2008 5月号

友人の1歳の子がタバコを食べて胃洗浄を受けました。わが家にも喫煙者がおり注意はしておりますが、もしタバコを誤飲したら家庭でできることを教えてください。(8カ月のこどもの母親)

わが国はタバコ誤飲の発生頻度が世界でもずばぬけて多いといわれておりますが、この原因は喫煙者の数よりも畳での生活様式が関係しています。夜間、休日当番でもタバコ誤飲の問い合わせはよく経験します。実際に誤飲したのかどうか、どのくらい(タバコ何センチくらい)誤飲したのかなど状況がはっきりしないことも多く、電話での問い合わせには苦慮します。乳幼児の周囲にタバコを置かないのは当然ですが、もし誤飲したときどのように対処すべきか心得ておく必要はあると思います。

タバコ(ニコチン)の急性致死量は、市販の紙巻タバコでは、成人で2ないし3本、幼児で半分から1本と言われております。
ニコチンは消化管から吸収されると嘔吐をおこす作用があるために胃内に残っていたタバコが吐き出されたり、タバコの葉自体かなり苦味があって多量に飲み込むことは困難なために、タバコの誤飲によって重篤な状態になることはまれです。しかしタバコの吸い殻を浸した液(たとえば清涼飲料水の飲み残しの缶にタバコの吸い殻をいれる)を飲み込んだときは、ニコチンが液に溶け出ているため速やかに吸収されて重篤な中毒症状を示す危険性が高くなります。

誤飲のときの対応ですが、まず何時に、どのような状態のタバコを(葉か吸い殻かタバコを浸した液か)どのくらいの量食べたかあるいは飲んだか確認する必要がありますが、誤飲した量ははっきりしないことが多いのが現実です。

最初にとるべき行動は、すぐに吐かせることです。片手でうしろから抱え込むようにして上腹部をかるく圧迫し、もう一方の手を口の奥にいれて刺激し吐かせます。タバコの葉や吸い殻を誤飲したときは、消化管内でのニコチンの吸収を防ぐために水や牛乳は飲ませないでください。
浸した液を飲んだときは、水、お茶、牛乳などを飲ませてから吐かせます。
誤飲した量ははっきりしないことが多いですが、タバコの葉2cm以下と確認できれば手で吐かせる以外特別処置せず、4時間観察して問題なければよしとします。
誤飲した量が不明でも症状がないときは2cm以下と同じように処置し経過をみます。何らかの症状があるときや、タバコの葉2cm以上か、浸した液を飲んだときは中毒症
状をおこす可能性が高く、すぐ胃洗浄をすることが原則です。

ニコチンの中毒症状(吐き気や嘔吐)は遅くとも1時間以内にみられ、その他の症状もほとんどは4時間以内に出現します。中毒症状たいする特別な治療法はなく対症療法が主体となります。乳幼児の手の届くところにはタバコを置かないように日頃からの配慮が大切です。【一覧に戻る】

2008 6月号

高校3年生の息子に麻疹風疹のワクチンを受けるようにと市から通知がきました。
うちの子は1歳頃麻疹のワクチンを受けています。受けなければダメでしょうか。
2歳上の子が大学にいっていますがこの子はいいのでしょうか。(母より)

旭川では2月頃よりポツリポツリと麻疹の発生が報告されてましたが、3月、4月と次第に数が増えています。4月末現在旭川では70人前後の麻疹が報告されてますが、卒業、就職、入学など移動の時期とかさなった10歳代から20歳代が中心で、このうち麻疹ワクチン未接種者は80%前後にものぼり、この年齢群はMMRワクチンの混乱のためワクチンを控えた人が多く麻疹ワクチンの接種率が低いと考えられます。

当初は、麻疹ワクチンは1回の接種だけで一生効果が続くだろうと考えられていました。しかしワクチンにより麻疹が減少してくると、ワクチン接種者でも後に麻疹に罹患する(これを修飾麻疹といいます)可能性があることが次第にわかってきました。これはワクチン接種率が低い時代は、ワクチン接種後に麻疹患者と接してウイルスがからだに侵入して抗体をたかめる機会(追加免疫といいます)がありましたが、ワクチン接種率が上昇して麻疹患者が減ってくると追加免疫を得る機会も減り、ワクチン接種後麻疹ウイルスの感染をうけたときにはもはや発症を阻止できないほど抗体が低下している可能性もでてくるためです。このような現象は以前から知られており、多くの国では2回接種が常識となっております。

わが国でも他の国からかなり遅れて2006年より麻疹と風疹の混合ワクチン(MRワクチン)を1歳と小学校就学前1年間に2回接種することを決定しました。しかし2007年5月連休後の全国的な麻疹の拡がりや、修学旅行生による麻疹の海外への持ち出しなどから、2回接種の恩恵に浴しない年長児から成人までの「感染予備軍」の対策が求められ、18歳までの子には全員2回ワクチンを接種することになって、今年から5年間中学1年生と高校3年生相当の人にMRワクチンを接種することになりました。

最近は入学時に麻疹抗体チェックを義務づける大学や専門学校(特に医療系)もあり接種を勧めます。上のお子さんも自己負担となりますが接種を勧めます。【一覧に戻る】


2008 7月号

先日妊娠したことがわかりました。夫婦とも喫煙者でわたしは禁煙するつもりです。胎
児や赤ちゃんへのタバコの影響について教えてください(23歳の女性)。

喫煙と肺がんや生活習慣病との関係はよく知られていますが、タバコが胎児や小児におよぼす影響についても数多く報告されております。家族のタバコの煙は胎児やこどもにとっては受動喫煙ということになり、とくに妊婦の喫煙は胎児に直接的な影響があります。
妊婦が喫煙するとニコチンの作用によって臍帯や胎児の血管が収縮して血液の流れが少なくなり、胎児の重要な臓器への酸素や栄養の供給が低下します。また一酸化炭素が胎児の血液に流入するためさらに酸素不足におちいります。そのために自然流産や早産のリスクが高くなり、出生時の体重は平均200g前後減少するとの報告が数多く出ています。
生まれてからの問題として、呼吸中枢の機能が障害されて乳幼児突然死症候群(SIDS)による死亡率が高くなるという報告があります。また胎児期に脳が喫煙によりいろいろな化学物質にさらされることにより、生まれてから身長や体重の増えが悪かったり、知的発達が劣ったり問題行動を起こしやすくなるなどの恐ろしい報告もあります。

妊婦自身が喫煙しなくても、受動喫煙にさらされるだけで胎児にいろいろな健康被害が生じる可能性があることもわかってきました。家族に喫煙者がいる場合の胎児の羊水や生まれた直後の尿のニコチン濃度が明らかに高いことなどです。リスクの低いお産では問題にならなくてもリスクの高いお産ではさらにリスクを高める原因となり、本来予防できたはずのいろいろな障害を発生させる要因となりかねません。

一昔前にくらべてタバコにたいする考え(受動喫煙、健康被害など)も大きく変わり、無事赤ちゃんが生まれると喫煙者もベランダで吸ったり、台所の換気扇の下でしか吸わないように心がけることが多いと思います。しかし非喫煙者の家庭に育った赤ちゃんのニコチン暴露スコア(尿のなかのニコチンを測定する)を1とすると、台所の換気扇の下での喫煙で3.2、ベランダ喫煙で2.4、家屋外で吸っても2.0という報告があり、一般に考えられているよりも喫煙者がいる家庭では赤ちゃんへのニコチン暴露は多いといえます。妊娠を期に禁煙に踏み切ることは赤ちゃんへの大きなプレゼントになると思います。同時に御主人にも禁煙を勧めたらどうでしょうか。【一覧に戻る】

2008 8月号
生後2カ月以降、ロタによる下痢症から始まってかぜ(鼻水、咳、発熱)、中耳炎の合併と鼓膜切開、ノロによる下痢症そしてかぜの繰り返しが続いています。3歳の兄が保育園にいっていますが、本人はなるべく外出は控えています。発育もよく4カ月健診でも問題ありません。ほかの子にくらべてあまりに風邪をひくため、免疫に問題がないか心配です(4カ月の女児の母親より)。

よく母親の抗体がある半年くらいはかぜをひかないといいますが、生まれてそうそうに何回もかぜをひくと生まれつき免疫に問題があるのではと心配になりますね。 
麻疹、風疹、おたふくは母親からもらった抗体がある半年くらいはかかりませんが、水痘は生後1カ月以内でもかかる可能性がありますし、百日咳の抗体はもらえません。
また母親のかかる風邪は当然赤ちゃんもひく可能性があるので、家族で風邪のひとがいるときは要注意です。

乳児(3カ月くらい)で保育園に行きはじめると最初の半年くらいは頻回にかぜをひく子をよく経験します。母親の免疫があるとはいえ、のど(呼吸器)やお腹(消化器)など局所的には弱く、いろいろなウイルスに出会うとかぜ症状をよく起こします。
急性期が過ぎても鼻水や咳あるいは下痢症状がすっきりと治らないでダラダラと続くことがあり、その状態にさらに新たなかぜをひくとずっとかぜをひいている(かぜ症状がずっと続いている)ことになります。
お子さんの2カ月以降の病気はほとんどがウイルス性と思われ(ロタ、ノロ、鼻水,咳など)、細菌感染に罹りやすいことはないようです。中耳炎もほとんどがウイルス性です。  今まで入院を必要とするほど重症となったようでもなく、発育も順調のようです。

なるべく外出を控えているとのことですが、保育園の送り迎えやたまの外出など思いのほかいろいろなウイルスに出会う機会が多いのかもしれません。
生まれつきの免疫の病気を考えるときは、かぜをひきやすいというより入院を必要とする重症感染症をくりかえし、かつ治りづらく慢性化しやすい状態を考えます。当然体重の増加や発達に支障をきたす可能性が大きくなります。
お子さんの経過から生まれつき免疫に問題があるとは考えなくていいと思います。【一覧に戻る】



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