新宿区後援・12月新宿フレンズ講演会

不安と、強迫性障害・パニック障害・摂食性障害


講師 大泉病院 精神科医 高橋希衣先生

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【不安は誰しも感じる】

 パニック障害と強迫性障害は、不安障害に含まれます。
 不安とは、これから起こる事象に対する気がかりや心配で、原因や対象が漠然としている恐れの感情を言います。これに対して恐怖とは、例えば虫、高い所、お化けなど、対象がはっきりしているものに対する恐れの感情を言います。
 不安は身体的な要因も原因となることがあり、カフェインやアルコールの過剰摂取、甲状腺機能亢進症(バセドー病)のような病気も関わることがあります。

【自分でできる不安のコントロール】
 日常生活でできる不安のコントロールやセルフケアです。十分な睡眠を取る:昼間に眠気が残らないくらいの睡眠リズムを確立することが重要です。

節酒・節煙:アルコールやタバコは不安を増悪させる因子となり得ます。カフェインに気を付ける:カフェインのとり過ぎも不安を増強させるので、1日300?以下を目標にしましょう。適当な運動:30分くらいの運動を、週3回以上行うことを目安に考えてみてください。リラクゼーション法:何時でもどこでもできる3つの方法を覚えて活用しましょう。皆さんもやってみてください。

・イメージ法 特に不安を感じない通常の精神状態の時に、リラックスできるような情景、例えば海辺や広い高原、温かい手に抱かれる感じなどを具体的に思い浮かべておきます。そして不安を感じた時に、同じイメージを持つことでリラックスし、不安を抑える方法です。

・呼吸コントロール法 静かに座ったり、横になったりして鼻で息を吐いて吸うのをゆっくり繰り返します。鼻から3秒くらいかけて息を吐きます。その後2秒くらい息を吸います。5秒サイクルを1回3分間やりましょう。これを1日4回くらいやると、不安が大きくなりにくいと言われています。不安を感じた時に、この呼吸法を思い出してやると不安が和らぐと思います。寝る時に不安がある時も効果があります。

・筋肉リラクゼーション法 体の一部分、肩や腕などに思い切り5秒くらい力を入れて、そのあとフッと力を抜いて、5秒から15秒楽に過ごす、というやり方です。

これらを日常的に繰り返しやって、リラックスする方法を身につけてください。

【不安障害の種類と治療】
 通常よりも過度に心配、不安、恐怖を感じて、日常生活に支障が生じているというのが不安障害です。支障が生じているのは本人である場合も多いのですが、中には本人があまり困っていなくて、周りの家族や生活に支障が出ているケースもあります。
 生活に支障が出ていると感じるのは、個人差がとても大きいところで、人それぞれずいぶん違います。あくまで本人や家族、周りの人が困っているか、に着目します。
 全般性不安障害:対象のない持続的な不安感を感じている状態です。これはアルコールやカフェインの過剰摂取や甲状腺の病気など、身体的要因や原因物質があるか、まずその除外が必要です。

特定の恐怖症:特定の状況や対象に対して著しい恐怖心を抱くもの。例えば閉所恐怖症とか高所恐怖症など、狭い所や高い所が苦手という方もいると思いますが、それらが特定の恐怖症になります。

社会不安障害:人前で話すといった特定の状況で、赤面・発汗・会話困難等の症状が生じるもので、赤面恐怖症、対人恐怖症などとも言われます。
 心的外傷後ストレス障害(PTSD):大きな災害や事故の経験など心身の危険を感じるような出来事の後に、生じる障害です。

不安障害の治療の原則:不安の対象を避けてばかりいると対象と向き合うことが不安になって、さらに不安の対象が増えることも起き得ます。できるだけ不安の原因を回避しないで、対象に向き合っていくことが治療の原則です。

抗うつ薬SSRI:セロトニンのバランスを取る薬として、抗うつ薬の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)をよく用います。例えば、ルボックス・デプロメール、パキシル、レクサプロなどの薬です。効果が出るまでに時間がかかるので、少量から始めて効果や副作用などを評価しながら徐々に増やしていきますが、十分な期間、十分な量を試すことが必要です。例えばパキシルでも30?で効果がなかったが、40?に増やすと効果が出る場合があります。
抗不安薬:主にベンゾジアゼピン系の薬剤で、飲むとすぐに効果が実感できる薬です。ただし根本的な治療ではなく、依存、眠気やふらつきの副作用の問題に注意が必要です。あくまで一時しのぎで、不安がすごく大きくなってしまってどうしようもないという時に、頓服として使う薬、「お守り」として持っておくような薬です。

漢方薬:半夏厚朴湯、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯などが有効なケースもあります。

【パニック障害の症状と治療】
 普段使う「パニック」とは違って、パニック発作が繰り返し起こり、その発作に対して強い不安や恐怖を感じる障害です。日本ではおよそ100人に1人と言われています。
 原因としては、脳内のセロトニンのバランスが崩れやすいという遺伝的・体質的な素因がある人に、生育環境や生活環境に過度なストレスがかかった結果、脳内の神経伝達物質(セロトニン、GABAなど)が乱れて起こると考えられています。これは、生命に関わる病気ではありませんが、慢性的な発作によって日常生活には大きな支障が生じることがあります。その発作や不安のために、病院に行くことさえ困難なケースもあるので、早期の治療が大切になってきます。

薬物療法:SSRIの服薬と抗不安薬の頓服ですが、薬の使い方として「これを飲んだら大丈夫だった」という経験を積むことが大事です。

認知行動療法:「不安に振り回されない」「不安なことから逃げない」という姿勢が重要です。不安になった時の対処法として、リラクゼーション法の呼吸法などを用いると良いと思います。薬物療法も認知行動療法の一環として使用することがポイントで、「薬を飲んだから大丈夫」と言い聞かせて電車に乗るとか、「薬を飲めば治まるから大丈夫」とお守り代わりに持ち歩くことで、自分の行動範囲を少しずつ元に戻し広げていきます。

段階的曝露:認知行動療法のやり方で、不安な状況にあえて晒し、少しずつ慣れていくという方法です。長い時間、多い回数を曝露するほど、早く良くなります。曝露するにあたっては、その準備が重要で、リラクゼーション法を身に着け、認知再構成法や不安階層表を準備してから曝露していきます。

・認知再構成法(コラム法) 不安が生じた時の状況や症状を具体的に記して、その時の不安の強さを%で表していきます。例えば「12月9日、電車内で動悸がした時は、自分の不安99%だった」と左端に書きます。その時浮かんでいた考えやイメージ、その根拠を書きます。「自分としては逃げられないと思った75%」とか、「誰も助けてくれず、遠巻きに見放されているようだった90%」というふうに、その時の状況を詳しく言葉にして書き込みます。
 こういったコラムを、通常の落ち着いて考えられる時間に書きます。すると不安が生じた時に「苦しい、見放されている、死にそうだ」というイメージではなくて、「不安で死ぬことはないし、駅員さんは助けてくれる、大丈夫だ」という考えに徐々になっていくものです。

・不安階層表 左側に0から100までの数字を書いて、0は全く不安がない状態、100が最も不安な状態のそれぞれの状況を、自分で数値化して書いてみます。例えば、0は「駅のホームに友人と立つのは何の不安もない」、上に行くにしたがって不安が大きくなり、「1人で駅のホームに立つ」とか「1人で各駅停車に乗る」、「友人と準急に乗る」、100は「ラッシュ時に1人で準急に乗る」などの、不安を0から100まで表して、自分の行動を書いていきます。

 こうして自分が不安に思うような状況に少しずつ段階的に曝露していくことで、不安がだんだん少なくなっていく、という認知行動療法です。

【強迫神経症の症状と治療
 強迫神経症というのは、強迫観念と強迫行為という症状がある病気です。強迫観念というのは、無意味で不適切にも関わらず頭から離れない考えのことで、強迫観念によって生じる不安を打ち消すための行為を強迫行為と言います。どちらも自分で「馬鹿々々しい」と思っても止められないところが、それは事実だと信じて疑わない妄想との違いになります。
 50〜100人に1人と推定されていて、うつ病などほかの精神疾患の合併も多いと言われています。これも、強迫的なパーソナリティや体質などの素因や性格などに、ストレスが過度に加わった時に生じると考えられています。
 日常生活に支障が出やすい疾患ですが、これをうまく活かして成功している人もいます。例えばサッカーのベッカム選手も強迫神経症ですが、その完璧主義を活かしてサッカーで成功していると言われます。自己完結型と巻き込み型があり、巻き込み型では家族が巻き込まれるケースがほとんどを占めています。

不潔恐怖:強迫神経症の症状で一番多いのが汚染の心配です。過度の手洗いや長時間の入浴が代表例で、手が真っ赤になるまで洗い続けたり、トイレットペーパーを何ロールも使ったりします。汚染を不安に思い過ぎての強迫行為で、細部にこだわり過ぎる余り、むしろ不潔になってしまうケースもあります。

確認行為:人や自分を傷つける心配をする人もいます。鍵やガスの元栓などを何度も確認するせいで会社に遅刻するとか、車で人を轢いたのではないか、街を歩いていて子供や老人にぶつかって怪我をさせたのではないかなどの心配をして、何度も同じ場所に確認しに行ってしまう。日常生活に支障が出てしまうレベルまで確認してしまいます。

正確性の要求:文章を読んでいて正しい意味にこだわってしまうあまり本を読み進められない、何度も書き直してしまう、など前に進めない症状が出る方もいます。対称性へのこだわりとして、物の置き方、左右対称でないと気が済まない、「リモコンはこの順番に置いていないと気に入らない」など、いずれも本来の目的が果たせなくなるまでこだわってしまいます。

数字へのこだわり:人によって数字は違いますが、例えば「8」だとすると、8回やるまで止められない、8歩でここまで進まないと先に進めないとか、そういった数字にこだわる人もいます。

無用なモノへのこだわり:「いつか使う時が来るかもしれない」「無いと不安」と、街で配られているティッシュや商品の付録、贈答品の空き箱など、本来無用なモノを捨てられずに溜め込んでしまいます。強迫神経症の治療は、心理教育と薬物療法と、曝露反応妨害法という認知行動療法が原則です。
心理教育:症状への理解を深めて治療意欲を高めてもらうことです。粘り強い治療が必要ですので、この心理教育が非常に重要です。

薬物療法:先ほど話したSSRIを使用します。曝露反応妨害法:認知行動療法の1つです。強迫観念という不安があり、それを打ち消すための強迫行為を行う。すると一時的に不安は急激に減りますが、その後はまた不安がずっと続いて不安も強迫行為もいっそう強くなるという悪循環に陥ります。その悪循環を断ち切るために、あえて不安に曝露(直面)して強迫行為という反応を我慢していくわけです。

【摂食障害の症状と治療】
 
摂食障害は、単なる食行動の異常ではなく、それに伴う認知や情動の問題が特に重要と言われ、体重への過度のこだわりがあり、自己評価に体型が過剰に影響しています。
 1980年代から患者数は急激に増加して、今は約10倍と言われています。生涯有病率は、女性で1〜2%、男性で0.2〜0.3%と言われ、女性のほうが多いです。医療機関を訪れる人は少ないので、実際はもっと多いことが予想されています。好発年齢は10〜20代、思春期くらいの年齢で発症する方が多いです。
 原因としては素因と環境要因で、社会的要因として「スリムであることをもてはやす文化」が背景にあると言われています。日本の若い女性は痩せている人が多く、20代の女性の体重の平均は、標準体重のマイナス10?です。ちなみに、妊婦が痩せていると生まれてくる子供は、将来糖尿病になりやすいとも言われています。文化の影響が大きく、先進国で多いとされています。
 心理的要因として、低い自己評価、自尊心の低さ、強迫性などの性格が挙げられます。抑うつなどが二次的に生じている可能性もあります。家庭環境としては、人それぞれ個人差が大きい所ですが、両親の不和や両親との接触の乏しさ、過度に期待されるなどが影響しているとも言われています。

神経性無食欲症(拒食症):体重へのこだわりから、痩せているのに太っているというボディイメージの障害があり、食事を食べたがりません。精神症状として、抑うつ、不安、完璧主義、頑固さが出てきます。食事を摂らないため、身体症状として低体重、無月経、徐脈、低体温、産毛(うぶげ)が密植したり、むくみが出たりします。低体重になることで精神症状や、行動異常がますますひどくなり、低体重から致死的になることも少なくありません。
 行動異常としては、食事制限、絶食、隠れ食い、儀式的行動などがあります。儀式的行動というのは、食べ物を刻む、食事を始めるまでに異常に時間がかかる、極端な偏食などの行動異常です。排出行動として下剤の乱用や自己誘発性嘔吐、その他、万引きや自傷行為がみられることもあります。

神経性大食症(過食症):摂食行動、むちゃ食いの反復、絶食、隠れ食いなどの異常行動があります。排出行動としては、下剤の乱用、自己誘発性嘔吐、利尿剤乱用などです。精神症状として気分の易変性、衝動性、抑うつ、不安など。身体症状は、う歯(虫歯)や電解質異常、不整脈、むくみ、食道の炎症などがあり、特に電解質異常や不整脈によって、命を落とすことすらあります。あとは、アルコールを含む薬物の乱用や万引き、自傷行為が見られることがあります。
 時間がかかり、何度も挫折するのが摂食障害の治療ですが、治療者や患者、家族の間で信頼関係を結び、安定した環境を作る関係作りが重要です。ただし、低体重は命を落とす危険性もあります。急激な体重減少、重篤な身体合併症、不整脈があるとか、重篤な精神疾患、うつ病、希死念慮がある場合、治療に適した環境が得られない、周囲が疲弊して家庭では治療が続けられない、そう言った場合には入院加療の適用もあります。

摂食障害は、「食へのこだわり病」と考えて、治療の原則として、体重を増やすとか、きちんとした食事を摂ることだけに着目することは控えたほうが良いと思います。

健全な体を維持できるラインを守りながら、健康的な側面を伸ばすことが治療の原則となります。白黒思考、オール・オア・ナッシング、全か無かという考え方をする人も多いので、良い部分、楽しめること、自信を持てること、そういった良い面を伸ばしていく、人と社会の繋がりを持つというところにも着目して、食へのこだわりを減らしていくことが重要です。

                                         〜了〜

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
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編集後記
 
新年が明けた。相変わらず正月と言ってもめでたくもあり、めでたくもなしと言ったところで、また一年歳をとったことが恨めしい

 昨年十二月は山澤先生が急用で欠席となり、代わりに大泉病院 精神科医 高橋希衣先生がピンチヒッターに立ってくれた。そして「不安」についてあらゆる角度から述べてくれた。

 不安と言えば五木寛之氏が「不安の力」という本を書いている。高橋先生も冒頭で不安は誰しも感じると述べているように、五木氏も今の時代不安を抱かない人はいないと言っている。

 つまり、不安は富豪でも貧困でも、あるいは老いも若きも誰でも持つものなのだろう。不安を感じて、不安を乗り越え、安心を勝ち取る。しかし、その後に必ず別な角度からの不安が生まれる。この不安を上手くやり過ごした時、人はある種成功感を感じ取れるのではないだろうか。そんな風にして人間は成長し、歳を重ね、老いていくのだろう。

 それにしても高橋先生が精神科医としての不安についてよく調べていただいた。興味をもったのは不安障害の治療の原則だ。先生曰く「できるだけ不安の原因を回避しないで、対象に向き合っていくことが治療の原則」だと。不安から逃げてばかりではだめで、対象と向きあうことが不安になると言っている。

 五木氏も同じことを言っている。不安があるから安心がある。しかし、障害を持った人たちがそのことを理解できるか。回復の度合いにもよるが、そこが難しいのかも知れない。何故なら高橋先生が述べたように、様々な不安が列記され、それにご本人たちは本気で不安に対して取り組んでいるのである。何度もカギを確認し、何時間も顔を洗うのである。     嵜

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp