新宿区後援・6月新宿フレンズ講演会

     生活時間と睡眠障害

               講師 大泉病院社会医療部長 山澤涼子先生

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 今日は、ご家族を含めて健康に睡眠をとるにはどうしたらいいかをお話します。まず、睡眠のメカニズム、睡眠障害はどういうものか、統合失調症・うつ病など疾患別にどんな特徴があるか、睡眠薬について、そして、より良い睡眠をとるコツを話したいと思います。

【睡眠のメカニズム−レム睡眠とノンレム睡眠】

 睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠があります。レムREMとはRapid Eye Movementで、睡眠中に眼がキョロキョロ動いていることから名づけられました。ノンレムとはNon Rapid Eye Movementで、睡眠中に眼が動いていない状態です。ノンレム睡眠は4段階に深くなり、その間にレム睡眠が90分周期で出現します。

 眠りはじめの3〜4時間は3〜4段階の深い睡眠が出て、脳はしっかり眠り、レム睡眠は短くしか出現しません。それから徐々にレム睡眠が増えて、明け方に向けてだんだん眠りが浅くなってきます。人間の体はよく出来ています。皆さんもはじめにグーッと深く寝た、という感じがあると思いますが、その時はノンレム睡眠で、脳がしっかり休まっています。

ノンレム睡眠時は、脳の温度が下がって、体外に熱を放出します。このときに関わってくるメラトニンというホルモンが十分に分泌されると脳を休めて、睡眠が深くなっていきます。日本でも最近、メラトニン製剤(市販名ロゼレム)が発売になりました。

【睡眠障害とは】
 
睡眠中に起る異常行動、不眠、睡眠・覚醒リズムの問題、これに日中の過剰な眠気の4つを合わせて、睡眠障害と呼んでいます。なかでは不眠が圧倒的に多いので、まず、そのお話をいたします。

 不眠症は、夜眠れないことと、日中に眠くて精神身体の不調を自覚して生活の質が低下している、この2つを合わせて不眠症といいます。ですから「昼間も眠くて困りますか?」と聞いて、「昼間は別に困りません」なら大丈夫、不眠症ではありません。

1.不眠症の4タイプ

1)入眠困難:なかなか眠りに入れない

2)中途覚醒:途中で何度も起きる

3)早朝覚醒:朝早く目覚めて、そのあと眠れない

4)熟眠障害:眠るが、ぐっすり眠った感じがしない

原因を考えることが大事で、ストレス、精神疾患、生活リズムの乱れ、環境によるもの、身体の病気で起こることもあります。高血圧の人は、血圧が安定すると眠れる人もいます。喘息・呼吸器の病気などで呼吸が苦しくなると眠れなくなります。前立腺肥大でトイレが近くなった、アレルギーのかゆみ等、原因疾患のあるときは、その治療が優先されます。

2.日中の過剰な眠気

 最近、CPAP(シーパップ)という、呼吸が止まったら察知して空気を送り込んでくれる機械が販売されていますが、「つけて寝たら人生が変った、こんなに日中すっきりしているのか」と体験者が話していました。心筋梗塞、脳梗塞が起きやすいことも注意が必要です。睡眠時無呼吸症候群は、成人の1〜4%で多いですし、夜、しょっちゅう鼾をかく人は調べてもらうほうがいいと思います。

3.睡眠中に起こる異常行動や異常知覚、異常運動

 子供に多いのですが、眠っているのに急に起き上がる夢遊病、夜尿、寝言、キャーッと叫ぶ夜驚症などがあります。これはレム・ノンレム睡眠のバランスが整っていないことから起ると思われますが、成長とともに解消されるものが殆どです。

レム睡眠行動障害は、50歳以降に起きます。むずむず足症候群(レストレスレッグス脚症候群)は、中年期以降に発症し、貧血や関節リウマチに合併することもあります。足を動かすと足のムズムズは治りますが、とても辛いものです。薬もあり、貧血が治ると解消することがあります。

4.睡眠・覚醒リズム障害

 体内時間の調整がうまくいかない人で、睡眠相後退型、睡眠相前進型など色々ありますが、海外旅行の時差ボケや、交替勤務など人為的な原因で起きることもあります。
【精神疾患と睡眠】

統合失調症の睡眠障害の特徴

  睡眠時間そのものが、健常者より平均1時間ほど短くなる。

  寝つきが悪くなる:ふつう10〜20分で睡眠が深くなるのに、30〜1時間かかってしまう。

その他、睡眠効率の低下、中途覚醒の増加などもあります。

うつ病の睡眠障害の特徴

うつ病は90%に不眠があります。

睡眠障害:寝つけない人が多い。

早朝覚醒:朝早く目覚めるのは、うつ病に特異的とされています。

ノンレム睡眠が減る:レム睡眠が活発なほど、うつは重篤といわれています。

レム睡眠の活動をチェックすることでうつ症状の重篤さが分かるというデータがあります。うつだから眠れない、眠れないから具合が悪いという悪循環になってしまいます。睡眠と症状は関連していると分かります。

【睡眠薬について】

 日本人は薬好きですが、なぜか睡眠薬は嫌いのようです。「不眠の時どうするか?」というアンケートを取ると、ほとんどの国の人は、「医師に相談する」か「睡眠薬を飲む」と答えるそうです。日本はそれが圧倒的に少なく、なんと「寝酒を飲む」人が睡眠薬を飲む人よりも上位に来るというデータがあります。

 睡眠薬に対して、「やめられなくなるのでは」「量が増えないか」「依存症にならないか」なぜか多いのが「ボケませんか」などなど。睡眠薬は、そんなに怖いものでしょうか。

 実はお酒のほうが怖く、依存にもなりやすいのです。飲酒は睡眠の質を悪化させます。寝つきは良くなりますが、早く目が覚めます。また水分ですからトイレが近くなり、それも目覚めやすくします。寝酒よりも処方薬をきちんと飲むほうが睡眠には良いのです。

【睡眠薬の副作用】

 正しく使えば安全とはいえ、睡眠薬の副作用はあります。

 筋弛緩作用:良くも悪くも筋肉の緊張を和らげる作用があります。睡眠薬にはベンゾジアゼピン系を使うことが多いのですが、その中で催眠性の強いものを睡眠薬として使い、催眠性の弱い、不安を取るものを抗不安薬として使っています。抗不安薬のたとえばデパスを肩こりに使っている人もいます。

持ち越し効果(Hung-over):中長時間型は翌日、眠気やだるくなることがあります。健忘は、ハルシオンなど短時間作用型で起きやすく、朝起きたら夜中に何か食べていたことに気づくこともあります。これは睡眠薬が抑制を取るためで、そのために食欲のままに食べてしまう。またアルコールを併用すると非常に起りやすく、記憶も飛んでしまいます。

依存:睡眠薬に依存が全くないわけではありません。現在使用されている睡眠薬の主力はベンゾジアゼピン系で、ハルシオン、レンドルミン、サイレース、ベンザリン、ユーロジンなどがあります。催眠性が少なく抗不安作用があるものにはワイパックス、レキソタン、ソラナックス。デパスは抗不安作用も強いが比較的眠気も強く出るため睡眠薬としても使います。

副作用としては、中・長時間型には持ち越し効果が多く、健忘は短時間型に多いのです。

【睡眠薬の処方】

 患者さんからは、「なるべく弱いものを」と、よく言われますが、医師は、強弱は量で調整して、不眠のタイプにより睡眠薬の作用時間で使い分けています。入眠が困難な人には短時間型のものを、途中で眼が覚めて眠れない方には中・長時間型の薬を処方します。持ち越し効果が懸念されるため私は初めから長時間型は使わないようにしています。

 抗精神病薬のヒルナミン、コントミン、セロクエルなどのもたらす眠気を利用して、睡眠薬と組み合わせることもあります。統合失調症の睡眠障害には、抗精神病薬のリスパダールが睡眠の質・時間を改善するというデータがあります。リスパダールは症状の改善も期待できますから、睡眠薬を使わずにリスパダールを症状と睡眠のために処方することもあります。

 抗うつ薬のデジレル、レスリンやテトラミド、また花粉症などに使う抗ヒスタミン薬のピレチアなども、眠気が出ることを期待して使います。

【より良い睡眠のために】

 厚生労働省研究班が作成した「睡眠障害対処12の指針」に書かれていることを、まず試してみるといいと思います。

1)睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分

 日本には「睡眠8時間神話」があって、「8時間眠れないんですよ」と言う人が少なくあ  りません。しかし睡眠は短くても済む人もいるし、季節でも変化します。不眠の定義は夜に眠れず、日中に眠くて困ることであって、眠れないと思っても、日中すっきり動ければ、あまり神経質にならなくていいのです。また、年を取ると必要な睡眠時間は短くなります。

2)刺激物を避けて、眠る前には自分なりのリラックス法を

 カフェインは就寝4時間前に、苦手の人は、午後は紅茶やお茶なども避けたほうがいいでしょう。ニコチンは覚醒作用があり、1時間前からは喫煙は避けてください。入浴は2〜3時間前に入ると、出た後に体温が下がってきて、脳の温度も下がって眠りやすくなります。またはシャワーやぬるめの入浴にします。

3)眠たくなってから床に就く。就床時刻にこだわり過ぎない

 「早く布団に入ることにしている」という人がいますが、意気込みが過ぎて、かえって眠れないと思ってしまうので、逆効果になってしまいます。睡眠覚醒の認知行動療法的アプローチは、本当に必要と思う時間の2時間後から布団に入れます。そして眠れるようになったら少しずつ早く布団に入るようにしていくのです。

4)同じ時刻に毎日起床

 人は無理やりには寝られませんが、無理やり起きることは出来ます。「寝る時間を一定にして、朝起きられるようにしたい」と言う人がいますが、全く逆で、リセットは起きる時間でできるもので、起床を一定にすることが大事です。「早寝早起き」ではなくて、「早起き早寝」が大切です。早起きしないと早くは寝られません。

人間の体は、起きてから15〜16時間したら眠くなるように体内時計がセットされています。この時刻に眠りたいと思ったら、その時間より15〜16時間前に起きることからスタートするのがいいわけです。また、休日だからと寝坊すると、次の日の朝が辛くなります。

5)光の利用で良い睡眠

 体に「眼が覚めたぞ」という信号を与えるのは光です。光を浴びてから15〜16時間が経つと眠くなるように体内時計が動き出すので、朝、日光を浴びることは大切なのです。曇り空でも雨でもカーテンを開けましょう。また、夜は明る過ぎないようにしてください。

6)規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣

 運動などでカロリー消費をすると、眠りが必要と体が感じますから、有酸素運動は大事です。また朝食は体が目覚めるために必要ですし、夜食を食べる場合は軽くしてください。

7)昼寝するなら15時前の20〜30分

 これより夕方にすると、夜の睡眠に悪影響を及ぼします。またこれ以上長く寝ると、ぼんやりして、すっきりしなくなってしまいます。カフェインは飲んで30分後に効いてきますから、昼寝のときにお茶やコーヒーを飲んで30分後に目覚ましをかけるとすっきり起きやすくなります。最近、昼寝ルームを作っている会社もでてきましたね。

8)眠りの浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに

寝床で長く過ごしすぎると、気分的に熟睡感が減りますから、まずは朝の起きる時間は決めて、夜は遅寝でもいいでしょう。

9)睡眠中の激しい鼾・呼吸停止や足のムズムズ・びくつきは要注意

 病気が潜んでいることがありますので、専門医に相談してください。

10)充分眠っても、日中の眠気の強いときは専門医に

長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合も病気のことがあります。車の運転も注意しなくてはなりません。専門医に相談してください。

11)薬代わりの寝酒は不眠の元

睡眠薬代わりの寝酒は、習慣になってしまいますし、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となります。

12)睡眠薬は医者の指示で正しく使えば安全

 医師の決めた量を守り、一定時刻に服用して早めに床に就いてください。アルコールとの併用はしてはいけません。

 厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費「睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班」平成13年度研究報告書より(ネットで検索、ダウンロードできます) 

 この12カ条につけ加えると、寝室環境も大事です。夜、眠りに入る前は、蛍光灯の青白い光より、暖色の電球のほうがいいのです。ですから、寝る前のスマホ・アイパッドなどは光が眠気を妨げます。

 また夜に寝床に入ってから、いろいろ悩みが浮かぶことがありますが、考えても解決策が夜中に出ることは、まずないものです。「明日は明日の風が吹く」と考えて、寝床であれこれ悩むことは止めたほうがいいと思います。

 まずは早起きを心がけて、良い睡眠がとれるようにしましょう。
                                                〜了〜

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        

 
新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記
 
今回の台風では各地で「気象庁始まって以来」とか、「五十年ぶり」とかの記録であると言っている。まだ七月初旬というのに。この勢いで九月になったらどんな被害がでるか、風神様にお祈りしておきたいところだ。

 さて、今月は山澤先生から「眠り」についてお話を伺った。お話は家族を含めて、健康に睡眠をとるにはどうしたらよいか、というテーマでいただいた。我々、老体といえる立場にいるものとしては、ます睡眠時間が短くなったことがあげられる。毎朝五時から五時半には目が覚める。それでいて、午後一時から二時頃猛烈に眠くなる。若い社員の前で居眠りもできず、しばし歯を食いしばってこらえている。

 それから、こんなこともある。夜十一時過ぎ、テレビを見ているとき猛烈な眠気を覚える。ほとんどテレビの内容など覚えていない。眠っているのだ。朦朧として床に就く。しかし、床に就いた途端、さっきまでの眠気はどこへ行ってしまったのか。時には二時間、三時間と眠れない時がある。同じような経験された方はいないだろうか。

 もう一つ、日本人の寝酒についても意外なことを聞かされた。外国の人たちは眠れないとき、医師に相談するとか睡眠薬を飲むという。しかし、日本人は圧倒的に「寝酒を飲む」と答えるという。かくいう私の場合がそうだ。

 先生の教訓は、お酒は依存にもなりやすいし、睡眠の質を悪化させるという。寝つきは良くなるが、早く目が覚めるそうな。確かに老体の早起きは、こんなところにも原因あったのかとつくづく感じた次第だ。

 息子がスースーと気持ちよく寝ていると、本当に親も安らかに眠れるのが実感である。 

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp