9月定例会 拡大家族交流会

       「病気を軽く・偏見をなくすために
          

               講師 NPO法人地域精神保健福祉機構 

                          理事・事務局長  桶谷 肇さん


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【はじめに】

 私は家族でも医療福祉の専門家でもないのですが、学生の頃に後で述べる事件を知ったことから全家連に入り、1980年から解散まで本部事務局で、月刊誌「ぜんかれん」の発行や、ビデオ製作、研修会を企画・開催するといった仕事をしてきました。2003年4月から4年間、ハートピアきつれ川に赴任して初めて現場で当事者の皆さんと活動し、とても勉強になりました。今は、『こころの元気+(プラス)』という月刊誌などを作っている地域精神福祉保健機構(COMBO:コンボ)の事務局長として働いています。

【遅れた精神障害者への理解と福祉】

 私が全家連に入るきっかけとなったのは、栃木県の宇都宮病院で看護師の虐待によって患者さんが亡くなったという事件です。それが組織ぐるみで行われていたということから国際的にも問題になり、当時の精神衛生法が精神保健法に変わるきっかけになりました。

 その頃は精神障害者は病人であって福祉の対象ではないといわれた時代でした。1981年から国際障害者年で、国際的には精神障害者も福祉政策の対象となっていましたから、日本でもようやく関係者の間で、精神障害者も障害者福祉の仲間ということになったのです。しかし障害福祉関係者の中にも理解不足があり、身体障害や知的障害と精神障害が同じに語られることには我慢ができない、という声が障害者団体の幹部から公然と出るような状況でした。

【偏見の中身】

 一言で偏見といってもいろんなレベルがあると思います。ひとつは社会の偏見です。殺人事件等が起こったときに、新聞やテレビであたかも犯罪の原因として精神の病気があるかのごとく言及したり、「犯人は通院していた」などという報道を無頓着にしたり、弁護側が「精神鑑定を」などといって精神のことと絡ませるなどがあります。それを見聞きするよく知らない人たちからすれば、怖い病気だと思ってしまうのは当然です。これも改めてほしい大きな問題です。

【偏見を取り除く努力】

 偏見は変えられることです。社会の偏見は、まずマスコミなどの病歴報道を改めさせることが必要でしょう。これは全家連でもかなりやってきました。特に池田小学校事件の時には、犯人が精神障害者だと自称したり、薬をのんで事件を起こしたなどと報道されました。

 その後、マスコミの人と話をしたら、「あの報道は間違いだった、犯人の言いなりとなって精神障害者として報道してしまった」と反省されていたようでした。いろいろ話してわかってきたのは、刑法39条に心神喪失や心神耗弱という言葉があって、前者の場合は罪に問わないとか、後者の場合は減刑するとか、そういう規定があるのです。だから「事件の際には精神の状態がどうだったか」というのが大きなポイントになるわけで、マスコミもそこに焦点を合わせるというわけです。

【偏見と薬の問題】

 医療関係者の偏見は、歴史的経過もあって変えることがなかなか難しいのですが、その中でも薬のことは、本人や家族の力で何とか良い方向にもっていくことができるかもしれません。

 日本は他国と違って、多剤大量処方といわれています。様々な抗精神病薬、統合失調症ならそれに効くといわれる何種類もの薬を出しているということがあって、これがいろんな問題を起こしています。例えば、副作用が出ているのに、それは我慢するべきこととして取り合ってもらえなかったりします。

【家族のための心理教育プログラム】

 アメリカにNAMI(National Alliance on Mental Illness)という団体があります。日本でいう全家連と同じ家族会の全国組織です。そこでFamily to family(家族から家族へ)というプログラムがあります。家族が他の家族の人たちに病気や対処法の知識を伝えるというプログラムですが、分厚いテキストがあって12週間(12回)にもわたって毎週行うプログラムで、これを日本に流布したいと考えています。

 家族会については、私が全家連に入った頃から活性化が課題で、家族会に会員が入ってこない、役員のなり手がいないなどといわれていました。そこを打開するためにも、アメリカのプログラムを基に、日本に合うプログラムを作りたいと考えています。

【地域精神福祉保健機構・コンボとは?】

 コンボでは家族学習会のプログラムを作る活動や、『こころの元気+』という月刊誌を作る仕事をしています。正式名称は特定非営利活動法人地域精神保健福祉機構(Community Mental Health and Welfare Bonding Organization)で、頭文字をとってコンボといっています。ファミレスのセットメニューや小さな楽団のことをコンボといいますね。そういうちょっとしたチームという意味合いもあります。

 また、Bondingという言葉はくっつけるという意味があって、自分達だけで自己完結的に事を運ぶのではなく、いろんな団体と協力してやりましょうという意味を込めています。全家連も大きな組織のように見えたかもしれませんが、実態は現場任せでした。逆に言えば無責任でもあったので、小さな活動が連携して役割分担をしたほうがいいと反省しました。

 コンボの理念は、ひとつはいろんな団体活動と連携して事業を進めること、それから、当事者が主体的に生きていけるシステム作りをすることです。つまり、医療・福祉関係者が当事者の人生を決めるのではなく、当事者がその人生を主体的に生きられるような社会にしていきたい、また、関係者がそういうかかわりができるようにしたいということです。

【当事者側の視点】

 少し前に当事者の方々と座談会をしたのですが、人々の言葉遣いがそもそも当事者の立場に立っていないというんです。コンプライアンス、アドヒアランスという言葉をきいたことがあるでしょうか?どちらも医療の用語です。コンプライアンスは一般にはルールや法律を守ることですが、医療用語で「服薬がちゃんとできているか否か」を「コンプライアンスが良い悪い」と言います。

 それに対して最近は、アドヒアランスという当事者サイドの言葉を使おうということになってきました。「きちんと薬をのんでいるかどうか」ということでは意味は同じですが、アドヒアランスは「当事者が納得して薬をのんでいる、自分で決めている」ということです。

 当事者サイドの法律という場合には、例えば「精神病院に入院している患者は、こういう場合以外は自由を制限されることはない」と謳って欲しいのです。仮に保護室や拘束が必要ならそう書いて欲しい。「何が当事者サイドに立つということなのか」という点については、そう簡単ではありませんから不十分な点も当然ありますが、まずは当事者の視点に立ちたいということです。

【役立つサービスの普及】

 それから、科学的根拠に基づいたプログラムやサービスを普及させたいと考えています。先ほど多剤多量処方のことをお話しましたが、「AとBの薬を組み合わせてどう効くのか」ということの科学的根拠がないわけです。医者たちの経験に基づいているに過ぎず、世界的に見て日本しか、そのような多剤多量の薬の出し方はしていないのです。日本の精神科医療の問題はベッド数が多い、長期入院が多いの他に、多剤多量処方があるわけで、科学的根拠のある処方をして欲しいのです。

【おわりに】

 今『こころの元気+』の賛助会員を募集していますので、関心のある方は会員になって購読していただきたいのです。6月に「首都圏ネットワーク」というNHKの番組で二回ほど「こころの元気+」を紹介していただきました。読者モデルになった方が普段どんな生活をしているかとか、二回目はさくら会(東京・世田谷区)の協力もあって、親と子の思いが微妙にずれている中で本人がどういう気持ちなのかが紹介されました。当事者が素敵な笑顔で表紙に出ている当事者向け雑誌を見て、「当事者が社会に向けて発言していく時代が来たのだな」とマスコミの方も感じていると思います。我々も今後いろいろな活動をしていきますので、是非関心を持っていただいて、ご協力いただければと思います。

(この後桶谷さんに会場から様々な質問がありました。紙面の都合で省略させていただきました)

平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        



新宿家族会へのお誘い 

 新宿家族会では毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

 金木犀の香りが秋を感じさせてくれる今日この頃である。ようやく、暑いという言葉が消えたと思ったら、もう年賀ハガキの予約販売の案内が届いた。

 今月は「偏見」、このあまりにも大きな問題について、長く全家連で活躍され、現在地域精神保健福祉機構で事務局長を努める桶谷肇さんからお話を頂いた。

 精神障害者への偏見はまだまだ根強くある。桶谷さんは、社会、特にマスコミの報道に対して苦言を呈していた。その一番の解決策は教育の場で理解を広めていくことであると述べている。これは全くの同感である。が、しかし、では、その教育を施す立場の人たちに精神障害の問題がどれほど理解できているのだろうか。特に大学現役から社会経験なしに教壇に立った教師たちにどう理解してもらえるだろうか。

 そして、桶谷さんは家族会の根本問題である「これからの家族会のあり方」のヒントとしてアメリカのNAMIのFamily to family(家族から家族へ)について述べられた。

「家族同士で病気の知識を得、経験を共有して賢い家族になっていく」。NAMIでは分厚いテキストとプログラムを元に家族から家族に知識が伝えられていく方法がとられる。日本では無理だ、という意見もあるようだが、精神障害は医療福祉の専門家、当事者、そして家族の三者の協働がなければ回復はありえないといわれる問題ゆえに、家族の勉強がまず望まれる。

 いま情報の時代である。我々はNAMI方式が無理なら、それに替わる手段を使って最先端の医療福祉を学ぶべきではないか。                         嵜

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp