3月家族会例会 
   
      抗精神病新薬の開発と背景
講師 ヤンセンファーマ(株)学術企画グループ 大西弘二研究員

 ヤンセンファーマ株式会社の学術企画グループの大西と申します。抗精神病薬を中心とした中枢神経領域の薬剤の製品を担当しています。本日は「抗精神病新薬の開発と背景」というテーマでお話をさせていただきます。
 本題の前に、製薬メーカーでございます、ヤンセンファーマはどんなことをしている会社なのかにふれて説明させていただきたいと思います。ヤンセンファーマというのはベルギーの製薬会社でありまして、親会社はアメリカのジョンソンエンドジョンソンというヘルスケアの製品を作っている会社で、そのグループの中で主に医科向けの医薬品の会社です。私どもの会社は、このジョンソンエンドジョンソンとベルギーのヤンセンファーマから新薬を導入している 外国資本の日本の会社です。

 日本では、リスペリドンといった抗精神病薬や抗うつ薬を発売させていただいています。また、新薬の開発では長けている会社で、のちほどその歴史的背景もご紹介させていただければと思います。いま日本のほうでも、抗精神病薬のほかにも、抗アレルギー薬ですとか、様々な薬を開発しています。

 社名にもあるヤンセンという名前は、ポール・ヤンセンという博士、薬理学者として優れた実績を残していますが、この創始者の名前から来ています。  
 ハロペリドールという、日本ではハロペリドール(セレネースとかリントンといった製品名で知られる薬)を開発した者です。開発の思想として、プログレッシブリサーチ、「進化は常に研究の中から生まれる」というスローガンをもとにいろんな新薬を開発しており、その中でもこの抗精神病薬の開発に力を注いできました。

 また、ジョンソンエンドジョンソンのグループの一員として、我が信情(Our Credo)というスローガンをもとに4つの責任というのをかかげています。第一に顧客、第二に社員、第三に地域社会、第四に株主への責任という4つの責任をかかげ活動させていただいている会社でございます。

 先ほどふれたように、薬が一つできあがるまでには、かなりの時間といろいろな研究、審査というのが非常に複雑にあって、それを通り抜けて初めて一つの薬が生まれます。最初に薬草などの天然の物質から抽出したものや化学的に合成したものから新しい薬のもとになる物質を作り、それをもとに新規の物質をどんどん作っていきます。さらにその新規の物質について、また化学的に形状などを変えていき、もちろん動物を用いた実験も行い、最終的に臨床試験となって、数々の臨床試験を経た結果、初めて承認を受けて発売されるということになります。

 これに10年から18年かかると言われ、もちろん途中で中断する薬剤もあります。最近では人の寿命が非常に長くなりアルツハイマー病や痴呆の患者さんもふえていますし、ガンや糖尿病といった生活習慣病の患者さんもふえている中、豊かな暮らしを実現するために、薬を作る使命というのはどんどん増していると言われています。

 もう一点、薬というのはもともと人々の命にかかわるものであります。やはり有効性だけでなく、副作用すなわち、安全性を確認したのちに、厚生労働省のほうに承認の申請を行います。その審査にパスしたものだけが製造承認を受けるわけです。ですから、様々な臨床試験を経ることが必要で、有効性と安全性を確認するための臨床試験である、いわゆる「治験」というものが行われます。これは、健康な方ですとか、多くの患者さんのご協力をいただかないといけない試験です。

 この治験ですが、最近は新聞紙上でも治験の参加者を募集している広告を目にしたことがあるのではないかと思いますが、こちら弊社でもアルツハイマーの薬を開発していて治験協力募集の新聞広告を出しておりした。治験は新しい薬を生むための最終試験で非常に大事な試験といわれています。この治験については、3つのステップで進められていて、まず健康な成人の方を対象にごく少量から始めて副作用などの安全性を確認し、次の段階で少数の患者さんを対象にした試験で有効性と安全性をさらに確認して飲む量や期間も検討。そのうえで、より多くの患者さんを対象にして有効性、安全性を最終テストするのです。そうして審査、承認を受けることになります。以上、製薬メーカーについて、そして治験の仕組みについて紹介させていただきました。
 
 それでは、本日のテーマ、抗精神病薬の歴史から始めて、つづけて新薬開発の背景についてお話させていただきたいと思います。
 18世紀まで遡りますが、薬というもの自体があまりなかった時代で、草の根や木の皮から抽出されたものが使われていました。なかでも、抗精神病ということでは、吐剤や下剤が使われたり、鎮痛薬としてアヘンが使われたりしましたが、抗精神病薬の始まりと言われているのは、インドの印度蛇木(いんどじゃぼく)というものです。

 また、最古の向精神薬としてはアルコールが用いられていました。印度蛇木はインドで古くから民間の伝承薬として精神病や不眠や高血圧、蛇咬傷などに使われていたもので、この植物から有効成分としてレセルピンという物質が抽出され、はじめてスキゾフレニア治療薬の原型となりました。しかし、血圧降下作用(血圧が下がってしまう)があったり、効果が出るのに時間がかかることから、スキゾフレニア治療薬としては用いられなくなりました。

 この時代の背景としては、病気の原因も超自然の力に帰せられ、治療と宗教の結び付きが強く、薬物は第一選択ではありませんでした。精神疾患と身体疾患の治療手段も大きな違いはなく、加持、祈祷や血をぬく灸をするといった治療法が中心で、対象も上流階級に限られ、薬物というものがまだ広まらなかったわけです。

 19世紀から20世紀前半になると、アヘンからモルヒネが抽出されるなど、様々な動植物から有効成分が抽出され、新しい化合物の合成も始まりました。鎮痛薬や催眠薬も登場します。ただ、有効性の面ではまだ乏しく、薬物療法の地位はまだ低かった時代がつづきました。またこのアヘンなどの乱用、慢性中毒、禁断症状といった問題も世界中で起こり、禁止法などもこのころから作られています。

 20世紀後半になると、神経遮断薬の発見と発展の時代になります。スキゾフレニアの治療、精神病薬物治療が大きく転換します。染料としてフェノチアジンが合成され、そこから作られた抗ヒスタミン剤の神経安定効果が注目され研究されていきました。そして、初めて出たのがクロルプロマジンです。いまでも汎用されている薬で、非常に鎮静作用が強い薬剤です。もともとは抗ヒスタミン剤でしたが、1952年にディレイという医師が単剤投与を始めてスキゾフレニアや躁病などに有効であることがわかりました。薬物により、精神症状が劇的に改善したという事実は、この時代では非常に画期的な出来事でした。この薬の発見により、現代の精神病薬物療法の幕開けとなったといえます。

 もう一つ、現在でも多く用いられているハロペリドールという薬が発見されたのも、この時代です。1950年代、ベルギーでは競輪(オートレース)が盛んでした。この競輪選手の間で興奮作用があるアンフェタミンを常用する選手が多く、その薬のために幻覚・妄想が出てくる問題がございました。このアンフェタミン常用者が苦しむ症状を抑制、改善することができるアンフェタミン拮抗薬の発見にポール・ヤンセンは強い関心を寄せていました。アンフェタミンの拮抗薬を研究する中でうまれたのが、ハロペリドール(日本でセレネースやリントンと呼ばれている薬)です。

 この2つの薬の登場で新しい時代がはじまったわけです。ハロペリドールはクロルプロマジンよりも非常に少量で同等に効き、クロルプロマジンのような口の渇き、血圧の低下といった副作用も少ないという点でも注目されました。この薬の最初の臨床試験が1958年に行われて効果が確認され、その4年後にはほとんどのヨーロッパ諸国で使われるようになり、日本でも64年から使用されています。

 以上がこれまでの薬物療法の時代で、これからお話するのが抗精神病新薬の時代です。

 ハロペリドールと類似の化合物(同じような効き目のある薬)がたくさん開発されましたが、新たな抗精神病薬として、日本では1996年にリスペリドン、2001年にペロスピロン、クエチアピン、そして昨年、オランザピンが発売されて、また新たな薬物治療の時代が始まりました。
 神経遮断の非定型薬として、クロザピン(日本では未発売)、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ペロスピロンなどがあります。
  
 この「非定型」ということについて説明しますと、従来の薬剤をおおむね「定型」の薬剤と呼び、最近の新規の薬剤が非定型と言われています。どういう違いがあるのかといえば、非定型薬では、陽性症状(妄想症状)に対して従来の薬剤と同じくらい効果があり、あまり効果が期待できなかった慢性の妄想症状、もしくは陰性症状への効果、また認知機能障害などの精神病症状に効果のある薬剤で、錐体外路症状(手のふるえ、歩行障害、舌のもつれなど)の減弱・消失があり、それからプロラクチンというホルモンの上昇(高プロラクチン血症という副作用)を引き起こさない、という3つの点があるいわれています。また、大まかにいいますと、脳内の神経伝達物質のうち、主にドパミン系に作用する薬剤を定型、ドパミン以外(セロトニン等)にも作用して従来の薬剤では得られなかった効果を有する薬剤を非定型というふうに区別もできます。

 この非定型(新規の)薬剤で最初に登場したのは、まだ日本では未発売ですが、クロザピンという薬剤が登場しました(1962年)。幻覚や妄想といった陽性症状のほか、感情の平板化・活動性の低下といった陰性症状への効果があるということが確認されました。また、先ほども申しました、錐体外路症状が少なくや高プロラクチン血症を起こしにくい点でもすぐれている薬剤として出てきたわけです。承認されたのは1972年で、劇的な効果を示す薬剤としてヨーロッパ諸国で発売されましたが、発熱や痙攣といった副作用、特に患者さん100人に2人の割合で、血液中で免疫機能を司る顆粒が非常に減ってしまう無顆粒球症になって、感染症等を引き起こして死亡する例が報告されてしまったのです。

 しかし、その後、アメリカでは薬が効きにくい治療抵抗性(薬が効きにくい)の患者さんへの優れた効果も確認されて、1990年に限定使用という形で承認されています。このクロザピンについては、新しい発見がもう一つあり、脳の神経伝達物質の一つであるセロトニンに対する拮抗作用を持っていることが確認され、ここで新しくドーパミンだけでなくセロトニンにも作用する薬剤の必要性が注目され、そうした非定型薬(新規の)の研究・開発が進む流れが生まれました。

 また、SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)リスペリドンの登場です。この薬剤は、セロトニンにもドパミンにも拮抗する薬剤として登場しました。このリスペリドンの開発においては、ハロペリドールから様々な類似の化合物が開発されましたが、その中でピパンペロンというセロトニンへの作用が強い薬剤が合成され、さらに純粋にセロトンニンだけの拮抗薬リタンセリンが開発されました。リタンセリンは単剤では見るべき効果がありませんでしたが、これをハロペリドールといっしょにした投与すると、陽性症状、陰性症状への効果のほか、錐体外路症状の減少が確認されました。そこでセロトニンにもドパミンにも作用する薬としてリスペリドンが開発されました(1984年)。

 もう一つ、先ほど紹介しましたクロザピンの顆粒球を減少させてしまうような重篤(重い)副作用を少なくする研究がつづけられ、そこでできたのが、クエチアピンやオランザピンという薬です。

 今までの開発の経緯をまとめますと、三環系の化合物の代表であるクロルプロマジンからその類似骨格を持つクロザピンが開発され、オランザピンやクエチアピンといった薬剤が開発される流れと、もう一方では抗精神病作用の研究開発で生まれたハロペリドールから、リスペリドン、そして日本ではぺロスピロン(ルーラン)、アメリカではすでにジプラシドン(日本では未発売)というふうに、大きな2つの流れに別れてきているわけです。つまり、同じ新薬といっても、作用が若干違うというふうにご理解いただければと思います。

 ここに、アメリカのFDA(食品医薬品局)への申請データ(治験の結果)があります。従来のクロルプロマジンやハロペリドールといった定型の薬剤と比較しているものですが、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピンといった、どの新薬も、まず錐体外路症状というリスクが少ないという結果が出ています。そして、特徴的な点としては、症状に対する効果の面でもクロザピンではクロルプロマジンとの比較、オランザピンやリスペリドン、クエチアピンではハロペリドールとの比較において、ほぼ同等もしくはそれ以上の効果が期待できることが報告されています。また、陰性症状についても、やはりハロペリドールと比較して改善が期待できるという結果が出ています。

 ですから、非定型(新規の)抗精神病薬と定型(従来の)抗精神病薬を比較しますと、特徴として、陽性症状に関してはいままでと同等もしくはそれ以上の効果が期待でき、陰性症状にもある程度の効果がある可能性があること、さらにコンプライアンス(服薬尊守性)にも影響する錐体外路症状を減らすという点でも、非定型薬にはメリットがあると思います。
 
 ここで、ドーパミンやセロトニンといった脳内の神経伝達物質について、少し説明しておきましょう。脳内には神経が糸のようにたくさん絡み合っているのですが、その中で神経細胞ともう一方の神経細胞のつなぎ目にあるカギの穴のようなところに、ドパミンという神経伝達物質物質が入ることで情報伝達がなされます。ドーパミンの活動が過剰になっているのが問題と考えられていて(ドーパミン仮説)、そのカギ穴の部分に先に薬剤が入ることでドーパミンが過剰に入らないようにすることで抗精神病効果を示すと言われています。ただし、逆にそのガギの部分をブロックしすぎてしまうと、いわゆる陰性症状、自発性の欠如や感情の平板化というような作用がおきてしまうというふうに言われていています。非定型(新規の)の抗精神病薬では、セロトニンの神経のほうをブロックすることで過剰なド−パミンをブロックしている部分を解除してあげるという働きが陰性症状を改善すると言われています。ただし、これもまだあくまでも仮説です。もう一点、錐体外路症状でも、脳内の黒質-線状体という部分では従来の抗精神病薬だとブロックしてしまうことで手の震えや、ふらつきといった症状が出てしまうのですが、新薬 ではセロトン神経系をブロックすることで過剰なドパミン神経のブロックを解除して、錐体外路症状を起こしにくくしているということがあります(これも仮説です)。
 まとめに、抗精神病薬(神経遮断薬ともいわれる)の分類についてご紹介させていただきます。種類としましては、ご紹介してきた@非定型(新規の)抗精神病薬、Aブチロフェノン系(ハロペリドールなど)Bフェノチアジン系(クロルプロマジンなど)Cその他にもスルピリド(ドグマチール)などがあります。

 @の非定型の抗精神病薬の中のSDAとMARTAというのは、SDA(Serotonin Dopamine Antagonist)はセロトニンとドーパミンのどちらも作用する薬としてリスペリドンとペロスピロン、MARTA(Multi Acting Recptor Targeting Antipsychotics)にはクエチアピンとオランザピンがありますが、これも主作用としてはやはり同じような作用を持っていると言えます。その特徴をもう一度復習しますと、従来の抗精神病薬と同様に、強い陽性症状(幻覚や妄想)に対する作用があり、副作用(錐体外路症状など)が軽いこと、そして陰性症状(感情の乏しさなど)や認知障害の改善が期待できる点があります。

 Aブチロフェノン系では、ハロペリドール(商品名ではセレネース、リントン、ハロステン、ケセラン)、プロムペリドール(商品名ではインプロメン)などがあり、これらは従来の抗精神病薬の第1選択の薬剤として用いられてきました。こちらも強い抗幻覚妄想作用があります。

 Bフェノチアジン系では、クロルプロマジン(商品名ではコントミン、ウインタミン)、レボメプロマジン(商品名ではヒルナミン、レボトミン)があり、強い鎮静作用を持ちます。
 Cその他の抗精神病薬では、スルピリド(商品名ドグマチール、アビリット、ミラドール)、ゾテピン、ピモジドなどがあります。
 最後になりましたが、ヤンセンファーマでは、レゾナンスという雑誌(医療関係者や患者さん、ご家族にも読んでいただけるもの)、またアメリカでだされている「精神分裂病の患者の方とご家族の方の手引き」を邦訳したものを作っています。ご要望がございましたら連絡ください。
 最近では、「新薬で変わる分裂病治療」という本や様々なスキゾフレニアの治療に関する本が発刊されています。

 Q 新しい抗精神病薬も同じように作用するのでしょうか?
 A 新しい薬については、陽性症状を治すか陰性症状も改善させる可能性があります。また抑うつ症状や不安にもよく効いたり、物事をよりはっきり考えられるようになる方もおられます。その中でも特徴的なのは、身体の運動性に関する副作用(錐体外路症状)が少ないというメリットがあるかと思います。
 Q 新しい抗精神病薬は何が違うのでしょうか?
 A 久しぶりに物事を楽しんでやることができるとよく言います。もっとも重要なことは、以前から使われている抗精神病薬を飲んでいたときよりも正常だと感じることが多いということです。
 といった内容があります。
 (新薬で変わる分裂病治療より)

 最後に、新しい抗精神病薬の副作用では、今回お話させていただきましたように、錐体外路症状(手のふるえ、歩行障害、舌のもつれなど)、は軽減されているのですが、体重増加という問題もあり(コンプライアンスにも影響します)、体重の管理が必要となってくると考えられております。
 以上、「抗精神病新薬の開発と背景」ということでお話をさせていただきました。

●会場からの質疑応答

 Q 新薬への切りかえについてもう少し教えてください。

 A 医師ではないので治療については詳しくは申し上げられませんが、まず主治医の先生に提案してみるのも手です。従来の抗精神病薬から新薬に切りかえるというのは、かなりリスクもあるわけです。脳の中でいままでずっと飲んでいた薬に慣れている状態が作られているのを、また新しい薬を飲むことでそれまでの薬が減らされたりして、少し不安定になってしまう状態が起きる可能性もあります。そのあたりも主治医の先生がどう考えるのか、現状、安定していて問題ないなら切りかえる必要はないかもしれません。ただ、患者さんやご家族がいまの薬で満足してないというなら、変えてほしいという相談をすることが必要だと思います。切りかえてすべてよくなるとも言えませんし、切りかえは少し時間もかかり、短期に切りかえてしまうと症状が悪くなってしまう可能性もあります。 時間をかけて、最終的には切りかえられてよくなる場合でも、切りかえの途中で症状が不安定になる時期も場合によってはある、ということはご理解いただきたいと思います。

 Q 副作用の中で悪性症候群というのは、どういう状況で出てくるものなのですか?

 A 高熱や筋肉のこわばりなど多く、血液の検査項目で CPKの値が高くなるのも目安になります。ただし、患者さんの状態(検査等)から未然に防ぐことで、悪性症候群の発症はかなり少なくなっていると思います。さらに詳しいことは主治医にお聞きください。

 Q 先程のお話では、昔はインド蛇木(いんどじゃぼく)のように自然の草木から薬が作られていたように聞きましたが、最近の新薬というのはどんな物質から作られるのでしょうか。

 A 最近は化学合成の技術が進んでいて、例えばドパミンのレセプタに作用する物質としてドパミンの1から2、3、4…といったようにありまして、そのドパミンの1が何に作用するか、陰性症状に作用するとか、2は陽性症状に作用するといったことが分かるようになっています。それがどこに作用するということも分かるようになっています。これらのデータをもとに新しい化合物を作り、最終的に薬となるわけです。

 Q その元になっている物質は何ですか。

 A 例えば理科の実験室の棚に並んでいるような物質を想像すればよろしいかと思います。炭素、水素、窒素といったものです。そういったものの化学合成物と考えればいいと思います。ハロゲン、塩素といったものもそうです。

 Q 精神の薬で動物実験の試験ではどのようなことが行われるのでしょうか。

 A 動物実験では一つは安全性が計られます。それに毒性試験、有効性よりもまず安全性ですね。副作用、毒性については毒性があるか、ないかが動物実験で試されます。
  また、動物を用いた行動試験ということも行います。ひとつ、強制水泳試験というものがあります。ラット(ねずみの一種)をプールにいれると普通では不動状態(動かなくになる状態)になりますが、不動している時間は「うつ」の絶望状態を反映するとされています。不動時間が短縮することは「うつ状態」の期間が短縮されたことになります。多くの抗うつ薬ではこの試験で不動時間短縮作用が認められており、抗うつ効果を測定する最も有用性の高い試験です。 これは動物の行動から薬の有効性をみるということも行います。

 Q ヤンセンファーマさんはアメリカに本社があると聞きましたが、アメリカの抗精神病薬の流通と日本のそれとの違いがありますか。アメリカではドラッグストアで抗精神病薬が売られていると聞きます。日本では、きょうお話を聞いてこんないい薬あるのか、と分かっても主治医が薬を決めてしまって、我々はただ横目でみるしかないわけです。

 A アメリカでもドラッグストアで抗精神病薬を買うには処方箋が必要です。それからようやく日本では先程のように「薬の本」というような一般が薬の知識を持つようになりました。欧米ではこうした情報はかなり前からありましたし、手軽に薬の情報を手にできる環境があったように思えます。

(途中ですが抄録を終わらせていただきます。テープ起こし:渡辺信喜(新宿社協ボランティア) 

編集後記

 3月に浦河にあるベテルの家が作成したビデオを見た。画面のほとんどが話し合いの場での人物の顔をカメラがジッと撮っている。単調な画面であるにもかかわらず見る人を引き付けて放さないのは、その話の内容の豊かさだろう。
 次々と発せられるメンバーたちの言葉には「うそ」とか「飾り」がなかった。ストレートな表現で遠慮がなく、感情も含めて自然な言葉で語り合っている。聞く人も真剣に聞いている。そして真剣に反論する。
 ベテルの成功(といっていいか)は何といってもメンバー同士のコミュニケーションということだろう。会話、対話を通してお互いが助け合い、信頼関係が築かれている。表面では一見対立関係にあるようでも、その背景には信頼関係ががっちり保証されているような、そんな家庭的、家族的雰囲気が感じられた。
 ある人が質問した。「東京でも第2のベテルはできないものだろうか」と。回答者の四宮監督は「これはマニュアル化して複製されるものではない」と言い切った。
 それは川村医師を中心にしたスタッフ、メンバーが自ら作り上げた世界、哲学だからであろう。第2のべテルを作るには第2の哲学が必要だ。         


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