新宿区後援・新宿フレンズ3月講演会

    SSTで上手な対応  
      家族も当事者も一緒に学ぶ 

                     講師 SSTリーダー 高森信子さん

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【そのまま受け取ること】

 先日、ある家族会でお父さんが「地元の家族会と付き合いたくないので、遠くの家族会に来ました」と言われました。子供は毎晩「お前のせいでこうなった」と親を責める。そして相談事として書かれたのが、「息子が自殺してほしい」「この思いをどこにぶつけたらいいのか」でした。

 消極的な死を願ったのですね。会場にいた30人ほどの皆さんがシーンとしたのは、どんなに辛かったかと思われたからでしょう。同じ立場の家族が家族の苦しみを分かるのです。家族会で話すことが親の一番の治療です。

 そのお父さんは「息子が発症して20年、世間に知られないように家族だけで抱え込んでやって来ました」と言いました。でもそれは病気を秘密にして生きていることです。世間体を気にして、息子の今を否定して「表に出せない」というわけです。息子さんは、親の世間体との戦いの中で、果たして居心地がよかったでしょうか。

【子離れは難しい】

 あるお母さんが「あれしなさい、これしなさい、病気が良くなるから」と言っていたら、子供はうっとうしがって部屋に鍵をかけて出てこない。食事にも来ないので、お母さんは「2時間ほど外に出てくるからね」と声をかける。すると息子が2階から降りて食べるそうです。息子は母親の気遣いに気が付かず、一方的にうるさい親と思っているのです。

 その息子さんが薬を沢山呑んで、病院で胃洗浄を受け帰宅して、お母さんは息子さんの背中をさすりながら、「今のまんまのお前でいいから生きててちょうだい」と言いました。その次の日、息子が2階から降りてきて「お母さん」といった。そうして会話が始まりました。しかし、折角よいスタートだったのに、お母さんは良くなったと安心して、また元のうるさい親に戻ってしまい息子さんから嫌われてしまったそうです。

【フィルターを通さない会話を】

 さてSSTはSocial Skills Training=社会生活の技能訓練の意味で、受信技能、処理技能、送信技能の3つのスキルの「生活技能訓練」です。ご家族は相手の言動を読んで、ちゃんと受信できるようになりましょう。また「昼夜逆転をなおすには?」「病識を持たせるにはどうしたらよいか?」など、自分の言いきかせの術をアップしたいという思いが強くありますね。

 40年前の「当事者が言いたいこと」の全国アンケートがあります。トップは「もっと私の気持ちを分かってほしい」。2番は「つべこべ指図しないでほしい」でした。

 家族は「子供の気持ちも性質も、もう充分に分かっている」と思っています。しかし本人には「分かってくれない」という思いがいっぱいあるのですね。親にとって大事なのは、この気持ちを分かることなのです。

コツはこの3つです。

1)シンプルに

2)明るく

3)単純に分かりやすく話す

 「フィルター」という考え方を使って話すとSSTはわかりやすくなります。 「人間はこうあるべき」という思い込みの人生観・価値観などがフィルターになっています。「あの人、頑固よ」と言われる人はフィルターの厚い人、「あんた強情なのよ」と、他人から言われても直りません。そのフィルターを薄くするのがカウンセリングです。

【健康な部分を増やす】

 薬だけではなかなか治せなくて、治せるのは本人の力。その健康な部分の力が出せるように、環境を整えることが大事になるのです。

 元気になるコツは、健康な部分、病気の人にとって遊びの部分、楽しいこと、心地よいこと、それを主にすることなのですね。しかし、それを義務として課すと、幻視は増えてくる。病気の人は遊び下手です。無邪気に遊んだり、駄々をこねたりしないで、いい子をして頑張り過ぎて親の顔色をみてしまう。心の底から遊ぶ経験の薄かった子たちです。

 この病気は分かりやすく言うと、大人になりたくない病気、心と年齢がイコールになっていないのです。「自分の病気を忘れている時がありますか?」と聞いたら、大学を出ている人が「私は24時間、病気が張り付いていて、寝ていても夢に出てくるんです」と言った。SSTが終わった後で、その人が「すみません、さっき嘘を言いました。パンにジャムを塗っている時は忘れていました」。些細な事でも嘘をつけないのです。これは感情が子供なのですね。

【SSTをしてみよう】

 SSTプログラムで「相手の気持ちがわかる大切な会話のポイント」を学びましょう。

1)関心の表明

2)反復確認

3)話が具体的になるための質問

4)共感の言葉

5)自分の考え

 まず、1)関心の表明とは、どういう風にしたらいいのでしょうか? たとえば当事者のグループでSSTを学ぶときは、次のように進めていきます。

1) あなたの生活の中で「もっとよくしたいこと」はなんでしょう?

 「お願いが上手になりたい」「もっと明るくなりたい」など、皆それぞれ違う話があるでしょう。それを聞きます。

2) 相手を選んで、いつものやり方をロールプレイで演じてもらいます。

 たとえば「明るい自分になりたい」という希望があれば、SSTリーダーが「人との出会いは、まず挨拶をしますね、それをやってみましょう」と導きます。「場面はどんな時にしますか、近所のおばさんに会ったとき?」とか、本人に選ばせて「こんにちは」「あら、〇〇さん、久しぶりね」などとロールプレイします。

3) 参加者は「よいところをほめてあげましょう。

【家族もSSTを】

 ご家族は、カウンセリングの流れの中に入っていきます。つまり、何か困るような質問をされても、返事に詰まる必要はない、とりあえず相手の言う通り繰り返す反復確認を身に着けましょう。

 「質問をしたくない私」が、フィルターになっていることがあります。面倒は嫌だから会話を短くして、話が具体的になる質問を避ける。あるお母さんが「うちの子は、ストレス対処法の会に行って『よかったよ』とニコニコ帰ってきたんです。でもすぐに『ダメだ、つらいよ』と言い出したんですよ。うちの子は楽しいとつらい、いいことと悪いことがくっついていると分かった。両方の矛盾をうちの子は持っているんです」と言うのですね。

 私は「その理由を息子さんに聞いてください。それが宿題です」といいました。次にお母さんに会ったら、「よかった」というのは「ストレス対処法のプログラムがよかった」で、「ダメだ」は乗換駅の混み具合だったというのです。子供に質問をすると話がややこしくなる、というフィルターをもつお母さんだったのですね。

【「生きているだけで立派だよ」】

 幻聴は悪口や自分を否定する言葉が多いのですが、それは、自分をダメだと思い、嫌っているところから湧いてくるのだそうです。何もできない、働けないと悩んでいるからでしょう。

 作家の五木寛之さんは「生きているだけで立派だよ」と言っていますが、病気の人は病気の重荷を背負って生きているのだから、一日を生きただけで立派なのです。「あなたの背中にはカタツムリが殻を背負っているように、他の人より大きな荷物を背負っている、だから生きていることがお仕事。生きているだけで立派だよ」と話してください。


【親亡き後のために】

 親が生きているうちに、親亡き後のために具体的に何をすればいいかを考えて実行する必要があります。出来ることは多い方がいいですが、最低でも2つの技術があれば何とかやっていけるのです。

1)お金をやりくりして使いこなせること

2)困ったとき、他人にお願いできる力をつけること

 子供を助けてくれそうな人の名前を、親戚の人や兄弟姉妹以外で10人くらい挙げてみてください。兄弟姉妹だけに負担が行くのはよくありません。さぁ何人いましたか?

 たとえば主治医、看護師、ケースワーカー、訪問看護師、行政の保健予防課、障害福祉課の職員、地区担当の保健師、保健所や病院のデイケアスタッフ、119番救急車つまり消防署の人、110番  

つまり近くの交番や警察署の生活安全課のお巡りさん。

 あるお母さんは荒れ始めると「交番に行って、お母さんの悪口を聞いてもらいなさい」と言うんですって。2時間くらいたつと交番から連絡があって「もう返していいですか?」と言ってくる。

 まだあります。生活支援センターのスタッフ、近所の人、民生委員、家族会の横のつながりの人、いのちの電話、後見人の弁護士、連れ合い、恋人…こういった相談のできる関係を、親のあるうちに繋げておいてください。「こんなにいっぱい助けてくれる人がいるんだよ」は、大きな安全です。

 『こころの科学増刊−本人・家族のための統合失調症との付き合い方』(岡崎祐士編・日本評論社)に、私はこの「親なき後を考える」を書きましたが、兄弟姉妹の方々は、つらい思いを書いています。また「恋愛・結婚・子育てをサポートする」の章もあり、本人たちは結婚したい、子供がほしいと思っているのです。親子で読んでいただきたい1冊です。

マイメッセージで話す

 さて、SSTの練習をこれからしたいと思います。言われて困った会話はありますか。

 例えば「病気じゃないんだから、薬を飲みたくない」。

まずは反復確認「飲みたくないんだ、どうして?」「飲んでいる限りは精神病だよ、それなのにお前も薬飲めって言うだろ」「精神病っていう言葉がつらいんだ、だから飲まないんだね。薬飲まないとどうなるかな?」「やってみないと分かんないじゃん」と言うかもしれない。

 医師が「薬を飲みなさい」というと、反発するタイプ=啓発型と素直に受け入れるタイプ=依存型があります。依存型の場合は「作業所に行きなさい」というとちゃんと行く。「啓発型には意見を言わないで聞くだけがよい」と言われます。ではどうやって治したらいいか。本人が傷ついてようやくわかるタイプだというのです。

 「再発しない奇跡を信じて、薬をやめる」と言ったら2)反復確認「あなたはやめたいんだよね」「あなたは何度も薬をやめて再発しているけど、やってみたいんだよね」という。そこでチラッと5)自分の考えを言う「そうか、だけど、薬やめると1年で70%は再発するからね、飲んでくれると嬉しいな」「先生にも今の気持ちを言った方がいいよ」と伝えましょう。

 そして4)共感の言葉「孤立無援はつらいよね〜」と同情をする。「でもお母さんはあなたの味方だから、絶対に味方をするから」。その時に「あなたはお母さんにとって宝物だから」と言ってあげてください。

【孤立感を取り去るのは家族の愛情】

 幻聴や妄想は、不安、孤立、過労、不眠などの原因があると、健常者でも調子が悪くなり、幻聴がスタートするそうです。この4つの原因がある限り、たまたま1つの幻聴や妄想が消えてもまた出てくるのです。次は「うちに泥棒が入る。姿は見えないが茶筒からお茶の葉を盗んでいく」「あれはお母さんが使っているの」と言ってもダメ。次から次へと妄想は湧いてきます。

 まずはお薬が必要です。抗精神病薬と抗不安剤、睡眠剤で、不安と不眠と過労の過ぐらいは取れるかもしれません。しかし、孤立は薬では取れない。孤立を取るのは、親や周りの人の愛情です。私はビタミン愛といっています。

 あなたは大切な人、大事な人であることを伝えましょう

 生きているだけでも立派です。「たとえ、あなたは何もしていないと思っても、生きているだけで充分であることを伝えましょう。

 気持ちを分かってあげる。家族は、この力をつけてほしいと思います。どうぞSSTを活用してください。            ?了?

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        



新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

 「地震」「津波」この言葉を阪神大震災のあと忘れていた。特に阪神大震災には津波の被害はなかった。今回は地震のあとに来た津波の威力に自然の力をまざまざと見せつけられた。

 そして、このような大災害に見舞われるとまずおいてきぼりになるのが精神障害者の救済ではないだろうか。東北地方にも精神障害者の存在があって、地震があろうが無かろうが、日夜病気と闘っていたはずである。亡くなられた方もいるだろうが、幸い命は助かっても薬が流されたしまったという事例もあると聞いている。しかし、こんな時はそれどころではない。一般の人たちの食べ物さえ不足しているからだ。

 そして、東京においては福島原発の爆発事故以後、街が暗くなった。街灯が半減されているのだ。繁華街も勢いが無くなり、電車の車内も日中は照明なしで走っている。商店の店棚も空の棚が目立つ。テレビのはしゃいだ広告は消え、連日東北地方のニュースか福島原発の話題で終始している。

 時に思うのは、日本という国はこれがノーマルな姿ではないのだろうか、ということだ。戦後の焼け野原から立ち上がって来て?G??D??P?1位だ、2位だと騒いでいたが、日本という国土は地震大国と呼ばれるに相応しい危険な土地でもあったのだ。そのことへの配慮もなく、狭い土地で世界を相手に電化製品、車、コンピュータ、等々売り上げて来た。

 今、我々は何をしなければならないのか、が問われている。単に災害救済だけで終わってしまったら、また第2次、第3次の災害が来た時、いやホントに来るかも知れない災害に対応した国土造りが必要な気がする。東北地方の津波災害の跡地を見ていると、戦後の焼け野原を思い浮かべるのは私だけだろうか。   嵜

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp