新宿区後援・12月新宿フレンズ講演会

        統合失調症の再発を防止する

                 講師 大泉病院社会医療部長 山澤涼子先生

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【服薬とストレス対応が大事】

 あらゆる病気の発症は、準備因子に促進因子が加わって起こります。これは遺伝素因つまり体質のようなものに、環境要因が加わって疾患を発症するともいえます。

 精神疾患ではどうでしょうか。準備因子は「脳が繊細」であるところへ、促進因子の「ストレス」が加わって、脳内の神経伝達物質のドパミンが出過ぎると統合失調症を発症する、または神経伝達物質のセロトニンに関係するとうつ病の発症ということになります。ですから治療法としては、準備因子の「脳が繊細」であることに対しては薬を、促進因子の「ストレス」にはストレス・マネジメントを、ということになります。つまり、

1)薬をきちんと使うように管理すること

2)ストレスがかかりすぎないように管理すること

言ってしまえば簡単なことですが、治療法としてはこの2つに尽きます。

【再発の原因】

治療法は2つなのですから、その逆が再発原因になります。

1)薬の中断:薬によってバランスを保っていたのに、薬を中断することでストレスに脆弱な脳がアンバランスになり、再発しやすくなります。

2)過度のストレス:ストレスのない生活をしている人はいませんし、ストレス即再発ではありませんが、その人の限界を超えるストレスがかかると再発の原因となります。

3)脳に作用する物質は、すべて再発原因:身近なものではアルコールです。アルコールは脳に直接作用する物質なので、考えや行動がおかしくなったりします。また、精神薬もアルコールも脳に作用するので相互作用が強く、一緒に飲んではいけません。精神疾患を持っていない人でも調子が悪いときはお酒に逃げたくなりますが、調子が悪いときは絶対に飲まないことです。

大麻を使っている人は精神疾患を早く発症する、発症の後押しをするといわれています。危険ドラッグも、文字通りたいへん危険です。

カフェインも脳に作用する物質です。ただカフェインそのもので再発するほどの量をとることは難しいと思われます。しかし睡眠リズムを考えると、夕方以降は飲まないほうが良いでしょう。

大麻などを使用しないのは当然とすると、再発予防には、

1)薬物療法の継続

2)ストレス・マネジメント の2つが大事な手立てとなるのです。

【服薬を止めると…】

 統合失調症で抗精神病薬を飲んでいる場合と飲んでいない場合の2つに分けると、1年後の再発率は「服薬している」が30%、「服薬していない」が70%になるというデータがあります。これはあくまで1年後で、2年3年と薬を飲まずに過ごしていると、再発率は残念ながら100%に近づいていきます。
 全く飲まないで再発した場合、そこからの治療は大変になり、単純に数字のみで比較するわけにはいかない面があります。それにしても服薬と再発の数字は衝撃的であり、薬は飲み続けたほうが良いことを表しています。

【薬を飲み続ける工夫】

 苦痛なく飲むために:飲むとイヤな感じのする薬は飲みたくないもので、不快感があれば遠慮なく主治医に伝えることです。抗精神病薬は何ともいえない不快感がある場合も多く、何となくだるく、何となく頭が重くなると感じる人もいます。

 こうした副作用は今の段階では避けられないことですが、なるべく副作用を減らす飲み方は工夫したいものです。例えば、日中に薬を飲むと頭が働かないのなら、夜に回すなど主治医と相談できます。

 副作用と思ったら主治医に伝える。私は「文句は言ってもいいからウソは言わないで」と話しています。「大丈夫」と言って、陰で飲まないのは一番不幸な結果を招きます。中断した人の話では、「薬を止めてしばらくはとても体調が良く、良くなったと思っていたら再発した」というパターンが多いのです。

 また、薬のせいと思っていても、意外に症状だったということもありますので、副作用と思ったら主治医に相談してください。

・服薬の意味づけ:これは難しいことで、薬を飲むことで自分が病気だと意識させられるのがイヤだという人がいます。飲むこと自体がイヤで止めてしまう人もいます。家族にも服薬を止めたとは言わないで止めてしまう。たとえ副作用がなくても、飲む行為自体がイヤだという当事者が意外に多いことを、家族は片隅に記憶しておいて頂きたいと思います。

・忘れずに飲む工夫:私も花粉症の薬を飲むことをよく忘れますが、毎日薬を飲むことは大変な努力が要り、服薬の継続には工夫も必要です。

・飲み方の工夫:薬は同量でも飲む回数を少なく、仕事中に飲むと「何の薬?」と聞かれるのがイヤな場合は、昼の薬を朝夜に振り分けて人前で飲まなくてもよいようにする。

・置き場所の工夫:たとえば食卓・ベッドサイドに置く、あるいは服薬ボックスや服薬カレンダーの活用などがあります。

・剤形の工夫:最近は粉や液体の薬もあります。自分の使いやすい剤型を選ぶことが、苦痛なく服薬を継続する1つの工夫です。頓服に液剤を使っていた患者さんが障害者枠で働くようになり、「薬をチュッと啜っていると、何飲んでいるの?と聞かれて飲みづらい」とのこと、口の中で崩れるOD錠に変えた結果、飲みやすくなったと喜ばれました。こういった工夫で飲み難さも避けられます。

・デポ剤の利用 薬を飲み忘れる人、良くなったときには薬を飲めるのに、ちょっとずつ飲み忘れているうちに服薬の必要性が理解できなくなっていくタイプの方には良いと思います

 デポ剤は、昔の「薬を飲まないと注射するよ」というイヤなイメージがついてしまっていますが、新しいデポ剤も出ますし、ライフ・スタイルにあわせて、1つの選択として捉えるといいと思います。

【ストレスを上手に管理する】

 ストレスの管理こそ、皆さんで色々工夫できることだと思います。まず、ストレス・サインに気づくこと、これは精神疾患に限りません。

ストレス・サインに気づいたら、ストレス解消法が大切です。

1)溜ったストレスを減らす発散法:私の場合はランニングで汗を流すのですが、何かを「出すこと」つまり声を出して歌う、運動で汗を流す、涙を流して泣いてすっきりするなど、「出す」行為は、どれも適切な発散法です。ほかにも、眠る、音楽を聴く、テレビゲームをする、甘いものを食べる、コーヒーを飲むなど、人によってさまざまでしょう。

2)ストレッサー解決法:ストレスの原因となることを解決するには、口に出して言う、愚痴る、話し合う、相談する。それによって「ストレスの言語化」をすることが、最も効率の良い解消法でしょう。

ストレス・サインに気づいたらどうするかを、調子の良いときに話し合っておくことが大切です。こういうサインが出たら主治医に言う、こうなったら頓服を飲もうとか。うまく行っているときは気に留めずに過ごしてしまいますが、調子の悪いときに話しても頭に入らないので、良いときに準備しておくことが大事です。

【疾患に特異的なストレスへの対処法】

症状への対処:統合失調症の場合、精神病症状そのものが苦痛、つまりストレスであることが少なくありません。例えば幻聴の多くは悪口で聞こえますが、それへの対処がストレス・マネジメントにも、再発予防にも繋がります。

コミュニケーション能力の向上:「ストレスの言語化」をすることが大事だと言いましたが、当事者はこの「言語化」が苦手な人が多く、ストレス・マネジメントがしにくいところがあるのです。話し合ったり相談することを増やして「言語化」が上手になっていくことが大切です。

認知機能リハビリテーション:認知機能障害は人それぞれ程度が異なりますが、仕事や友達ができるかなどに大きく関係してきます。妄想・幻聴よりも、この障害が改善されると社会生活がしやすくなるので、そこから受けるストレスを減らす有効な手段になります。

1)認知機能そのものをよくする:これは集中力を高めたりするコンピュータを用いたトレーニングがありますが、日常生活でもできます。

2)苦手なところをうまく補う:たとえば物覚えが悪いならメモを取る、言ったことを忘れてしまうなら予め言いたいことのリストやメモを作っておく、手順が悪いなら順序を書いた紙を貼っておく、物事が進まないなら目標に向けて計画を立てるなど、家でいつでもできます。

 ストレス管理と再発率:服薬のみと、薬+当事者のストレス管理をした場合とを1年後に比較したところ、有意差は出ませんでした。しかし、本人のストレス・マネジメントが必要でないわけではなくて、ストレスがかかりすぎて再発することはよくあります。実は、服薬+支援者のストレス管理をすると、再発率が下がるというデータがあります。家族のストレスの影響が大きいのですね。

【再発予防へ家族のできること】
 患者が退院したときに、家族のもとに帰る人と、単身生活する人と、どちらの再発率が高いかの研究があります。仮説は、1人暮らしは薬の管理も出来ず、日常生活のストレスが多いから再発率は高いだろう、家族のサポートの多いほうが再発率は低いだろうと思って始めましたが、結果は家族と暮らすほうが高いと出ました。

EE:感情表出(Expressed Emotion):この研究結果からEEという考え方が出てきました。以来、患者さんに感情表出しやすい人を「EEが高い」と言っています。高EEの定義としては、批判的な言葉、敵意を表す、感情的に巻き込まれやすい、この3つのパターンです。これは「あんたのEEが高いから再発したんだ」と家族を責めるためのものではなくて、なぜ高EEになるかが問題なのです。原因を探してEEを下げることができれば再発率が下がるはずですね。

高EEの原因:

1)知識不足:病気や社会資源について知らないために、たとえば認知機能障害を知らず「やる気がないんでしょ」と言ったりすること。

2)不慣れな対処方法

3)家族の負担感:同じ家族でも疲れていれば高EEになり、「あんたのせいで苦労してるのよ」と、つい敵意を向けてしまいがちになります。「疲れているかどうか」のバロメーターです。同じ研究で、同じ家族でも一緒にいる時間が短いほうが、再発が少ないというデータがあります。心配のあまり家族が遊びにも出かけず、口うるさく注意をしたり、いちいち面倒を見過ぎないほうがEEを減らすには大事なことなのです。

 統合失調症は長く付き合わなくてはならない病気ですから、誰かが無理をすると持たなくなります。家族も多少の我慢は必要なこともありますが、できるだけ社会資源を利用して、ゆるい余裕のある体制を作って、薬の継続とストレスに対処していくことが大切です。                                            〜了〜

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        

 
新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

 あっという間の一年であるが、またスタートラインに立った。地球の毎日を三百六十五日で割ったのが一年。有史以来二千十五回繰り返して来た。自分の生きた月日はどんな意味があるだろうか、てな下らない話などして、我が正月は終わった。

 昨年暮れ、山澤先生に「再発」についてお話を伺った。一般的に言って、「薬を辞めてしばらくはとても体調が良く、良くなったと思っていたら再発した」という人が多いという。

 確かにそうだ。斯くいう私の場合がそうだった。息子が最初に精神科に行き、薬だけもらっていたが、三か月位して薬を辞めた。息子は調子を取り戻し、アルバイトを探して、下宿を始めたいと家を探していた時のことだ。ある一軒の家の二階からいつも思っていたアイドルが呼んでいるという幻聴に従い、そのお宅の二階へ忍び込んで、一回目の医療保護入院となった。

 その後、二度の医療保護入院を繰り返し、今日に至っている。私の信奉する篠田重孝氏の言葉によれば、再発は二回までは許される。三回目以上は本人、治療者、家族を含めて、当事者の手抜き、ないし手抜かりのように思える、と述べている。

 さらに氏は日本の精神医療の問題として治療者の少な過ぎだという。しかし、だからと言って我々家族はそれを嘆いていても何らことは善処しない。医療が貧困ならば、家族が治療者の一翼をになう必要があろう。今はインターネットがある。優れた医療機器が出てきている。斬新な社会資源がある。それらをフル回転させて、家族も医療の片棒の担う時代になっている。そして、山澤先生の言うゆるい余裕のある体制で取組んでいけばよろしいのでは・・・    

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp