ミクロ戦記その5

 広大な宇宙空間。太陽系第三惑星「地球」の唯一の衛星「月」はいつもと同じ表情で浮かんでいた。
この月の宇宙空間側、つまり地球から見て裏側のひょうたん型のクレーターにミクロマン達の実験拠点が置かれている。ひょうたん状になった2つのクレーターの小さい方に蜘蛛の巣のようにチューブ状の道路が張り巡らされた建物がある。
 ムーンベースと呼ばれる月唯一の拠点である。現在、この基地では数々の科学実験が行われている。

 ムーンベースのあるクレーターがひょうたん型であるのには理由があった。
 4年前、ムーンベースは現在大きなクレーターになっている部分の中央部にあった。
 当時、このムーンベースでは全力をあげて重要な開発実験が行われていた。異次元制御モジュール「ミクロム1999」開発であった。しかし当時、異次元発生装置の実験失敗し。実験担当者が基地ごと時空の狭間に飛ばされ行方不明となる事故が起こったのだった。
 現在の施設は事故から3年、昨年ようやく実験が行える段階にまでこぎ着けたのだ。

ムーンベースの司令室、司令官アーサーとアーロンがシートに腰掛けている。
「ミクロサテライトからの連絡はまだないようだな。」アーサーはチューブ状のココアをすすりながらアーロンに聞いた。
 「ああ、定時連絡は全くない。こちらからの呼びかけにも応答なしだ。詳しい状況はわからんがミクロサテライトに何か起こったのは明らかだが、この基地からではまったく視認できん。」アーロンはコンピューターのモニターで通信記録を確認している。
 「一刻も早くエリックに依頼しておいた時空の歪みの観測結果を知りたい。こないだの突然の隕石群の出現といい、この通信異常といい、不可解な事ばかりだ。」
 「明日、ジョージ長官が視察に来る予定だがミクロサテライトに連絡が取れないんではその最終打ち合わせもできん。受信だけでもかまわん。通信を続けてくれ。」
 「了解。」アーロンは再び交信を始めた。

 衛星軌道上に浮かぶ拠点ミクロサテライト、表面を包む岩盤に設置されたアンテナ類の修復は思ったよりもはかどっていなかった。

 飛来した謎の物体との衝突時に精密機器の予備部品の大部分が衝撃で使いモノにならなくなってしまったのだ。部品の使える部分を寄せ集めてかろうじて通信機能の一部を回復しただけにとどまっていた。

 「シュルツ、目視による警戒は2交代で続けるよう指示してくれ。」

 「了解。」

 「外宇宙から何か接近してきます。形状からブレイカーズ所属の突撃艦グラジエイターだと思われます。」

 「すぐ調べろ。」

 「駄目です。通信回線が全く開きません。」

 「もう一度試して見ろ。」

 「駄目です。通信システムの呼び出しすら出来ません。」

 「回線が開かんか?そうだろうな・・・・。」背後から何者かが話しかける。

 「誰だ!!」エリックが声のする方を向いて叫ぶ。そこには三本角のアクロイヤらしき存在が腕を組み立っていた。

 「アーデン・バルガー!!」

 「ほほう覚えていたか。」

 「どうやってここまで入ってきた。」

 「ふふふ正面から堂々とな。」バルガーはパチンと爪を鳴らした。正面のモニターがドッキングベイ付近を映し出す。無重力の室内を何人ものミクロマンやフードマンの死体が浮遊している・・・・。

 「ゴミクズのような連中がごそごそとやっていたが軽く片付けてきたよ。」

 「貴様ーー。」エリックは激高し素手でバルガーを殴りかかろうとする。繰り出された拳はバルガーのすぐ手前で停止する。エリックに駆け寄るシュルツの動きも不自然に停止した。

 「ぐあっ」「うぐぅっ」エリックとシュルツの顔が苦痛に歪む。

 「殴りかかれず残念だな。ヘルダーほどでは無いが念動力は貴様らを軽く凌ぐのだよ」

「今度の我々の拠点への攻撃は貴様らの仕業か!!一体狙いは何なんだ!!」

 「ふふふ、地球への移住を平和に行う為の一手さ。」

 「何を!!」

 「ではお前もここで死んで貰おうか。」バルガーの半月状の爪がゆっくりそして大きく開きエリックの首筋に近づく。

 ピピーッ、コンピューターが突然起動するとモニターに何かのデータを表示した。バルガーは一瞬それに気を取られたが再び半月状の爪を大きく開き、エリックの首筋を切り裂こうとする。爪先がエリックの皮膚に触れようとした瞬間今度は衛星通信機の呼び出し音が鳴り響いた。自動的に記録モードで通信回線が開く。

 「!?」

 「よう!バスターだ!帰ってきたぜ!」威勢のいい声がスピーカーから響いた。

 「ちっ増援か。バスター?データにない名前だ調べる必要があるな。」

「バスター!来るなっ」エリックは叫んだがそれを封じるようにバルガーは超能力マッドダークネスを繰り出した。周囲が闇に包まれエリック達は意識を失った。

 バルガーはコンピューターに近づきモニターに目をやる。

 「むっ、アクロモンスターのデータか。ふふふ、なかなかの情報収集能力だ。面白い。」

 アーデン・バルガーはマントを翻すと闇の中に消え去った。


 東京臨海基地内のラウンジ、東京湾での戦いを終えたエバンスが一人寂しげに、テーブルの上の空になったコーヒーカップを眺めていた。コーヒーカップの隣にはあの戦いでの死亡報告書が山積みになっている。大勢の戦後世代の若いミクロマン達の命が失われた・・・。

 「お疲れさまエバンス司令、ご一緒してもいいかな。」誰かがエバンスに声をかけた。 その男はゆっくりとエバンスに歩み寄る。そして、空になったエバンスのコーヒーカップに目をやった。

 「もう一杯コーヒー入れようか?」

 「ああ頼む。」

 「大変な戦いだったな。こっちは戦闘に参加でなくて残念だったよ」

 「いつこっちに?」

 「ついさっきここに着いたばかりだ。ヘンリーから調査依頼があってね。」

 「もう現場復帰か。人手不足とはいえ・・・・怪我の方は大丈夫なのか?」

 「ああ、まだしっくりとは来ないがね。」

 「大勢死んだんだな・・・・。」男は死亡報告書の山を見る。

 「ああ・・・。」

 「そう気を落とすな。」男はエバンスにコーヒーを差し出した。エバンスは熱いコーヒーをゆっくにと口元に流し込んだ。

 何人分かの死亡報告書を書き終えるとエバンスは額に手を当てて目をつぶった。

 「すまん、戦いの疲れが出てきたようだ・・。悪いが先に一休みさせてもらうよ。」エバンスは報告書の束を抱えるとフラフラとラウンジを後にした。

 「お休み・・・エバンス・・・・。」

 硫黄島・・・。かつて人間達がこの島を巡って激戦を繰り広げた地・・・。その岩ばかりの島の海岸に巨大な円筒形の物体が焼けこげた金属の地肌をむき出しにしながら突き刺さっていた。円筒形の物体は外観から宇宙船のように思われる。その周囲には10p足らずの人型の物体が忙しそうに何かの作業をしている。

 「サタンダー、我々の基地の建設作業は順調なようだな。」

 「うむ、あと1月もあればこの島は我々の日本攻略作戦に重要な拠点となるだろう。」サタンダーは設計図を片手にアクロイヤー達に細かく指示を与えている。
 「よし、付近の岩石でカモフラージュしろ。」
 「了解。」アクロイヤーが鉄球状の手首を高く挙げ敬礼する。
 「富士山地球本部や名古屋で捕らえた捕虜をアクロイヤー化した。既に400体の処理が完了した。大阪で捕らえた600人を加えれば戦力として十分に使えるだろう。」

 「デビルス、先発隊の様子はどうだ?」

 「重要拠点の同時攻撃作戦はそれなりの戦果をあげたようだが、首都攻略は失敗に終わった様だ。」

 「マグネパワーズと地球にいる連中との直接的なコンタクトは何としても阻止しなくてはならん。奴らが手を結べばやっかいだ。」

 「マグネパワーズ基地から逃れた連中はあらかた始末できたようだが。」

 「いや、肝心のヤツらがまだ残っている。」

 「銀河評議会か。」

 「そうだ。メンバーのゼットというヤツは既に始末できたらしいが残ったソロモンというヤツに手を焼いているらしい。」

 「ソロモンに関してはジキルスとハイドルが何とかするだろう。奴らが本腰を入れる前に地球を攻略せねばな。」

 「奴らに協力する地球人共をまとめて始末出来なかったのは痛いな。」

 「特に片貝あきらが問題だ。我々の追跡を振り切って姿を眩ました。日本にいるのは確かな筈だ。」

 二人が話していると突然目の前の空間が歪む。その空間の歪みからマントを翻した黒い影が現れる。

 「デビルス総統、サタンダー総統、日本攻略拠点は順調に建設できているようですな。」

 「おおっこれはこれは、アーデン・ダイガー殿、これもあなた方の援助のお陰です。」サタンダーはひざまづきダイガーに頭を下げる。

 「頭を上げて下さいサタンダー殿、我々アーデンとアクロイヤーは古くからの同志ではありませんか。それにあなた方は兄レイカーり盟友ではありませんか。かつての様に手に手を取ってミクロマンどもに一矢報いてやろうではありませんか。このダイガー、その為の援助ならば惜しみません。」ダイガーはサタンダーに駆け寄るとその手を取って立ち上がらせる。

「ダイガー殿、そう言っていただけると感激の極みです。」サタンダーはダイガーの手を握り返した。

 「ささ、ダイガー殿、建設中の基地を案内しましょう。」促されて基地の視察に向かうダイガー。


 南米某所。アマゾン川のほとり、密林の中、エメラルド鉱山跡に建設された基地に20年の間彼は息を潜めていた。ジャイアントアクロイヤーの下半身を取り付けられたメカアクロイヤーが数機、沢山のムシケラーやトカゲラスがそれらを整備している。

 作業台の上でアーデンロボが一機アーデンジェットに換装されている。そして、台車のまま格納庫内のレールの上をゆっくりと移動し、奥の大気圏脱出用のリニアカタパルトに乗せられる。そしてアーデンジェットが移動した先には黒いボディの見慣れないロボットが・・・。その黒いボディはあのロボットマンそっくりで著しく形状の違う頭部が乗せられている。

 司令室の窓からその様子を眺める影が二つ。一人はグリーンアマゾン総統、もう一人はアーデン。ブルターである。

 「ご協力感謝します総統。」

 「よく来られたブルター殿。」

 「かつては20機あったジャイアントアクロイヤーやメカアクロイヤーもたった5機になってしまった。だが最後のアーデンロボを維持してきた甲斐があったというものだよ。」

 「総統、20年の長きに渡りよくぞこの基地を維持されました。総統に今度の作戦の全貌をお知らせできないのが残念でなりません。」

 「いや、構わんよ、それでこそ真の軍人だ。」

 「どうだね一杯。人間達が飲むラムという酒だがブルター殿の口に合うかどうか。」

 「いただきます。」

 「アーデン・アクロイヤー連合に乾杯。」

 「乾杯」

 ビービービービー。敵が接近してきた事を示すサイレンが響く。

 「お客さんだ。」

 「私も迎撃に出ます。」

 「いや、君はアーデンジェットで宇宙に向かいたまえ。」

 「しかし、老朽化したジャイアントアクロイヤーやメカアクロイヤーでは奴らの新型には!!」

 「ふふ、足止めぐらいにはなるさ。」

 「ご武運を・・・。」

 アマゾンのジャングルを進むマシーンZと4機のロボットマン。はるか後方にはコナンの操縦するミクロステーションが周囲を警戒しつつそれに従う。マシーンZにはアマゾン総統追撃隊の指揮官ドクターマン・ケーンが乗り込んでいる。黒い迷彩塗装を施されたスーパーロボットマン・ディーン2機にはマグネパワーズクラークと新人のシャツネツ。エンデバー2機にはカークとキースが乗り込んでいる。この2機のエンデバーは中距離支援用にターボキャノンを装備している。

 「クラークとシャクネツは私の左右に展開しろ、カークとキースはしっかり支援しろよ。敵の奇襲には気を付けろ、早くしないとブルターにアレを宇宙に運ばれてしまう。」ケーンが苛立たしげに僚機に指示を与える。

 「了解。」全員の声がほぼ同時に通信機から聞こえる。

 「6時方向に敵1。」コナンが叫ぶ

 「メカアクロイヤーが1機か。敵の偵察だ片付けるぞ。」

 「了解。」クラークのロボットマン・ディーンが右に回避運動を取りながら攻撃を加える。

 「よし、ここに敵がいるという事は奴らの基地が近いという事だ。」

 エメラルド鉱山跡の基地。老朽化しつぎはぎだらけとなったジャイアントアクロイヤーやメカアクロイヤー5機がエレベーターに乗り出撃の合図を待つ。

 「総統、偵察に出たメカアクロイヤーが敵と遭遇しました。」

 「よし、全機起動。ミクロマン共に一泡吹かせてやれ!!」ブルター殿、無事に宇宙に向かってくれよ・・・・。

 鈴鹿レーダーサイト、ここはアクロイヤーの攻撃によって破壊された生駒レーダーサイトに代わって急遽建設された天文観測所である。

 ここにある事実に気づいた男がいた。SHIDダイニングエリア長官にして天文学者マックスである。

 彼は地球本部陥落の後、一時東海基地に身を寄せていたが鈴鹿レーダーサイトが稼働可能な状態になった時、志願してこのレーダーサイトの所長になったのだ。彼は経験豊富な古参のミクロマンだが元々学者肌で戦闘は得意でなかった。地球本部陥落時も満足に避難民の撤退の指揮をする事ができなかったためマックスが指揮した避難民の中からアクロイヤーの手に掛かった犠牲者も多く出てしまっていた。マックスが自分の指揮官としての能力に限界を感じたのはこの事が大きな原因だった。

 東京での決戦を控えた時期に最前線から比較的安全な後方支援部署への異動を志願するのは臆病者のそしりをうけても仕方のない事だとマックスも理解はしている。

 しかしマックスはむしろ、皆が戦闘に手一杯になり宇宙へ目を向ける余裕の無くなった今こそ天文学の専門知識を持った自分がこの新しい部署に移動すべきだと考えたのだ。SHIDダイニングエリアの長官を務めたマックスにとってレーダーサイトの所長というポストは大幅な降格人事になる。

 マックスがこの人事をエバンスに志願した時、エバンスは快く承諾してくれたが、一部のミクロマン達の中にはマックスを臆病者呼ばわりする者もいた。

 マックスはこの事をある程度は予測していたこの中につき合いの長いハワードがいる事はショックだった。

 マックスの気づいた事実・・・・。それは最近、太陽系内で発生しては消えていく次元の歪みの発生パターンに一定の規則性があるという事だ。そして発生間隔は徐々に短くなってきている。

 広く分散し発生しては消えていく次元の歪みの発生点はある一点を目指している。それはあの3年前の忌まわしき事故のあったムーンベースのあるクレーターである。


 東京臨海基地内、整備工場。かつてミクロマン達の戦力として活躍し、時には心の支えとなった伝説の機体ロボットマンがたたずんでいる。ケンとキムがダッシュウイングを畳んだ状態でその足下に立っている。

 スモークの貼られたパワードームが開き中から一人のミクロマンが降りてきた。中から出てきたのはグリーンのM211タイプのボディの男だった。だが同じタイプのボディでもカリーでもかつてのジャックでもない。

 「キリーだ。よろしくな。」

 「あきらくんじゃないのか。」が残念そうにつぶやいた。

 「・・・。」キリーは声の主を一瞥したが興味なさそうなそぶりをした。

 「あきらくんは別の用件でアメリカにいる。それと、彼は今プロフェッサーKと名乗っている。片貝あきらはアクロイヤー達にとって一番の標的だからね。」キムが場の空気がを固まるのを見て取って間から口を挟む。

 「別の用件?」

 「そうだ。今は全貌を明かすことは出来ないがな。」

 「そうか、しかし、ロボットマンが来てくれて助かったよ。」

 「残念だがこれはロボットマンではないんだ。」

 「外見はそのままだがアメリカでロボットマンの基本構造を参考に製造されたバイオトロンだ。」

 「バイオトロン?」

 「そうだ。バイオトロンはロボットマンをベースに量産用に材質、構造を簡素化したロボット兵器だ。かつてのロボットマンのような培養脳は全く装備されていない。」

 「外見だけがロボットマンの廉価版になっているって事なのか。」

 「そうだな。今回、我々が、日本にバイオトロンを持ってきたのはサイボーグ研究所で新たに製造されたダブルナイン培養脳をこのバイオトロンに装備するためだ。」

 「バイオトロンに装備されている電子頭脳にはかつてのロボットマンの戦闘データを元にプログラミングされているが、戦闘のノウハウは20年前のままなんだ。新たな敵との戦闘にはほとんど役に立たない。」

 ミクロサテライトに一隻の宇宙船が接近していた。宇宙艦の名はバッカス。乗組員はマグネタイタンズの3人と格闘三兄弟の合計6人
 「あれがミクロサテライトらしいが様子か変だな。」

 「みんな昼寝でもしてるのかな〜。」

 「永遠に眠っちまってるのかもしれねぇぜ」

 「ジェット、レザー、返事がねぇならこっちから乗り込むだけだ。嵐、武蔵、火山、お前らも来るか?」

 「はい。」格闘三兄弟は3人そろって同時に返事をした。

ミクロサテライトでは宇宙船バッカスの様子を窺う影が一つ・・・。

「何だあの船はガイドビーコンもなしにドッキングするつもりか。ふふふ、面白い連中だ。どんな連中なのか見たくなった。よし入ってこい。」

バッカスが近づくとゆっくりとゲートが開いた・・・・。

 アマゾン流域の密林。ミクロマン達の激しい戦闘が繰り広げられていた。

 地理に詳しいメカアクロイヤーは軽快にジャングルを駆け抜けつつ遠隔攻撃を仕掛ける。シャクネツのディーンはかろうじて攻撃をシールドで受け止めているが反撃するゆとりはない。

 「くそっ囲まれたか!!」クラークは反撃しつつ叫ぶ。

 カークとキースのエンデバーは全力で走りながらターボキャノンを乱射する。

「こう走らされては照準のしようがない」カークがぼやく。

「立ち止まるな!!いい的になるぞっ。」ドクターマン・ケーンが叫ぶ。

 ドクターマン・ケーンのマシーンZは猛スピードで側面からメカアクロイヤーに接近するとその懐に飛び込み格闘戦に持ち込む。マシーンZと捕捉できずに右往左往するメカアクロイヤー。マシーンZは腕に装備されたクローでメカアクロイヤーの腕を切り裂く。

 「す、すごい」シャクネツはマシーンZの動きに呆気にとられた。

 「くそっ旧式のくせにっ」キースのエンデバーがターボキャノンを発射する。その弾丸はメカアクロイヤーのキャタピラを吹き飛ばす。

 「やった命中した!!」キースはうれしさの余り叫んだ。敵はその一瞬の隙を見逃さなかった。メカアクロイヤーの砲撃がキースのエンデバーの左足を吹き飛ばす。キースのエンデバーはそのまま後方に吹き飛ばされつつ転倒する。

高台に陣取るグリーンアマゾン総統のジャイアントアクロイヤー。

「ふふっ、部下共よく動いている。よーし頃合いだ。行ってくれブルター、宇宙に。」ジャイアントアクロイヤーの背中のウイングが開きブースターが点火する。轟音とともにジャイアントアクロイヤーの巨体が持ち上がり黒煙を吹きながら飛び上がる。

ビビーッ。上空待機のミクロステーションのレーダーに新たな機影がキャッチされる。

 「前方に新たな敵!!」コナンが叫ぶ。ミクロステーションは機体を急旋回させ回避行動を取る。

 「遅いっ。」グリーンアマゾン総統のジャイアントアクロイヤーはミクロステーションの真上に飛び乗ると両腕のミサイルを打ち込んだ。

 ドガガッ。炎が上がる。ジャイアントアクロイヤーはミクロステーションを踏み台にして再び上空に舞い上がる。

 「ミクロステーション推力低下!!機体が安定しません。」

 「コナン、何とか機体を引き起こせ。」ドクターマン・ケーンが叫ぶ。

 「ドクターマン・ケーン、前方をっ!!」

 「何?」ドクターマン・ケーンの目に上空に昇る噴煙が見えた。

「誰かあの煙の先を射てっ!!」ドクターマン・ケーンは必至に叫んだ。

 キースのエンデバーは転倒し横倒しになったままターボキャノンを噴煙の先に向ける。

ドキューーーン。ターボキャノンが火を噴く。しかし一瞬早く射線を何かが遮った。キースは思わず目を閉じる。

 キースはゆっくりと目を開けた。目の前にはジャイアントアクロイヤーが覆い被さるように倒れ込んでいる。ターボキャノンの弾丸はジャイアントアクロイヤーの胸のハッチ部分に命中したらしく大きな穴が空いている。

 「うわっ。」キースが思わず叫んだ。

「ふふふ、これで作戦成功だ。ブルター、命を無駄にするな・・・。」ジャイアントアクロイヤーのコックピット内のグリーンアマゾン総統はターボキャノンの直撃を身体に受けていた。

「ふはははは、ミクロマンどもぉ我々の勝ちだぁ。」グリーンアマゾン総統が叫ぶと同時にジャイアントアクロイヤーは激しい炎に包まれた。

 「・・・・・・」ミクロマン達は上空に昇るアーデンジェットの排気煙をじっと眺めていた。


 東京臨海基地内、整備工場。整備ハンガーに首のないロボットマン・バイオトロンが固定されている。クライムローダーの貨車には交換部品が満載されている。

整備工場には武器開発チームのブローニングと建設機械開発チームのバリアントがいる。慢性的な人手不足の中、急遽召集された整備スタッフである。ロボットマン・バイオトロンの整備はそれぞれのチームのノウハウを生かして行われている。

 バリアントはビルドクレーンを慎重に操作しながら新しいロボットマンの頭部をバイオトロンの胴体に装着する。

「終わったな。」

 「バリアント、次の作業に入ろう。」

 「ゴッドファイターの方か?あっちはバラしてあるから難物だぞ。」

「こんな古い機体までかり出す必要があるのかな?」

 「予備機は多いに越したことはないそうだ。」

 同じ頃、東京臨海基地内のラウンジは大騒ぎになっていた。セクストンが昏睡状態に陥っているエバンスを発見したのだ。近くにいたドクター・ウォルターが治療にあたっている。

「エバンス司令、しっかりして下さい。」居合わせた何人かのミクロマンが騒ぎ出す。

 「どうやらこれは劇毒物によるもののようだ。ブレストの毒素洗浄機能も生命維持機能も停止してしまっている。」ウォルターがブレストのメーターの数値を順に読みとる。

 ウォルターは絶句した。

 「危険な状態だ。このままだと司令は死ぬ・・・。」

ブレストとはミクロマンの体内を循環する血液の浄化や、毒素、老廃物の洗浄、体温維持など生命維持に欠かせない機能を備えた重要な部分である。ブレストの機能停止はすなわちそのミクロマンの死を意味している。

 ウォルターは背中のバックパックを外し中から様々な医療道具を取り出す。ウォルターはその中から携帯用レーザーメスを選び、黙ってエバンスの身体にメスを入れる。エバンスの血液が床を染めていく。

 ウォルターは昏睡状態のエバンスからブレストを引き出し、体内からブレストに繋がるケーブルを切断し急いで医療用の簡易ブレストに繋ぎ換える。

 医療用の簡易ブレストはエバンスの血管に繋がれており、ブレストに送り込まれた血液中はブレストの効果で毒素を少しずつ洗浄される。

 「ドクター・ウォルター、どうなんだ、司令は助かるのか?」セクストンがオロオロとウォルターに詰め寄る。

 「静かにしてくれ。騒いだら手元が狂って助かるものも助からないぞ。俺はドクターマン・ケーンと違って凄腕ではないからな。手が空いてるんならその辺のテーブルで医療ベッドを作ってくれ。」

 「ドクター?まさかここで手術を?」

 「そうだ。エバンス司令を助けたければ1秒を惜しめ。」

「は、はい。」セクストンは慌てて周りにいるミクロマン達とテーブルを移動させはじめた。

 時計は既にエバンスの手術から6時間経過した事を示していた。テーブルを寄せ集めて組んだ即席の手術台でエバンスは横たわっている。セクストン達は固唾を呑んで手術の様子を見守っている。

 「14、12、10・・・・」ウォルターは再びエバンスに装着したブレストのメーターの数値を順に読みとる。メーターの数値は徐々に下がり、やがて0になった。

 「毒素の洗浄は完了したようだ。」

 「ドクター・ウォルター、エバンス司令きは助かるのか?」

 「現状では生命の危機は去ったとしか言えない。意識が戻るかどうかは別問題だ。」

 「そんな・・・。」

 ピピーッ。医療用簡易ブレストのアラームが鳴り響く。ウォルターは各数値をチェックする。

「いかん、心拍数が極端に低下している。」医療ブレストを操作し強制的に心拍数を上げる。ピーーーーーッ。医療用ブレストのアラームがエバンスの心臓が停止した事を告げた。

 「残念だが・・・・・もはや脳の機能が停止しないうちに冷凍処理するしか道は残っていない。」ウォルターはガックリと方を落とした。

 「冷凍処理?局地間移送時に行うあれか?」

 「処理内容は近いが、それとは少し違う。局地間移送時の処理はブレストの処理を活性化する為の処置だが今からエバンス司令に行う処置は新しい医療技術が確立するまでの間この状態で保存する処置だ。」医療用ブレストからエバンスの肉体に冷凍剤が注入される。

 「・・・・。」

 「セクストン、エバンス司令を医務室の保存カプセルまで運んでくれ・・・。」

 東京臨海基地内のラウンジには重苦しい空気が流れていた。

ミクロ戦記その7