新宿区後援・9月新宿フレンズ講演会

病院の上手な使い方
  

         講師 看護師・横浜市立大学医学研究科 上松太郎先生

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 私は現場のたたき上げの看護師です。18歳のときに、何も知らずに看護助手として精神科に就職。看護学校に通って准看護師、看護師の資格を取りました。やがて統合失調症を中心とした治療をする病棟の看護師長となり、入院から退院援助まで体のケア、心のケア、退院支援、訪問看護から、家の片づけにまで携わっていました。

 以前に私のいた病院は訪問看護ステーションを10年以上しており、在宅看護に取り組んでいました。グループホームもバックアップしており、私も自己資産を投じてグループホームを立ち上げました。今は働きながら、大学院で看護学を専門に勉強しています。

【入院・外来のメリット・デメリット】

 病院とは、<医師または歯科医師が、公衆または特定多数人のため医業または歯科医業をなす場所であって、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう>と、医療法で定義されています。入院施設が20人以下は診療所となります。

 では、まず入院と外来についてのメリット・デメリットです。当人の病状や家族の状況などで、適切に選択して頂きたいと思います。

入院のメリット

・観察・管理が充実している

・治療選択の幅が広がる

・社会性の賦活がある

・サポートする人が休息することができる

入院のデメリット

・費用がかかる

・自由が侵害される

・場合によっては家族への恨みを抱かせてしまう

外来のメリット

・治療単価が安い。

・自宅治療が可能である。

・自由の確保ができる。

しかし自傷他害など、どうしようもない場合は、入院が選択肢として生まれます。

外来のデメリット

・治療の幅の選択が小さくなってしまう。

・医師は短時間で病状の評価をしなければならない。

・刺激をコントロールしづらい。

【良い病院・良い治療とは】

 施設基準:医療法で定めた医療機関および医師等の基準のほかに、健康保険法等の規定があり、厚生労働大臣が保険診療で行う医療機関の機能や設備、診療体制等の基準を定めています。

 医師が患者や家族に説明したことに、ただ同意すればいいというわけではなく、患者家族が同意できるまで、医師がきちんと説明する、それがインフォームド・コンセントです。

 私が看護師長をしていた時の仕事の4割はインフォームド・コンセントのアシストでした。入院で動転している家族は、医師に説明されてもなかなか理解できない、また医師はどれだけ理解されているかがつかめない。聞きづらいと思っても、聞けば医師は説明します。さらに分からなければ看護師に、分かるまで聞いてください。

【精神科病院は儲かるか】

 病院のベッドは1台20万円強、電動ならその倍と意外に高価なものです。その1ベッドに患者さんが1回入院すると、収入が発生します。病院経営では、1台のベッドをどのくらいの回転数で維持してゆくかは重要な要素になります。

 入院費用の目安:ちなみに10:1の救急病棟は、1日あたり35,000円をつけていいと決められています。13:1では21,000円、15:1では15,500円です。これは、ベッドの値段と治療を行った時の大体の相場です。

 3か月で退院のわけ:最近、「3か月で退院させられる」という話がよく出ます。それに関係するベッド代そのものについて見てみましょう。

 つまり、入院3か月を越えるとベッド代は3分の1以下になってしまいます。これは厚生労働省が決めたもので、精神科の入院を「病気の症状を抑えることに徹底して、3か月という短期で治めなさい」という方針を出しています。入院3か月を越えると、基準が高い病院、つまり手をかけて病床を維持しているところほど赤字が出ます。仕方なく3か月でいったん治療を切ろうとするわけです。

【精神疾患との付き合い方】

病気の部分を小さくする:薬による治療が効果的です。

病気の部分をカバーするアイテムを活用する:地域や病院のデイケア・地域生活支援センター・訪問看護・ヘルパー派遣・保健所の?医療ソーシャルワーカー(MSW:Medical Social Worker)・家族などを活用し、病気の部分をカバーします。

病気について知る:患者自身に自分の病気の特徴を認識してもらう。胃潰瘍は胃液がたくさん出て胃壁に穴が開きますが、同様に脳の中のホルモン(神経伝達物質)の、例えば統合失調症はドーパミンがたくさん出る、うつ病はセロトニンが足りなくなるなど、調整がうまくいかなくなる病気である等、説明します。

 脳が激しく興奮している状態が、統合失調症の症状の出ている状態です。脳が興奮しているために、刺激を強く受けてしまう。すると脳はさまざまな誤作動を起こします。つまり誤作動のために眠れなくなるのが不眠です。感覚器官の誤作動も起こして、幻覚・幻聴・幻視などが現れるわけです。音に非常に敏感になるのも、脳が興奮しているので、その音が非常に大きな音に感じるのです。服薬と共に、ストレスを減らすのが大事だというのは、刺激を減らして脳を休ませるため、病院の保護室もその意味が大きいのです。

 統合失調症は、昔は発症してから病院に来るまで何年もかかり、症状の山のピーク、つまり非常に悪化してから治療を始めることが多かったのです。そうなると治すのも簡単ではなく、治療の短期化は困難だったのです。今はご家族や周りの方達の支援体制が非常に良くなってきて、山の中腹くらいで来院する人が増えました。中にはごく初期に来院する人もいて、早く良くなる方も多いです。

 服薬治療:治療は薬物療法が中心になります。服薬し始めて効果が出るまで時間がかかるのは、痛み止めや胃の薬とは効き方が違うからです。つまり血液中にある程度の量が維持されることが必要で、薬の安定した効果が出るまでには1〜2週間かかるといわれます。入院して1週間位で「少しも良くならない」と言われる方がいますが、「これから薬が効き始めるところです」と説明します。

【再燃・再発を防ぐ】

 治療で良くなったら、今後の再燃・再発が問題になります。発症前の前兆期のなんとなく変だなといった段階の兆候、たとえば眠れない、音に異常に敏感になる、会社や近所の人が自分の悪口を言う、道や電車で人の視線が気になる、テレビが自分のことを言っているなど、振り返ってみて下さい。音に敏感になるというのは、普通に話している、あるいは掃除機を掛けているだけなのに、「うるさいよ」と怒鳴り出す。「音」に過剰反応を起こすのは統合失調症の症状の特徴の1つです。

【病院側の事情も知って対策を】
 心の病気は長くかかることが多いので、病院とも良い付き合いをしたいものです。それには医療側の事情を知った上で、対策を練ることも必要でしょう。

 3か月で退院させられる現実はあります。ですからご家族は、「重症化するまで入院させない」ではなく、「この病状なら3か月以内の治療で目途がつくか」に着眼するのも1方法です。再燃・再発すると病状が悪化して戻らないとか、脳の機能が落ちるとか言われますが、悪化する前に早期に治療にかかれば、認知機能が落ちてしまうことは無いと思います。

 私の赴任前、2年間退院できなかった人がいました。病気の特徴を自分で意識することが大切と思い、「朝、目が覚めるのが3時より早くなったら、躁病の傾向が出ているから、しっかり薬を飲んで朝まで寝てしまいなさい」と指示をしました。半年後に退院することができましたが、再入院はしていません。「自分はこういう時は人にしゃべりかけてしまって迷惑をかけるから、自制しよう、薬を飲もう」というふうに自分でコントロールできるからです。

【テーマを持った入院を】

 病院をどのように使うかですが、今の入院治療は3か月が限度と考えた方が良いでしょう。すると、1回の入院で全ての問題の解決はできません。入院時のテーマ・目的は、「一番大変と思うことに絞って、それを解決することを目標にする」方が良いでしょう。例えばお風呂に入る、暴力を振るわない、昼夜逆転を直す、生活リズムを整える、服薬の習慣をつけるなど、1つ2つなら、なんとか解決できる可能性もあると思います。

 「薬の変更や減薬、生活訓練に着眼した入院など、何かを修正するために、入院という形を使う」のも1方法です。「家族や本人が疲れてしまった時の休息入院」も少なくありません。とくに親元を離れて単身で生活している方などは、ちょっと疲れてしまったから1週間入院という方法もあります。

 再燃・再発を恐れて、就労や1人暮らしなど、先へ進むことをさせない家族がいます。私は「チャレンジして失敗しなさい、失敗は成功の元」と言っています。

 退院する時に、1人暮らしなのに「訪問看護が入るのは嫌だ」と言われれば、「今回はナシで行きましょう、でも万一うまくいかなかったら、訪問看護をつけてくださいよ」と言っておきます。すると「この間、失敗した時は訪問看護と約束したよね」と私も言えます。チャレンジしている時は、家族や周りの人、第三者が注目して病状の変化をキャッチすることが大事だと思います。

 親亡き後を考えておいてください。自立のタイミングは早いほうが良いと思われます。病院はそんな時にも活用できます。来年の精神保健福祉法改正では、患者の自立支援の情報提供も病院に義務付けられます。もちろん今までもして来たことですが、病院の情報提供が不十分と思った時に、権利を主張できるようにもなります。

                                          〜了〜

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        

 
新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

 今年は台風の当たり年だという。あまり嬉しくない話だが、そのためか被害は全国に及んでいる。台風は9月に入って急に増え、すでに8個に達しており、まだまだ量産される気配だ。

 さて、そんな気候不安定のころ、新宿フレンズ9月定例会がもたれた。会場を変えて開催したにもかかわらず、50名以上の参加者でにぎわった。それにしても上松先生のお話には知っていたつもりでも知らない点が数多くあった。

 一つにはまず20人以上の患者を入院させることができるのが病院。20人以下は診療所という医療法があったのだ。良い病院、良い治療の定義もわかりやすい。

 多剤多量は病院が儲かるか、については否であるとのこと。では、儲かる方法は「病気を目立たなくする」。第1に薬による治療を進める。第2に病気の部分をカバーするという。デイケアを使ったり、保健所のMSWの活動に委ねたりして病気の状態をカバーしようとする。ほかにもいくつか方法があるが、我々が一喜一憂の介護している裏では病院は病院なりの工夫というか儲けを意識した努力がなされているということだ。

 最後に「テーマを持った入院を」は私も電話相談で答えている大事な点である。先生の言っている「生活のリズムを整える」が私のまず1番に持ってくる目的である。入院を躊躇することはない。多少お金がかかるが、本人が入院したことで薬を理解し、あわよくば病気を理解したらこんないいことはない。本人のためにも入院を早い時期に進めた方がいい。

 先生のいう「病気が悪くならないうちに病院の事情も理解して入院を使うといいでしょう」はまさにその通りといえる。                              嵜

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp