新宿区後援・11月新宿フレンズ講演会

家族相談にみる家族の問題と解決   

講師 元「みんなねっと」事務局長 良田かおりさん 

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【みんなねっとの活動方針】

 私は1年半前まで「みんなねっと」(全国精神保健福祉会連合会)の事務局長をしていました。その前は全家連(全国精神障害者家族会連合会)の相談室にいて、他の相談員と共に家族や当事者からの相談を年間4000件ぐらい受けました。

 全家連が解散になって、川崎洋子さん(元「みんなねっと」理事長、今春フレンズで講演)と私と母親中心に数人が集まって、「このまま家族会連合会がなくなったら依りどころがなくなってしまう。家族も困るだろう。家族会の連携を作りなおそう」と話し合いました。

 全家連は破産ですから、椅子や机まで没収されて何もありません。喫茶店に集まって寄付金を出し合って、中古の机を買って池袋に小さな事務所を借り、「みんなねっと」の活動を始めました。全家連は研究者やら多様な人が集まって学究的な調査研究や学会も開催し、当事者の様々な困難についても問題提起してきました。しかし当事者の団体も育ってきたから、私たちは「家族、ことにお母さんの立場に立って活動する団体になろう」と決めました。

 そして家族支援の中でも大事な柱が「家族の相談を受けること」、「家族の手助けをどのようにしていくか」、また「精神障害者の家族は困っている、家族の生活の状況はこうなんだ」と社会や政治に伝えていくこと、「家族支援の必要性、重要性を訴えること」でした。

 その1つの成果が、何十年も訴えてきた保護者制度の撤廃です。全てを「みんなねっと」がやったわけではないですが、その歴史的な流れと家族の負担があまりにも法律的にも現実的にも重すぎる制度だと訴えてきました。そういう活動を踏まえて、家族支援を主にお話したいと思います。

【わが家の場合】

 娘は他人に敏感で、外に出られなくなって通販で買い物をするので、しょっちゅう宅急便が届きます。7〜8年経った頃、仕事人間だった私がリタイアして家に居るようになり、気になって「何買ったの」「また買ったの」「いい加減にしたら」とか言い始めたわけです。私は沢山の家族相談に答えていたにもかかわらず、娘への対応は全くダメでした。彼女にはそれがストレスになったと思います。

 しかしそのストレスは彼女には良いほうに作用し、びっくりしたことにパートに出始めたのです。クローズでコンビニに勤めました。主治医に「コンビニは難しいよ。意外とレベルが高いから賛成しない」と言われても辞めないので、最初は心配しました。たまたま店長がおおらかでドジも笑い飛ばしてくれるような人だったので、この1年続いています。

 もちろん彼女の弱いところはたくさんあります。1日4時間はレジをやりますが、最近はお客様もイライラしている方が多いらしい。丁寧に袋に詰めれば、「いいよ、そんなに丁寧にしなくても」、さっさと詰めると「扱いが悪い」、何をやっても怒られるわけです。

 彼女が帰宅するとそういう話を1時間ぐらいは聴いていました。時々ふっと「私が居なかったら、この子は誰に話すのだろう」と思いました。仕事もストレスになりますから、どこかで聞いてあげる人がいないとストレスを溜め込みやすく、仕事の継続が難しい。

 こういう日々の愚痴も聞いてくれる家族以外の支援者が必要と思いました。職場や作業所での葛藤、家庭内での葛藤、「自分は何もしていない」「これでいいんだろうか」「将来どうなるの」「親に頼っていていいんだろうか」等々、たくさんの葛藤がある、それをどうやって発散できるのか。

 娘は時々疲れて具合が悪くなり、夜も眠れなくなるので頓服を飲ませたりします。翌日はボーッとしても急には休めないと職場に行き、頑張ってドカンと疲れる…を繰返します。この1年、入浴の用意をし、食事を作って全面的に支えてきました。ありがたいことに私はいろんな知識を仕事で得ましたから、何とか応援したいという気持ちで知識を駆使して受け応えに気を付けていますが、私も疲れます。

 娘が仕事に行けて良かったと思う点は、社会性が増しました。クレーマーに何か言われるとショボンとしていましたが、今は「早くしろよ」「はい、ありがとうございます」「もたもたすんなよ」「はい、ありがとうございます」、すると何も言わなくなるとか。それも1つの解決法で、そういう適応力が出てきた。8月には成長を喜んで1周年記念祝賀会を母子でやりました。

【気持ちを受け止めてくれる場がほしい】

 生活上の問題を気軽に相談できるところが日本にはないと思います。「精神保健相談は保健所へ」となっていますが、わが家からは電車とバスに乗らねばならない。相談したいという娘と一緒に行きましたが、保健師さんは真面目で最初の頃からの話を聞いて一生懸命メモを取る。いろいろやってくれるのかなと思ったら、やおら施設のパンフレットを出して「どこか良いところを探して、電話して見学なさったらどうですか」だけでした。あんなに聞いたのにパンフレット1枚。家で娘が大泣きして「お友達になって一緒に行ってくれるのかと思った」というのです。
  期待し過ぎていたと思い直して、本人に「どうしたいの?」と聞いたら、「私は仕事がしたい」と言うので、次は就労支援の窓口に行きました。青年が出てきてクローズとオープンの意味、その良し悪しを講義して、「隣の市に良さそうなところがある」というのです。娘と待ち合わせて行きましたが、娘は「面白そうだけど、ちょっと遠い」「職員さんと話せた?」「今風な人だね。バス待っている間スマホやっていた」せっかく一緒にいるのに話もしない、そんな時代なのですね。結局、娘はアルバイト先を自分で探してきたという顛末です。公的機関は、家族や当事者の問題の受け止め方が不十分だなと思いました。

【家族の大変さは分からない】

 私が一番恐れているのは、もし昔のように娘が疲れ果てて大混乱を起こしたらどうしようということで、不安がぬぐえません。知的・身体・精神、どれも障害を持つ人の大変さ、その人を介護することの大変さは世の中に理解されていないと思います。

 この間、相模原で施設職員だった男が、元の職場の知的障害者を殺すという大変な事件が起きました。犯人は「家族は可哀想だ、楽にしてやったじゃないか」と思っている。もちろん間違った思い込みですが、家族の中に重圧感みたいなものを見て取ったのかもしれません。

 相模原の事件では、被害者の名前は公表されなかった。身内に知的障害者がいると知られるのを避けたい家族もいたと思います。それが親の偏見だと言われればそうでしょうが、偏見のある世の中で、家族が「自分はこういう風に苦しい状況にある」と吐露できない社会なのです。

 子供は親だけのものではなく、社会の子供ですから、社会全体でどんな障害のある子供でも背負っていかなければいけないはずなのに、障害者は家族と暮らしている方がほとんどです。自立生活運動といって重度の障害者でも自立して生活している人もいますが、それは本当に一部です。地域支援が極めて不十分な状態で親だけが背負っている、わが国は本当に福祉施策が遅れていると思います。

【訪問支援・地域支援の充実を】

 そこで、「みんなねっと」では、『精神障がい者家族相談事例集』を作りました。事例内容を大きく分けると以下になります。

 ?日常生活、?医療、?家族会、?家族依存、?地域連携、?親亡き後、?制度。

 日常生活上の問題は病気と深く絡み合って、互いに影響しあっています。とても多いのは受診拒否・服薬拒否の問題で治療もできない。主治医との関係の悩みもあれば、病気がよく分からない、入院すべきか、退院後の生活等々、生活と医療を合わせて相談できる体制が必要だと思います。

 家族が再発の恐怖を持ったまま混乱が整理できない、家族内でトラブルや対立を抱えている、あるいは部屋に閉じこもったまま何年もたっているのを解決できていない。本来、私たちが願うのは、訪問をして問題をときほぐす支援をほしいのですが、そういう支援者も今はほとんどいないですね。

 「入院を20回も繰り返している」という相談もありました。長期入院者を退院させようという話は40年前からあります。そこで長期入院者の診療報酬の保険点数を低くして、3ヵ月の短期入院者の点数を高くしているので、病院側は短期入院で病床を回転させようとします。3ヵ月で十分な治療が出来なかった人は、再入院を繰り返すことになってしまいます。

 10回入院することは、家族にとって10回の本人の病気の悪化というエピソードがある。それは凄まじい心的エネルギーを使います。医療費も1回の入院に高額療養費を使っても20万ぐらいはかかる。10回入院で200万円以上、家族も本人も疲弊します。何も良いことがないのにこの状況が変らないのはなぜでしょうか。

 今の医療は病気を長期化させる入院システムをずっと続け、かたや長期入院者は退院させようとしている。これはバケツに水を出しっぱなしにして溢れる水をどうしようかと考えているようなもの。蛇口を閉める、つまり再入院をさせない施策を作ってほしいのです。

 病院か家族かという二者択一ではなくて本人の生活を地域に確立しても良いのに、家族が世話をするのが普通とされ、支援を受けて地域で暮らせている人はほんの一部です。いま日本では高齢者問題も家族に依存する方向に傾いていますから、障害者への公的な支援は当然のことという方向に転換させるのはとても厳しい状況にあります。国会議員の中にも、公的扶養は認めない、家族がするべきという考えの人が多くいます。

【人とのつながりを】

 次に皆さんが相談を受けたらどうするかですが、相談者はまず「聞いてもらいたい」のです。「共感してもらえた」と思うと心の問題は緩和します。「あなたの考え方おかしいよ」とか、「そのやり方はダメよ」とかはおっしゃらないで、まず聞くことが大事と思います。

 疾患や福祉等の勉強は皆さん学んでいると思いますが、一般論の知識学習はいくらしても親亡き後の心配が消えるわけではありません。個別にどうするかは学習会では得られないのです。私達の問題は、すぐ解決する魔法の杖はない。「自分がこうやったら成功したから、お宅の子供さんも成功するも知れない」というのも当てはまりません。人も違い家族も違う、性格も違う、みんな違いますから解決への道のりも千差万別です。

 一時期、日本においても「心理教育」が盛んに行われました。欧米では、心理教育をした後に個別ケアをすることがセットでした。ところが日本では個別ケアを抜いたのです。教室で一般論を分かっただけでも、さまざまな対応には時に役立ちます。でも、その人の人生が変わっていくためには、一般論の後の個別性が必要なのですね。

 学んだことは分かったけれど、それを受け入れられるか。心配だ不安だという心の葛藤もあります。それに寄り添うような支援が必要だと思います。「あなた、まだ受け入れてないの」ではなくて、分かっているができないこともある。それをお互いに理解し合うということです。

 「解決策は?」といつも聞かれますが、私は「まず一緒に考えましょう」と言います。皆で知恵を寄せ合って考えて、どうしても家族の中で解決できないときは、関係者を呼んで聞くとか、いろんな人を引っ張り込んで一緒に考えると良いと思います。家族だけでは解決できない問題もあります。施設や保健所など医療・福祉関係者をはじめ誰か信頼できる人をみつけ、その人の手助けで解決することも多いのです。

 いずれにしろ我々の問題は時間がかかるわけで、親が死んだ先のことまで心配したらきりがないですが、出来るだけのことはしなければならない。とくに本人に残してあげたいのは人とのつながりです。孤立させないために1人でもいいからつながることだと思います。

 地域の関係者や障害者同士など、個々のつながりができていくプロセスにお互いが付き合っていくと、何か広がりが見えてくると思います。

 最後に、ある時精神病院協会の医師に「家族は何を求めているの?」と聞かれました、私は「訪問して手助けしてください」と言いました。「いま必要なものを、いま主張しても私の眼の黒いうちはできないからしょうがない」と思わないでください。私たちが生きているうちに実現しないことは沢山ありますが、未来を見据えてこれからの人たちにも大事なことですから、何が必要か、生の声を 本音で伝えることが大事だと思います。

 家族会には誰も論理を期待していません。行政も国も家族の本音を聞きたがっていると思いますので、本音を真剣に討議して、皆さんの地域でも機会あるごとに本音を話し、本音を訴えていってください。
                                           〜了〜

*みんなねっと

 http://seishinhoken.jp/

*みんなねっと相談室

 03‐6907‐9212?

水曜日 10:00〜15:00 ?(12:00〜13:00昼休み)?

*『精神障がい者家族相談事例集』(みんなねっと会員1000円、一般1080円)

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        

 
新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記 
 いよいよ師走。巷では東京都知事の話題やら、アメリカ大統領の話題やら、韓国大統領の話題やらトップに立つ人の話題しきりである。そんな時に、同じ家族の立場でこれまで活躍してきた良田かおりさんから家族相談のあり方について語って頂いた。

 わが家の場合として良田さんの患者である娘さんへの関わりから話が始まった。そこで家族相談で答えている内容とは逆な、娘さんのストレスを生むような対応であったと述懐した。私の場合とそっくりなのが嬉しかったというか、救われたというのか、まず話がすんなり頭に入ってきた。

 そして、「家族会連合会という職場にいて、いろんな知識を得ました」と言って、それが娘さんへの対応で大いに役立ち、回復に近づいたのではないか。これも頷ける話だ。やはり患者さんについての知識を得ようとすれば、その道に入ってしまうことである。英会話が学びたければ英語圏に移住する、日曜大工がうまくなりたかったら大工の仕事をする。患者さんを救いたかったら家族会役員になってみるのも手ではないか。

 最後に人とのつながりについて思いを語っていただいた。個人の問題は学習では解決はしない。人が違う、家族も違う、性格も違う、千差万別であると。しかし、良田さんはそんな時「寄り添うような支援が必要です」という。皆で知恵を寄せ合って、関係者を呼び、家族だけでは解決できない問題を一緒に考え、その中から解決することもあるという。

 そして、行政に、国に家族の本音を伝えることが大事であると言い切った。「本音を真剣に討議して、地域でも機会あるごとに本音を話し、本音で訴えていってください」・・・家族会のあり方の指針とも言えるお言葉として心に響いた。                    

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp