10月新宿フレンズ勉強会

   「薬の副作用の注意点と家族の対応」

                     講師 慶應義塾大学医学部 山澤涼子先生



【副作用とは】

 副作用という言葉のからくりをもう一度見てみたいと思います。副作用というのは「副」という言葉がついておりますので、主作用に相対する言葉です。普段我々は主作用とは言わないで、効果や作用などと呼び、それ以外の作用を副作用といいます。私たちが薬をのんで効いてほしいところに効くのを主作用といい、それ以外を副作用といいます。

【抗精神病薬の主作用】

 いわゆるメジャートランキライザーといわれる抗精神病薬というタイプのお薬の副作用のお話をいたします。
 神経から神経に刺激が伝わるときには神経伝達物質、つまり伝えなければいけない情報に適した物質がでます。

【抗精神病薬の副作用と対処法?】

 次に副作用についてですが、一つ目は、ドーパミンの抑えすぎです。ドーパミンというのは別に毒物ではなくて、我々の生活に必要でいろんな役割を果たしている神経伝達物質なので、なくなると当然困るわけです。ドーパミンを抑えるのはいいのですが、抑えすぎると副作用が出てきます。

問題は対処法です。ドーパミンそのものが不足することで起こるので、すごく極端な言い方をすれば、これは医者に言うしかないです。こういう症状が出たらすぐに主治医に訴えてくださると対処をさせていただくことができます。

 薬を変えるというのも結局新しいものを試すということなので、症状は非常にその薬でよくなっているけれども副作用が出ているという場合に、薬を変えるというのは危険が伴いますので、効いていた薬を外すことで今まで抑えられていた症状がまた出てくるリスクもあります。症状そのものがコントロールされていないようなら医者も思い切って薬を変えやすいんですけれども、症状がうまくコントロールされている場合には、二の足を踏んでしまうこともあります。

【主に女性に起こる副作用】

 もうひとつ、ドーパミンの抑えすぎで女性に起こる副作用があります。高プロラクチン血症です。プロラクチンというのは別名乳汁分泌ホルモンです。簡単に言ってしまえば、妊娠したときに出るホルモンと理解するとわかりやすいと思います。妊娠すると何が起こるかというと、おっぱいが張って乳汁が出ます。生理が遅れたり止まることもあります。女性の方が気になる副作用ですが、ごく稀に男性でも胸が張るとかおっしゃられる方はいらっしゃいます。

【抗精神病薬の副作用と対処法?】

 抑えすぎの他に、他のところも抑えてしまうという副作用もあります。ドーパミンのところに効いてほしいと思いながらも、残念ながら純粋にそこにだけ効いてくれる薬は今の段階ではなかなか難しい。実際の薬はどんな形をしているかというと、例えば、本来はドーパミンを抑えるのであればドーパミンの受容体にだけ構造をしていればいいんですが、同時にアドレナリンなど別の受容体にくっつくような構造をしている。ですので、主作用はドーパミンを抑えることなんだけれども、副作用としてアドレナリンを抑えるというような余計な作用が出てくる。ただし、話していますので、今は、ドーパミンだけを抑えることが統合失調症の治療ではないだろう、セロトニンなりいろんなことがかかわっているだろうと言われています。

【家族の対処】

(1)様子を見る:様子を見ていただくというのは実は大事です。というのは副作用というのは薬を飲み始めて数日がピークで、その後落ち着いてきます。特に眠気などは最初に出やすいです。主作用は後から遅れて出てきます。

(2)自分でできる対処を考える:先ほど対処法については少し触れさせていただきました。患者さん同士では「こんなことで困っていて・・・」「こんなときはこうしたらいいよ」と相談しあっている風景もよく拝見します。

(3)遠慮せずに主治医へ:すでに実行なさっていることでしょう。医者はお薬を出しても自分で飲んでいるわけではありませんから、飲んだ感じなどは分かりませんし、診察室の中でのご様子しか拝見できませんので、普段の表情が見えづらいために副作用が分からない場合があります。家庭でいつも見ていらっしゃるご家族からご様子をうかがえると非常にありがたいです。

【そのほかの副作用】

(1)肥満:薬を飲んだことで太るのではなくて、薬を飲んだことで食欲が出て食べるから太ります。例えば、食事は一日1500kcalしかとっていないのに、精神科の薬を飲んだせいで10キロ太るかといったらそういうことはありません。食事のコントロールをすればいいということですが、太るのは簡単だけれども体重を落とすのは、女性ならお分かりかと思いますが、健常な人にとっても大変なものですよね。症状をお持ちの方はもっと自己コントロールが難しいでしょう。

(2)遅発性ジスキネジア:ジスキネジアというのは口をもぐもぐさせたり、舌をころころしたりという口の周りの動きが多くなるもので、ドーパミンが関連する副作用です。だからといって非定型抗精神病薬で起きにくいかというと、そのあたりの研究はまだ十分ではないんです。というのは非定型のお薬自体が発売されて何年も経っていませんので、十分評価ができていません。

(3)水中毒:これもメカニズムはあまり判っていませんが薬の副作用だろうといわれています。ですから水中毒の方には減らせる薬は減らします。病態に関しては水をたくさん飲んでしまうということですが、何がいけないかというと、取った水分は身体に吸収されて血液の中に流れていきます。血液はうすい食塩水くらいの濃度を持っています。水には食塩は入っていないのでとりすぎると血がうすくなってしまいます。

(4)悪性症候群:基本的には出されたお薬をきちんと飲んでいただいている分には心配しなくても大丈夫です。起こりがちなのは、急性期にあまり食事も睡眠も取れていない、精神的だけではなく身体的にも具合が悪く、特に脱水もひどい状態で、大量の抗精神病薬を投与したときです。そういうときには点滴で水分を補給しながら抗精神病薬を投与すると、起こるリスクは限りなくゼロに近くなるのではないでしょうか。これの前兆は体の動かしづらさ、体の硬い感じ、発熱です。
(紙面の都合でここで終わります)



新宿家族会へのお誘い 

 新宿家族会では毎月第3土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 

メーリングリスト家族会への誘い

Eメールを利用した家族会です。いつでも発言し、質問でき、毎日が家族会になります。是非、ご参加ください。入会は新宿フレンズ事務局まで、メールを送ってください。

frenz@big.or.jp 「ML家族会希望」と書いてください。


編集後記

  先月から新宿フレンズのパンフレットを作っている。よくよくまとめてみると、我々には三つの家族会があった。一つが土曜の昼の家族会。そして水曜の夜の家族会。最後がインターネットのメールを使ったメーリングリスト(ML)家族会である。
 その中でML家族会の様子は加入された人しか内容を知ることができない。そんな中で、先日関西からAさんが入会された。
 「息子が病識がなく、閉じこもりが続いている。医療に結び付けたいがどうしたらいいか」と尋ねてきた。これは当事者を抱える親たちの共通の悩みである。
 ML会員からいくつかのアドバイスが出た。しかし、それとて完全な方法ではない。そして、数日後、Aさんから「お陰さまで入院できました」というメッセージ。会員から「よかった」のメッセージが投稿される。

 ではAさんの入院できた方法とはいかなるものか。そこにはAさんの様々な工夫があった。以前かかったことのある医師からのアドバイス。インターネットを駆使して調べた情報。格安な移送会社の進め方。これらの準備が見事に調和して作用したのであろう。

 ここでいくつかのことが感じられた。一つは入院のやり方がひと様々であること。そして、そこには家族の必死の努力があったこと。それは工夫に工夫を重ね、利用できるものは何でも利用する賢人の智恵とでもいえるものだろう。
 そして、もう一つは精神科の「入院」とは如何に困難なことか。さらに国や行政はこうした事実をどこまで認識しているのか。医療費負担の増額ばかりが気になる昨今だ。     

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp