新宿区後援・9月新宿フレンズ講演会

障害年金−初診日が不明でもあきらめないで

講師  社会保険労務士 山下律子さん

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【年金の受給要件】

 まず、この会場で障害年金を受けている方はどのくらい? 半分弱ぐらいですね。 

障害年金を受給するためには、いくつかの条件があります。

・資格要件 障害の原因となった傷病の初診日に、公的年金制度に加入していること

・納付要件 初診日の前日において保険料の納付要件を満たしていること

・程度要件 障害認定日等において、障害の状態が定められている程度に当てはまること

 障害年金を申請しようと思ったとき「初診日がいつなのか分かりません」という人が結構います。もう1つは「納付要件を満たしてない」からダメだった、この2つが多い。あとは「障害の程度」で、この9月から『国民年金・厚生年金保険?精神の障害に係る等級判定ガイドライン』が変更され、これまでよりも厳しくなったと焦りを覚える方が多いのですが、受給が止まってしまうケースもあるので、その問題にも触れます。

 ガイドラインについては、発端は発達障害が認定基準に乗ったことで、年金申請が爆発的に増えました。それとほぼ同時に、障害年金を受給している本人がネットで「ウツでも500万円もらえる」というノウハウを宣伝しました。
 このガイドラインは結構大きなターニングポイントになる。つまり、今貰っている方も凄く影響が大きい。何万人が認定を受けられなくなるだろうという試算もあるくらいです。
 ガイドラインは数値化されているので、医師が機械的に当てはめて診断書を書くことで、すんなりと受給資格を得る人も出てくるかもしれません。それは良い面です。ただ、医師がガイドラインに示されている数字に沿って診断書を書いてくれたというだけで大丈夫というわけではなく、「総合評価」という視点からも判断されます。あらゆる意味で今後は難しくなってきます。これは非常に大きな根のある問題だと意識して注目して行ってください。

 更新時も、ただ主治医に診断書をもらうだけでなく、生活の状況を医師に伝え、ガイドラインに沿った取り扱いをされるような診断書を書いて頂くことが重要です。

【初診日・保険料納付要件・認定日】

まず、初診日がいつの日か迷いそうな例を、具体的に幾つか列挙します。

同一傷病で転院があった?先に診療を受けた日

正確な傷病名が確定していなかった?前の病院で診療を受けた日

前の病院の診断が誤診だった?前の病院で診断を受けた日

会社の健康診断で異常等の所見があった?健康診断の日

傷病が治療して再発した?再発後初めて診断を受けた日

前の傷病との間に相当因果関係がある?前の傷病の初診日

・20歳前に初診日がある
 国民年金は20歳から加入です。労働法上では16歳から働けるので、16歳から厚生年金に加入している人もいますが、基本は20歳からと考えて良いでしょう。初診日が20歳前か後かで大きく分かれます。

・20歳以降に初診日がある
 20歳以降で初診日がはっきりしている場合は問題ないでしょう。
 すると納付要件が問題になります。会社員なら厚生年金でずっと納めている可能性が高いのですが、無職やアルバイトや学生なら、国民年金に入っているわけです。国民年金は自分で納めるのが基本ですので、年金事務所や区役所の窓口で、「初診日の前日までに納めるべき保険料の3分の1以上の滞納があるのでダメです」と言われる人もいます。
 しかし、実際に保険料を納めていなくても、届け出で免除期間や学生猶予期間になっていたり、あるいは海外に行っていた期間があるかもしれない。つまり全部納めていなくても良いが、滞納がないこと。ですから収入が少なくて、または学生で年金保険料を納めてないが、免除の手続きは面倒だからやってないという方がいたら、すぐに届け出ておいてください。

・障害認定日とは
 初診日から1年6ヵ月経過した日を障害認定日といい、障害年金が請求できることになった日ということです。

どうして1年6ヵ月後なのか。これは4日目から1年半受給できる傷病手当とリンクしています。たとえば風邪を引いて、その風邪が重篤化して、本当は根本的な治療を要する難病の前駆症状だった。この間ずっと治療をしていたが、難病と分かり重篤化して認定日を迎えた。つまり障害の状態が継続しているかどうか、その判断をするための期間の基本が1年半となっています。
 しかし中には切断とか人工透析は3ヵ月目とか、早く請求できる障害もあります。手や足の切断は永久にその状態が固定され、1年半経とうが変わらない障害として医学的に認められているからです。精神では、高次脳機能障害は病気(脳血管障害、脳症、脳炎など)や事故(脳外傷)によって脳が損傷されて認知機能に障害が起きた状態で、体と精神と両方に起きますが、精神についてはやはり1年半と考えたほうが良いと思います。

【請求の方法と年金額】
 請求の方法は2種類あります。

・認定日請求
 初診日から1年6ヵ月経過した後に請求することで、正確には本来請求といいます。もし認定日に重症だったが請求せず、3年後にやはり重症だと請求したとき、その間の症状が継続していれば3年間遡って年金が支給されます。
 これは障害等級という条件を満たしていれば、請求日から最大5年間訴求して年金が支給される仕組みで、たとえば平成20年が認定日で28年に請求したら、5年前の平成23年までが請求対象となって、平成20年から22年までは対象外となります。

・事後重症請求
 認定日のときはそれほど重くはなかったが、だんだん重くなって事後に請求することを言います。事後重症請求は現況の診断書を提出し、その診断書で該当となると、請求受付日の翌月分からが支給対象となり、遡及はありません。

【障害の等級と資格要件】
 障害年金とは初診日に加入していた厚生年金か国民年金から支給されるものです。厚生障害年金は1級、2級、3級とありますが、国民年金では3級はありません。たとえば電車に乗っていて事故にあったA君は、会社員で厚生年金に加入していたので3級に該当すれば受給の可能性はあります。ところが学生で国民年金のB君は同じ障害が残っても、国民年金に3級はないので障害年金の受給は出来ません。
 20歳前障害の場合は国民年金には入っていない、けれども国民年金に準じた扱いになって、障害基礎年金が支給されます。知的障害者は出生が初診日になるので、必ず障害基礎年金となり(障害厚生年金ではなく)1級か2級の程度の場合は支給になります。

【障害年金の手続きの流れ】
 手続きは、初診日が分かっていて医師ともきちんと信頼関係が出来ていて、認定日をこれから迎えるという方なら、フローチャートに則ってやっていけば十分だと思いますが、精神の場合、少し年月が経っていると、初診日の特定が難しいことがあります。

1.年金事務所での資格の確認・書類の入手
 初診日に国民年金だったか厚生年金だったか。保険料の納付がどうだったかを確認します。

2.病歴・就労状況等、申立書の作成
 家族が書く「申立書」は病歴、つまり初診日から、どこの病院に行って、どういう薬をもらって、どういう生活をしていたかということを順番に書きます。一番大事なのは、そのときそのときの期間で「どういう生活をしていたか」、です。書き方も「家族の支援を受けていた」だけでは分からない。「食事は作ってもらっていた」とか、「通院の付き添い」とか、どういう支援を受けていたのかを具体的に書く必要があります。

3.医師との面談・診断書の作成依頼
 書類の入手をして、初診日の確定をし、この次は診断書を取ることだと思っている人が多いでしょうが、その前にする大事なことがあります。生活の状況はカルテに書く必要はなく、診断書は医学的情報しか書き込む必要がないのです。医師はそこを書くべきだという人もいますが、私はそうは思いません。医師はそれを書く必要はないのです。
 また、診断書を受け取ったら、記載漏れや申立書との相違点がないか、しっかり確認してください。

4.年金請求書の作成・添付書類の用意・書類一式の提出

1)戸籍謄本(3ヵ月以内に発行されたもの)

2)診断書

3)病歴・就労状況等申立書

4)年金手帳(基礎年金番号通知書)

5)すでに年金を受給している時は、年金証書

6)普通預金通帳または郵便貯金通帳

7)認印

 配偶者や子がいるときは、ほかの書類も必要になりますので確認してください。

5.年金証書・年金決定通知書の受理
 年金証書が送付されて来たら、等級、受給権発生年月日、年金額を確認します。支給されないときは、「不支給決定通知書」が送付されます。決定内容に不服があれば申し立てができますが、相当の時間と手間を要します。
 年金証書が届いてから2〜3ヵ月後に「振込通知書」が送付され、初回の年金が本人の口座に振り込まれます。

6.受給後の手続き
 年金は一度貰い始めると初期の手続きに比べてとても簡単で、基本は診断書の提出だけです。ところが、診断書を主治医に書いてもらって年金機構に送ったら支給停止になったという人が増えています。
 つまり更新の時も、実際の生活が分かる診断書を主治医に書いて頂くために、申立書に準じて現在の状況を書いた文書を添付する。そういう努力をしていただきたいと思います。主治医に生活の状況も何も伝えずに、正しい診断書を書いてもらえるはずだという思い込みは止めたほうが良いでしょう。
 今回、厚生労働省から社労士に指導が来ています。昨年、社員をうつ病にさせて退職させる方法をブログで書いたとんでもない社労士がいたのです。その社労士は所属の社労士会から退会処分を受けました。
 ところが厚生労働省は、そのこと自体でなく、障害年金を扱う社労士のホームページのチェックを言ってきました。初診日を無理やり医師にお願いしたり、本来は程度が軽いのに重く書かせようとしたり、そういうことをホームページで唄っている社労士が多い。それを指導するようにという文書が社労士会に下りてきました。このことは、裏返せば障害年金が一般に認知されてきたことでもあります。
 私たち社労士が皆さんのサポートをするときに、まず何をするかといったら初診日を探すことがほとんどです。厚生労働省の指導はそこにまで踏み込んできているということですね。これは医師の現場から初診日についてのクレームが上がって来たという話ですが、初診日を特定することは精神疾患の場合、困難なケースが多い。しかしこういう風な見方や探し方がありますよとお伝えしたいのですが、それが行き過ぎて不正と言われるケースがある、と国は指摘しているわけです。私たちは社労士としてやるべき事をきちんとやることが大事なのであって、決して不正に手を貸すつもりはないことをお伝えしておきます。
                                          〜了〜

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        

 
新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記 

 さすが10月ともなると吹く風に涼しさを感じる頃となった。北海道からは雪の便りも聞こえ、秋を越して冬の気配である。

 そんな折、障害年金の話を山下さんから再度お聞きした。この前は2013年11月であった。今回はその復習版である。

 しかし、年金とは何故こんなにも複雑なのだろうか。それは税金とは逆のお金の動きであることが一つ考えられる。税金の場合、お国が計算し、「はい、これだけ払ってください」と紙一枚で取り立てられる。年金は頂く方が考え、計算し、支払い側であるお国に理解してもらう書類を作らねばならない。

 それにしても年金とは有り難いものである。我が息子も頂いている。当初は貰うことを拒んでいたが、小遣いを頂けるとなると逆に支給日にはウキウキと頂き行く。そして、これが重要なポイントであるが、彼の病状が日ごと改善に向かっていったことである。

 当事者の経済的な問題は、意外と深刻というか、重要な生活ファクターなのである。親の想像以上にお金のことを心配し、工面している当事者も多いのではないだろうか。経済の不安からストレスを高め、症状を悪化させていることは十分に考えられる。

 二十歳前と二十歳以後とに統合失調症の病状にいかなる変化があるというのか。専門家は保険上はやむ得ないというかも知れないが、精神医療側からみたらそこには何ら違いはない。

 リオ・オリンピックの総予算が1兆2千億円という。東京オリンピックは3兆円を超すだろうと言われている。これでコンパクトでシンプルなオリンピックと言えるだろうか。1兆8千億円あれば何人の無年金者を救えるだろうか。                            

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp