1月勉強会より
  私の病気体験とホームヘルプ事業

      
講師 NPO法人ハート・ノーマライゼーション代表 大石洋一さん

※今回の講演内容は曽根晴雄さんのCDに次ぐ、フレンズCD第2弾として製作が進んでいます。大石さんが最初に発症した当時の苦しい病気体験と、後半、暖かい周辺の支援のおかげでめきめき回復へと向かった様子。そして、NPO法人・ハート・ノーマラゼイション(精神科ホームヘルプ事業社)の設立までに至る、苦難と喜びが訥々と語られています。

 今回の抄録では、CDには入らなかった講演の後半の質疑応答部分を記録しました。
(頒布中)

精神科ホームヘルプサービス:精神保健福祉施策では平成5年の障害者基本法の改正により精神障害者が「障害者」として位置付けられ、平成7年の精神保健法改正で「自立と社会参加の促進」が法の理念として明記されました。

平成11年の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正により、平成14年4月から在宅福祉事業の一つしてホームヘルプサービスが保健所(都)から各市区町村へ委託されました。これまで身体・知的障害者へのサービスとしては定着していましたが、精神障害者も同様のサービスが受けられるべきとの要望が実現したものです。それゆえ「精神障害者のホームヘルプサービスとは何か」が問われていますが、大石さんが自ら障害体験者として語るホームヘルプサービスの理念には頷くものが多くありました。


質問1  保健所、保健センターに利用申込を行ってから、およそどれくらいの期間でサービスを受けられますか。

大石 横浜市の場合ですが、この事業が開始されて間もないため、ごたごたしていることもあって、大体2ヵ月くらいかかっています。それでも最近は早くなってきて1ヵ月くらいにはなってきています。問題はヘルパーさんの数が足りないということです。実際、利用者証が発行されても派遣できるヘルパーさんがいないという場合はあります。私のところでも保留状態の方もおります。2月からヘルパーさんを増強を予定していますので、それは改善されると思います。

質問2 ハートノーマライゼーションでは何名のヘルパーさんがいますか。

大石 現在7名です。構成は家族会の親であったり、病気の体験者であったり、全くのボランティアの方など様々です。当然ですが、全員2級のヘルパー資格をもっています。

質問3 先程のお話でメンタルケアも行うと言われましたが、これの場合は臨床心理の研修を受けることが前提条件と言われたと思いますが・・・・

大石 これは臨床心理に限らず、横浜市が行う精神科医の話とか精神科のヘルパー経験者の話とか、あるいは当事者の話などを聞くという座学の部分とグループホーム、地域の作業所を訪ねて当事者との直接接触するという実習がその研修ということになります。これの期間が1週間くらいの時間をとって行われています。

質問4 ヘルパーの試験を受けるには、そういった専門の学校に通う必要がありますか?

大石 あります。ヘルパー2級、3級がありますが、一般的には2級ですね。これの受験に当たってはヘルパー養成学校に行かなければなりません。期間は3ヵ月から6ヵ月くらいに渡って通います。

養成学校はほとんど民間ですが、昼間コース、夜間コース、フリーコースなど、学費も学校それぞれによって異なり様々です。こうした情報を探すには地域の社会福祉協議会に行くと色々と資料がそろっていますから、訪ねられたらいいと思います。

質問5 横浜市ではメンタルヘルスまでホームヘルプサービスに加えられていることについて、横浜市ではどのような考えがあったのでしょうか。

大石 横浜市が精神障害者のためのホームヘルプサービスの元々の基本コンセプトというのは、厚生労働省が出している要綱に基づいて行っているわけですが、基本的に精神障害者の孤独を解消するための制度であると位置付けています。厚生労働省の要綱にはホームヘルプサービスの内容について「家事援助に限る」というような規定は入っていません。

実際、私たちのサービス事業を進めるなかでも、食事づくりや洗濯作業をしてくれるよりも、こたつに入って「きのうこんなことがあった。こんどはこんな風になればいいね」というような世間話しをしてくれる方が本人にとっては有難いことだと言われます。「食事はカップラーメンでもいい、それより話相手が欲しい」と言われます。それが本人とっては回復へ結びつくことで、このことが精神科ホームヘルプサービスの意味だと思います。

質問6 それは大石さんのハートノーマライゼーションだけでなく、横浜市内の他の事業者のスタッフたちもメンタルケアを行っているのですか?

大石 はい、行っています。これは私の私見ですが、精神障害者のホームヘルパーをやりたいという方の多くは、ご家族に精神障害の方がおられるとか、近くにそうした方がいるとか、何らかの精神障害に関わった方が多いですね。そういう方は、報酬からみても介護保健とほとんど変わらない上に、指定研修をさらに受けなくてはなりません。従って精神障害のヘルパーさんというのは志の高い方が多いと思います。私の事業所でもあるお母さんは病気の息子さんを抱えていながら、私も社会貢献したいからという方とか、以前精神障害者の施設で働いていた経験があるので、それを、いま主婦となって活かしたいという方もいます。

それから補足ですが、来年から身体/知的障害者には「支援費制度」というのが始まります。これは介護保健のようなものですが、精神障害者は対象となっていません。来年から身体/知的障害者のホームヘルプサービスも制度が変わってきます。これに伴って精神障害者のホームヘルプサービスの制度も何らかの影響が出るのではないかと思いますが、現在は特に変化はないようです。

質問7 今回のホームヘルプサービスの受給を受けるには、服薬していることとか独居だとか、安定期に入っているとか、受給にはものすごくハードルが高いと思います。こういうレベルまで回復していればヘルプは必要ないのではないかとさえ思えます。私たちが助けて欲しいのは、例えば家族の手に余る本人を病院へ連れていきたいけど、家族ではどうにもならない、といった場合などに、ヘルパーさんのような第3者がきて説得してくれたら、と思います。

大石 そうですね。こうしたホームヘルプのような社会資源は、ほんとは一番辛い状況にある本人や家族に当てられるべきと思いますが、現状は違っていますね。諸外国では障害者を地域で支えていこうという考え方だと聞いています。日本もそれに習って、例えば長期入院患者を退院させる方向に向いてきているようですが、アメリカなどでは「ベンチャー」という施設があって、病院でもなく、グループホームでもない、その中間的な施設があるそうです。日本はその部分が欠けているということはあちこちで聞きます。ですから、今後は家族会のようなところが行政に働きかけて、そうしたことに取り組んでほしいと思います。

とにかく、厚生労働省もようやく精神障害者についても何らかの手を打たなければならないと考えるようになってきた状況で、その第1弾がホームヘルプという段階です。私が十年以上前に発病した頃は「心の病」という言葉はなくて「精神病」でした。これ一つとっても十年前と今日では大きく変わってきました。また、テレビの報道の仕方も変わってきました。「偏見」に対する配慮も各地で見られます。しかし、偏見では「内なる偏見」も重要な問題です。内なる偏見とは当事者自身、家族自身であるということも聞きます。当事者、家族が自ら閉ざしていってしまうことの問題ですね。これが当事者の社会復帰を妨げているという見方があります。

私の場合も就職の履歴書に「精神障害」と書けばまず合格はあり得ません。ところが、最近になって私のことが放送に出たり、本に紹介されて、昔の友人から賞賛や激励の言葉はあっても、不当な声をかけられたようなことは一度もありませんでした。世の中も変わってきていると思います。世の中にはいい人がいっぱいいます。だから、ビジネスの世界では難しいのですが、障害者が普通の生活を送ることでは病気を隠してマイナスにはなってもプラスになることはありません。

よく家族会などで聞くのですが、親戚の集まりなどに病気の本人を連れていかない、というようなことを聞きますが、これも本人へのプレッシャーやストレスを考えたら間違った考えだと思います。これが内なる偏見です。親戚の人たちの前で堂々と、「息子は苦しい病気にもめげず頑張っています」と明言、いや誇りをもって発表すべきでしょう。そういう一人一人の努力の積み重ねで、社会全体の精神障害者への日の当たりが変わってくるものだと思います。

他人の力に頼っていても社会はなにもしてくれないでしょう。まず、自らが変わって、自らが行動していくべきだと思います。

質問8 そうは言っても週間紙などは悪い方向、悪い方向へともっていく傾向にあると思いますが。

大石 そうですね。週間紙は面白おかしく書きますから。しかし10年前から比べたら随分それはなくなったと思います。私のところに来た、まじめな新聞や放送はむしろ良心的、あるいは配慮してくれたいるということが感じられました。

質問8-2 しかし、まだ一般、特に年配者の精神障害者への偏見は根強いものがあります。だから幼児期の子供から教育していく必要があるのではないでしょうか。

参加者9 うん、だから最近小学校などでも始めていますね。

質問8-3 たしかにこのあいだテレビで小学生が老人ホームを見学にいったというニュースを流していました。

参加者10 だから、偏見をもっているのは熟年以降の固定観念に浸っている人たちではないでしょうか。世の中どんどん変わっていますし、これからの若い人たちの時代になれば、この病気ももっと素直に社会に受け入れられと思います。

質問11 話は変わりますが、大石さんは拝見していますと病気の様子がまったく見られませんが、もう薬は飲んでいないのでしょうか。

大石 いいえ、かなりの量を飲んでいます。薬の成分として低いと思いますが、朝5錠、寝る前に9錠飲んでます。

会場(ため息)

質問12 それで副作用はないのでしょうか。

大石 現状ではないですね。

質問13 どのような薬を飲んでいるのでしょうか。

大石 私は薬のことは先生にお任せしてあるので、どういう薬を飲んでいるか知りません。これは私の個人的な考えですが、よくご家族の方で薬について神経を尖らせている方おりますが、例えば新薬が出たらすぐに新薬を使ってくれとか、いま飲んでる薬がよくないから変えてくれとか、そうした素人が専門医に対して要請するようなことを時々耳にします。しかし、こうしたことは私の個人的な意見ですが、あまりプラスにはならないと思います。

薬に関してはわれわれは素人ですから、プロの仕事に素人が口を出すと、却ってプロは仕事がやりにくいのです。まあ、自分が飲んでる薬くらいは知っておくべきでしょうが、私は知りません。先生にお任せしています。先生を全身全霊信じていますから。もちろん、経過が思わしくなければそれを先生に言います。でも、薬が悪いとか、薬を変えてくれ、とは一切言ったことがありません。

ただ、年齢が進めばこの統合失調症というのは落ち着いてくるといわれていますように、私は34歳ですが、発病が22歳ですから12年経っています。最初のころはほんとに大変でした。副作用もいろいろあって。でも、こうして落ち着いてきて、自分に合った薬が見つかったのは3年くらい前からです。いまの薬になってから副作用もないし、精神的な不安定感もありません。

質問13-2 薬で朝起きられないとかということもないのですか。

大石 それは薬のせいではないと思います。それは体調がよくないからおきられないのだと思います。私はそう考えてきょうまで来ました。

質問13-3 うちの場合は、先生が薬の説明から増やすこと、減らすことを本人によくするんです。だから、息子も薬について知識として入っていて、こちらから言うようになってしまいました。いまの大石さんのお話は大変参考になりました。

大石 ま、本来は薬の成分や分量については知っているべきだと思います。ですから、いまのお話の方のようなことが間違っているわけではありません。

私は先ほどの本でも書いていますが、精神疾患で最も大切なことは主治医との相性だと思います。いい先生とめぐり合ったら、どこまでもついていくとことです。

質問14 私はいいケアマネジャーとめぐり会って、息子の回復が実現したと思っています。

大石 そうですね。そういう出会いとかがこの病気にはとても大切です。

ですから、主治医との相性というのは、私は「結婚」と似ているなと思います。恋愛はいくらでもしていいと思います。つまり、いい先生が見つかるまで、いろいろ病院を換えていいと思います。

でも、この先生だと決めたならば、それは結婚したと思って、一生添い遂げるくらいの気持ちで先生と接すれば、先生だって、慕ってくれる患者さんは可愛いく思います。信頼してくれる患者さんは、先生も本気で思ってくれます。

いい先生との出会いとか、先生との関係については結婚とか恋愛と似ていると思います。だから、一度結婚したら離婚といったことを考えずに、永遠の愛を育むことがいいと思います。(爆笑)

質問15 大石さんはこれまで何名くらいの先生が変わりましたか。

大石 現在の先生で3人目です。

質問16 それは自ら変えたのですか。

大石 そうです。最初の病院は昼間しか診療がないので仕事をしながらの受診が無理だったのです。

2人目の先生にはずいぶん危機的状況を救われました。その先生は親身なって話を聞いてくださって、アドバイスはしませんでした。ただ、私はその先生に会うために病院にいくことが楽しみでした。もちろん、男性の先生です。(笑い)その先生と結婚したつもりでした。(爆笑)

(紙面の都合で以上で抄録を終わります)


勉強会講演記録CDの2枚目が完成しました。
フレンズ編集室では講師の先生方の講演記録を生の声で聞いていただこうと、CD制作を行っていきます。
まず第1弾として、9月勉強会で講演していだいた曽根晴雄さんです。
タイトル『ちょっと私の話を聞いてください』  
 =聞けば見えてくる・精神分裂病当事者が語る患者の本音=

 家族は患者本人の気持ちを知っているようで理解できていません。二十数年間この病気と戦って来た曽根さんが、自らの体験をもとに訴える精神病者の苦悩、怒り、病気のこと、希望、それはすべての精神の病いに侵された人たちの声を代弁しています。
 また、当事者仲間の先輩として語る内容は、回復しつつある皆さんのお子さんが聞いても大いに励まされます。
 そして誰よりも聞いてもらいたいのは、分裂病を全く知らない人たちです。”もしあなたのお子さんが病気になったら”という目的の他に、各地で取りざたされる障害者の事件の度に生まれる誤解や偏見を防ぐためにです。一般の方に呼びかけてください。

第2弾は
「心の病を克服 そして ホームヘルプ事業へ」 
大石洋一さんです。
収録分数;61分 CDラジカセ、パソコン、カーステレオ等で聞けます。
価格;各¥1,200(送料共、2枚同時申込の場合2,270円)
   申し込みはフレンズ事務局へ E-mailでお申し込みください。frenz@big.or.jp
発売:平成14年1月
企画・制作 新宿家族会フレンズ編集室
(新宿家族会創立30周年記念事業)

編集後記 

 全国の各市町村で「自立と社会復帰のために」としたホームヘルプサービスが始まっている。新宿区でも平成15年から始まる。ここで、問題は精神障害者へのホームヘルプサービスの内容である。

 精神障害者の多くは身体的には問題がないケースがほとんである。身体・知的障害に倣って始まったがゆえだろうか、そのサービス内容がほとんど身体・知的障害者のサービス内容と変わりがないことに疑問をもつ。

 精神障害者の自立と社会復帰という目的を達成させるためには何が必要か。それは精神障害者が最も苦手としている「人との付き合い」である。

 大石さんの経営するハート・ノーマラゼイションでは、その「人との付き合い」をメインサービスとしているという。あるときは利用者とヘルパーがコタツに入って、2時間話をして帰ってくるときもあるという。

 精神障害者の多くは、そのほとんどが毎日自室にこもり、テレビ、ゲーム、読書、音楽、こうしたハードとしか向き合えず、他人との会話もなく過ごしている。つまり、精神障害者が求めているものは、掃除洗濯といった「手間=ハード」ではなく、話ができる「人=こころ」を求めているのである。この目的を達成できたときに精神障害者の「自立・社会復帰」も可能となるのではないだろうか。               

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp