薬を飲まなくなること。同居している家族との感情的なもつれといったものが再発を引き起こしやすくする。再発の危険性を高める。

 実際に、再発したらどうするか、微小再燃として、感覚が過敏になるとか自律神経系が過敏になってきて下痢をするとか食欲が亢進、低下するとかがあります。それがさらに進んでしまって、再発すると、最初と同じ幻覚妄想状態になってしまう。あるいは錯乱。意味もなく興奮する。暴力をふるうといったことが起きてきます。外に対しての攻撃性ばかりじゃなくて、攻撃性が自分にむかう場合もあるんですね。そのときは自殺企図をしたりすることもあります。

 また、仮にこういう激しい症状がなくても、なかなか意欲がわいてこないとか、おしゃべりが順調にできないとか、何事も興味がもてないとか、陰性症状というものがあるんですが、こういう陰性症状は生活全体をなんとなく沈うつなものに変えてしまいますが、その陰性症状に加えて、非常に激しい陽性の症状が出てくるというのが再発の特徴です。

 さて、今日は急性の話なのですが、要になるのは暴力じゃないかなと思うんですね。

 やっぱり話してわかってくれたり、説得に応じてくれたらそれほど困らないんですが、何か言ったとたんになぐる、蹴る、壊すなどの暴力が生じるときが一番困るのではないでしょうか。そこで、暴力を分析してみようと、書いてみました。

 まず暴力の原因ですが、ひとつは妄想や幻覚に基づいたもの。妄想に基づいた暴力は結構深刻な事態になることがあるんですね。たとえば家族に毒を盛られるという妄想があると、殺されたいためにあの親を殺さなくちゃという話にすぐなってしまう。実際に包丁をもって振り回したりするんですね。そういう妄想はかなり危険なんですね。

 それから誇大妄想、これは自分が偉くなったような妄想で、ただ偉くなっただけじゃなくて自分は何をやってもいいと。家族がいうことを聞かないと蹴飛ばすとか、本人は気分がよくなっていますが、ただ気分がいいだけじゃなくて、その自分の誇大的な気分の言うことを家族がきかないと怒り出す。なぜ俺の言うことが聞けないんだという話になる。よっぱらって気がでかくなった人とあまり変わらないんですけど、そうするとやはり暴力行為に及ぶことがあります。

 それから妄想でなくて幻覚、とくに幻聴、いろんなタイプがありますが、自分の行動に干渉してくるような幻聴が結構多いんですが、それとは別に命令してくるような幻聴があって、たとえば殴れとか、それが幻聴とわかっていて本人に批判力があれば、まさかそんなことはしませんけど、深刻になってくると、それに対する批判力を失ってくることがあるんですね。自分じゃ止められないことになって身近な人をなぐったりすることになるんですね。これは要するに症状がそのまま暴力につながるという場合です。

 同じように、運動暴発という無目的な動きがあります。緊張病性興奮という、一応意識があることはあるんですが、周りのことにほとんど注意がむかなくなる。で、運動暴発を起こして、ダーッと走っていって、ガラスの自動ドアをつきやぶってしまったりする。それから意識障害、これはてんかんなどですが、てんかんで大発作を起こした後、朦朧状態になることがあります。朦朧状態で手足をむやみに動かして、まわりの人に当たってしまったりということがあります。朦朧状態でないときに、不機嫌であったり、不満がたまってたりするときに、通常な意識のもとではそれがおさえられていても、朦朧状態になったときそれがぽかんと現れるということがあります。

 それから乖離性興奮というのがあって、乖離というのは自己同一性がなくなってべつの自分が出てくる、いわゆる多重人格は乖離障害の極端な例でして、乖離自体はそんなに珍しいことではなくて強いストレスやつらい体験をすると誰でも起こりうるんですが、こういう状態が頻発するような人は、ふだんの本人からは想像もつかないような、たとえば周りの人のほっぺたをひっぱたくとかすることがあります。

 乖離性の障害自体は、早い話その子が大人にならないと直らないという部分があって、お薬をちょっと飲んでもらったり、カウンセリングをするなどはしますけれど、心のどこかに未熟な部分があって、その未熟な部分が乖離という方法を用いて自分を守っているというようなことが考えられる。

 だいたい世の中自分に好都合のことばかりじゃありませんで、うまくいかないことのほうが多いわけで、その欲求不満に耐えることが大人になることなんですが、思春期、青年期くらいの子供さんでそういうことに耐えていくというのが非常に難しい。つらいと、いい子でいるような人格ではとてもそういう不満が解消できないので、いきなり不良っぽいような人格に変わってしまって、少しそのあたりの満足を得るということが理屈の上では考えられる。

 1、2番というのは症状に関することですね。3つ目の状況への反応は、よくよく聞けばなるほどなと了解ができるような反応。つまり本人が何回面接行っても採用されないとか、あるいは周りに非常にいやなことを言われるとか。現実によく就職している患者さんがつらいのは、職場で孤立することがつらいんですね。孤立しているんだけれども、なんか嫌がらせされるとかがあるんですね。われわれは、嫌がらせをされるとかきくと、これは症状じゃないか、とか思ったりしますけど、現実の職場の中で精神障害を持っている人ってだいたいわかっちゃうんですよね。

 あの人変だなとか思われて、周りの人の反応が本人から見るとやっぱりちょっとほかの場合とちがうんじゃないかと理由があることかもしれないですよね。周りの人がよそよそしいとか優しくしてくれないとか敬遠されているような感じがするとか、現実がそうである場合もあるんですよ。そうすると、こんなに俺が一生懸命やってるのに、受け入れてもらえないというので自暴自棄になってしまう。

 これはわれわれにだって起きるわけですよ。病気の症状ということではなくて、彼らの置かれた状況が自暴自棄にさせてしまうことがありうるわけです。そういうときに泣いてわめいて大暴れをすることがあります。たとえば職場でこんなこと言われた、と職場でじっと我慢して、家に帰って晩御飯食べようと思ったけれど食欲が出てこない、親にどうしたのとかちょっときつい言葉で言われた途端に、やけっぱちになって暴れるとか。

 これは心理的によくわかるんですね。症状というよりも彼らの置かれた状況の不幸さ、つらさの反映なのであって、暴れるのはよくないけれども、ただちにおまわりさんとかいう話ではないのであって、やっぱりそのつらい気持ちをわかってあげなくちゃならない。内容が妄想と似てたりするんですね。だから状況がむずかしいんですが、ときには原因があって、怒ったり暴れたり泣いたりすることもあるんです。

 それから家族の中に本人に対する非難とか批判があった場合に、親子喧嘩みたいな形で暴力に発展することもあります。

 その次は、もともと粗暴な人、反社会性の高い人、これはもともと人格の形成に問題があるのであって、われわれが通常接している患者さんは100人中99人は善良な人が多いんですね。どっちかというと気が小さくて不器用でというタイプなんですが、正確な数字ではありませんが、100人いたら1人くらいは悪い人もいる。つまり、人のことを人と思わないとか、世の中のルールを守ろうとしないとか、そういう悪い人たちがいて、あるいはもともと粗暴ですぐ手が出るとか足が出るとか刃物が出るとか言う人がいて、ある意味ではこれは治療もできない。

 そういう人はどうしたらいいんだといえばなかなか難しいんだけれど、病院のなかでそういう人はどうするかというと、力で抑えるしかないんですが、沈静系のお薬をたくさん飲んでもらって暴れたくても暴れないようにすることも必要ですけど、そういう人は外来になると、沈静系のお薬は飲んであんまり気分がよくないですから、飲まないですよね。

 こういうふうに、一言で暴力といっても原因が考えられるので、今起きているこのこと、あるいは夕べ起きたこのことは何が原因だったの、と考えてみるのが大事なことですね。

 さて、暴力の対応をどうするかですが、本人を保護してやらなきゃいけないのは間違いないですね。病気でおきているような暴力は、それでけがをしないように、あるいはそれで自分を責めて自殺企図などを起こさないように保護してあげなくちゃいけないですよね。具体的には、暴力が頻発するようだったら、いったんは入院してもらったほうが安心だろうと思います。治療中断しているようだったら服薬を再開してもらうことが大事です。薬を飲んでいるのに悪くなることもあります。そういう場合は薬の量を変えるとか、薬を変えるとか、それは主治医にやってもらわなくちゃなりません。

 もうひとつは、家族はひとつには逃げる、もう逃げるしかしょうがない。とくに刃物を持っている場合には、押さえるより逃げちゃったほうがいいですね。しばしば妄想や幻覚に基づくものは家族に対して向けられることが多い。見ず知らずの人を傷つけることはそんなに多くない。重大事件はたしかにありますけれど、暴力が家族に向けられることが圧倒的に多い。そうなると家族は逃げなくちゃならない。なまじ説得して包丁を取り上げようなどと思うと思わぬ怪我をします。包丁持ったら逃げないとだめですね。あるいは包丁そのものを隠しておくとかしないと危ない。

 その上で家族だけで問題解決しようとしないで、応援を呼ぶ。この応援は警察でもいいし、あるいは親戚などでもいいです。そんな状態ですので世間体なんてかまっちゃいられない、近所の人でもなんでも男手集めて対処しないとだめですね。それで病院にかつぎこまれて入院させられると、本人が傷つくとか、かわいそうだとついつい思っちゃいますけど、本人を保護する一番いい方法は動けなくしちゃうことなんですね。それで治療に入る必要があります。

 次に精神科救急ですが、東京都の精神科救急における夜間休日救急診療事業は昭和53年から始まっています。松沢病院、墨東病院、多摩地区は民間病院の輪番で行われていましたが、府中病院が整備されて、当時はこの3病院で行われていました。救急病院への利用は年間2000件くらいで、そのうち入院の利用は1000件くらいです。

 平成11年から豊島病院が整備され都立4病院で行われるようになりました。しかし、利用者は薬だけください、というような軽いものから、緊急措置入院になる重症患者までおります。そこで、利用形態によって区分けを行うこととして、まず外来利用、精神科二次救急(任意入院)、精神科緊急医療(警察官介入のハードな入院)に分けて現在行われています。

 この利用に当たっては皆さんご存知の「ひまわり・精神科救急医療情報センター(?03-5272-0303)」です。場所は新宿区内の大久保病院の隣、ハイジアの中にあります。ここでNPO団体が相談を行っています。深刻度とでもいうような、程度によって、外来か、任意入院か、というような振り分けを行います。専門的には「トリアージ」といいます。これは阪神大震災のとき被災してケガをした人たちの重傷度を見分けること・トリアージといいました。これを精神科にも応用しています。まずご家族が精神科の症状で困ったらここに電話して、この先どうしたらいいかについて相談します。

 では、その初期救急はどこでやっているのかというと、都内の精神科の診療所協会というのがあって、東精神といいますが、ここに協力・加盟している精神科診療所が輪番で精神科救急を行っています。ですから、例えば休日、どの診療所が救急担当かはひまわりに聞かないとわかりません。それから二次救急を行っている外来が都内では3ヶ所ほどあります。しかし、これは夜間は10時までで、それ以降は翌朝まで利用はできません。

 二次救急は都内では300床確保されていることになっていると思いましたが、そのようなことになったらひまわりに電話して相談されることですね。そしてひまわりからの指示を待つことです。

 それから緊急医療に関してですが、これは警察官が関与するようなケースです。都内4病院で16床用意されています。ここで、一晩入院し、翌日民間の協力病院、措置入院の場合、指定病院に転送ということになります。これは、常時16床のベッドを確保するために、こうした転院が必要となります。ですから、この4病院に緊急入院した場合、めったにその病院で治療を受けることはないです。翌日は思いがけない遠くの病院に転送されることがあります。

 以上が、精神科救急のしくみですが、仮に措置入院しても半分くらいの方が3ヶ月で退院しています。6ヶ月たつと8割の方が退院します。中には家族の方で「やれやれ、やっと入院してくれた。当分退院して欲しくない」ということがあるかもしれません。しかし、今はすぐ帰ってきます。それは診療報酬のこともあって、急性期の病棟で最初のうちは診療報酬は高く設定されていますが、3ヶ月以上たつとものすごく低くなります。それは国がそのように誘導しているわけです。

 病院側からすれば、長く入院させておけば経営が圧迫されてしまうことがあります。精神科も昔みたいに一度入院したら5年は出てこれらないということではなくなりました。普通の病気と同じです。激しい症状が治まったらできるだけ早く帰す、ということになっています。ですから、入院してもすぐに退院後のことをどうするかを考えることが必要です。これまで保健所の保健師さんと相談したことがない、というようなことであれば、これを機会に退院後をどうするか、再入院させないためにはどうするか、相談することをお勧めします。そして、家族の方が患者さんと接する上で問題はなかったか、などを検討されるといいでしょう。

 最後に精神保健福祉法の34条についてですが、これは全家連から強い要望が出されて作られた制度です。平成11年に法律改正されて、それまで親が年老いてくると子供である患者さんの方が体力が上回って、入院させようとしても親だけの力ではどうにもならない。それをなんとか行政の手でやってくれないか、という要望から作られた制度です。

 これは基本的に任意入院ではありません。医療保護入院で、保護者の同意に基づいて入院させる場合の移送の手段です。これの利用は保健所が関与していることが条件です。家族が直接入院させようとしても駄目です。保健所の48条という活動がありますが、まず訪問活動などを行います。しかし、保健士さんは現状は女性が多いですね。ですから、腕力の面では女性だけでは難しいこともあって、私たち男性医師も加わって行うこともあります。

 しかし、いろいろ策を尽くしてもどうしても本人を入院させられない。そこでこの34条の申請を行うかどうか保健所の中でも周到な会議が持たれて、そこで決定がでた場合、東京都知事に34条の発動を求めるという形をとります。

 なぜ、このような回りくどい方法をとるのか。それは、患者さんからみると、拉致監禁ともとれるようなやりかたでもあるわけです。ですから、以前はこのパターナリズムのやりかたに患者さんから訴えられた場合、裁判では負けるわけです。パターナリズムは患者さんが自分のことを自分で判断できないことから、医師が本人に代わって判断して、入院が適切な治療として入院させることが正しいとされてきました。

 しかし、近年はこのパターナリズムは排除される方向にあって、現在はインフォームドコンセントという手続きをとって、たとえ精神科の治療であっても患者さんが納得しなければ、入院はできない、ということになっています。これはリーガリズム・法律主義ですね。つまり、患者さんの人権についても考慮されなければならない、という主義からこのような手続きをとるということです。

 それでは、私の方からのお話はこの辺で終わります。あとは皆さんからのご質問をお受けいたしたいと思います。

(紙面の都合で質問は省略させていただきます)

テープ起し:中川由紀子(ボランティア)


勉強会講演記録CDの2枚目が完成しました。
フレンズ編集室では講師の先生方の講演記録を生の声で聞いていただこうと、CD制作を行っていきます。
まず第1弾として、9月勉強会で講演していだいた曽根晴雄さんです。
タイトル『ちょっと私の話を聞いてください』  
 =聞けば見えてくる・精神分裂病当事者が語る患者の本音=

 家族は患者本人の気持ちを知っているようで理解できていません。二十数年間この病気と戦って来た曽根さんが、自らの体験をもとに訴える精神病者の苦悩、怒り、病気のこと、希望、それはすべての精神の病いに侵された人たちの声を代弁しています。
 また、当事者仲間の先輩として語る内容は、回復しつつある皆さんのお子さんが聞いても大いに励まされます。
 そして誰よりも聞いてもらいたいのは、分裂病を全く知らない人たちです。”もしあなたのお子さんが病気になったら”という目的の他に、各地で取りざたされる障害者の事件の度に生まれる誤解や偏見を防ぐためにです。一般の方に呼びかけてください。

第2弾は
「心の病を克服 そして ホームヘルプ事業へ」 
大石洋一さんです。
収録分数;61分 CDラジカセ、パソコン、カーステレオ等で聞けます。
価格;各¥1,200(送料共、2枚同時申込の場合2,270円)
   申し込みはフレンズ事務局へ E-mailでお申し込みください。frenz@big.or.jp
発売:平成14年1月
企画・制作 新宿家族会フレンズ編集室
(新宿家族会創立30周年記念事業)

編集後記

=泣く、笑う、怒る。人間は“感情の動物”と言われます。しかし、最近のわたしたちは、理性的に動くことを意識するがあまり、楽しい時に大いに笑ったり、悲しい時に素直に涙するといった、ごくごく当たり前の感情を忘れかけているような気がしませんか?“感動する心”、“本当の愛”、“生きる力”など、人間的な感情を失いつつある私たち現代人は、これからどうなっていくのでしょうか?=

 というコメントで紹介されたTBSの『生命38億年スペシャル“人間とは何だ!?”』というテレビ番組。副題が「失われた愛」となっている。

 一方、今回講演していただいた野津先生のお話の中に、退院する患者さんに対し「もっと長く入院してくれればいい」という家族がいる、というくだりがあった。私などは耳を疑るような話だが、事実だとすれば、ここに日本の家族の理性や功利だけを意識する姿があるように思う。

 いかに病気の息子や娘だろうと、患者本人はなりたくて病気になったわけではない。毎日、苦しさ、辛さを耐えて生きている息子や娘にそれほどまで愛を感じないのだろうか。

 番組では「ウイリアムズ」という難病が紹介されていた。この病気の子を持つ母親が言っていた言葉「神が与えた賜物」には病気の子に対して真の愛が注がれていたように思う。そして子の言葉「分かち合える仲間がいる」も印象に残る言葉であった。  

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp