2月家族会勉強会

    統合失調症の経過と人生〜寛解と再燃

               講師 慶應義塾大学医学部精神神経科学教室 
                     社会精神医学研究室 茅野 分先生


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 はじめまして。私は茅野 分(ちの ぶん)と申します。私は東京都出身ですが、父親が長野県茅野市出身です。群馬大学医学部を卒業後、長野県の佐久総合病院で臨床研修を行いました。同病院は農村医療・地域医療に熱心で、私も朝から晩まで住み込みで働きましたが、不勉強から実証的な根拠の乏しさに心もとなさを覚えていました。そうしました折、「精神疾患の早期発見・早期治療」(金剛出版)に強く感銘を受け、帰京し、慶應義塾大学医学部精神神経科学教室(鹿島晴雄教授)へ入室した次第です。現在は社会精神医学研究室(水野雅文講師)において統合失調症の社会認知や問題解決の研究、精神科リハビリテーションの診療を行っています。これまでともすると経験主義に偏りがちであったこの分野において、科学的な視点を取り入れた最良にして至適な治療、OTP: Optimal Treatment Projectを行っております。

 本日の話題は寛解と再燃ですが、広げて経過と人生についてまでをお話しできたらばと存じます。急性期の幻覚・妄想、興奮などが治まった後、慢性期の無為・自閉、感情鈍麻、そして社会認知・機能の低下に対してどのように対処していけばよいか一緒に考えてまいりましょう。
 幻覚・妄想などの顕在発症以前から、不安・抑うつなどの前駆症状があるのですが、これは「気持ちの問題」「思春期なら当然」などと見過ごされてしまいがちです。従ってこの時期から注意をしながら発症から治療までの期間(DUP: Duration of Untreated Psychosis)をできるだけ短くするか、これが最近の臨床研究においても注目されていることです。DUPが短いほど、その後の経過も良いのではないかと言われています。我々の研究室では小林啓之・山澤涼子・水野雅文がこれについての研究的な臨床活動をしています。そして「みなとネット21」http://www.minatonet.min.gr.jp/というNPO(村上雅昭・水野雅文・稲井友里子・高橋佳代)が港区在住の患者さん方を対象に相談・援助を行っており、この4月から「東京ユースクラブ」http://www.tokyo-yc.org/というサイトを立ち上げて、早期発見・早期治療に向けて情報提供・メール相談などを始めました。
【図】
 寛解や軽快となる割合です。概ね10年単位で不安定期、安定期、平穏期と分けられます。20代、30代、40代に相当するでしょうか。これは小川和夫先生をはじめ群馬大学・生活臨床の先生方が患者さんを30年間に渡って記録したというデータです。30年経った時点で自立されている方が6割いらっしゃるということです。
 一方で、福島県郡山市の「あさかホスピタル」http://www.asaka.or.jp/では一つの慢性期病棟を全て閉鎖して、グループホームにするという試みを行っています。現在3年間が経過して患者さん方の生活能力やQOLなどが有意に高まっていることが確認されています。その背景にはOTP: Optimal Treatment Projectに基づいた認知行動療法・問題解決療法からなる治療・援助プログラムが奏功しているようです。これについて龍庸之助と佐久間啓が毎年、学会発表を行っておりまして、「精神科リハビリテーション・ワークブック」(中央法規)、「精神科地域ケアの新展開」(星和書店)にも詳しく説明されています。
 寛解や再発が繰り返される慢性期はひと言で言うと、「心的エネルギーの低下」です。全体的にエネルギーのポテンシャルと言いますか、心の元気さ、活発さが低下している状態と考えていただけるとよろしいかと思います。
 知能・認知能力が高いほど、また問題解決能力が高いほど予後が良好であることを研究室では調査しています(水野雅文・山下千代・根本隆洋・茅野分・藤田信朋)。特に、問題解決能力は発病後でもSSTの一環としてトレーニングすることにより高められないかと期待しています。その際にはただ技術的に解決方法を訓練するだけでなく、問題解決の背景にある能力を向上させることができれば、より良い結果を期待できるのではないかと考えています。すなわち拡散思考のことで、一つの思考パターンにとらわれず、色々な思考を組み合わせ、別の方法を考え出すものです。これは今後の認知リハビリテーションの鍵になるのではないかと思われます。



平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        


編集後記

 サクラの花は、気象庁が一週間のフライングの開花宣言したが、咲いたら一瞬のうちに散ってしまった。そんな四月、我が新宿家族会も新年度を迎え、今年度から心機一転、より強固な団体戦での取り組みが始まった。

 これまで新宿家族会の活動を振り返ってみると、その大部分が個人戦であった。御多分にもれず役員不足に悩み、会長が一人シコシコ弊紙やインターネットへの取り組みを行ってきた。

 しかし、昨年あたりから日常での会話や例会の二次会などで家族会の内容を何とかしよう、という声が頻々と聞こえてくるようになった。そして、今回の役員会の開催、役割分担、諸規約の制定、その他諸々が決められる。その中でも、最も重要視されるのが「家族会の力とは」を全員で考えることではないだろうか。

 家族会とはこうあるべき、などというセオリーは何処にも存在しない。それは、その家族会毎に決めていくべきものであろう。その組織員の要求や都合、地域性、行政との関係、そんなことがその家族会のスタイルを決定するものと思われる。

 いずれにしても、これも世の変化に対応した行動であろう。新宿家族会スタイルというものが出来上がる。それは、世の動き、医療の変化、福祉政策に対応したものになるであろう。「家族会の力」というものをこれからも模索しながら、新宿家族会は行く。         

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp