ミクロ戦記その9

12/2追加分

 東京臨海基地、コマンドアーミー戦闘隊長エリアスと副官となったイーグルの元に人員名簿が届いた。硫黄島攻略における空挺隊員選出のための候補所リストである。空挺隊員の選出は作戦全体に影響する重要な任務である。エリアスはコマンドエリア・アーミーコマンドの行動隊長。サバイバル技術、格闘術のエキスパートである。極限状況下での作戦行動において力を発揮する。人質救出作戦など数多くの特殊任務をこなしている。イーグルは古参のミクロマンコマンドの一人でエリアス同様に豊富な戦闘経験を持つ。

 「イーグル、まずお前は俺の隊でバックアップを頼む、そしてエスターク、サージェント、サランドン、サリッド。バックアップのレスキュー隊員。後は腕のいいドクターが数人要るな・・・。」

 「レスキューの連中は」

 「エスタークにブラボー小隊、テツジにはアルファー小隊を任せます。」

 「ドクターはタイチとトオルってのを確保しておきました。」

 「確かルーキーだったなそいつら、使えるのか?」

 「どちらも戦闘経験は皆無に等しいですが・・・・・。」

「使えるようにしておけ。ガキお守りは空挺隊の仕事じゃない。」

「わかりました。それとバックアップのレスキュー隊員は誰を回してもらいます?」

 「レスキュー隊員か・・・・・・バーンズ長官ならこういう時、黙っててもベストな人選をしてくれてたんだが・・・・・。」

 「今は、何とか我々だけでやっていかないといけません。」

 「そうだな・・・・。」エリアスは空挺隊員の候補所リストに再び目を通しながら任務の度にバーンズとやり合っていた事を思い出していた。エリアスは作戦遂行を最優先するタイプ、バーンズは部下の命を最優先にするタイプ、エリアスは今まで作戦遂行中に何度も危険を顧みない行動をしてバーンズとやりあっていた。考え方は違っていたが一方でエリアスはバーンズを信頼していた。エリアスはなんだかんだ言いつつもバーンズを頼りにしていたのを改めて思い知らされていた。

12/14追加分
 硫黄島のアクロイヤーの前線基地の地下・・・。一人のレディコマンド・・アミュレット=シルマの収容された水槽の前に一人のスパイマジシャン・・デビットがうずくまっている。その手にはスパイマジシャン専用の装備のステッキが握られている。微かにデビットに嗚咽が聞こえる。

 水槽の中の物言わぬレディコマンドはデビットのその姿をじっと見下ろしている。

「ううっ・・・・。もう出来ない。オレにはもうこんな事は出来ない・・・。」デビットはゆっくりと立ち上がる。そして、ステッキを大きく振り上げアミュレット・シルマの水槽の開閉スイッチを破壊しようとする。

「デビット!!」

「!!」ハっとしてステッキを構えたまま振り向くデビット。

 「アーデンクール!!」そこにはアーデンクールがいた。さすがのデビットも動揺の色が隠せない。

 「何をしている?」

 「いや・・・。」

 「何故お前はこの女にこだわる?」

 「・・・・。」

 「だんまりか、フフフ成る程、その女、やはり例の女・・・アミュレット・シルマいや、悪名高きクロノスか。」

 「・・・・。」

「お前があまりにその女に固執するんでなデモンブラックに命じてこの女のデータを調べさせてもらった。」

「ぐっ」ステッキを構えるデビット。

 「だが今の状態では脳波が完全に停止し肉体の制御機能もままならない。かろうじて生きているだけだ。これが何の役に立つ?」

 「・・・。」

 「だが元、凄腕のスパイマジシャンがただ屍を個人的感情だけで欲しがるとみも思えんな。」アーデンクールはデビットの表情を窺いながら薄ら笑いを浮かべた。

「キサマには関係のない事だ。」デビットはアーデンクールに向けステッキの突きを繰り出す。アーデンクールはそれを軽々とかわす。

 「フハハハハ、ついに尻尾を出したな。妻子を犠牲にして得たアクロイヤーでの地位が無駄になるな。」

 「黙れっ!!」デビットのステッキが再びアーデンクールを襲う。アーデンクールはデビットのステッキをすんでの所でかわすと右手に剣を構える。

 「そんなに死にたいのなら死なせてやろう。」アーデンクールの剣がデビットに向けられる。

 「おりゃぁぁぁぁっ」アーデンクールが連続で突きを放つ。デビットは左手のリングでそれを防ぐ。アーデンクールの一撃を受け止めるごとにリングに深々と傷が刻まれる。

 「いつまで持ちこたえられるかなぁ」アーデンクールはさらに激しく剣を振るう。

 バキン。アーデンクールの激しい攻撃にデビットのリングが砕け散る。銀色の破片が床に散らばる。

「止めだっ」アーデンクールが最後の一撃を放つ。

 「!!」二人の身体がは抱き合うように重なる。アーデンクールの剣から大量の血が滴る。アーデンクールの剣がデビットの胸に深々と突き刺さりその切っ先は背中から突きだしている。

「キサマ・・・。」アーデンクールがくぐもった声で呻く。

 「・・・。」デビットはその顔を苦痛にゆがめつつニヤリと笑った。

 「また地獄で会えるさ・・・。」デビットは胸に刺さったアーデンクールの剣を抜き捨てるとヨロヨロと開閉スイッチに近づき、剣を突き立てた。

 ゴゴゴゴゴ・・・。水槽内を満たしていた液体が排水される。

 「アクロイヤーにもミクロマンにもアミュレットは渡さん。」デビットはアミュレットを肩に担ぐとゆっくりとした歩調で歩き出した。

 都内某所の下水道。壁面にある割れた非常灯の内部、蛍光灯を外し、代わりに廃材を組み合わせてあつらえたテーブルとイスが置かれている。

 赤いブーツと黒い手袋、そして武器が何丁かテーブルに置かれている。そこには赤いブレストのスパイマジシャン・・・いや、むしろミクロマンよりはアクロイヤーに近い男ダガーが座っている。

 「ううっ・・・うううっ」その男は苦しげなうめき声を上げている。その腕はブルブルと震えている。傍らにいるミクロ犬が不安げにその様子を見ている。

 「心配するなワン公、すぐ収まる・・・。殺している時は最高にいい気分だってのに・・・、アイツが蘇ろうとしているのさ、アイツが何か力を使った時、こうやってオレの身体が震える・・・。クククッ、そのおかげで俺にだけはアイツが今どこにいるのかが判るがな。」

ク〜ン。ミクロ犬がダガーの臑を舐める。

 「くすぐったいぞワン公・・・・・・・だが何でなんだろうな・・・。何故かお前は殺そうとは思わない。」ダガーはゆっくりと不器用な手つきでミクロ犬の首筋を撫でた。

12/29追加分

プルルルルッ。ダガーのスパイリングから呼び出し音が発せられる。

 「!?」ダガーは恐る恐るリングの通信機能を立ち上げた。

 「ダガー、元気そうで何よりだな」かつて聞き覚えのある声がリングのスピーカーから発せられる。

 「ダ、ダリウス!」

 「そうだダガー。ダリウスだ。よく覚えていてくれたな。」

 「てめぇの忌々しいその声を忘れるもんかよ。」

「フフフ。スガモプリズンでは大活躍したそうだな。」

「・・・・。」

 「まだ殺し足らんだろう?」

 「何が言いたい・・・。」ダガーの口調に怒気がはらむ。

 「ダガー、すぐに東海支部の連中が硫黄島攻撃に向かう、お前は攻撃が始まる前に上陸しろ。そこにはお前が殺すべき出来損ないのミクロマンが腐るほどいる。」

 「出来損ないのミクロマン?」

 「そうだ、後天的にアクロイヤー化した連中だ。劣等種と化したミクロマンは不要だ。東海支部の連中が救助を開始する前に処分しろ。」

 「処分?それにどんな意味がある?だが、硫黄島には行く。あの女がいるからな。」

 「あの女?」

 「そう、あの女だ・・・・アミュレット・・・・。」

 東海支部コンピュータールーム。ここには富士山地球本部から移した過去25年間のミクロマンの歴史とも言うべき作戦記録が収められている。

 二人のスパイマジシャンとレディコマンドが一人、コンピューター端末と向き合ってる。

 ヘインズ、ダイソン、そして急遽呼び出されたアイリスである。

三人とも一つのモニターを凝視している。このモニターは51番回線のアクセス状態を表示している。1999年に凍結されたハズの回線である。

突然モニターが赤く点滅する。誰かがこの回線にアクセスしてきたのだ。

「アイリス、ヘインズ、我々の能力ではネット内には侵入できない。S.A.S.が到着するまでヤツの動きを封じる。」

 「了解。処理速度調整プログラムを用意しておきました。」

 「侵入者を確認。ダミーの戦術ファイルにアクセスした時点でワクチンソフトを起動します。」

「ナンバー13255、6,7・・・・・すごい勢いでファイルが破壊されていきます。」

 「ワクチン起動。」

「サーバー処理速度−1.0」

擬似空間化されたサーバー内、侵入者には蓄積された記録の一つ一つが物体として認識されている。自ら身体をデジタル信号化した彼は整然と並んでいる箱・・・箱として認識されるデータの固まり・・・をたたき壊していく。

「ん?」侵入者は周囲の異変に気づいた。身体がゆっくりとしか動かない。サーバーの処理速度が少しずつ落ちているのだ。
 そして何かが侵入者に近づいてくる。それはまるで犬の様な姿をしている。

「ワクチンか」

 「ファイルの破壊スピード0.7低下。」

 「よし、いいぞ。ヘインズお客さんの1アクションごとに1.0ずつ落としていけ。」

「ファイルの破壊が収まりました。」

 侵入者は猛犬の群に取り囲まれていた。

 「面倒だな・・・。」

「S.A.Sのスタンバイが完了しました。」

「サーバー処理速度をさらに−1.5」

 「了解、サーバー処理速度を−1.5落とします。」

 「ぬぅっ小細工を!」ますます遅くなる自らの動きに侵入者は苛立っていた。

12/30追加分

硫黄島、アクロイヤー達の巣窟・・・・。その地下にはアクロイヤー工場といった風の水槽部屋がある。水槽部屋の床にはアーデンクールが転がっている。そしてそのすぐ近くに螺旋状の階段があり、そのそばにはかつてアクロ兵であったであろう残骸が山積みになっている。誰かか上から投げ落としたのだ。

 螺旋状に地下から最上階に続く階段をデビットは登っていた。背中には一人の女・・・レディコマンド・・・・アミュレットを担いでいる。

「これでアクロイヤーにすらなれなくなった。」デビットは物言わぬアミュレットに語りかけるように独り言を言った。何故かその表情は晴れやかである。

時折すれ違おうとするアクロ兵やアクロイヤーを巧みな隠蔽術でかわし一段一段階段を登っていく。アーデンクールに貫かれた傷口からは今も血がしたたり落ちている。視野がかすむ。

 「!!」不意に目の前にアクロ兵の影がよぎる。デビットは身をかがめアミュレットを床に置く。アクロ兵はデビットに敬礼する。

 「敬礼がなってない。」デビットはそうつぶやくと肩からアクロ兵に体当たりする。アクロ兵はデビットの不意の攻撃を避け切れず階段の縁までよろける。デビットはそのままアクロ兵をけ落とす。数秒後螺旋階段の下の方で鈍い破壊音が響く。

 「うっ」デビットの胸の傷口がぱっくりと開く。デビットはその場にうずくまる。周囲を見回すと壁際にドアがある。

 「しめた。」デビットは痛みを堪えながらその部屋に入る。そこは何かのコントロールルームのようだった。正面には大きな窓がありその先は巨大な倉庫になっている。倉庫には大量の荷が積まれていた。その荷の近くでは甲斐甲斐しくアクロ兵が荷の積み降ろしをしている。荷の山の奥には何か巨大な機械がそびえている。デビットはその機械に見覚えがあった。

 「ミクロム!?」デビットは室内に誰もいないのを確認すると自らとアミュレットを室内に引き入れる。ドアを内側からロックすると大窓から倉庫の様子を眺めた。

 「ムーンベース時代以来だ・・・。何故こんな所にあるんだ!?」

 しばらくしてデビットはプッと吹き出した。

 「フフフ、いつまでミクロマンのつもりなんだ俺は。ミクロマンとして戻る所なんてないってのに」デビットはふと横たわるアミュレットに目をやる。

 「アミュレット・シルマ・・・・。悪名高きクロノスか・・・・・。リーダー・ダリウスは何故こんな屍同然の娘一人にわざわざ抹殺司令を出す?この娘一人にそれだけの価値があるというのか?」デビットはそっとアミュレットの頬を撫でる。なめらかで柔らかい感触がデビットの手のひらに伝わる。デビットは指をそっとアミュレットの唇に移す。

 「フフ、こんな所をヘレンに見られたらどやされるな。」デビットは室内からボロ切れを探し出すとアミュレットの身体を包み隠した。

 「俺が一仕事終わって戻ってくるまでそこで待ってろよ。」デビットはボロ切れに包み隠されたアミュレットを一瞥するとその部屋を出た。

 「もう限界が近いな・・・。急がないと・・・・・。ヘレン、今行くぞ・・・。」デビットは意識が薄れるのを必死で堪えていた。

1/12追加分
東京臨海基地地下医務室。ここに一人重傷の男が収容されている。その男ディオはここに収容された時、全身大火傷を負い意識不明の重体で生死の境を彷徨っていた。

 この時ディオは何者かによって水晶体カプセルに封じ込まれたままここに運ばれてきた。ディオは蘇生能力を持つ水晶体カプセルに封じ込まれる事で辛うじて死の淵から逃れられ生き残った。

 ディオの配属先は富士山地球本部壊滅時の大爆発に巻き込まれたのではないかとの事だ。

 そしてドクター・ウォルターの必死の治療でようやく意識を取り戻した。

 「大丈夫ですかディオさん。」

 「ここは?」

「東京臨界基地ですよ。」

 「なぜこんな所に・・・」

 「誰かかあなたをここに運び込んだのです。」

「なるほど・・・・。」ディオは起きあがろうとする。

 「まだダメです起きあがっては」ウォルターが起きあがろうとするディオをあわてて治療カプセルに戻す。

「蘇生できたのは奇跡に近いんですからムリはしないで下さい。元の状態に快復するのに半年以上もかかったんですよ。」

 「半年・・・・。もう半年も経ってしまったのか・・・。」

 「ええ、でも良かった。ディオさんに何かあったらミクロマンの医療に多大な損失なんですよ。」

「・・・・。」

「じっとしてて下さいよ。食事の用意をさせますから」ウォルターはそう言うと医務室を出た。

「半年・・・・。もう手遅れなのか・・・・。」

同じ頃、東京臨海基地の正面ゲート。2名のレスキュー隊員が警備に当たっていた。

 「ジョニー・・・・。」フランクが直立不動のままジョニーに話しかける。

 「フォスター隊長大丈夫かなぁ?まだ現場復帰出来てないみたいなんだ。」フォスター・・・東京臨海基地での戦闘で警備にあたりアーデンとの戦闘で負傷したレスキュー隊員である。

 「フランク、勤務時間内だ私語は慎めよ。」ジョニーも直立不動で正面に顔を向けたままフランクをたしなめる。

 「またアーデンが攻めてきたらどうしよう。」

「困る・・・・って、だから勤務時間内だって。」思わずフランクの振り向く。すぐ気を取り直して正面を向く。

「壊滅したはずのアクロイヤー、変なコウモリ型の飛行物体、アーデン・・・。一体何が起ころうとしているんだ・・・。」フランクがつぶやく。

 二人が退屈な警備任務に辟易としてきた頃、数人のポリスキーパーが二人の前に現れた。彼らはナイトシールドとパルサーショットで武装した。暴徒鎮圧時の一級装備である。

「おいキサマら、ここにディオという男がいるな。」リーダーとおぼしき男が高圧的な口調で二人に話しかけてきた。

「?」

 「わからんようだな、勝手にこちらで捜させてもらうぞ」ポリスキーパーたちは二人を押しのけてゲートをくぐろうとする。

 「ちょっと待て、許可なくこのゲートは通過してもらっては困る。」ジョニーが彼らを押しとどめようと前に飛び出す。

 バシュッ。

 ポリスキーパーのリーダーは無言で手に持ったパルサーショットの引き金を引く。

 「グアッ」ジョニーがどうっとその場に倒れる。パルサーショットで貫通されたジョニーの背中から煙が上がっている。

「射撃った!!」フランクは咄嗟にパルサーショットを抜こうとする。

 バシュッ。

 次の瞬間フランクもジョニーの上に折り重なるようにして倒れた。

 「よろしいのですか?」ポリスキーパーの一人が閉鎖されているゲートのシャッターをパルサーショットのバーナーモードで焼き切る。

「かまわん抵抗したこいつらが悪い。上からの命令だ。必要最低限の射殺許可ももらっている。一刻も早くディオを捕らえなければならんのだ。」

 「ただのドクター1人にここまでする必要があるのですか?」

 「彼はアクロイヤー共と手を組んで共存しようとする危険思想の持ち主だ。」

カランッ。切り取られたシャッターが転がる。焼き切られたシャッターの断面はまだ赤熱している。

 「ゲートが開きました。」

 「よし。」ポリスキーパーの一団は東京臨海基地の内部になだれ込んだ。

 東京臨海基地のゲート付近の窓からその様子の一部始終を見ていた男達がいた。ドクター・ウォルターとディオに食べさせる食事を用意してきたセクストンだった。

「くそっ」セクストンはポリスキーパー達がシャッターをこじ開け基地に入ろうとすると拳を握りしめて今にも飛びかかろうとする。

 「待て、ここは押さえろ。」ウォルターはセクストンを引き戻し物陰に隠れさせた。

 「しかし、あいつら。」

 「奴らが見付ける前にディオさんを基地から逃がすぞ」

 「え?」

 「仲間を射撃つなんて、あいつら普通じゃない。何か良からぬ事が我々の知らない所で動いているんだ。」ポリスキーパーがゲートをくぐるとウォルターは倒れている二人のそばに駆け寄る。

「セクストン、先に行ってディオさんを連れ出してくれ。」

 「ド、ドクターはどうするんだよ。」

 「この二人を応急処置してから合流する。12番カタパルトにレスキュージェッターを用意しておいてくれ。」

 「合流してどうすんのさ。」

 「ノーザンライトに向かう。あそこにはアインさんやアルバート先輩がいる。」

 「ノーザンライト・・・・。」

1/19追加分

衛星軌道上に浮かぶミクロサテライト、エリックをはじめ職員達はアーデン・バルガーが破壊した施設の修理を終え、ようやく一息ついていた。

「やっと、普段通りの勤務に戻りましたね。」シュルツが両手にコーヒーを持って司令室に入ってくる。エリックにそっとコーヒーを差し出す。

「ありがとう。こうやってコーヒーを啜るのもしばらくぶりな気がするな。」

 「人的被害のリストアップも先ほど完了しました。」

 「ああそうかご苦労、地上での捜索はうち切られたそうだな。」

「はい。」

 「エステベスのヤツは結局見つからずじまいか。」

 「ええ、名古屋の方は人員を捜索に割く余裕がないそうです。」

「まったく戦争をする余裕はあっても若いミクロマン一人を捜索する余裕はないのだな。」

 「残念です。もはや生存は絶望的かもしれません。」

 「そうか・・・。」

 「はい。」

「まだ蘇生して間もないってのに・・・。」エリックはコーヒーカップの取っ手をぐっと握りしめる。

突然外部から通信が入る。シュルツが慌ててレシーバーを取る。

「こちらミクロナサDP1、ミクロサテライト応答せよ。」

 「こちらミクロテライト、ミクロナサDP1どうぞ」

 「ミクロテライト、着陸許可を求む。」目線でエリックに促すシュルツ。

「ミクロナサDP1といえば政府関係者用シャトルだが、来賓の予定はあったか?」

 「いえ、結局ジョージ長官は来られませんでしたし。」

 「ミクロナサDP1、私はミクロサテライトの責任者エリックだ。着陸を許可する。ガイドビーコンに従って入港してくれ。」

 「了解、入港する。」

 「さて、誰が来るのか出迎えてくるか。」エリックは軽くシートの上で背伸びをすると立ち上がり、謎の来訪者の出迎えに向かった。

ミクロサテライトのデッキ。ミクロナサから数人のミクロマンが降りてきている。エリックと数人の職員が彼らを出迎える。

 「ようこそミクロサテライトへ。」エリックは彼らの代表と思われる人物に敬礼する。

 「出迎えご苦労。監察官のダリルだ。まあ楽にしたまえ。」

 「おい、燃料と食料の補給をしておけ。」ダリルは傍らにいた作業用デイターを捕まえると補給を命令する。

 「ダリル監察官、ミクロサテライトへはどういう御用で。」

 「ダリウス閣下の直接の指示でな。我々監察団がタイタニアの視察に向かう。ミクロサテライトではミクロナサへの燃料と食料の補給を頼む。」

 「タイタニア・・・・土星圏ですか。」

 タイタニアは土星軌道上に建設された大型スペースコロニーである。タイタニアはオペレーション・ミクロトピアの中止で宙に浮いた莫大な量の資材や設備を再利用し建設されている。

「任務とは言え、大変ですね。」

 「まったくだ。土星圏の連中にはほとほと困り果てる。我々の指示に従うという事を覚えんのだからな。お陰でわざわざこの私が土星くんだりまで出向いて逝かねばならん。」ダリルは忌々しそうな表情を露わにする。

 「・・・・。」

 「エリックくん。ミクロムナサの乗員は地球からの長いフライトで疲れている。すぐに食事とコーヒーの準備をしてくれたまえ。こんな所でもコーヒーぐらいはあるのだろう?」

 「判りました。すぐ用意させます。」

 「そうか、では準備が整うまでの間、しばらく見学させてもらうよ。」
ダリルがその場を去る。

 「この小役人め。」エリックは毒づく。

2/5追加分
スガモプリズン。ここは重大な犯罪を犯したミクロマンを収監する施設である。693号房、かつてある男が収容されていた独房に二人の男がたたずんでいる。一人の男はこのスガモプリズンの看守長アラート。もう一人はスパイマジシャン・ダルトン素行調査や尾行などを得意とするスパイマジシャンである。

 「囚人番号693号ダガー・・・。アクロイヤーよりアクロイヤーに近い心を持つと言われる男。1993年、その激しい破壊衝動から46人ものミクロマンを男女を問わず次々と殺害したため捕らえられ、このスガモプリズンに幽閉された。そして看守のポリスキーパーを殺害しこのスガモプリズンから脱獄、現在も逃走中。」

「殺された看守は皆私の部下でした。」アラートは沈んだ声でダルトンに言う。

 「隙を突かれたとはいえ腕利きのポリスキーパーがこうも簡単に倒されるとはな・・・。」

「普通では考えられません。」

「誰かが意図的に逃がしたのさ・・・。」

 「!!」

 「まあ俺の推理が正しければだが。」

「?」
 「ダガーのパーソナルデータを調べていていくと何カ所にも渡ってデータが抹消もしくは改変されているのにぶち当たった。」

 「データ抹消?」

 「そうだ。蘇生時期、場所、状況。93年の事件の取り調べ記録。そしてそれらはすべて1つの事件に関わっている。」

 「1つの事件?」

 「事件の噂ぐらいは知っているはずだ。そう、クロノス事件だ。」

 「クロノス!!」

 「ああ、だがその辺りの事はここのコンピュータールームで話そう。」ダルトンはアラートを伴ってコンピュータールームに向かう。

スガモプリズンの4階にコンピュータールームはある。ここのデータベースには過去の啓治事件や重大事故についてのデータがくまなく保存されている。

 二人のミクロマンがコンピューター端末に向かって何かを調べている。一人はダルトン、もう一人はアラート。検索目標はダガーとクロノス事件のデータだ。

「クロノス事件の被害者のカルテの中からダガーのものが出てきました。」アラートが検索して出たデータをダルトンの端末に表示させる。

「ダガーのカルテ?・・・おかしいな、前に調べた時はこんなデータは発見できなかったぞ。」ダルトンは怪訝な顔をする。
 「カルテはダガーの蘇生時のものです。ダガーは蘇生時に強烈な電磁波の影響で脳とブレストに重度の障害を受け仮死状態で蘇生したとあります。」

 「強烈な電磁波?」

 「はい、詳細は判りませんが。」

 「あと、当時の蘇生手術を担当したのはバーンズ長官とブラッキー長官だそうです。」

「ダガーの維持用な戦闘能力の秘密は二人が握っていたかもしれん・・・二人とも既に死亡している。当時のダガーを知る証人は皆無か・・・。」

「もしかすると当時の助手か看護婦が残っているかもしれません。」

 「担当医がバーンズ長官とブラッキー長官だというなら手術した現場は恐らく富士山地球本部だな・・・・。」

 「富士山地球本部ですか・・・・。」

 漆黒の闇を高速で飛び続ける、宇宙ボート。乗員は、ジュラックとエイドリアンである。
彼らは『カロンM』の自爆の直前、司令室の屋根裏の緊急脱出口に隠してあった、ソーラーセイル・ボートに乗り込んだ。

そして爆発時の熱エネルギーを帆に受けて脱出したのである。最新星図データなし通信機材なしのないない尽くしの旅であった。

4日目、仮眠中のエイドリアンはけたたましい警告音にたたき起こされた。咄嗟にレーダーモニターを捜す。どうも戦闘機とは勝手が違う。

 エイドリアンと同様警告音にたたき起こされたジュラックもシートにつく。

「第2警戒ラインに未確認物体。警戒レベルB、タイプはアーデンジェット型戦闘艦。機数1。」

 「奴らの偵察隊か・・・・。」

 「接近してきます。こちらに気づいたようです。」

 「まずいな。逃げ切れるか?」

 「わかりません。ですが『オートパイロット』のままでは絶望的です。何とか我々二人で努力してみましょう。」

「私はセイルのコントロールを担当する。君はここ頼む。」ジュラックはセイルのコントロールデッキに向かう。

 「了解しました。」

宇宙ボートに接近するアーデンジェット、乗員はアーデン・バルガー、ミクロサテライトをたった一人で襲い多数のミクロマンを死に至らしめたアーデン・バルガーである。

 アーデンジェットのコックピット内も宇宙ボート同様に警戒音で満たされていた。

「ちっ、ついてない。こんな所で敵の船に遭遇するとはな。」バルガーはアーデンジェットのコンディションをチェックする。残弾問題なし。燃料42%。損傷なし。

 「下手をすると本隊までたどり着かんな・・・・。だが仲間に連絡されたら面倒だ。・・・・潰すか。」バルガーはアーデンジェットの速度を上げる。

 「アラーム設定、燃料30%、プログラム離脱・・・・。」バルガーはアーデンジェットの戦闘プログラムの設定を変更する。アーデンジェットは残存燃料が30%になった時点で追撃を中止、離脱行動を取る。

 「戦闘モードで10分弱、仕留められるか・・・。」

「この先に小惑星帯があります。そこでヤツを引き離しましょう。」エイドリアンが叫ぶ。

アーデンジェットに追い立てられ小惑星帯を最高速度で駆け抜ける宇宙ボート。ジュラックはセイルを激しく揺らし小惑星を次々と回避する。バルガーのアーデンジェットも同じように小惑星を次々と回避、徐々に距離を詰める。

 「無駄なあがきだ・・・。」バルガーのアーデンジェットはミサイルの照準を宇宙ボートに合わせる。

「!!」

 ミサイルの照準が宇宙ボートに合った瞬間目の前に小惑星が現れる。アーデンジェットは軽く左ロールし小惑星を回避する。

 「ちっ」

「小惑星帯を抜けます。」

 小惑星帯を抜ける。小惑星群が眼前から消える。後方にアーデンジェットの姿はない。 「助かりましたよ。」緊張感から開放されたエイドリアンが思わず声を上げる。

 だがセイルのコントロールデッキのジュラックからは何の返事もなかった。

 東京臨海地区。ある男が訪ねてきていた。彼は地球人でその手には黒い大きなアタッシュケースを携えている。

「みんなのお陰で無事に辿り着けたようだな。」男はスーツの胸ポケットあたりに話しかける。

 「はい。思ったより新アクロイヤーの展開は遅かったようですね。プロフェッサーK」胸ポケットの声の主は彼をプロフェッサーKと呼んだ。

 「いや、安心するのは早いようだ。」プロフェッサーKはさっと身構える。

アタッシュケースの男の周囲を複数の10センチ足らずの影が囲む。その影の中から一体のが離れ、アタッシュケースの男に近づく。その姿はアクロイヤー。背中に「A」の文字をあしらった刺繍の入ったマントを羽織っている。

「何っ!?」胸ポケットの声の主が叫ぶ。

「悪いがこのスカイスターの手柄のために死んでもらうぞ。」スカイスターが男に飛びかかる。ジャンプし大上段から男に襲いかかろうとしたときスーツの胸ポケットからいくつかの影が飛び出し、スカイスターをはじき飛ばす。

 「そんな事は私が許さない。」スーツの胸ポケットから飛び出した影は男をかばうように前に出る。

「何者!!」思わずスカイスターが叫ぶ。

「私の名はミクロマンマグネパワーズ・アーサー」

「ちっ新手のミクロマンか!殺れっ!!」スカイスターが鉄球状の左手を上げるとスカイスターの部下らしい他のアクロイヤーが一斉に襲いかかる。

 「行くぞ、みんなっ!!」マグネパワーズ・アーサーの号令のもと、彼の3人の仲間がアクロイヤー達の前に飛び出す。

 「おう!!」

 「ったくー。昼寝も出来やしねぇや」

「油断するなウォルト、初めて遭遇するタイプだぞ。」長髪の男が青いスーツの男を窘める。

 「頼んだぞアーサー。私は東京臨海基地基地にこれを届ける。」プロフェッサーKはその場をアーサー達に任せると黒い大きなアタッシュケースを抱きかかえ、港に向かって走り出す。

 「待て!!」

 「そうは行くか。」スカイスターがプロフェッサーKを追い掛けようとするのをアーサーが立ちはだかる。

 東京臨海基地基地ゲート。二人のポリスキーパーが歩哨に立っている。彼らの前に地球人が等身大のまま走ってくる。二人のポリスキーパーは咄嗟に物陰に隠れる。

 「ミクロマン達、私はプロフェッサーKだ。アタッシュケースを持ってきた。通してくれ。」プロフェッサーKが彼のことを見ているであろうミクロマン達に話しかける。

 「プロフェッサーK?聞いてるか?」ポリスキーパーの一人がもう一人に問う。

 「ああ、聞いてる。軍事機密を運搬してくるという話だ。」

ポリスキーパーがプロフェッサーKの前に姿を現す。

 「ようこそ東京臨海基地へプロフェッサーK。」

 「ミクロマン、話が通っているなら急いでミクロブレスト光線を頼む。」プロフェッサーKはアタッシュケースから何かを取り出すと地面に置く。

 「ミクロブレスト発射!!」二人のポリスキーパーの胸の部分からプロフェッサーKに向けて光線が発射される。見る見る小さくなりポリスキーパー達と同じサイズになる。

 「ありがとう。」プロフェッサーKはポリスキーパー達に礼を言うと先ほど置いた物の下に行く。プロフェッサーKの置いた物・・・それはロボットマンだった。 

 「ロボツトマン、パワードームオープン。」プロフェッサーKの声に反応してロボットマンの胸のパワードームが開く、プロフェッサーKの身体はロボットマンの操縦席に吸い込まれ収容される。少々窮屈だがバイオトロンの操縦席より快適だ。

 ロボットマンは自らが入っていたアタッシュケースを持ち上げるとゲートに向かう。

「ミクロマン、ゲートを開けてくれ。」ロボットマン内のプロフェッサーKが言うとすぐに重い鉄のゲートが開く。 

4/22追加分

東京臨海地区の歩道のアスファルトの上・・・・対峙するスカイスター率いるアクロイヤー軍団と4人のマグネパワーズ。
 「アーサー、戦いの傷が癒えきっていないんだ無理はするな。」長髪の美男子は剣をスカイスターに向け構える。

 「16対4、多勢に無勢・・・貴様らに生き残る術はない
ぞ」スカイスターの両手両足が見る見るうちに変形し車輪になる。他のアクロイヤー達も次々と同じスタイル・・・アクロカー形態に変形していく。

 チュィィィィィィン。小型の車輪が高速回転し始める。

 「気を付けろイザム!!何か仕掛けて来るぞ。」アーサーが叫ぶと同時にスカイスターの変形した青いアクロカーと配下の15台のグリーンのアクロカーは左右に車体を揺らしつつ4人のマグネパワーズに向かっていく。4人のマグネパワーズはサッと身構える。一瞬にして4人の頭部が銀色に変わる。猛スピードで次々と突進するアクロカー、それをかわす4人。

 キュルキュルキュルッ、チュィィィィィィィィィン。突進後、3つの車輪を空回りさせ回転しつつ方向転換する青いアクロカー。オレンジの火花が飛び散る。

 「小癪な。」

 スカイスターのアクロカーはアスファルトの上を火花を散らせ高速でスピンしながらアーサーに向かっていく。

シュンッ!!

 アーサーの足下をかすめるスカイスターのアクロカー。

「アッ!!」アーサーの左足に激痛が走る。思わず膝をつくアーサー。

 「どうだ、アクロウイングの切れ味は。」

 アーサーの左足はざっくりと深く切り裂かれている。大量の血が吹き出す。

「アーサー!!」黒いスーツの男が直ぐさまアーサーとスカイスターの間に入ってカバーする。

 「すまないオーディーン」

 「二人まとめて地獄に送ってやる。」 

4/23追加分

 東京臨海基地の地下最深部脱出艇格納庫、9番から12番のカタパルトが並んでいる。3機のエスカルゴが9番から11番のカタパルトに装着されている。この3機のエスカルゴは有事の際に脱出艇として使用される。さらにその横に予備の12番カタパルトがある。 格納庫の中央にはレスキュー1号、2号が合体した状態で駐機している。セクストンとウォルターはディオをレスキュー2号ボンゴのコンテナに乗せる。数分でディオの身体は新陳代謝を押さえるため冷凍処理される。

 「ドクター、12番カタパルトを、こっちはゲートを開きます。」

 「判った。」

 ビーッビーッビーッビーッ。ゲートの開放を知らせる警報が鳴り響く。

「ちっ、さっさと鳴り止めよ。ここに居るのがばれるだろうが。」セクストンが悪態を付きながら非常用ゲートを開く。ウォルターはレスキュー1号、2号をクレーンでカタパルトに載せる。

ドンドンドン、ドンドンドン。格納庫の扉を叩く音が響く。

 「もう来やがった。」セクストン

キィィィィィィィィィン。レスキュー1号のエンジン出力が次第に上がっていく。

 バシュ、バシュバシュバシュッ。パルサーショットの発射音が響く。ナイトニウム製の扉は一瞬で穴だらけになる。

「セクストン、追っ手だ。」

 「ドクター。ディオさんを頼む。」

 「オレが時間稼ぎしている間に発進してくれ。」セクストンは9番カタパルトのエスカルゴに乗り込むとエスカルゴを始動させる。セクストンはエスカルゴの前部の作業アームを器用に操作しカタパルトから機体を降ろす。

 「ポンコツめ、これ以上エンジンの出力が上がらない。」ウォルターが怒鳴る。

 バターン。扉を蹴破り何人ものポリスキーパーがなだれ込んでくる。

 「投降しろ。さもないと・・・」

ドカァッ。

 ポリスキーパーの一人が最後まで言い終わらないうちにエスカルゴの作業アームが彼を殴り倒した。

 「へへへ、悪ィ悪ィ。」

 「このぉ抵抗するか。撃てー。撃ち殺せ!!」

 バシュバシュバシュッ。ポリスキーパー達は一斉にパルサーショットをエスカルゴに向け発射する。

「エスカルゴの重装甲は伊達じゃないんだぜ。パルサーショットの斉射程度でダメージを受けるもんかよ。」

キィィィィィィィィィン。レスキュー1号のエンジン音が一段と高音になる。

 「セクストン、先に出る。そっちも早くしろよ。」

 「任せたぜドクター。こいつらを黙らせてからそっちに行く。」・・・・生きてたらな・・・。セクストンは最後の言葉を出さずにぐっと飲み込んだ。

 ビシッ。エスカルゴのキャノピーに穴が空く。溶けたキャノピーの飛沫がセクストンに降りかかる。

 「やっべぇ。もう限界か。」

 「ウォォォォォッ」2本の作業アームを振り回しポリスキーパーをなぎ倒しながらセクストンのエスカルゴは蹴破られた扉を塞ぐように壁にボディを深くめり込ませた。

 バシュッ、ゴゴォォォォォォォォッ。カタパルトの蒸気音とレスキュー1号のエンジン音が響く。右往左往するポリスキーパー達。

「足止め成功・・・・。」セクストンはホッとした表情のまま操縦桿に突っ伏す。周囲をポリスキーパーが囲み様子を窺いながら近づく。

 セクストンは相変わらず安堵の表情のまま操縦桿に突っ伏して動かないでいる。

 一人のポリスキーパーが操縦席をのぞき込む。セクストンは反応しない。

 「??」ポリスキーパーはセクストンを見て納得した。さっきのパルサーショットの一斉射撃のうちの1発がセクストンのブレストを発光ダイガードごと打ち抜いていたのだ。

 「こいつ満足そうな顔してやがる。」

 「ディオを逃した。作戦失敗だ引き上げるぞ。」

5/13追加分
  東京臨海地区の歩道のアスファルトの上。4人のマグネパワーズと16台のアクロカーが戦いを繰り広げている。

 「二人まとめて地獄に送ってやる。」スカイスターのアクロカーは傷ついたアーサーとオーディンに襲いかかる。

 「タックル・オブ・ファイヤー!」オーディンの左手の武器から火炎弾が打ち出される。

 「バカめそんなものに当たるか。」スカイスターはタックル・オブ・ファイヤーを軽くかわすとオーディーンの懐まで飛び込む。そしてスカイスターはアクロカー形態から人型に瞬時に変形する。だが人型になったスカイスターの左右の腕は武器に変化していた。

 「!!」

 ドガァァァン

 痛烈なダメージを受けたオーディーンの身体は吹き飛ばされ、信号機の支柱にめり込んで止まる。

 「フハハ、アトムカノンの威力、思い知ったか。」スカイスターは背中にウイングを生やせ空中に飛び上がる。

 「オーディーン」アーサーが叫ぶ。その声に砲の二人も気が付いた。

 東海支部コンピュータールーム。富士山地球本部から移した過去25年間のミクロマンの作戦記録が収められた重要施設だ。

 二人のスパイマジシャンとレディコマンドが一人、コンピューター端末と向き合ってる。

 ヘインズ、ダイソン、そしてアイリス。

三人とも一つのモニターを凝視している。このモニターは51番回線のアクセス状態を表示している。1999年に凍結されたはずの回線である。

突然モニターにメッセージが表示がグリーンの文字で表示される。S.A.S.の活動開始のメッセージだ。

 「S.A.S.が侵入者の排除を開始しました。」

 「新手か、ここは引き上げさせてもらうぞ。!」侵入者はファイルの破壊を止めると忽然とサーバースペース上から姿を消した。

「修復可能なファイルの再生を開始します。」

 「よし、やってくれ。」

 「終わったな。」

 「ええ、あとはヤツの痕跡を集めるだけです。」

 「51番回線というと・・・・」

 「思い出しました。50番台の回線は財界の地球人協力者の回線です。1番は確か城之内建造氏の回線です。ですが何故か回線が生きてたんでしょうか?既に凍結されていた回線ですよ。」

 「誰かここのシステムに詳しい人物が細工して回線を使用可能にしたんだ・・・。」 

 太平洋上空。ウォルターの乗るレスキュー1号2号はオートパイロットで一路ノーザンライトに向かっていた。

「セクストン・・・・。ドクター・ディオは必ず送り届ける。安心してくれ。」操縦をオートパイロットに任せたウォルターはレスキュー1号の固いシートにもたれかかると
ぐっと強く目を閉じる。あの状況でセクストンが助かるはずもない。

