ミクロ戦記その10

 硫黄島、空は一面の曇り空、海は鈍色に染まっていた。鈍色の海面には船が1隻、海上保安庁の巡視艇である。
船内には何人かの地球人とミクロマンが乗り込んでいる。

「ジャックくん、頑張ってくれたまえよ。」

 「ありがとうございます、この巡視艇のお陰で予定よりも多くの将兵を運ぶことが出来ました。これも中野会長と日本平和連合の方々のお陰です。」

「ジャックくん、私も日本平和連合の会長として最期に大仕事が出来て嬉しい。そして、君たちのこの作戦の成果次第でアーデンらとの外交交渉が有利に運べるだよ。」

「中野会長、ありがとうございます。今回の作戦、必ず成功させます。」

 「作戦開始!!」

  巡視艇に設置された装置から何発かの魚雷が射出された。魚雷は水中に没すると外殻が爆砕され、中から無数の影が飛び出す。

 巡視艇のすぐ下を無数の影が進む。その影は16、それらはまっすぐ硫黄島の方に進んでいく。

 その影は水中用レスキューマシン、レスキューサーボ4号M(ミュー)のものだ。何人かのミクロマンがフロートで4号M(ミュー)に曳航されている。

 曳航されているのはワイルダーとレスキュー隊員達だ。全員深海作業用のパワーアップセットを装備している。

 「もうすぐ目標地点だ前方に注意しろ。」ワイルダーはライトで後に続くバージル、ウォーレンらレスキュー隊員達に注意を促す。ウォーレンが親指を立ててワイルダーに合図を返す。

 「前方250メートル水深3.5、金属浮遊物。」レスキューサーボの電子頭脳が隊員達に警告する。ワイルダーがゆっくりと先行し浮遊物を確認する。アクロイヤーが敷設した機雷だ。

 「レスキューサーボ、周囲3キロをスキャンしろ。」ワイルダーはレスキューサーボに命じる。レスキューサーボの上面に設置されたモニターに無数の光点が表示される。光点は周囲に敷設された機雷を示している。

 「今からスキャンデータを送る。各員、機雷撤去作業に入るぞ。」

 「了解」ワイルダーの命令に従いレスキュー隊員達は機雷撤去に向かった。
 
 硫黄島上空500メートル、それぞれ5機で鋒矢陣形を取ったジェットミラー隊2小隊が硫黄島の上空に接近する。空は一面の曇り空で視界は良好とは言い難い。指揮官はティモンズとハンニバル、どちらも戦闘経験は豊富だ。

 「そろそろ出迎えが来るはずだ、警戒しろよ」ティモンズが部下全員に言う。今回配置された部下達は新人が多い。

 「今回は訓練じゃなく実戦だ。だがお前達は運がいいぞ。この任務は敵の陽動だ、出来るだけ敵の注意を引け。戦果は期待するな生きて帰ることに専念しろ。いいな。」

 「了解。」
 

 硫黄島から十数機の飛行物体が飛び立つ。アクロイヤーの迎撃機だ。機影で判断する限りではアクロジェットとコウモリが少し。

 「よし、引っかかってきた。ハンニバル、上から突入して連中を引っかき回せ。こっちは右側面から叩く。一通り叩いたら一旦引き返す。いいな。」

 「了解、ティモンズ隊長、こっちはこういう任務は専門ですぜ。」ハンニバル隊が降下姿勢に入る。

 「ははは、頼もしい限りだ。」

 「全機アタッーク」ティモンズの合図と同時にハンニバル隊は迎撃機に向け急降下攻撃を仕掛ける。

ハンニバル隊5機のジェットミラーは鋒矢陣形のまま敵中に突入する。

 曇天の中を硫黄島に向け飛ぶ、2機のレスキュー3.4号、コンテナ部分バードベースは兵員輸送用に内装が改修され、左右にベンチシートが取り付けられている。左右にそれぞれ3人ずつ合計6人の空挺隊員が乗り込める。
正面の壁に取り付けられたスピーカーからパイロットの声が響く。

 「こちらタクシードライバー、あと3分で降下地点に到着する。」

 「了解だ。ご苦労だった。すでに航空隊が戦闘状態に入っているはずだ。君たちは降下完了後直ちに離脱してくれ。」

 「了解、空挺隊の任務成功を祈る。」

 降下隊員たちは時計をチェックする時計は降下まであと1分15秒を示している。
 「全員降下準備。」エリアスの号令の元、空挺隊員はパラシュートパックを担ぎ後部のハッチに向かう。

 後部ハッチが開く。視界に広がる鈍色の海面が後方に流れていく。

 「降下!!」

 「ハイッ!」エリアスの合図でまずサランドンが一番に降下する。

 「降下!!」

 「ハイッ!」続いてテツジ、アキが降下する。

 さらに数人が降下すると最後にエリアスが降下する。空挺隊員達のオリーブ色のパラシュートが次々と空中で開き、数十秒後には硫黄島の大地に着地する。

 まず着地したサランドンはパルサーガンを構え周囲を警戒する。生粋の空挺隊員である彼は好んでパルサーガンを使用する。パルサーガンは装弾数は少ないもののチューブレスで取り回しが利き、さらに大口径でマンストッピングパワーに優れている。パルサーショットは貫通力には優れるが小口径であるため敵に命中させても反撃を受ける可能性が高いのだ。

 サランドンに続いてテツジとアキが無事に着地。直ぐさまパラシュートを捨てて武器を構える。テツジはミクロソードを構える。ミクロソードは本来ミクロナイト用に開発された格闘用武器だが、ミクロマンが使用する事も可能で白兵戦時に多用されている。

 サランドンのパルサーガン同様マンストッピングパワーに期待しての装備である。

サランドンら3人が警戒網を作ったすぐ後にサリッドが着地。彼は背中に携帯衛星通信機を担いでいる。多目的通信機で、衛星通信の他にGPS機能、画像送受信機能を持つ。ミクロサテライト経由でデータを全世界に送ることが出来る。ミクロサテライトとの通信回復で使用可能になったため急遽持ち込まれた物だ。

 彼らに続き、無事着地した空挺隊員達が次々に集合する。

 「全員無事か?」エリアスがサランドンに尋ねる。

「2名が行方不明、1名が負傷です。」

 「無事たどり着いたのは12名のうち9名か。」

 「現在タイチが負傷した隊員1名の応急治療にあたっています。」サージェントが報告する。

「9人で北側の海岸線を確保する。負傷兵はここで待機。後続部隊に回収してもらえ。行方不明2名の捜索も後続部隊に任せる。」

 「了解。」

 テツジがミクロソードで鬱蒼と繁る雑草をなぎ倒しながら進む。テツジのバックアップはレディコマンドのアキだ。

 「畜生、草引きぐらいしておけってんだ。」テツジがミクロソードを振り回しながらぼやく。

 「文句言ってないでさっさと道作んな。」アキが後ろからテツジを小突く。

 「イテっ、たくもぅ、ちゃんとバックアップしてくれよなぁ。」

 テツジが続けて雑草を切り倒すと突然前方の視界が開けた。

 「獣道のようです。急いで抜けましょう」エックスが状況を見てエリアスに提案する。

 「それは無理みたいですぜ。」サージェントがパルサーショットを片手に指さしている。その人差し指が示す先、茂みの中に何かうごめくモノがある。

 「様子を見に行きます。」

 「気を付けろよテツジ。」

 「了解。」テツジが右手のミクロソードを水平に構え、警戒しながら一歩一歩茂みに近づく。

 ザザッ。

 それは突然茂みから飛び出しテツジを押し倒そうとした。

 ズガッ。

 テツジは飛びかかってくる物体をミクロソードで一閃、固い手応えがあった。それはテツジの一撃を受け茂みに跳ね飛ばされる。

 バシュ、バシュ、バシュッ。他の隊員達は咄嗟に茂みに跳ね飛ばされた物体に発砲する。

「全員射撃止め。」エックスがそれ以上の射撃を制止する。

 テツジのミクロソードの一撃と射撃を受け茂みに跳ね飛ばされた物体は体長10センチ程の大きさの昆虫の様な生物だった。

「どうだ仕留めたか?」

 「ああ、仕留めた。」テツジがミクロソードで昆虫をつつく。

 「大型の蟻のようですね。」

 「蟻?こんなデカい蟻がいるかよ。」

 「今調べてる。」

 「う〜ん、・・・こいつの特徴を見る限りだとファイヤーアントという種類のヤツなんだがちょっとジャイアントすぎるな・・・。」

 「恐らくアクロイヤーの仕業だな。」

ガサガサガサッ

 「!!」

「警戒しろ。まだいるぞ。」エリアスが叫ぶ。

 「ご苦労なこったな。」そこには十数匹の巨大蟻を引き連れた一人のアクロイヤーがいた。

「殺れっ!!」号令と共に十数匹の巨大蟻が襲いかかる。

 「茂みまで後退しつつ応戦しろ。」エリアスは自分専用のカスタム品のパルサーショットを片手撃ちする。

「了解、先導します。」サランドンはパルサーガンを左手に構え周囲を警戒しつつ獣道を戻り、さらに元来た道を茂みをかき分け進む。いかなる状況でも恐れることを知らない勇敢な空挺戦士サランドンはこういった場面では信頼できる男である。並のコマンドなら混乱状態に陥っているところだ。

 そして携帯衛星通信機を担いだサリッドがサランドンに続く。

「サリッド、座標確認だ。南西に2メートル修正した座標を航空隊に送れ。」

 「了解。爆撃依頼ですね。」

 「そうだ。」

1/14追加分

 硫黄島沖の上空500メートル それぞれ5機で鋒矢陣形を取ったジェットミラー隊2小隊ティモンズ隊とハンニバル隊が硫黄島の上空で戦闘を開始していた。

 ハンニバル隊が硫黄島から迎撃に出たアクロジェットとコウモリの群に上空から突入する。

「!!」

 「今頃気づいても遅いんだよ。」ハンニバルはジェットミラーの翼端のサイドワインダーを放つ。

 サイドワインダーは標的のアクロジェットに吸い込まれるように飛んでいく。

 アクロジェットのパイロットは上空のジェットミラー隊に気づいたが、すでに手遅れだった。コックピットハッチと左主翼にサイドワインダーが突き刺さる。一瞬の爆発でアクロジェットは炎に包まれ機体は上空で四散する。敵僚機は思いもよらない方向からの攻撃に右往左往する。

 「素人が」ハンニバル隊は鋒矢陣形を崩さず反転上昇、右往左往する敵機の背後を取りそのまま次々とたたき落としていく。ほんの5秒ほどで9機が撃墜された。ハンニバル隊の損害はなしだ。

 「やるなぁハンニバル隊。」その様子を見ていたティモンズが感嘆の声を上げる。

 「ティモンズ隊長、迎撃機の第二陣が来ます。」

 「ハンニバル、その辺で許してやれ。新しいお客さんが来る。」

 「了解。」レシーバーからハンニバルの声が響く。

 「こちらティモンズ。陽動作戦成功だ。」ティモンズは作戦成功を報告する。

 ジェットミラー隊2小隊は隊列を整え、迎撃機を引き連れつつ戦域から飛び去った。

硫黄島沖上空。司令官機の移動基地とベースロケッターが上空待機している。移動基地の尾翼には「FT1」とステンシルが書かれている。
 一方ベースロケッターの機体上部に回転式のレドームが装備されている。レドームは常時回転し戦域の情報を収集している。

 「スミス司令、ティモンズ隊が敵航空戦力の陽動に成功しました。」ローレンスがティモンズ隊の通信を受けスミスに報告する。

「よし、順調だな。」

 「まだ油断は禁物ですよ」

「・・・・・ザザザ・・・・・こちらポイント・ワン。以下の座標に爆撃を依頼する。・・・・ザザザ・・・・こちら・・・・・。」移動基地の通信機にミクロサテライト経由の衛星通信が入る。サリッドの声だ。

 「こちらフォートレス1、ポイント・ワン、目標座標を報告せよ。」

「ポイント・ワン、エリアスの空挺隊だな。」

 「フォートレス1、座標を報告する135、485、12。」

 「付近の爆撃隊は?」スミスが問うとオペレーターが配置を見る。

 「付近にワイン中隊のシェリダンがいます。」

「よし、シェリダンに爆撃させろ。」

「了解、ポイント・ワン、航空隊は2分でそっちに向かう。何とか持ちこたえろ。」

 「了解、感謝する。」この通信とほぼ同時に後ろではシェリダンに爆撃指示が与えられていた。

シェリダン率いるワイン中隊のアースジェッター4機は硫黄島の北岸付近を飛行していた。キャノピー上に装備される武装は空対地ミサイルに換装されている。

「こちらワイン中隊シェリダン。フォートレス1。なにか用か?」

 「シェリダン、爆撃依頼だ。座標は135、485、12。」

 「了解。火消しに回る。」

「エリアス隊長、航空隊が2分こっちに向かっています。」通信機のレシーバーを収納しながら差りっどがエリアスに報告する。

「よし、みんな数分だけ持ちこたえろ。」

 「数分も持てばいいがな。」スコットが5匹目のアリを撃ち殺しながらつぶやいた。

2/5追加分

硫黄島海底。無数の機雷が浮遊している。レスキューサーボが作業アームを出して信管の撤去作業を進めている。

 「バージル、さすがだな」ワイルダーが満足げに親指を立ててバージルに笑顔を見せた。

「!!」一人作業を続けていたウォーレンはふと気がついた。爆雷が徐々に海流に流され位置を変えている。それだけでなく自分たちやレスキューサーボも少しずつ海流に流されている。

「おかしい。流されてる。全員機雷から離れろ。」ウォーレンが叫ぶ

 「流されてる?」ワイルダーはウォーレンに従いレスキューサーボの進路を変える。

「海流がサーボのプログラムですら対応出来ない速度になっている。」ウォーレンが状況を把握しきれない二人に説明しようとしたとき機雷と機雷が接触した。

 ドボフゥッ。爆発の衝撃が海水を伝わり3人の身体をレスキューサーボごと吹き飛ばす。

ドボフゥッ、ドボフゥッ。吹き飛ばされた機雷が次々と接触し連鎖的らに誘爆していく。

「まずい各員浮上しろ。」ワイルダーが叫ぶ。

 「前方に何かいる!!」バージルは前方を指さし叫ぶ。だが、激しい海流は海底の砂を激しく巻き上げワイルダーの視界を遮っていた。

 「何処だ。こう濁っていては確認のしようがない。レーダーには反応はないのか?」

 「海底での活動中はサーボのレーダーは機能しません。」

 「ちっ。」ワイルダーが舌打ちした瞬間、すぐそばのレスキューサーボが破壊された。破壊されたレスキューサーボは一瞬のうちに推力を失い流されていく。
海流を溯るように何かが接近してくる。それらはうっすらと濁った海水の中に姿を表す。その姿は例えるなら怪物半魚人・・・・・・かつてアマゾン総統が造り出した怪人ウロコマンというヤツだ。 ただ今目の前にいるこいつは海中でも活動出来るタイプだ。

「最悪の相手だ。」ワイルダーは絶句する。

 硫黄島、アクロイヤー達の巣窟・・・・。その地下から螺旋状に最上階まで続く階段。 その途中に一つのドアがありその奥は何かのコントロールルームのようになっている。 正面には大きな窓があり、その先は巨大な資材倉庫になっている。倉庫には大量の荷が積まれていた。荷の山の奥には何か巨大な機械がそびえている。デビットが『ミクロム』と呼んだ機械である。

 薄暗い部屋の中、静かに放電が始まる。青白い火花が部屋の片隅のボロ布をあっという間に炭に変える。そしてその中から1人のレディコマンドの骸が現れる。放電の青白い光に照らし出されたのは、アミュレット=シルマだった。

硫黄島の上空。硫黄島の真上を中心に分厚い黒い雲が渦を描く様に回転している。その回転スピードは異様に早く台風を軽く凌いでいる。空気が激しく振動し摩擦で放電が起こっている。
司令官機の移動基地とベースロケッターは硫黄島上空で待機していた。予定外の悪天候で激しい気流にさらされ、その機体は激しく揺れていた。

 「スミス司令、硫黄島を中心に異常に強い電磁波ノイズが発生しています。」

 「発生源は?」

 「硫黄島の敵基地施設内だと思われます。」

「スミス司令、レーダーに機影。硫黄島に向かっています。」

「機数は?」

 「不明です。先ほどから発生している強力なノイズでレーダーがまったく役に立たなくなりました。」

 「ベースロケッターにノイズキャンセラーの要請だ」

 「ダメです。先ほどから要請しているんですが・・通信すら困難になってきました。」

「一体どうなっているんだ。」スミスはこの異常な事態がかつて起こったある事件に酷似している事にまったく気がついていなかった。

2/8追加分
 硫黄島基地施設最上階。空間歪曲弾を装填した発射装置はすべて準備を完了していた。サタンダーは相変わらずそれを見て悦に浸っていた。

 空間歪曲弾・・・・・アーデン・ダイガーが言うにはこの兵器は目標地点に到達し信管が作動すると内蔵している異次元発生装置が作動、着弾した付近の空間をゆがめ異次元に放り出す。核兵器とは違い、使用後の環境破壊は全くないという。

 「目標地点の設定は完了したのか?」

 「は、先ほど設置と装填は完了しております。」アーデン・ダイガーが報告する。

 「急げ小うるさい蠅共が周りで騒いでいる。」

「島内に侵入した連中もいるそうですが・・・。」

 「グリーンスターが警備に当たっている。」

 「一応我々アーデンも島内の警備に当たります。」

 「ふん。我々の警備では不満か。」

 「いえ、そんな事は・・・。」

 「かまわん、勝手にしろ。」

 「それでは失礼します。」ダイガーはサタンダーが見送る中部屋を出た。

 「けっ玩具をあてがわれた子供か。」ダイガーは気取られないように悪態をついた。

部屋の外ではアーデン・レイカーが弟ダイガーを待っていた。

 「ダイガーどうだ総統のご機嫌は」

 「兄上。何時こちらに。」

 「先ほどどさくさに紛れてな・・・・。」

「申し訳ありません。兄上だけに屈辱を味合わせて・・・。」

「かまわん。先にライザーに手柄を上げられてのでは我が一族が大手柄をあげる事が出来ん。この兄がライザー共の手柄を潰している間にダイガー、お前が出世し我が一族をもり立ててくれればよいのだ。」

 「ダイガー、そんな事よりも大事だ。太陽系の外周惑星にルキファー様の艦隊が到着したらしいのだ。」

 「兄上、太陽系の外周惑星にはミクロマン共の前線基地があったはず。」

「さすがは閣下自ら率いる艦隊だ。軽く叩きのめしたそうだ。」

 「しかし閣下自らが来られるとなれば・・・・アクロイヤーなど見捨てて我々の作戦を急がねばならん。」レイカーは弟ダイガーを見つめる。

「はい、兄上。」

 「我が一族の栄光を勝ち取るために・・・。」

2/19追加分
硫黄島海中。突然激しくなった潮流に敷設されていた無数の機雷が流され、互いに接触しては次々と暴発する。潮流は海底の砂を巻き視界き著しく悪化していた。

 ドボフゥッ、ドボフゥッ。海中に鈍い爆発音が散発的に響く。無人のレスキューサーボはコントロールを失い海中を右往左往している。突然のアクシデントに対応できないという無人機独特の弱点を露呈してしまっている。

 ワイルダー達が駆る残りのレスキューサーボは辛うじて損傷こそしていないが爆発の衝撃や激しい潮流にあおられコントロールを失いつつある。

怪人ウロコマンはその激しい海流をものともせず潮流に翻弄されるワイルダー達に接近する。

「急げ。海上に出れば救援を呼べる。」ワイルダーが叫ぶ。

 ワイルダーは深海作業用に装備していたパワーアップセットを外す。少しでも自重を軽くし動きやすくするためだ。

 ワイルダーはパワーアップセットを外し終わると海中にそれを捨てた。他の二人もそれに従う。身軽になった彼らはレスキューサーボのフロートを背中のジョイントにしっかりと取り付けた。それと同時にレスキューサーボの緊急浮上プログラムが作動する。これで両手が自由になる。

「全員戦闘準備。」ワイルダーの指示で全員が武器を持つ。レスキューサーボはそうしている間に緊急浮上をはじめ垂直に浮上していく。それを追うウロコマン・・・。
「敵を近づけるな。」

 「了解。」

シャァァァァァッ。水切り音を立てながらウロコマンがレスキューサーボに接近する。

バシュッ。

バージルはパルサーショットをウロコマンに向け発射する。

 パルサーショットは本来、背中に装備するエネルギージェネレーターからエネルギーチューブを通して供給されるエネルギーで射撃を行う。バージルたちが今装備しているパルサーショットは海中での取り回しと携帯性を高めるためチューブとエネルギージェネレーターを外したチューブレスタイプに改造してある。

 パルサーショットのチューブレス化はエネルギー供給を銃本体のエネルギーパックに頼るため射撃可能回数が大幅に減少する。

 バージルに撃たれたウロコマンは肩口を押さえてもんどり打つ。何匹かはもんどり打ったウロコマンに衝突し脱落する。

 「命中。残弾4」

 「いいぞ。」ワイルダー、ウォーレンも射撃を始めた。

3/1追加分

レスキューサーボの緊急浮上プログラムで急速に浮上する3人。徐々に周囲が明るくなる。海面近くまで浮上してきたのだ。

 ザパァッ。激しく波を蹴立てて海面から垂直に飛び出す3機のレスキューサーボ。

3人を取り囲むようにウロコマンが海面に出る。その瞬間!!

バシュ、バシュ、バシュッ。

一瞬にしてウロコマンが倒され波間に沈んでいく。激しい水しぶきがワイルダー達を洗う。

ブォォォォォッ

不意に背後から集光子エンジンの機動音が聞こえる。

「あれは!!」

 エイのように扁平なボディのマシンが波しぶきを上げて接近してくる。それはブルーグレーの迷彩色に塗装されたマリンコンドルだった。不思議なことにコックピットには誰も乗っていない。

 「大丈夫か?コンドルに掴まれ。」誰もいない空間から声が聞こえる。聞き覚えのある声だ。

「??」ワイルダー達がキョトンとしていると声の主はゆっくりとその姿を表す。その姿は見知った顔・・・。後輩のレスキュー隊員スティーブだった。ワイルダーがコマンド舞台へ配属になったあと彼の後任になりM255のナンバーを受け継いだ隊員である。

 スティーブの後方にも何人かマリンコンドルに乗ったレスキュー隊員がいる。

「スティーブか、助かった。だが何故こんな所に?」

 「後方支援ってやつでね。海上に放り出されたドジ野郎を拾ってるんですよ。まあ、無事で良かった。照準合わせず撃ったんで誤射したかと思った。」スティーブはマリンコンドルにはい上がるワイルダーに手を貸す。

 「たはは、ドジ野郎ねぇ、相変わらず口の悪いヤツだ。」ワイルダーはスティーブの手を掴むと引き上げてもらう。

「戦況はどうなんだ?」

 「あまり良くはないらしいそうだ。」

 グォォォォォォッ。

 轟音に驚き上空を見上げるワイルダーとスティーブ。その真上を真っ黒な機影が轟音を立てつつ通り抜けていく。

 その数は5機、機影はその形からレスキュー3.4号だと判る。レスキュー隊員として乗り込んだ経験のある二人が見間違える事はまずない。

 その機体はバードベースと呼ばれるコンテナ部分が大型化されている。

 機体は全面を真っ黒に塗られている。主翼下部とコンテナ後部に白いステンシル。文字はT・・・・L・・・・A・・・・D・・・。TLAD・・・トラッドと読める。

3/27追加分
 硫黄島の上空を大きく旋回する5つの真っ黒な機影。まるで得物を狙う猛禽のようだ。レスキュー3号のエンジン部分に大型のアンテナが取り付けられている。他のレーダーが全く効かない状況でまったく正常に機能している。

 「電磁パルスを2つ受信。ターゲットと確認。」

 「全機、兵隊アリを投下。」

 「2番、3番、投下します。」コンテナが左右に開く。コンテナの壁面に固定されていたミクロランサー装備の重武装のミクロナイトが次々と投下される。ミクロナイトの外装は艶のない黒に塗られている。MC−7でもMC−10でもない。どの基地にも配備されていないタイプのミクロナイトだ。
 
サリッドから座標が報告されて3分経過していた。皆、傷つきつつ必死に十数匹の巨大蟻に応戦している
「航空隊はまだか!!」エリアスの表情にも焦りの色が見え始める。

 グォォォォォォォォォッ。
 超水素エンジンの甲高い爆音を上げ、アースジェッター4機がエリアス達の真上をフライパスする。

 「ワイン2よりワイン1、目標発見。」

 「全機、攻撃用意。」

アースジェッターのキャノピーが開き、機体内部から波動ミサイルランチャーが現れる。

 「波動ミサイルランチャー展開完了。」

 「空挺隊ポイント・ワンに被害を出さないよう気を付けろ!!」

 「了解。」

 「全機、攻撃開始!!」

 アースジェッター4機は機体上面に波動ミサイルランチャーを展開させた状態でホバリングし適当なポイントに攻撃を始める。

 ドガァァァン。ドガガァァァン。

 巨大蟻が次々と爆風で宙に舞う。爆風をかき分けて1機のアースジェッターがエリアスの近くにホバリングで近づいてくる。エリアスのすぐ目の前で空中停止するとキャノピーが開く。

「ワイン中隊のシェリダンだ待たせたな」

「遅いぞ。道にでも迷ってたのか!」

「ははは、遅れた分の埋め合わせは今からやる。」シェリダンは豪快に笑いながら波動ミサイルを発射し目の前の巨大蟻の大群を吹き飛ばした。

4/2追加分

既に日が沈み真っ暗になった硫黄島の海岸。海から上がってくる影が一つ・・・。その姿はスパイマジシャンだった。そのブレストは赤黒く輝いている・・・・ダガーだ。

ゴォォォォォッ。

上空を大きく旋回する5つの真っ黒な機影をダガーは薄ら笑いを浮かべて見上げている・・・。

「ついにTLADまで出て来やがった。」一息ついてダガーはほぼ垂直に切り立った岩に手をかけゆっくりと登る。急にダガーの身体が熱を帯びる。

「あの女はこのすぐ近くにいる。」全身にだるさを感じる。あの女が近くにいる時に感じる独特の感覚だ。

岩を登りきり、辺りを見回すダガー。

「・・・・・。」

そこにはミクロマンと巨大蟻の死骸無数に散らばっている。ミクロマンと巨大蟻とで戦闘が行われた形跡だ。

「ククク、空挺隊員か。こうなってはコマンドエリアの猛者どもが形無しだな。」ダガーは横たわるミクロマンコマンドの躯を無慈悲に足げにした。

4/25追加分
京都支部・・・・。照明を落とした暗い室内に数人のミクロマンがいる。一人はシートに座り、他はそれを囲むように立っている。

「ついに始まったようですな。」

「硫黄島か・・・・。」

「些細な事だ。スミスがヘマをしようが大した事ではない。要はミクロムに特異点を近づけなければいいのだ。」

「我々TLADが表だって動く羽目になるとは。」

「ノーザンライトはどうした。」

「例のモノは持ち出された。」

「計算外の事項だ。」

「同志ダリウス・・・この責任はどう取るつもりかね。」

「我々の存在が白日の下に晒されようとも、あれを・・・特異点アミュレット・シルマを野放しには出来ん。」

「そうですな・・・・・・あれさえ始末出来れば・・・・。」

「そうだあれさえ居なければ最悪の事態は避けられる。」

「失敗すれば1981年に次元の彼方から現れた奴らか再び現れる。」

「ダリウス、道具を石つぶてから、短刀に変えたようだが今度のは使えるのかい?」

「フフフ、所詮、道具に過ぎん。使い所で役に立てばいい。」ダリウスは不敵な笑みを浮かべた。

 衛星軌道上に浮かぶミクロサテライト内、エリックの自室。薄暗い間接照明だけが室内とソファに持たれるエリックを照らしている。無音の中、熱いコーヒーの香りだけが漂う。あの小役人も今頃同じコーヒーを啜っているのだろうか・・・。

 「ダリウス・・・・TLADの直接指示か・・・・。」コーヒーカップをソーサーの上に戻す。コーヒーの褐色の水面が軽く揺れる。

TLAD・・・その存在は古参のミクロマンでも詳しく知る者は少ない。
ミクロマン全体の戦略構想を担当するタクティクスエリア、立法と司法を司る機関レジスレーションエリア、ミクロマン社会の行政を担当する機関アドミニステーションエリア、外交を司る機関ディプロマティックエリアの4つの機関から成る。これらの機関はミクロマンが地球人と円滑に共存していく方法を模索する機関である。

 ダリウスはこの中のタクティクスエリアの長官である。目的の為には手段を選ばずいかなる犠牲をも厭わない男・・・

「タイタニアをどうするつもりなんだ・・・。」

 ビビーッ。突然室内電話の呼び出し音が響く。急いで受話器を取る。

「どうした?」

 「第1警戒エリアに宇宙艇2機が接近中です。」この声はシュルツの交代要員のフードマン・ガイヤーだ。

 「すぐ行く。」エリックは飲みかけのコーヒーをそのままに部屋を出た。

 エリックが司令室に入るとそこには既にダリルが来ていた。

 「おおっエリックくん。遅かったじゃないか。」

 「ガイヤー、どうだ?。」エリックはダリルを一瞥し会釈だけするとモニターに目をやる。

 「2機の内の1機は小惑星帯で引き返していきました。遠すぎて船名等は不明です。もう1機は現在詳しく解析中ですがおそらくソーラーセイル・ボートかと思われます。推定進路はこのミクロサテライトに直接接近するコースです。」 

 「出ました。外宇宙監視ステーション・カロンM所属のソーラーセイル・ボートです。所有者はカロンM司令官ジュラック」

 「カロンM?どういう事だ?」

 「はい。ボートに状況を問い合わせてみます。」

 「よし。」エリックはモニターに映る接近するソーラーセイル・ボートを示す光点を見つめていた。 

 小惑星帯を抜け再び漆黒の闇を高速で飛び続ける宇宙ボート。

エイドリアンは追跡者を振り切ったのを確認すると再び操縦をオートパイロットにまかせ返答のないジュラックの様子を見にコントロールデッキに向かう。

シャッターを開くとそこは無重力状態になっていた。血の付いたコンソールの破片やシート等が浮遊している。

 壁面は著しく変形し壁面が切り裂かれている。緊急回避時に岩か何かが衝突したようだ。

「ジュラック司令!!」エイドリアンは浮遊物を避けながらジュラックの姿を探す。

 室内の空気が少なくなってきているのか息苦しい。既に自動修復装置が作動したらしく壁の裂け目はシーリング液でふさがれている。

 床に刺さった大きい壁の破片をどける。その下に血だらけになったジュラックが倒れていた。

 「司令。しっかりして下さい司令!!」エイドリアンはジュラックの外傷を確認する。左側頭部と左上腕部に裂傷。深刻な出血元はこの2カ所だ。失血が著しくブレストは生命維持モードになっている。

エイドリアンはジュラックの傷口に止血スプレーをするとコントロールデッキから運び出した。

 「あの時と同じだ・・また、俺のせいで・・・・俺がもっと上手く操縦さえできていれば司令は・・・・。」

エイドリアンはジュラックをシートに座らせる。星図を取り出し座標を確認する。オートパイロットはずれた進路を無事に修正してくれている。外部モニターに目をやる。地球が見える。そしてモニターに表示が出る。

 −目標地点ミクロサテライト確認−

 −推定到達時間42時間24分−

 「司令、ミクロサテライトです。司令・・・。」エイドリアンは震える声で意識不明で聞こえるはずもないジュラックに話しかけていた。

4/27追加分

 「こちらミクロステーション、カロンM所属のソーラーセイル・ボート応答せよ。」通信機のスピーカーからフードマン訛りの強い声が聞こえてくる。

 「受信だけは出来るのか・・・。悪いなこっちはとっくの昔に送信不能だ。」傍らのシートに瀕死のジュラックを横たえ悪態をつくエイドリアン。

 「応答無し。ソーラーセイル・ボートさらに接近。第2警戒エリアを通過します。」

 「ガイヤー、呼びかけを続けてくれ。」

「エリックくん。こんな所にカロンM所属のソーラーセイル・ボートが居るはずがない。恐らく敵の偽装だ。直ちに撃破したまえ。」

 「監察官。もし何らかの事情で漂流してきた船だったらどうするんです。」

 「何を言っている。戦時なんだぞ。そんな事を言っとるからアーデン風情に衛星を乗っ取られるんだ。」一同はダリルの科白にギョっとする。

 「貸せ!!」ダリルはガイヤーからマイクを奪い取ると大声でソーラーセイル・ボートに怒鳴り始める。

 「ソーラーセイル・ボート、さっさと応答せんか!!応答しろっ応答せんなら敵と判断して撃墜するぞ。」

 ドガッ。壁に吹っ飛ぶダリル。エリックは握り拳を作ってダリルを睨み付けている。

 「ヒッ!!」

 「ダリル監察官、ミクロサテライトの責任者は私です。無用の口出しはご遠慮頂こう。」 「殴ったなエリック、殴ったな!!それ相応の処分が待ってると思え。」

「処分ですか。処分結構。どうとでも処分して下さい。こちらも殴られる前のあなたの買ってな行動を報告させていただきますよ。」エリックは普段からは想像も付かない大声でまくし立てた。

 「ぐぬぬっ」ダリルは言い返す事も出来ず殴られた頬を手で押さえるといそいそと司令室から出ていった。
 
ミクロサテライト司令室。捕捉された外宇宙監視ステーション・カロンM所属のソーラーセイル・ボートとは別の機影がモニターに映し出されていた。機影はベースロケッターUと識別された。新型タワー基地の基部となる機体で。タワー基地M115のベースロケッターを再設計した後期生産型だ。

 「ミクロサテライト応答せよ。こちらコマンド・スター第12偵察分隊ロディだ。燃料の補給を頼む。」

にっと顔を見合わせるエリックとガイヤー。

 「こちらミクロサテライト。ロディ、燃料の補給は許可するが一つ仕事を頼みたい。」

 「仕事?」

 「そうだ、当ミクロサテライトに接近するソーラーセイル・ボートの状態を見てきて欲しい。座標は今そちらのナビシステムに転送した。」

「了解。手回しのいい事で。まあ高い燃料代だがこちらとしても背に腹は代えられん。」 ロディは機体を指定された座標に向けるとソーラーセイル・ボートを探す。

 −目標捕捉−
 −外宇宙監視ステーション・カロンM所属ソーラーセイル・ボート−
 −所有者カロンM司令官ジュラック−
 
 「なる程これね。」ロディは慎重に迂回しながらボートとの距離を詰める。燃料系はEのひとメモリ手前。

 「センサーポッド射出。」ベースロケッターUから数個の球体が射出される射出されたその場で1回転し、目標のボートを捕捉するとまっすぐボートに飛んでいく。

 「落とされない事を祈るよ。」

 ベースロケッターUから射出されたセンサーポッドはソーラーセイル・ボートのすぐ近くまで接近する。ベースロケッターUが近づいてくるのをソーラーセイル・ボート内のエイドリアンも確認していた。

 「ド素人め。今の動きで4回撃墜されてるぞ・・・って言っても聞こえてないんだよな・・・。」

 「ん?」エイドリアンはボートの周囲を飛び回るセンサーポッドを見付ける。センサーポッドのカメラアイと目が合う。エイドリアンはニッと笑ってみせる。

 「操縦席内に。生存者がいる模様。ミクロマンです。もう少し接近して様子をみてみます。」

「よし、慎重にな。」

 「了解。」

 ロディのベースロケッターUはソーラーセイル・ボートと併走するように接近。操縦席の様子を見る。

「映像を送ります。」
モニターに映し出される操縦席の様子。画像から二人のミクロマンが確認できる。1人はM10Xタイプ、もう1人はM15Xタイプのボディだ。

 「エイドリアン!!」エリックには見覚えのある顔が映っていた。

5/6追加分

 「ロディ、どうやらボートは通信機のトラブルらしい。援護しつつミクロステーションに向かってくれ。」

 「了解」

 ベースロケッターUは再度ブーストをかけるとミクロステーションに向かった。

 ビビーッ、ベースロケッターUの後方警戒レーダーが後方からのロックオンを探知。警戒アラームを鳴り響かせる。

 「!!」とっさに機体をロールさせるロディ。狭いコックピットで身をよじらせて後方を視認する。

 銀色に輝くミサイルがロール中のベースロケッターUを追尾してくる。その後方にはそのミサイルを発射したと思われる機体が1機。

「アーデンジェット!!」

 「フフフ、小惑星帯に遮られて取り逃がしたが、次はその護衛機以外は遮るものはないぞ。」

 「ミクロステーション、こちらベースロケッターU。敵機に捕捉されました。」

 「ロディ、あと200qでこちらの迎撃エリアに入る。それまで凌いでくれ。」

 「了解。」ロディは機体を左右に蛇行させミサイルを振り切ろうとする。

 「ソーラーセイル・ボートが迎撃可能範囲に入りました。」

 「よし、弾幕を張れ。味方に当てるな!!」

 ミクロサテライト外面の岩盤部分の所々の窪みから砲台がせり出し砲撃を始める。

 「ちっ近づきすぎたか。」バルガーのアーデンジェットは機体を翻し戦闘速度で戦場を離脱した。

 
ミクロサテライト内格納庫、作業スペースにソーラーセイル・ボートとベースロケッターUが機体を並べている。

ソーラーセイル・ボートから降りたエイドリアンを最初に出迎えたのは意外なことに監察官ダリルだった。軽く会釈し軽蔑するかのような視線をダリルに向けるエイドリアン

 「無事だったか。」

 「また一人で戻りました。今度は火星基地にでも放りだしますか。」

 「・・・・・。」

 「・・・・・。」視線を合わせず別れる二人。

 ミクロサテライト司令室。エイドリアンが入ってくる。

 「おっ、エイドリアン、この悪党。よく帰ってこれたな」ニッとした笑顔でエリックがエイドリアンを出迎える。

 「よぉ、久しぶりじゃないかこの穴熊め。」

 「ジュラック司令は残念な事になった。」エイドリアンはうつむき加減に声を落として言う。

 「いや、応急処置に当たった所員の報告ではジュラック司令のブレスト機能はまだ完全には停止してはい

い。」

 「!?」

 「まだ諦めるには早いという事だ。」

 「あるツテを頼ってみようと思う。」

 「ツテ?」

 「ああ。少々遠いが知り合いの所に有能なドクターが一人いる。」

 
 ミクロサテライト内亜空間通信室。エリックは回りに人が居ないのを確認し通信室内に入る。とある知り合いの所に通信を送るためだ。エリックは通信機のコンソールを操作し通信を送る。

 通信先はタイタニア中央司令部。シリウス宛の緊急通信だ。司令室からの衛星通信では監察官にシリウスとのやりとりを盗み聞きされる可能性もある。上層部の連中にはタイタン嫌いが多い。

 司令官のシリウスは自分のオフィスでエリックからの緊急通信を受けた。デスクに備え付けの端末に軽く触れると、映像と音声が自動的に転送されてくる。

 「やぁ、シリウス。忙しいところ申し訳ないな」

 「お互いさまだよ、エリック。で、急ぎの用とは?」シリウスの姿は地球にいた頃より少しやつれた感じだった。

 「用件は三つだ。まず一つめ・・・先程、"カロンM"からの脱出艇が漂着した。古い型のソーラーセイルボートだ。そこに、ジュラックとエイドリアンが乗っていた。二人とも生きているが・・・」

 「そうか!どちらも無事なんだな?」

 「いや・・・二つ目。ジュラックはブレストを破損しており、傷が深い。応急処置で対処しているが、危険な状態にある。なにぶん、こっちも色々あってな・・・人員が不足してるんだ。済まないが、そちらの医療チームを派遣してもらいたい。ティア・・・彼女の技術なら、ジュラックを救えるはずだ」

 「わかった。すぐに彼女を向かわせよう・・・"カロンM"のクルーも同行させたいが?」

 「構わんよ。本部の意向はともかく、俺と"MGの連中"には何のわだかまりも無いからな」

 「ありがとう。ちょっと待っててくれ・・・」

すぐさま、シリウスは回線を切り換え、"カロンM"のクルーと医療部に直接連絡を取り、手際よく必要な指示を出した。彼はいつも、このように迅速に行動するのだ。

 「待たせたな、最後の用件を聞こうか」

 「ああ。この三つ目が、一番厄介かも知れん・・・TLADの監察団が、タイタニアに向かったぞ。それもダリウスの飼い犬がな」

 「TLADが?アーデン・ルキファーへの対処に関わることか?」

 「それもあるだろうが、他にも何かありそうだ。小役人どもめ、こんな大事な時に何を考えてるのか・・・。さすがに俺はキレちまったが、お前は抑えろよ、シリウス」

「なんだって?」

 「いや、こっちの話だ。躾の良すぎる犬は、飼い主以外にゃ気を許さねぇってことさ・・・では宜しくな。通信終了」画面のシリウスの姿が消え、端末の画面は通常モードに戻る。

 「シリウスのヤツのため息が聞こえてきそうだ。」

5/21追加分
 暗闇の中・・・・男が一人・・・記憶の奥底に辛うじて残った記憶が確かなら何年・・いや、何十年も前からここに閉じこめられているはずだ。一条の光すら与えられていないこの男にとって時間の感覚などとうの昔に失ってしまったものなのだ。

 手足に絡んだ鎖はもはや身体の一部にすら感じられる。

 ギギギギギギ・・・・・。

 「ん!?」

 男の顔に一条の光がさす。光が青く輝く無機質な顔を照らす・・・。

 「出ろアーデン・バルター」ミクロマンが一人窓から中をのぞき込んでいる。逆行でその姿は見えない。

 「・・・・ふふふ、その名前で呼ばれるのは久しぶりだな・・・・前にそう呼ばれたのがいつかはもう覚えていないがな。」

 「・・・・・」

 「で、雁首揃えて何だい?俺の処刑の段取りが整ったのかい?」

 「釈放だ。」

 「釈放?正気か?」

 「ふふふ、タダで釈放してやるとは言っていない。」

 「何をやらせようというんだ・・・・・・。」

 「殺しだ・・・。」

 「殺し?」

 「そうだ。ターゲットは地球人とミクロ人間だ。」

 「ククク。傑作だ。それが正義を標榜するミクロマンのやることか。」 

「・・・・・。」

6/10追加分

 硫黄島基地、基地外壁。最上階に向けジグザグに非常階段が取り付けられている。

 カン、カン、カン、カン。鉄の階段を勢いよく駆け上がる足音・・・・。

 立ち止まる人影。デビットだ。ふと背後に広がる硫黄島の全景を眺める。目に留まる異様な黒塗りの機影。

 「T.L.A.D.・・・・。ダリウス・・・・痺れを切らせて動きだしたか・・・。不味いな。」

 「どう不味いのかしら?」

 「ヘレン!!」

 「デビット、こんな所で何をしているの?」非常階段の踊り場にヘレンが立っていた。

 「君を連れて帰る。」

 「連れて帰る?馬鹿な事を。」

 「もうミクロマンとしては生きてはいけないが3人でひっそりとどこかで暮らそう。」

 「アハハハハ。何を寝ぼけているの。私は自ら望んでここにいるのよ。」

「ヘレン・・・・君を倒してでもここから連れて帰る。」デビットはステッキを構える。ヘレンに気づかれないようスタンモードにする。 

 「裏切り者には死を」ヘレンは腿に装備した剣を取り右手で構える。

 アーデンクールとの戦いで受けた傷からの出血はまだ止まっていない。ヘレンを倒すために残された体力には限りがある。徐々に痛さを通り越して寒気に変わってきている。

見つめ合い、じりじりと間合いを詰める二人。以前のヘレンは愛情に溢れた目でデビットを見つめていた・・・だが今のヘレンの目には冷酷な殺意が浮かんでいるだけだ。

どんよりと曇った空の遙か上空で雷鳴が轟いている。

シュッ

 最初の一閃はヘレンのものだった。鋭い切っ先がデビットを襲う。辛くもその一撃はかわすが足下はふらついている。

「どこまで保つのやら」ヘレンの顔に残酷な笑みが浮かぶ。

「以前の君からは想像できない表情だ。」デビットは基地の外壁にもたれかかり辛うじて立っていられる状態だった。

 デビットの一言で一瞬のうちにヘレンの顔から笑みが消える。そして黙ったままさらにデビットに斬りかかる。

ヘレンの剣がデビットの右前腕を貫く。完全に貫通し肘の辺りから剣先が現れている。

 「作り物の腕の方で助かったよ。」デビットは苦しげな表情でヘレンを見上げる。

 「ふふふ、そう?でも次で終わりにするわね。」ヘレンは剣をデビットの右腕から引き抜く。デビットの右手からステッキが転がり落ちる。

 ヘレンはデビットの眉間に剣を向ける。その時。

ゴゴゴゴゴゴゴ。

ものすごい轟音が上空から鳴り響いた。

 「!!」ヘレンは一瞬視線を上空に移した。そのスキをデビットは見逃さなかった。

とっさに落ちたステッキを左手で拾うとヘレンの懐に飛び込む。左手の逆手で持ったステッキを振り上げる。

ヘレンは手にした剣を逆手に持ち替えデビットの背中を貫こうとする。

 ザシュッ。

一瞬、二人の身体から火花が散り、そしてすぐに白い煙が上がる。

 ドゥッ。

 ヘレンの身体がゆっくりと後ろに倒れ込む。胸にはステッキの一撃で付いた焦げ跡が出来ている。

 「・・・・。」倒れたヘレンを見下ろす・・・・ふっと気が抜けたのかデビットはヘレンの上に被さるように倒れ込む。

デビットの銀色のブレストには上空で何色もの色の光で怪しく光る雲の渦が写り込んでいた。

6/25追加分

硫黄島の東北東60qの太平洋上 一見銀色のボートのように見える旗艦航空母艦コネクトリックスとそれを取り巻くように護衛のサーベイヤーが浮かんでいる。ベネズエラ基地から出港した艦隊である。

 天候は目的地硫黄島に近づくに連れ徐々に悪化してきた。まっ青だった空の色も今は全面暗い灰色になった。波は高く風が強くなってきた。空母は風に逆らうように航行する。

 コネクトリックス艦載機格納庫内、ジェットミラー、スーパージェット、アースジェターを主力とする艦載機が並ぶ。そしてブレイカーズ所属の重戦闘機コズミックファイター。特にコズミックファイターはその大きさもあり目立った存在だった。

 コズミックファイターのうちダーレスの乗機は大型の本体動力部に、アースジェッターの主翼やジェットミラーの推進装置を付けられていた。

 「あーさぁだ夜明けぇだ〜潮のいーぶーき〜♪」航空ドロイドのヒエンは不謹慎にも戦前の軍歌を歌っている。整備員達は出撃前の忙しさでそんな事は気にも止めず動き回っている、

 「ヒエン!出撃前で忙しい状況なのにやめてください!」すかさずトビキチがそれを止めた。

 「カタい事は言いっこ無しだっぜ、出撃前に相応しい歌だっぜ!」

「・・・・」

 「…またやってるよ…あの2機…じゃなくて2人…」整備員達はまたかといった様子で肩をすくめつつも出撃機体の調整を進める。

 「ああ…歌うにしても、『ヒエン』って、変わった歌を歌うしな…」

 「何処で覚えたんだ?」

不意にヒエンがカメラを自分の事を話している整備員達に向けた。

 「…リクエストがあるのかだっぜ?」

 ブッ。

トビキチは、強制的にヒエンの拡声器を切断した。

 一方、3機のコズミックファイターの隣には、先に出撃準備を終えたミクロステーション型にマグネパワーズ達が乗り込み、計器を確認中だ。

「俺達も最終点検行くぞ!」

 コズミックファイターの操縦席に乗ったダーレスが言うまでも無く、航空ドロイド達は点検作業の報告をする。

 「主・副動力機関・ともに異常無しだっぜ!」

 「光子充填完了!」

 「火器管制、作動良好・全機出撃準備完了」

 出撃前の艦内には独特の緊張感が漂っていた、ダーレスはそんなそぶりも見せていない。むしろ彼はそれを楽しんでいるようだった。

 両舷のエレベーターがジェットミラー隊を一斉に持ち上げ始める。甲板上に出たジェットミラーはレールの上を台車に乗ったまま滑り出しそのままカタパルトに乗せられ固定される。シグナルが赤から青に変わる。それを合図にジェットミラーは轟音と共に上空に射出される。1機1機と順々に上空に射出される。その度に射出装置の轟音が駆けぬける。

 コズミックファイターの操縦席に管制官からの出撃指示が出る。

 「ブレイカーズ隊、ミクロステーションに続き第3大型昇降機から甲板へ」

 「おう!俺達の出番か!」

 甲板へと上昇して行くミクロステーション。機体上面の橙色の渦巻きのマーキングが作業用の照明に照らされている。

 曇天の下、3機のコズミックファイターとミクロステーションが甲板に姿を現す。

 磁力式カタパルトが引き戻される。ダーレスは自機を発進位置まで移動させる。F機関の出力が次第に上昇する。

 射出装置が着陸脚を固定する挙動の直ぐ後に、発艦信号が赤から青へ変わった。

 「ブレイカーズ隊、発進!」

 「コーラスボーイズ01、イくぜ!」

 蒼と黒の機体が瞬時に加速され、空中に駆け昇がる。

 「コーラスボーイズ02、発進!」

 「コーラスボーイズ03、行って来ま〜すだっぜ!」トビキチ、ヒエン、ダーレスと続いて発艦する。全機発艦と同時にダーレス機を先頭にした三角編隊が組みあがる。

 「♪口で言っても解からん奴は 一発殴って解からせろ!殴れ!壊せ!ぶっ飛ばせ!邪魔する奴等は容赦無し!♪」

回路に記憶した楽器音データを駆使して演奏しながら、歌い続けるヒエン。

 「♪一発殴って解からん奴は 身体に教えこませるぞ!叩け!潰せ!ぶち殺せ! 俺の敵は全員の敵! 仲間の敵も俺の敵!」
諦めたトビキチも、小声ながら合唱に加わる。

 「♪それでも解からん馬鹿共は 一族郎党皆殺し!倒せ!殺せ!根絶やしだ! 逆らう奴等はぶっ潰せ〜!!♪」

 「!!」

 「何だこりゃ」

 「うるさいぞ」

管制塔の通信回線はブレイカーズの変な大合唱と大合唱に対する苦情でパンク寸前になる。

 「どうしましょう、止めさせますか?」若い女性オペレーターが困惑気味の顔で指示を求める。

 「放っておけ。言って判る連中じゃない。戦闘が始まれば歌ってられんさ」

 「いいんですかぁ?」

 「ブレイカーズ以外の全機に連絡。下手な合唱なんぞ聞いてないで作戦に集中しろ。」

 「は、はい・・・・。」

 「ブレイカーズ以外の全機、下手な合唱なんぞ聞いてないで作戦に集中しろとの事です。」

 「・・・・・」通信機から返答は無かったがパイロットたちの苦悶の表情は見て取れた。

 「みーんなノリが悪いだっぜ!よっし!それなら・・・」

 「♪ほーえ立つ嵐とーぶアラレぇ〜♪」

 ブレイカーズ突撃行進歌の伴奏が終わると間髪入れず次の歌が始まった。

 各機のレーダーに敵迎撃部隊の機影を光点として映し出しても尚、歌は続いている。

 「♪全速爆進急降下ぁ〜!♪」

 ダーレスは歌うのを中断し、攻撃隊に『敵発見』の合図を送る。

 「トビキチ!ヒエン!ナマ本番だ!」

水平線に見え隠れする敵機を捕えたダーレスの下品な叫びと共に、3機のコズミックファイターから青白く、彗星のように長く尾を引く光弾が連射された。

 「前を開けろ!巻き込むぞ!!」

 3機によるエネルギー全開のF砲掃射の前に、敵迎撃部隊中枢は消滅し、残った者は散開する度に、収束率を絞ったF砲で狙撃する。遠くに爆発四散する姿を見る事無く、光点は次々と消え去る。

 「攻撃開始!!」

コズミックファイターが開いた進路を攻撃隊が編隊ごとに展開し、それぞれの目標に向かって行く中、ダーレスもめぼしい敵を求めて操縦桿を硫黄島上空に向けると、遠くに艦隊が展開しているのが見えた。

 硫黄島基地司令室。怒号ににも似た通信が飛び交う中、モニターからは迎撃隊を示す光点が1分とかからぬ内に消滅していった。

「あれは何?…」

「射程外から…!?ギャ……」

「増援を!!ウァ…」

 爆発音や悲鳴に混じりに聞こえる通信は、敵新型機の発見と驚異的な性能への恐怖の声だけだ。

 指揮官であるはずの総統アクロイヤーのいない司令室に居合わせたアーデン・ダイガーはその様子を腕組みしながら見ていた。

「映像を送信せよ!繰り返す、敵新型機の映像を送信せよ!」

管制官が繰り返し残存機に言うが、返答する者はいなかった。

「逃げるだけで手一杯だ…」

ようやく返って来たその返答に続くのは、爆発音と悲鳴のみだった。

「!!!よこせ!」ダイガーは管制官からマイクを奪うと、自らの名も告げず操縦者へ質問を始める。

「敵機の特徴は?」

一瞬、静まり返る司令室。

「大型の癖に良く廻り…強力な光線砲を搭載している!速い!!」

「機体の色は?」

「・・・・・。」誰もが息を呑み、その応答に聞き入っている。

「青だ…青と黒だ…食いつか…ァァァァァ」

映像板の光点が消え、通信機から聞こえるは砂が流れるかのような音のみとなった。

「奴らは所詮ミクロマン、たかが3機で何が出来る!!」ダイガーは必死で動揺をかき消そうとした。誰もがそれに気づいたが何も言うことができなかった。

「・・・・確かアーデンクールの持ってきた列車砲があったな。」

「はい、しかしあれはエネルギー充填に時間がかかります。」

「かまわん用意しろ。他に出せる戦力があるならすべて出撃させろ!!」

「ハッ!」

「列車砲用意、対空迎撃に当たれ。」

硫黄島基地内倉庫。数人の技士らしきアーデンが異常点滅するメーター類に頭を抱えている。

「本隊からの物資はまだ届かんのか!」

「ハッ。転送装置が上手く制御できないんです。」

「どういう事だ。テストでは上手くいってたではないか。」

「まったく原因不明です。突然コントロール不能に陥りました。」

「ちっ拾った物を安易に使うからだ。こういう肝心な時には動かんのか。」

 この時、彼等はコントロールルーム内で青白く光る物体にはまったく気が付かなかった。

8/14追加分

 硫黄島基地の最上階の砲座、周囲で爆音が響く中、サタンダーは日本の都市の映り込んだターゲットスコープをのぞき込んでいた。クロスゲージが都市の一画にあるビルに合わせられる。

「照準固定・・・・。」

 悦に入ったサタンダーの気分をぶち壊すようなタイミングで大きな足音をたて伝令兵が入ってくる。

「総統閣下。敵援軍に北岸の防衛ラインを突破されました。」

「総統閣下。敵工作員が基地内に侵入した模様です。死傷者多数です。」

「アーデン共め何をグズグズとやっている!・・・・楽しみは後に取っておけという事か・・・・。」サタンダーは不愉快そうな表情で最上階を後にする。

 もはや自ら指揮を取る時か・・・。

「転送室、増援部隊の転送だ。」サタンダーは怒号に似た激しい口調で命令を下す。

「は、転送装置を作動させます。」伝令は転送室に走った。

9/13追加分

京都支部司令室・・・。大型ディスプレーに硫黄島の地図と無数の光点が表示されている。十数人のミクロマンが各デスクに設置されたモニターで硫黄島の戦況を監視している。司令室の一番後ろの指揮官専用シートにマジシャンリーダー・ダリウスが座っている。

 「ミクロナイトからの状況報告が入りましたガンメタルボディのスパイマジシャンが男に報告する。ターゲットを捕捉した模様、現在損耗5です。」

 「ハードチューンのミクロナイトが5機か・・・思ったより苦戦しているな。

 「もう一つの駒は?」

 「ダガーですか。硫黄島の基地施設に入った時点で捕捉出来なくなりました。」

 「フフフ無事にアミュレットの元に近づいているな・・・・こうでなくてはあいつの真の存在理由がなくなる。」

 「ベースロケッターより報告・・・上空で次元振動観測。発光現象も始まっているようです。」

9/26追加分
 富士山地球本部跡。一人の男はこのスガモプリズンの看守長アラート。もう一人はスパイマジシャン・ダルトン。素行調査や尾行などを得意とするスパイマジシャンである。

 「ダガーが蘇生したのは、日本の某所・・・・。強烈な電磁波の影響で脳とブレストに重度の障害を受け仮死状態で蘇生。」

 「強烈な電磁波・・・クロノスの能力だ・・・・ダガーとクロノス・・・アミュレット=シルマの関わりはダガーの蘇生時から始まっている。ダガーは事件の後、富士山地球本部に収容された。当時、蘇生手術を担当したのはバーンズ長官とブラッキー長官。当時の看護婦の証言によるとその時のダガーの身体は反物質化寸前だったそうだ。強烈な電磁波の影響で脳とブレストに重度の障害を持ったダガーは姿形こそミクロマンのままだが、その本質は著しく理性を欠く、限りなくアクロイヤーに近い精神と異常な程に発達した戦闘能力を持つ怪物になった。知覚、筋力、敏捷性、ESP能力の測定記録値は通常のミクロマンの2倍以上だ。そして特筆すべきは一定の範囲で磁力波、次元振動波を減衰させる能力だ。」

 「磁力波、次元振動波を減衰させる能力・・・スガモプリズンのメディカルスタッフでもその能力は確認していました。ダガーが独房に収監されていたのはその凶暴性からだけでなくそれも要因の一つでした。」

 「仮死状態から回復した後、ダガーは当時すでに解体されインテリジェンスエリアとエデュケーションエリアに併合されたMCIAに配属され、その一員となる。だが1993年に、その激しい破壊衝動から46人ものミクロマンを次々と殺害しスガモプリズンに幽閉。2000年10月16日、看守を殺害しスガモプリズンより脱走。行方をくらませる。脱走の目的はいまだ不明だが逃亡経路から硫黄島にその目的があると思われる・・・。蘇生時、1993年の殺戮、2000年のスガモプリズンより脱走・・・・ダガーが関わった事件すべてに同時にアミュレット=シルマと思われるミクロマンの関わりが散見できる・・・。」

 「やはりアミュレット=シルマがダガーの行動に影響していると?」

 「確実とは言えるわけではないがその可能性は高い・・・。これは推測だがダガーの目的はアミュレット=シルマとの接触だと思われる。」

 「もし、ダガーが再びクロノスと接触したらどうなるんですか?」

 「それについては専門家の見解を聞いてきた。ダガーがクロノスと接触した場合、ダガーの磁力波、次元振動波減衰能力はクロノス自身の防衛本能を引き出し、クロノス現象を引き起こす。そしてクロノス現象はダガーの能力によって多少減衰されるもののダガーの減衰能力を超える磁力波、次元振動波を発生させる。磁力波、次元振動波減衰能力のエネルギー源のESPエネルギーが尽きた瞬間ダガーは消滅する。ダガーの消滅時、それまで減衰の反動で大規模な次元振動を誘発する。大規模な次元振動は半径200キロに想像を絶する相当な被害を生み出すという事だ。」

「止められないんですか!?硫黄島には地球人やアクロイヤーだけでなく何千人もの同胞がいるんですよ。」

 「我々2人の力ではどうにもならない。今まで我々はダガーの件でクロノス事件の当時の記録に関わってきたが、当時抹消された情報は誰が抹消したものか判るか?」

 「いえ・・・意図的に抹消されたものとは判りますが。」

 「MCIAだ。インテリジェンスエリアとエデュケーションエリアに併合されていたMCIAだが実のところ組織の一部はさらに上位の機関の一部として生き残ったのだ。局長のデュークと副長ホークのもとでな・・・。」

 「デューク局長とホーク副長は20年前のアクロイヤーとの戦いで行方不明だったはず。」

 「ある立て役者がその存在を隠蔽していたのだ。」

 「ある立て役者?」

 「そう、その男はTLAD(トラッド)に所属し実質的に今のミクロマン社会の暗黒部を支配している。」

 「TLAD?」

「影の機関TLAD(トラッド)タクティクスエリア、レジスレーションエリア、アドミニステーションエリア、ディプロマティックエリアから成る。その存在は3機関CRIM、SHID、GLFTの幹部の一部にしか知らされていない。」

 「なぜその組織はダガーとクロノスの接触を阻止しないんです!?」

 「硫黄島の後に起こる第4のクロノス事件を阻止する為だ。」

 「第4のクロノス事件?」

「そう鈴鹿のマックス所長の予測では月周辺でそれは起こるようだ・・・。」

「酷いですねそのために硫黄島にいる多くの生命は見殺しにされるという事ですか・・・。」

 「・・・・ああ、だが我々ミクロマンは今までそうやって生き残ってきた。本来同胞であるはずのアクロイヤーも倒してな。」

 「こちらも始まったか・・・。アミュレット、ダガー、ミクロム・・・そして次元振動・・・条件はすべて揃ったな。」

10/3追加分

 地球火星間の宙域。グスタフが考案した電磁砲装備の防衛衛星による火星宙域防衛ライン「マルス・ライン」が建設中の宙域である。

 コマンド・スター火星宙域駐留艦隊の高速宇宙戦艦ウェールズ、巡洋艦フューリアス、グローリアス、フォーミタブルの4隻は火星軌道を離れ冥王星へ向かっていた。

 他のコマンド・スターの艦隊は太陽系内に突然現れては消える次元の扉の調査と監視のため持ち場を離れることが出来なかった。急遽、火星宙域駐留艦隊の予備艦艇・・・当然ながら老朽艦だが・・・の4隻を冥王星への救援部隊として編成したのだ。艦隊も急場ごしらえなら乗組員も艦隊も急場ごしらえでミクロマン、フードマン、ブリザード、タイタン、挙げ句の果てにはドーベルマンとコンドルまで乗員名簿にあげられていた。あげくの果てには志願したミクロ人間の姿もある。

  艦長はエイクウッド、コマンドアーミー所属の夜間戦闘のスペシャリストで夜襲を最も得意としている。この任務のため急遽召集され艦長に抜擢されたため本来参加すべき硫黄島の戦いには参加できなかった。

 旗艦となったウェールズの舷側には補給隊所属のレスキュー基地レスキュー補給ベース07がドッキングし大量の補給物資を運び込んでいた。

「エイクウッド艦長、空間騎兵隊とレスキュー隊の搭乗が完了しました。」副官のエラーがスティック状の菓子を口にくわえながら報告する。副官エラーはコマンドアーミー補給部隊所属で元々はコックである。コマンド要員が足りなかったため副官に抜擢された。

「エラー、ミクロプレッツェルも程々にしておけよ。」

 「は、次の箱で止めておきます。」

 「・・・」エイクウッドはヤレヤレといった表情で重ねられた空き箱の山を眺めた。

 「ミクロナサ、フードライナー、フードカート、サーボマシンの搭載完了しました。」

 「弾薬、食料の搭載完了しました。」モニターにミクロマンブリザードのエルピースのすがたが写る。

「これが最後の補給か・・・・。」

「エアーロック閉鎖。ドッキングアーム収納。」

 「全艦、微速前進。」

「レスキュー補給ベース07が離脱します。」レスキュー補給ベース07は識別灯を点滅させ合図を送る。

「さて、おやつの時間も終わった。全艦冥王星へ出発だ」エイクウッドの号令のもと老朽艦4隻は冥王星へと出発した。

10/24追加分
 硫黄島上空。スミス達の搭乗する移動基地FT1。ベースロケッターが後方斜めで警戒にあたっている。唐突にベースロケッターから通信が入る。

 「レーダーに所属不明機捕捉。上空の雲海の中からです。突然現れました。」

 「機影は?」

 「データ照合完了!アーデンジェット2,移動基地1!?いえ、違いますバトルクルーザー級高速戦艦です!!全機上空から戦闘速度で接近してきます。」

 「どういう事だ。」

 ビィィィィィィッ。けたたましく警戒音が響く。

 「ロックオンされました。」

白い移動基地・・・・バトルクルーザー級高速戦艦には本来乗り込んでいるべきミクロマンの姿はない。乗り込んでいたのはアーデン・ブルターだった。

「硫黄島基地に転送されるはずだったがまあいい。ミクロマン共よ!!私は帰って来た!!」

 アーデンジェットからはミサイル、そしてバトルクルーザーからは2発の地海底ミサイルが放たれる。

「緊急回避!!」移動基地FT1とベースロケッターは急激に右ロールして上空からの攻撃を回避しようとする。バトルクルーザーから放たれた地海底ミサイルはベースロケッターを追う。

 「相手は戦闘艦だ攻撃を食らったらひとたまりもないぞ。」スミスが叫ぶ。

不規則に旋回し地海底ミサイルの追尾をかわすベースロケッター。地海底ミサイルはそのまま海上に・・・。

 地海底ミサイルをかわし安心し速度を落としたその瞬間、ベースロケッターの眼前に空中静止するバトルクルーザー。

 「!!」

 絶望したベースロケッターのパイロットの目の前でバトルクルーザーの機首に装備された光子波光線砲が光る。

 バトルクルーザーは空中静止状態から機関を停止。機体を後方に滑らせ機首を上にした状態で落下していく。

「敵は!!」

 「スミス司令!!下です。」

「遅い。出直してこい。」バトルクルーザーは落下しつつ拳銃状の形状をした主翼の角度を調整。主翼に内臓されたミサイルをもう一つの標的・・・・移動基地FT1に放つ。

ドガッ!!

 ミサイルは移動基地FT1の水平尾翼を吹き飛ばす。バランスを失った機体は見る間に失速し急降下していく。

 「データ通りの性能だ。この機体、でかい図体の割に俊敏に動いてくれる。」ブルターは満面に笑みを浮かべる。

11/22追加分
硫黄島米軍基地司令室、プロフェッサーKとアーサー達マグネパワーズ。そしてディック、キリー、ケン、キム、の4人のミクロマンが集う。米海軍司令官は念を押すように繰り返しこう応えた。

 「米海軍は君たちミクロマンの提案通りこの海域から一時撤退する。だが今回の行動に関しては公表を差し控えていただきたい。」

 「宜しくお願いします。こちらとしても大っぴらには出来ない事情がありますので。」

 アーサーとオーディーンは顔を見合わせた。

 「プロフェッサーK、そろそろ時間です。」

 「そうだな」プロフェッサーKは時計を確認するとテーブルにトランクを置きロックを外す。トランクが開くと中にはクッションにくるまれたロボットマンとバイオトロンが合計5体。トランクが開ききると同時に各機のパワードームが開く。

 「あきら君、君も米軍と共に撤退してくれ。」いち早くロボットマンに乗り込んだディックが言う。

 「・・・・・。」プロフェッサーK=片貝あきらはじっと押し黙ったままロボットマンの中のディックを見つめる。

 「アーサー達のモニタリングはここでも出来るはずだ。たとえ作戦が成功してもただの人間である君はロボットマンに乗り込んでいたとしてもどんな影響を受けるか判らない。」

「そう言われて黙って引き下がると思うかい?」

 「判ったよ!あきら君。だが君は後方支援に徹してくれよ。」

 「ああ、昔見たいに君たちの足手まといになるつもりはないよ。」

 「ミクロブレスト光線!!」プロフェッサーK=片貝あきらが叫ぶと1体のロボットマンから光線が発射される。見る見るうちにその身体は縮小されロボットマンのパワードーム内に収まる。

 アーサーはディックのロボットマンの腕に、オーディーンはキリーのバイオトロンの腕に掴まる。ウォルトとイザムも同じようにロボットマンの腕に掴まる。

 「アーサー、無理をさせてすまない。」

 「プロフェッサー、我々は今自分たちの出来る事をしたいそれだけです。」

 「耕平達に笑顔で再会してぇしな」ウォルトが口を挟む。

「マグネパワーズ。協力を感謝する。」

 「出撃。」

5機のロボットマンは司令室の窓を抜け、硫黄島の上空へと舞い上がった。

 光を放ちながら硫黄島上空を渦巻く雲と硫黄島基地の中間地点・・・。それがアーサー達の目的地点だ。

 上昇する5機のロボットマンとすれ違いに急降下していく移動基地FT1とバトルクルーザー。移動基地FT1は機体後部から煙を吹いている。

 「ロボットマン!?」スミスの視界に5機のロボットマンの姿が映る。

「ちっ新手か!!」アーデン・ブルターはバトルクルーザーを急旋回させ離脱する。

アーデン・ブルターの前方に新たな機体が現れる。味方のアクロジェット隊に襲いかかる3機のコズミックファイターだ。

 「いいフォーメーションだ。」アーデン・ブルターは新たな標的に向かって襲いかかった。

1/10追加分
 ・・・さあて、次は中央のタワーでも派手にぶっ飛ばすか?・・・F砲の再充填完了を計器板で確認しなおしたダーレスは、手を焼いている部隊がいないか、ベースロケッターまで通信を入れる。

 「コーラスボーイズ1からコンサートマスター、コーラスの欲しい会場は無いか?」

 ジャミング反応は無く、暗号コードもすでに変更済みだが、通信機から聞こえてくるのは、流砂のような雑音のみだった。

 「トビキチ、ベースロケッターはどうした?」

 ダーレスに問われ直ぐに、各種探索儀で単信を開始するトビキチは、驚いた声で即答した。

 「……!!!たった今、ベースロケッターの反応が消失しました!!!」

 「何ぃ!?落とされ…!!!」

 トビキチに問いなおすよりも早く、耳に聞き覚えのある推進音が飛び込んで来る。そして、共に飛来した機銃の一連射を回避する、ダーレスの身体と一体化したかのように、コズミックファイターは急旋回し、上空からの襲撃者を視認した。

 「ちぃ!!アーデンジェットに…バトルクルーザー級かぁ!?」

 その高速性はもとより、単独で大気圏離脱・再突入を可能にする能力、瞬時にロボット兵器へと兵器属性を変え、出現当初からミクロマンに多大な被害を与え続けているアーデン勢力の主力兵器『アーデンジェット』が発する癖のあるアルデバラン製機関独特の推進音だった。

 「勘のいいヤツ。」ブルターには3機のコズミックファイターの細かな挙動で相手がこちらに気づいたことがわかった。ブルターは無意識にアーデンジェットを先行させる。

 「機種…アーデンジェット3期型2機! バトルクルーザー級高速戦艦1機です!」

 「そりゃわかってるって、トビキチ、分析よりも攻撃あるのみだっぜ!」

 命令するまでも無く、ヒエンとトビキチの2機のコズミックファイターは散開し、アーデンジェットに攻撃をしかける。

 「残りの1機は私が片づけるか。」後方のダーレスのコズミックファイターに向かって急降下をかけるブルターのバトルクルーザー。海面すれすれで反転し即座に相手の背後を取る。

 バトルクルーザーに背後を取られたダーレスのコズミックファイターは即座に急減速をかけ空中で停止。

 ブルターはダーレスのコズミックファイターを追い越した事に気付くと、拳銃型の主翼の角度を調整し、インメルマンターンでコズミックファイターの真正面を取る。

 Gでバトルクルーザーの機体が軽く軋む。機体をロールさせつつ正面から機銃攻撃を仕掛ける。

 「ほう・・・新型機は伊達じゃないようだな!」

 ダーレスのコズミックファイターも、磁力機銃を撃ち返すが、どちらの銃撃も決定打を奪えない。凄腕との死闘の緊張感がブルターの全身を奮わせていた。

 以前ギルダーから聞いた事がある、ミクロマンという種族の傭兵部隊が数ある中で、最も恐れられる、同族殺しすら平気で行う傭兵部隊…『義理』や『人情』などの原始的な感情で、たった星間銅貨6枚の報酬で大虐殺さえ行う傭兵部隊…ギルダーから聞いた傭兵部隊、こいつらかも知れない・・・・。

硫黄島上空。眼前に様々な光を放つ渦巻き状の雲が5機のロボッマンを覆い込むがごとく鎮座している。

 「よし、みんな、始めるぞ。」アーサーがマグネパワーズ全員に合図する。

「おうっ!!」アーサー、イザム、ウォルト、オーディーンの4人のマグネパワーズはロボットマンの肩に乗り両腕を構える。

 「超磁力アクセラレーターーーーーーッ!!」マグネパワーズ4人の雄叫びが轟き4人の身体は見る見るうちにスーパーミクロマンに変化する。ディック達のロボットマンは空中で静止しアーサー達の足場となる。それぞれロボットマンの肩の上で仁王立ちするマグネパワーズ達。

「アーサー、ウォルト、イザム、オーディーン、4人全員のエネルギーをあの雲の中央部の一点に集中させるんだ。あの雲を消滅させる必要はない。雲から発生するエネルギーの一部を打ち消せればそれで十分だ。」

 「イザム、ウォルト、オーディーン・・・・」

 「・・・・」無言で頷いて応える3人のマグネパワーズ。

4/10追加分

 硫黄島基地滑走路。大部分が残骸となった対空砲の狭間をコズミックファイターがすり抜ける。

コズミックファイターは目の前に見えた離陸途中のアクロジェットを攻撃する。無防備な離陸途中を狙われ為す術もなく不安定な離陸姿勢のまま前輪を打ち砕かれ、弾薬と燃料の補給中だった迎撃機の隊列に突っ込み爆発炎上する。

 僚機の2機のコズミックファイターがすかさず、残りの対空砲を沈黙させる。

 コズミックファイターは戦闘機動を止め、機首を下げた状態で、扉の開け放たれたままの格納庫前にほぼ垂直で降下する。

 格納庫内は、後続のアクロジェットが操縦者の搭乗を終え、発進しようとしていた所だった。

 「!!」アクロジェットの操縦者が最後に見たのは目の前に打ち出される青白い光弾の光だった。

 青白い光弾は発進寸前のアクロジェットを貫通し、格納庫の奥まで風穴を空けると、燃料と弾薬が誘爆した炎が吹き出す。ダーレスのコズミックファイターは大爆発を起こす前に、垂直急上昇してその場を後にする。

 ・・・さあて、次は中央のタワーでも派手にぶっ飛ばすか・・・・。

 F砲の再充填完了を計器板で確認しなおしたダーレスは、一応、手を焼いている部隊が
いないか、ベースロケッターまで通信を入れる。

 「コーラスボーイズ1からコンサートマスター、コーラスの欲しい会場は無いか?」

 ジャミング反応も無く、暗号コードは定時変更済みだが、通信機から聞こえてくるのは、流砂のような雑音のみだった。

 「トビキチ、ベースロケッターはどうした?」

 ダーレスに問われ直ぐに、各種探索儀で単信を開始するトビキチは、驚いた声で即答した。

 「……!!!たった今、ベースロケッターの反応が消失しました!!!」

 「何ぃ!?落とされ…!!!」

 トビキチに問いなおすよりも早く、耳に聞き覚えのある推進音が飛び込んで来る。

 そして、共に飛来した機銃の一連射を回避する、ダーレスの身体と一体化したかのように、コズミックファイターは急旋回し、上空からの襲撃者を視認した。

 「ちぃ!!アーデンジェットに・・・・バトルクルーザー級かぁ!?」

 その高速性はもとより、単独で大気圏離脱・再突入を可能にする能力、瞬時にロボット兵器へと兵器属性を変え、出現当初からミクロマンに多大な被害を与え続けているアーデン勢力の主力兵器アーデンジェットの癖のあるアルデバラン製機関の推進音だった。

 「機種…アーデンジェット3期型2機! バトルクルーザー級高速戦艦1機です!」

 「そりゃわかってるって、トビキチ、分析よりも攻撃あるのみだっぜ!」

 命令するまでも無く、トビキチとヒエンは散開し、アーデンジェットに攻撃をしかけている。

 人格形成担当はそれぞれ別だが、空戦技術はシンより伝授されており、操縦技術は確かだ。

 ヒエンは、狙いを絞ったアーデンジェットに、只の一発も撃たず、影のようにぴったりとその背後を取り続け、何事か叫びながら後を追いまわしている。

 「そこの角野郎!無理にとは言うが、是非俺の歌を聞くだっぜぇぇ!!」

 「…何を考えているんだ??…歌?…音響兵器か!?」

 訳のわからない言動を繰り返す青と黒の機体が、突如アーデンジェットの電子頭脳に無理矢理侵入して来た、と思った途端、聴覚器官が壊れそうな音量で地球の音楽が流れ出して来た、これでは操縦に集中できる筈も無い、まさに拷問そのものだ。

 「♪らぁぁーーん!らーいとぅふぁーぁい! ふぁいとぅらぁぁ〜い! どぅおあだぁいぃ〜!!♪」

 「ぐぁぁぁ!止めろ止めろ止めろぉぉぉぉ!!!」

 アーデンの絶叫が聞こえてはいるが、それを無視してヒエンは歌いつづける。

 「♪らぁぁーーん!らーいとぅふぁーぁい! ふぁいとぅらぁぁ〜い!えーいしぇーす はーーぁぁぁぁぁぁ〜〜!!♪」

 遂に、アーデンは両爪で操縦席内の音の出る機材全てを、叩き壊した所になってもう変な歌は聞こえなくなったが、別の問題が発生していた。操縦席から見えるものは、切り立った断崖絶壁。不幸な事に、変な敵機から逃れようとしていたため、速度は最大・・・。 重力制動装置も、ロボット兵器形態への変形スイッチも、そして、脱出装置をも自らの手で叩き壊してしまった。

 音速で目前に迫る岩石質の壁を前にして、彼は最後に何を思っただろう…

 「あーあ、2番聞かないうちに死んじゃったよ…もう、角野郎には歌ってやんないだっぜ!」

 悪びれる様子も無く、ヒエンがぼやく。

ヒエン機の上方ではもう1機のアーデンジェットとトビキチのコズミックファイターが円を描きながら死闘を繰り広げていた。

 「何のっ!!」

 わざと背後を取らせてから、アーデンジェットの照準におさまる事なく、上昇旋回し、真っ向から向かい合うアーデンジェットとトビキチ。

 「今だ!ツインボブル射出!!」

 アーデンジェットとすれ違いざまトビキチのコズミックファイターは機体上部に搭載していた箱状の物体を落としていった。

 「今頃増層を捨てたか!遅い!!」

 アーデンジェットは、ロボット兵器形体に変形、トビキチを叩き潰そうとしたが、風防に赤と青の卵型の物体が目の前に浮かんでいた。

 「?・・・何の小細工だ!」

 姿勢を制御したり、移動する度にアーデンロボの動きを読んだかのように、卵型の物体は風防の前に居続ける。鬱陶しさにまかせ、右腕で卵型の物体を握った瞬間、中から無数の黄色い球体がアーデンロボの全身に貼りつき、一斉に爆発を起こした。

 「多弾頭吸着爆弾!」

 ひび割れた風防越しに、ボロボロになって落ちて行くアーデンロボの右足が見えた。

 「計器も殺されたか!姑息な真似を!」

 視線を正面に向け、件の未確認機を今度こそ討ち取ろうとしたアーデンが見た物は、またも、浮遊する卵型の赤と青の物体だった。

 「腕を失っても!」

 両腕で風防を守り、被害を最低限に押さえようとする間も無く、再度『卵』が割れ、黄色い球体がアーデンロボの全身を覆ったが、今度は操縦席の内部にも、子爆弾が二つ入り込んでいた。

 何とか取りだし、機体の外へ放り出そうとした矢先、2度続けて操縦席内で爆発が起こった。

 全身から煙を噴出して落下、岩盤に叩き付けられて爆発するアーデンロボ。

 残りはダーレスのコズミックファイターと交戦中のバトルクルーザーだけになったのだが、それが1番厄介な相手だった。本来敵方の兵器であるバトルクルーザーの機体各部を独立した兵器としても運用出来る独特の機体構造と、その性能を完全に理解している。しかも、その能力を把握し、実戦における有効な運用術をも修得している。

 バトルクルーザーに背後を取られたダーレスのコズミックファイターは急減速、バトルクルーザーもコズミックファイターを追い越した事に気付き、拳銃型の主翼の角度を調整、垂直降下する。降下する機体を引き起こし機首をコズミックファイターの真正面に向け機銃を発射。 バトルクルーザーの機体が軽く軋む。

 ダーレスのコズミックファイターも、磁力機銃を撃ち返すが、どちらの銃撃も決定打を与えず、何時果てるともない決闘は続く。

 どちらが標的になるか解らない緊張感がダーレスにはたまらない瞬間だった。

 「ほう、新型機は伊達じゃないようだな!」

 ・・・・ギルダーから聞いた事がある、ミクロマンという種族の傭兵部隊が数ある中で、最も恐れられる、同族殺しすら平気で行う傭兵部隊。義理や人情などの原始的な感情で、たった星間銅貨6枚の報酬で大虐殺さえ行う傭兵部隊、こいつらかも知れない・・・・。 

4/11追加分

 ミクロサテライトから見てちょうど地球の裏側にあたる位置の衛星軌道上、コマンドスター宇宙艦隊所属の宇宙基地スターコマンドベースがある。この基地はアメリカ航空宇宙局NASAが廃棄した人工衛星を改造した大型宇宙基地で、ミクロサテライトと同様に地球の衛星軌道上に浮かんでいる。

 スターコマンドベースに招かれざる客が来ていた。上層部から派遣された監察官ダムゼンである。

 「エッジ司令。君は本日付けでコマンドスター宇宙艦隊司令官から解任される。」

 「解任?こんな時期にですか?」

 「そうだ。なお、君の持っているナンバーM150は本日をもって剥奪する。君の後任にはアントニオが就任する予定だ。」

 「アントニオが?」・・・アントニオ・・・伝説のコマンドリーダーか・・・。長らく行方不明で一時はその生存すら明らかでなかったが・・・・。

 「解任の理由は何なんです?」ハインリヒが監察官に噛みつく。エッジはとっさに左手でハインリヒを制止して彼がダムゼンに殴りかかる事だけは防いだ。

 「エッジ君、君は宇宙艦隊司令官としての責務である地球防衛の任をおろそかにした。その結果地球圏は大変な損害を被った。君の職務怠慢が理由だ。」

「お言葉ですが。」ハインリヒは真っ赤になって監察官ダムゼンに突っかかる。

 「やめないかハインリヒ。上層部が決めたことだ。」

 「しかし・・・・。」

 「ちょうど暇が欲しいと思ってたのさ。」エッジは何かを考えついたようだった。

 「ダムゼン監察官。上層部の指示に従おう。ただし明日以降の私の行動は自由にさせてもらおう。」

 「何、君の処遇は上層部が決めることになっている。」

 「ダムゼン監察官。あなたは知らないかもしれないが私が長らく指揮してきたコマンドスター宇宙艦隊は気が荒いが上司想いの連中でね。ついでに上からとやかく言われるのが一番カチンとくる変わり者の自由人が多い。」

「・・・・。」

 「私が処罰されて黙ってる連中だと思うか?」

 「くっ・・・・。」

 「無茶な事は言う気はない。ただ自由でいたいだけだ。」

 「わかった・・・・。直ちに私物をまとめ好きなところに退去したまえ。」ダムゼンは苦虫をかみつぶしたような顔でエッジに言った。

「では失礼します。」

「・・・・・。」

 「私も退去します。」ハインリヒはダムゼンを一瞥するとエッジを追って退出した。

ツカツカと不機嫌そうな足音を立てつつ自室に向かって廊下を歩くエッジ。後から出てきたハインリヒがエッジを追う。

 「エッジ司令。これからどうします?」

 「どうしますはいいが君まで飛び出してどうするんだ。別にこんな時までつき合う必要はないぞ。」

 「いや、何となく収まらなかったんでね。」ハインリヒはばつが悪そうな表情で言う。

「取りあえずはミクロサテライトに行く。そしてその後はシリウスの元にやっかいになる事になると思う。」

「タイタンズフリートですか?」

「あっちにはうるさい連中はいないからな。」

5/31追加分

硫黄島基地最上階手前の階段・・・・・。第1の任務・・・すべての砲台を破壊・・・を完了し、第2の任務を遂行すべくステルスとダニーは硫黄島基地の最上階に続く階段を駆け上がっていた。

 「思ったほどの抵抗はないな・・・・。」髪をかき上げるダニー。

 「先に突入したヤツがいるみたいだな。」傍らに転がるアクロ兵を発見するステルス。立ち止まって傷口を見る。ダニーはすぐさま背後をカバーする。

 「ステッキでのダメージのあとだ・・・。」

「まさに一撃だな・・・・」

 「誰が?」

 「こんな事を出来るヤツは一人しかいない。」

 「ダガーか・・・・・」

 「行くぞ」階段を駆け上るステルス。

 「次の犠牲者だ・・・」次は折り重なって倒れる死体の山・・・・いやかつてミクロナイトだったと思われるガラクタの山だった。

 「TLADのナイトだな・・・」ダニーは倒れている一体を足で裏返す。

 「さっき飛んでた黒い輸送機から降下したヤツだな。」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。

 突然の轟音と地響き。二人は壁面で身体を支えて転倒をさける。

 ビビーッ。ダニーのマジシャンリングから警報音が発せられる。

 「すぐ近くで強力な磁場が発生している。」

ドガッ!!

前方のドアを破り何者かが飛び出してくる・・・いや、吹き飛ばされてきたというべき状態だった。

キュュュュュュゥン!!

 「グアァァッ」強烈な磁場がステルスとダニーの体内の制御装置を襲う。

 ステルスは眩む目で吹き飛ばされてきた何者かを凝視する・・・。

 それは一人のスパイマジシャンだった。全身に赤熱する亀裂が走っている。

 「ダガー!!」ダニーが叫ぶ。

ダガーの目は扉の内側、室内に向けられている。その目にはダニー達が知っているかつてのダガーの凶暴さなど微塵もなかった。あるのは愛情と切なさ・・・・・。

「母さん・・・・。」ダガーはぽつりとつぶやいた・・・。

7/14追加分

 ステルスとダニーの前でダガーは一瞬にして赤い光の固まりになり、粉々に砕け散った。それとほぼ同時に床面からは激しい振動が伝わってくる。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 「この振動は地下からか?」

 「おそらく。」

 「ダニー、もう立ち上がれるか?」

「ああ、何とかな。」

硫黄島上空。アーサー、ウォルト、イザム、オーディーンが見上げる雲の渦は見る見る間に小さくなっていく。

「中に何かいる!!」オーディーンが叫ぶ。

「!!」身構える4人のスーパーミクロマン。

「そこにいるのはアーサーか!?」雲の渦の奥底からアーサー達の頭の中に謎の声・・・かすかに聞き覚えのある声・・・が直接響く。

「誰だ!!」雲に向かってアーサーは叫んだ。

「フフフフフフッ」次第に縮小していく雲の渦の中に消し去られるようにその声は小さくなっていった。

8/21追加分

 硫黄島海上・・・アーデン・ブルターから逃れたものの失速し錐もみ状態で墜ちていくスミスの移動基地FT1。

 「建造・・・もうすぐお前に会えそうだ・・・。」強烈なGで薄れゆく意識の中でスミスは建造の事を思い出していた。

城ノ内建造・・・・一代で総合商社を育て上げた国内でも極めて有能な財界人。スミスにとっては数少ない地球人の友。

出会いはもうかなり昔にさかのぼる。それは1977年の事だった。

 当時、建造は某大学のエジプト学研究チームのメインスポンサーの代表としてエジプト、カイロに視察に訪れていた。研究チームの研究対象はスフィンクスであった。

 スフィンクス・・・・カイロ郊外のカウラー王のピラミッドの参道にある人面獣身の守護神像。その顔はカウラー王本人をモデルにし、その身体はライオンである。

 石灰岩製で全長57m、頭部の高さは20m、顔の大きさは5mで、東を向いて鎮座している。建造された当時は彩色されていたらしい痕跡が残っている。侵食により年々損傷が広がっており近い将来崩壊するという。
 
建造が調査風景を見学していたとき事故が起こった。スフィンクスの足下の岩が突然まばゆい光を発して爆発したのだった。近くにいた建造と作業に当たっていた研究者達が崩れた岩の下敷きになってしまっていた。

爆発の瞬間、建造は爆発のまばゆい光の中に鮮やかな緑色に輝く人影を見た。人間大であったその影は次第に輝きを弱め、それと同時に小さく縮んでいった。

 建造には何が起こったのか理解する事が出来なかった。

 ゴゴゴゴゴ。建造に考える時間が与えられる事なく次の崩落が起こった。

「!」

緑の人影は崩れ落ちるつつある岩石を見上げると両手をかざした。その両手からは何らかの力場が発生し建造達の上に落下した岩石は彼方にはじき飛ばされた。

 「!!」建造は言葉を発する事が出来なかった。

 「すまない。君たちを巻き添えにするつもりはなかった。」緑色の10センチほどの人影は建造に歩み寄ってきた。そういうと緑色の小人は再び手をかざす。

 崩れて研究者達の上にのしかかっていた岩が宙に浮かびだす。

 「何をするつもりなんだ。」建造が問うと緑色の小人はにっこりと微笑んだ。緑色の小人は倒れている研究者達に次々と触れ何かを注入していった。

 「応急治療を施した。もう少しすれば全員蘇生するはずだ。」

 「何者なんだ・・・」

 「そうだな・・・スミスとでも呼んでくれたらいい。」

「スミス・・・。」

  「君は?」

 「建造・・・城ノ内建造だ。」

12/19追加分

事故後すぐに建造は日本に帰国した。帰国の途につく建造のポケットの隅にはスミスが忍んでいた。建造とともに日本に向かったのには二つの理由があった。一つは事故に巻き込まれ重傷を負った研究者達の様子を完全に回復するまで見守りたかった事と、もう一つは遙か東方に仲間の出す微弱なテレパシー波を感じたのだった。

 エジプト出国前に何カ所の遺跡を調べたところ、先に何人かのミクロマンが蘇生した痕跡はあった。

 だが残念ながらそこには蘇生したはずのミクロマンはすでにいなかった。蘇生したてのスミスの能力は制御が不安定で仲間の出すテレパシー波を安定して感じる事はできなかった。かろうじて東方に複数のテレパシー波を感じるだけだった。

 本来透き通ったグリーンの素材のはずのスミスのボディも蘇生したての今はまだ硬化しきってはおらず、透明感のまったくない半硬化状態だった。あまり無理のできる状態ではない。
 
建造は突然現れた10センチほどの緑色の小人スミスに最初は驚いたがその後は不思議と恐怖感を感じなかった。むしろ不思議な親密感を覚えてしまっていた。・・・後で知ったことだがそれは彼らの持つ特殊能力キューピッド心理現象のためであったのかもしれない。

 スミスが自分ともに日本に行くと言いだした時は正直なところ戸惑ったが何故か同行を断ることはしなかった。

 建造は緑色小人のスミスに次第に親密感を持つようになっていった。

話をするうちに・・彼らは人間と違いテレパシーで会話するようだが・・・彼らの素性も少しずつわかってきた。

 スミス達はミクロマンという種族でかつて滅びた宇宙の果てのミクロアースという惑星の住人であった。ミクロアースの住人達は地球人に比べて遙かに発達した文明を持つ種族であったが彼らの惑星は謎の大爆発により滅亡した・・・・。スミスはその生き残りの一人だった。

 スミスの話は普段の自分なら信じられない眉唾もののマンガチックな話だったがスミスの口から聞いた時、何故かすべて事実に感じられた。不思議な事だが種族を越えて彼とは理解しあえるように感じた。

4/3追加分

 硫黄島海岸部、アクロイヤー側の地上部隊をあらかた駆逐したミクロマン上陸部隊はここに司令基地を設営し仮設前線基地とする。室内の二つあるシートにミクロマンコマンドのテッカンと戦闘工兵ブラインが座る。

「ブラックタイガーの揚陸はまだか?」

 「あと15分程度でクラウスの部隊揚陸が完了するとの事です。」ブラインがモニターを凝視しつつ答える。モニターには硫黄島の敵基地が映っている。

 「なにをモタモタとしてるんだ。」

 「なにぶん上空の気象異変で計器類が狂っている状態ですので・・・・。」

「あっ敵基地の天蓋が開いてます!」モニター内の敵基地を見てブラインが叫ぶ。

「何!!」テッカンもモニター内の敵基地の天蓋に目を凝らせる。

「ヤツら何をやるつもりなんだ!?」

4/20追加分

硫黄島基地最上階・・・・。

ゆっくりと基地の天蓋部分が左右にスライドして開いていく。500ミリリットルのペットボトル程の大きさの弾頭が厚い雲に包まれた上空に向けられている。サタンダーはデスクの天板を回転させコンソールパネルを開ける。

 「第二作戦司令室、敵に占拠されました。友軍劣性、敵の攻勢は止まりません。」報告される内容は負け戦の報告ばかりだ。もはや後がない・・・・。

「発射時刻21:30・・・。」サタンダーはコンソールを操作して発射時刻を設定する。

「標的設定・・・。破壊目標東京臨海基地、東海支部、名古屋支部、京都支部、大阪支部・・・・まずは一番近い名古屋に4発・・・。」

「発射!!」サタンダーは発射ボタンのカバーをはずし中の赤いボタンを押し込む。

ゴゴゴゴゴゴゴッ。ゆっくりとミサイルは上昇していく。ミサイルは速度を上げ上空へ・・・。

 轟音とともに猛煙が基地最上階の外壁付近に立ちこめる。最上階から発射された4発のミサイルはミサイルは鮮やかな4条の光の軌跡を描く。島の周辺で戦闘するほぼ全員がその光景を目にした。

「大型ミサイルが発射されました!!」ブラインが叫ぶ。

 「軌道から標的を解析します。」

「全チャンネルで放送。全部隊に次ぐ。硫黄島基地から大型ミサイルが発射された。手空きの部隊は全力で撃墜に向かってくれ。」

「解析できました。ミサイルの標的は名古屋支部付近です。」

「名古屋支部!!都会のど真ん中の基地だぞ。ミサイルが到達すれば被害はミクロマンだけでは済まない。」

5/8追加分

 硫黄島基地、基地外壁の非常階段。折り重なるように倒れているヘレンとデビット。

「ううっ」デビットが目を覚ます。仰向けのまま倒れているヘレンが目を覚ます気配はまったくない。

「すまんなヘレン、痛かったろう。」そっとヘレンの胸の焦げ跡をさする。

 相変わらずデビットの身体には失血による寒気が続いている。かろうじてブレストの機能で生命を維持している状態だ。

「しばらく眠っていてくれ・・・。」ヘレンの額に手をやるとゆっくりと立ち上がる。

「もう少しこの身体も保ってくれそうだ。」一段一段階段を上っていく。最上階に続く扉が見えてきた。

ゆっくりと扉を開く・・・・。誰もいない廊下がまっすぐと続いている。

 廊下は建物中央の吹き抜けに突き当たる。すぐ下の階から銃撃の音や怒号、爆発音が響く。パルサーショットの独特の銃声だ。

「仲間が・・・いや、もう仲間ではないか・・・、ヘレン、うまく連中に拾ってもらえよ。ディオあたりならその洗脳も解いてくれる・・・・。」