 「なぜ俺は仲間のはずの連中から逃げてるんだ・・・。」まるで何かが目からこぼれ出さないようにぐっと上空を見上げるウォルター。忌々しい程の青空が広がっている。

その時、突然アラームが鳴り響く。エンジンの出力を示すメーターの数値は赤く点滅しながら凄い勢いで0に近づいていく。

 「くそっエンジントラブルか!!出力低下。失速する。」ウォルターはオートパイロットを解除すると必死に機体の安定を保つ。機体後部から黒煙が吹き出している。

 「畜生、もっと真面目にパイロット研修しておくべきだった。」

「エンジン停止。」機体は急速に高度を失っていく。ウォルターは必死に機体の水平を保つ。無事着水できれば助かる。

メーターから目を離して正面に広がる水面を見るウォルター。

 「!!」

 水面付近にクジラ程の大きさの母艦と200機程の航空機。そして目の前に2機のアーデンロボ。2機のアーデンロボは左右からウォルター機を挟み込むように移動し戦闘態勢を取る。

アーデンロボのスピーカーを通して操縦者の声が響いた。

 「前方のミクロマン、無駄な抵抗をせず投降しろ。」

「これまでか・・・・。」ウォルターの乗るレスキュー1号2号に武装はない。抵抗のしようもなかった。

5/17追加分

 2機のアーデンロボに付き添われ、洋上に浮かぶクジラ型の母艦の甲板に降ろされるウォルター機。

 ウォルターがレスキュー1号のコックピットから抜け出て甲板上に降り立つと彼を出迎えるように十数人の将兵が整列していた。視線を左右に移すと物陰に武装した兵が伏せている。下手な動きを見せれば即始末できる体勢だ。

 「ようこそミクロマン。私はこの艦の責任者アーデン・ギルダーです。」

 「アーデン・ギルダー・・・・。キャプテン・ギルダーと呼んだらいいのかな?私はドクター・ウォルター、CRIMレスキューエリア所属の医師です。」ギルダーはウォルターの問いに頷いて応える。

 「キャプテン・ギルダー、調べてもらったら判るでしょうが。この機体は非武装の救難機で軍用機じゃありません。そして現在、急を要する負傷者の搬送中です。速やかに解放していただけるようお願いします。」

 「なるほど、負傷者の搬送中ですか。それで抵抗しなかったわけですね。ですが念のため調べさせてもらいます。敵対しているとはいえ我々とて野蛮人ではありません。武力を背景に無法な行為を行うつもりはありません。ご安心ください。」

 「・・・・・。」

「まあ、作業が終わるまで艦内でゆっくりお互いの陣営のお話でもしましょう。」ギルダーはウォルターを艦内に促した。

東海支部、司令官室。エバンスの後任となったスミスは現在ここを私室として使っている。エバンスの私物が整理されたあとベッドと机以外に何もない殺風景な部屋だ。ここ数日間、部隊の出撃準備を全てツヨシに任せて自分は一人灯りもつけずにここにこもりきりになっている。この部屋に唯一持ち込まれたスミスの私物は地球産のブランデーのミニチュアボトルが1本だけ。このブランデーはスミスが蘇生してから知った地球の物では一番のお気に入りだ。数年前、20年来の友人となったある地球人協力者がスミスにくれたものだった。

 スミスはブランデーをグラスに注ぐとゆっくりとした動作で香りを楽しむ。そしてグラスに入った琥珀色の液体を眺める・・・。鼻腔をブランデーの芳醇な香りで満たすと今度はこの液体を口に流し込む。琥珀色の液体を口内に含んだままゆっくりと舌先で転がす。ある地球人協力者が教えてくれた味わい方だ。そしてひとしきり琥珀色の美酒を味わうと次にそれをゆっくりと喉に運ぶ。暖かい感触が喉を通っていく・・・。

 何度かこれを繰り返すと心地よい酔いが身体を包む。スミスはこの酒を口に楽しむ時は必ずブレストの毒素洗浄機能は切る事にしている。少しでも長く酔っていたいからだ。酒は一時嫌なことの全てを忘れさせてくれる唯一の友人だった。 

 スミスにこの酒をくれた地球人協力者はすでにこの世を去ってしまった。ボトルに入った酒も既に5分の1以下になっている。この酒の銘柄を知らないスミスには補充出来る見込みはない。

 「建造・・・・。」

6/10追加分

 クジラ型航空母艦内、下士官らしいアーデンがギルダーに代わって案内に当たる。母艦内部は意外に清潔感があってまるで生活感を感じさせないようだった。

ウォルターは下士官の案内で食堂に入る。

「お口に合うか判りませんがお飲み物をご用意いたします。」下士官は深々と頭を下げるとすぐに厨房のコックに合図を送る。

 コックが飲み物をテーブルまで運びウォルターの前に差し出す。グラスには薄緑色の液体がなみなみと注がれている。ウォルターはとっさに手で扇いで見慣れない飲み物の匂いを確かめる。

 「これは?」

 「アルデバラン産の酒を模したアルコール飲料でございます。とくに有害なものではございませんので安心してお召し上がり下さい。」

 「・・・・・。」恐る恐る口に流し込む。独特な風味があるが不味くはない。

「お待たせしました。」ギルダーが一礼をすると数人の側近を連れ食堂に入ってくる。

「あなた方の機体のオートパイロットの記録を見たところノーザンライトに向う途中だったようですね。」

 「・・・・。」

 「残念ですがノーザンライトは我が軍の航空隊の攻撃で壊滅的な打撃を受けています。近辺の別の基地に向かわれた方がよいかと思いますが。」

 「・・・・。心遣いは有り難いですが、解放していただけるなら当初の予定通りノーザンライトに向かいます。」

「そうおっしゃるのであれば留め立てする事はできません。現在、あなた方の機体のエンジンを飛べる状態に修理していますがまだ少々時間がかかるようです。」

「しばらくここに滞在するしかないという事ですか。」

 ギルダーは黙って頷いた。

7/26追加分

 東海支部、司令官室。ベッドと机以外に何もない殺風景な部屋だ。真っ暗な部屋にブランデーの匂いが漂っている。床には地球産のブランデーのミニチュアボトルの空瓶が1本転がっている。

 部屋の主・・・・スミスは半分ほどブランデーの入ったグラスを握りしめたまま机に突っ伏しただ中空を見つめている。

 プシュー。小さな音と共に扉が開く。

 「司令・・・・。」扉の外には一人のレディコマンドがいた。オペレーターのアンナだ。

 「ん?」

 「スミス司令・・・。またお酒を・・・・。」アンナは突っ伏したスミスの側に近づく。

 「アンナか、勝手に入ってきて、礼を欠くぞ」スミスは全くろれつの回らない口調でアンナの非礼を非難する。

 「すいません・・・。でも・・・・。」

 「出ていってくれアンナ。今は一人でいたい。」スミスはグラスに残ったブランデーを口に運ぶ。

 「止めて。」アンナはグラスを握るスミスの腕を掴んでそれを止めようとする。

 「何をする。俺は飲みたいんだ!!」グラスを奪い合う二人は絡み合うように床に倒れ込む。スミスがアンナの上に重なるように乗りかかる。グラスが転がりブランデーが飛び散る。

 「!!」アンナの目の前にスミスの顔がまるで息づかいが聞こえるような距離にある。はっとして思わず顔を背けるアンナ・・・。スミスの体重がアンナの華奢な身体にのしかかる。

 「・・・・・。」無言のままスミスの顔がアンナの顔に近づく・・・・。倒れ込んだままの姿勢でアンナはスミスに身を任せる。

 「ZZZZZZZ・・・・・。」スミスはアンナの柔らかい身体の上で気持ちよさそうないびきを響かせていた。

8/8追加分

 「・・・・・。」

 しばらくアンナは倒れ込んだスミスの下でじっとその戦闘要員独特のゴツゴツした身体の感触を味わっていた。スミスと知り合い、スミスの事を意識し始めてから初めてその身体に触れた。ちょっと嬉しくてちょっと悔しい・・・。

 アンナはスミスを抱き起こすと引きずるようにベッドに運ぶ。ホコリっぽいシーツのかけられた布団の上にスミスを寝かせると毛布を掛けてやる。

 「スースー・・・」スミスは静かに寝息を立てている。アンナはゆっくりとベッドに腰掛け、スミスの寝顔をじっと見つめる。そしてスミスの寝息が感じられる距離に顔を近づける・・・・。

 アンナの顔が強ばり、次第にその肌色は紅潮していく。アンナの指がスミスの唇に触れる。そして、その形を確かめる。

 アンナは心によぎった激しい感情を振り払うように顔を激しく左右に振るとベッドから離れる。

 東京臨海地区の歩道のアスファルト上。傍らにある信号機の支柱には大きな目立つへこみが出来ている。

「うぐっ」オーディーンはスカイスターの一撃で受けたダメージで動き出せないでいる。

「オーディーン!!」アーサーが駆け寄る。

「!!」スカイスターの動きが一瞬止まる。

アーサー達にはその内容は判らなかったが上空のスカイスターに何者かのテレパシー通信が届いているようだった。

「スカイスター、ターゲットは敵の保護下に入った。作戦変更だ。引き上げろ。」

「何を言っている。もう少しで敵を殲滅出来るんだぞ。」

「ならば勝手にしろ。ミクロマン共々あの世に行くがいい。」

「うぐぐっ。」スカイスターは絶句する。

「どうやら時間切れのようだ。」スカイスターは再びアクロカーに変形すると他のアクロカーを引き連れ側溝に滑り込み走り去った。

「時間切れ?どういうことだ?」アーサーはオーディーンを抱え上げながらつぶやく。

「ううっ・・・・判らん。だが何かが起ころうとしているのは確かだ。」オーディーンはまだ痛む頭を押さえている。

「アーサー、プロフェッサーKが心配だ。早く東京臨海基地へ向かおう。」イザムはオーディーンを抱えるアーサーに手を貸す。

 東京臨海基地、地下食堂室。何人ものミクロマンが昼食を摂っている。

「あきら君・・・いやプロフェッサーK・・・何年ぶりになるかなぁ。」ディックは数人のポリスキーパーたちと一緒に大きくなった片貝あきら・・・プロフェッサーKを囲んでテーブルに着く。

「もう20年以上になるね。ディック・・・。」

「あの勉強嫌いの君が博士になってるんだもんなぁ。」

「ディック、身体のほうはもう大丈夫なのかい?」

「ああ、再蘇生してもう3年になる。」

「あのとき、もう少し冷静に行動してたら君を死なせる事はなかったのに・・・。」

「いや、気にしないでくれ。避けようと思えば避けれられた攻撃だった。」

「ジャックから君が蘇生したと聞いた時は本当に驚いたよ。」

「ブレストを完全破壊されていなかったから再蘇生が受けられたんだ。運が良かったよ。」

プルルルルル。ディックの左手のリングから呼び出し音が響き回線が開く。

「ディック隊長。マグネパワーズ・アーサーという者が来ていますが。」

「プロフェッサーKの護衛要員だ。地下格納庫に案内してくれ。」

「ハッ。」

「待ち人来るだ。」

ディックはプロフェッサーKと共に地下格納庫に向かった。

11/22追加分
東海支部司令室。オペーレーターのアンナが戻ってきた。スミスの代理として部隊編成に携わっているツヨシはちょうど不在だった。

 「どうだった?スミス指令の様子。」急遽オペレーター要員となっていたアマンダがアンナに気づく。アマンダは元々は富士山地球本部所属だった若干年下のアンナとは東海支部で初めて顔を合わせたが妙に気が合うのか親しくつき合っている。

 「えっ・あぁ。」アンナは答えに窮してしまう。

「ちょっと顔赤いわよ。もしかして今まで一緒に飲んでたの?」アマンダはそう言ってイタズラっぽく笑った。

「べ、別に・・・。」アンナは思わずギョッとした表情を表に出してしまった。

 東海支部、地下格納庫。硫黄島に出撃すべく多くの艦艇、航空機、車両が並ぶ。ツヨシは司令官スミスに代わって編成準備の指揮を執っている。

 「ツヨシ艦長、ムサシの出撃準備は万端整ってますよ。」エリクソンがツヨシを見付けて駆け寄ってくる。エリクソンはコマンド・ネービー所属でデスマルク戦争では新型ミサイル艦「ニューサーベイヤー」を設計した技師である。他にもスーパー・ニュートロン魚雷や光子爆雷などを開発している。

 「スーパー・ニュートロン魚雷が間に合いましたのでムサシの艦尾に6門搭載しています。」

「威力は?」

 「若干押さえてあります。中野会長からの要請でして、米海軍施設への被害を極力抑えてくれとの事です。」

 「無茶を言ってくれるな・・・。」

「出撃は何時になります?」

 「まだ指令が上層部と打ち合わせ中だ。」

 「・・・・・。」アルコールが抜けたのかスミスの意識ははっきりとしてきた。覚えのない柔らかいベッドの感触。ゆっくりと起き出してベッドに腰をかけるはらりと毛布が床に落ちる。・・・・だれかがベッドに運んでくれたのか・・・・。うっすらと香水の香りが漂っている。覚えのある香りだ。

「こんな事ではいかんな・・・建造。指揮官は死ぬと判っている戦場へも部下を送り出さなくてはならないんだ。」

廊下に出るとツヨシがいた。

 「司令。準備が整いました。あとは出撃命令を待つのみです。」敬礼しつつツヨシが報告する。

 「ありがとう、ツヨシ。それでは出撃だ。全員を地下格納庫に集合させてくれ。」

 東海支部、地下格納庫。整列する将兵、多くの艦艇、航空機、車両がそれを囲むように並ぶ。

 司令官スミスが檀上に上がり整列する将兵を見回す。

「ついに出撃の時が来た。出撃する以上我々は勝たねばならない。彼我の戦力はきっ抗している。予断は許されない状況だが勝機は十分ある。次にこの場で顔を合わせられるよう頑張って戦ってくれ。以上。」

 バッ。スミスを見上げる全員が敬礼する。

 「各航空隊隊、搭乗。」

 「空挺隊搭乗ー。」

 威勢のいい現場指揮官達の声が響く。

ミクロ戦記その11