熱性けいれんについて教えてください。


冬はこどもにとってはかぜ(インフルエンザをふくむ)や急性の胃腸炎(ノロウイルスやロタウイルスなどの嘔吐下痢症)などで発熱することの多い時期です。

夜間に発熱と突然のけいれんのため救急車で病院を受診した経験をお持ちのかたもいると思います。欧米に比べて日本人の熱性けいれんの頻度は高く、また半数近くが再発すると言われております。ひきつけを起こしたわが子に直面すると家族はパニックを起こしがちですが、熱性けいれんの発作のみで死に至ったり何らかの後遺症を残すことはまずありません。

しかし吐いたりして嘔吐物が気管に入って窒息する危険性はありえます。抱っこしていたときは寝かせましよう。気道がつまらないように顔は横向きにし、舌が気道をふさがないようあごをやや上向きにします。またけいれんの最中に口の中にスプーンあるいは指をいれることは、気道をふさいだり、口の中を傷つける可能性があり絶対にしてはならないことです。発熱があり2〜3分で終了した熱性けいれん単純型)では早急に受診しなくていいと思います(夜間であれば翌日受診)。

ほとんどの場合ひきつける時間は2ないし3分ですが、5分以上続いたら救急車を呼んだほうがいいと思います。熱性けいれんにかぎらず、ひきつけが10分以上続いたらなんらかの医学的な処置をとらなければならない場合があると言われています。

ほとんどの子は成長とともにひきつけを起こさなくなりますが、ひきつけが15分以上つづいたり、24時間以内に2回以上ひきつける、ひきつけに左右さがある、体の一部だけがひきつけた、意識がもどっても体に動かない部分がある、てんかんの家族歴がある、ようなとき複雑型)はできるだけはやく受診することを勧めます。

最近は「けいれん止めの座薬」を使って熱性けいれんを予防するようになりました。窒息の予防や家族の不安をなくするためですが、再発は半分以下のため初回のひきつけでは処方をみあわせる医師もいます。けいれんは体温が急激に上がるとき起こりやすいので、37.5度を越す発熱時にけいれん止めの座薬をすぐに投与し、8時間後も38度以上続いていたらもう一度投与します。けいれんを予防するという意味で解熱剤より先に使い間隔は30分以上あけます。5歳前後までを目標にして続けることが多いと思います。


 熱性けいれんは小児科では非常に多く経験しますが、ほとんどが自宅で突然起こります。
そのまま死に至ったり重大な後遺症をおこすことはまずありません。冷静な対処が求められます。

2006 12月号


下痢のときの家庭でできることについて教えてください。


今年も小児の下痢症の季節がやってきました。
毎年10月にはいると少しずつ感染性の下痢(お腹の風邪)がでてきます。多いのは12月から3月頃までで、ちょうどインフルエンザの時期とかさなり毎年この時期は脱水の赤ちゃんの点滴に苦労します。

3歳未満の乳幼児で下痢に発熱や嘔吐がある場合は、ウイルス性の胃腸炎のことが多く、とくに発熱、嘔吐、下痢の3症状がそろっている場合は、ロタウイルス胃腸炎が考えられます
ウイルス性の胃腸炎では「嘔吐」が先行することが多く、それと前後して下痢がはじまり発熱もあると急激に脱水が進行します。嘔吐は数時間から半日くらいの経過で改善することが多いのですが、長引くと点滴が必要となる場合があります。

家庭で心がけることの基本は、「脱水をふせぐ」「早期の普通食」です。

まず水分の補給ですが、脱水とは水ではなく電解質が不足している状態なので「電解質液」の補給が合理的です。電解質液というと市販のスポーツドリンクが思い浮かびますが、これらは電解質の濃度が低く水よりはましですが、あまり多量にあたえると低ナトリウム状態(一種の脱水)となる可能性があります。またオレンジジュースなどの天然果汁も脱水を重症化することもあり、市販されている経口の電解質液では、アクアライトORS(和光堂)、OS−1(大塚)が推奨されています。吐き気や軽い嘔吐があるときも、スポイトあるいはスプーンでゆっくり電解質液を与えることは脱水の予防に有効であると考えられています。また多くは母乳やミルクを飲んでいる年齢だとおもいます。母乳やミルク(希釈しないこと、そのままで)は4時間間隔で欲しがるだけ与えてください。

離乳食や食事(幼児)は、最初はあまり食欲がないと思いますが食欲がでてきたらできるだけ早期に「いつもの食事」にもどすことが大事です。おかゆ、うどんを続けるより食欲がでてきたら、油っぽいものや、オレンジジュースをさけて早期にいつもの食事にもどすようにしてください。

厳格な飢餓時間(なにも与えない)や薄めたミルクあるいは水分にちかい食事を与え続けたため、空腹により元気をなくした子にたまに出会います。下痢しても食欲があるときはすこしづつ食事をあたえることが早く良くなる近道です。

吐き気や嘔吐がなかなか改善しないときや、いつもより動きがわるく顔色もさえないときは早めに病院を受診することを勧めます。

2006 11月号

4歳の子ですが4月から幼稚園に行く予定です。人見知りのつよい子で集団の中でうまくやっていけるか心配です。

こどもが仲間と集団で遊んだり、知ってる人にあいさつするという習慣がつくられる目安はだいたい3歳から3歳半とされていますので、4歳前後は他人との関わりについていろいろな面がはっきりしてくる年齢です。そうした傾向が見られてもそれが異常かどうかという見方より、こどもの成長、発達によって解決する方向へもっていくよう努力することが重要と思います。

保育園や幼稚園の入園でまず問題となることは「通園をいやがる」ことかと思います。
初めての集団生活は家族から離れて知らない場所にいくことであり、本人にとっては非常にショッキングなことと想像されます。通園を渋ったり、拒否することは「ふつうにありえること」と考え特別に考える必要はないと思います。
しかし入園後通園拒否が長期間続いたり、元気に通園していたのに突然いやがるようになったときは対応を考えたほうがいいかもしれません。

活発で積極的であることはいいのですが、一方で落ち着きがなく乱暴だと受け止められることもあり、ある程度の内気やおとなしさは別の見方をすれば慎重で思慮深いと考えることも可能と思います。内気でおとなしく人見知りがつよい子の場合、なかなか新しい集団や場面には気後れして参加できないのではと心配する親御さんも多いと思いますが、本人は園では集団参加が可能だったり、特定の友達となら楽しく遊べるならば「個人差の程度」と考えていいと思います。大人の世界でも「ふつうにありえること」ではないでしょうか。
しかし親御さんや園の先生のいろいろな働きかけにもかかわらずなかなか通園できない、集団でほかの子との関わりが困難であるときは対応を考える必要があると思います。

このような状況ではふつう2つのことが考えられます。つまり本人側に問題がある場合と環境にある場合です。

環境に原因があると考えられる場合は、まず園で嫌なこと(いじめっ子の存在、行事など)がある、家庭での変化(引越しや家族の病気、死)が考えられます。親御さんや園の本人への働きかけ、そしてある程度の時間が必要となります。
本人側の要因としては、もともと不安や緊張が強くて今の環境(家庭)から離れて適応できない、他の子との関わりが困難なため集団の中に入れないなどが考えられます。不安や緊張が強い子では、母親との情緒的な関係が充分つくられてなく安心感が育ってない可能性があります。無理に集団生活に参加させるのではなく、家庭内で安心できる親子関係を築き、こどもに自主性(自信)を育てることが前提になります。

また他の子との関わりが困難な場合は、ひとりでいることを好んだり特定の物へのこだわりがつよい場合は、「自閉症」のようなものを考慮する必要があると思います。
過度の不安感や緊張感は「分離不安障害」として、そして「自閉症」も医療の関わりが必要となることがあります。いずれも同年齢の集団でのふるまいが個人差かどうかを見極めるきっかけとなることがあり、経験深い園の先生の意見は大いに参考になりますので相談してみてください。

2007.4月号

1歳6カ月の子ですが、風邪のあと咳がなかなかとまりません。喘息になってしまうことはありませんか。


この季節は一年を通じてインフルエンザを含めて風邪の多い時期ですが、熱はさがって元気になっても咳がなかなかとれないお子さんによく出会います。年齢は2歳未満が多く、痰がらみの咳とともにヒューヒューやゼロゼロなどの喘鳴(ぜんめい)を伴っていることもあり、睡眠時や明け方にみられることが多く昼間は消えています。だいたいは2週間くらいの経過で治ります。この状態はふつう急性気管支炎と呼ばれていますが、経過が3週間やそれ以上続くときは喘息を疑うこともあります。

同じ風邪でも6カ月未満の子や、肺や心臓に何らかの病気を持っている2歳未満の子が罹ると重い経過をとることが多いRSウイルス感染症があります。発熱と昼夜をとわず呼吸困難と喘鳴があり外来では対応できず入院することも多いのですが、この病気のあと咳や喘鳴が続くことがあり、気管支喘息を発症しやすくなるといわれております。

急性気管支炎やRSウイルス感染症後の咳がながびく以外に、最初から気管支喘息(2歳未満の場合は乳児喘息と呼んでいます)を疑われることもあります。咳や努力性の呼吸そして喘鳴が発作性、くり返して起こるため診断はそれほど難しくないと思います。
乳幼児が風邪をひいて咳や喘鳴をおこすことは日常の外来では一般的であり、しかも喘鳴のエピソードをくり返す子は外来でよく経験します。しかし、年長児や成人と違い検査が困難なことが多く、喘息かどうかは症状(睡眠時や夜間の咳、喘鳴)と経過(3週間以上)を診て判断することになります。特に本人のアトピー素因や家族に喘息歴があることは、咳がながびいたり強い喘鳴があるときそのときが喘息であるかどうかは別として、喘息を十分意識して経過を観察する必要があります。

最近は喘息(乳児喘息)について、早期に診断して治療を開始する傾向となっています。
6カ月以降からステロイドの吸入を含む治療が可能となり、以前より症状を緩和できるようになりました。発作を抑えることが気管支の変化をふせぎ、将来の肺の病気を予防することがわかってきたからです。

診察時には現れていない夜間や早朝の症状は、家族の観察によって診断に役立つことになります。昼間は元気でも夜間の咳や喘鳴がつづくときは小児科受診を勧めます。

2007 3月号




乳児湿疹について


産まれたときはつるつるできれいだったのに、1カ月健診の前くらいから顔を中心に湿疹がでてきたと受診する赤ちゃんを経験します。多くは乳児湿疹と診断されますが、これは病名というより赤ちゃんの湿疹の総称と考えるべきでしょう。
 もっとも多く見られるのは乳児脂漏性湿疹です。だいたい生後2週間くらいしておこる湿疹で、季節に関係なく頬や口のまわり、あご、額、頭を中心に赤いプツプツやカサカサ、ときにはジュクジュクすることもあります。また髪の毛の生え際や眉毛に黄色いふけやあぶらっぽいかさぶたのようなものがつくことがあります。ふつうはこの状態を乳児脂漏性湿疹と呼びます。いずれも皮脂腺の多い部位ですが、赤ちゃんが特に問題となるのは妊娠中に母親から赤ちゃんへ移行したホルモンの影響で皮脂の分泌が盛んになるためです。とくに髪の毛の生え際やおでこは皮脂腺が多いため症状が悪化します。
 
 またこの頃は汗腺ができあがる時期でもあるためあせもが見られたり、母親からのホルモンの影響による新生児ざそう(赤ちゃんのにきび)も見られます。
 これらは症状の差はあっても多くの赤ちゃんが経験する皮膚の病気で、わきのしたやおへそのまわり、股の内側にみられることもあり全身をこまめにチェックしましょう。

 治療ですが、多くの場合は積極的な治療をしなくても3〜4週間で自然に治ります。

湿疹がなかなか消えず拡がったりして長引くときは病院を受診してください。

 乳児湿疹の治療は非ステロイド系の軟膏をふつう使用します。乳児脂漏性湿疹では弱いステロイド軟膏と非ステロイド軟軟膏を併用します。また頭や顔についている皮脂や汚れは入浴時に石けんをつかってきれいに洗い落とすことが大事です。かさぶた部分は、ベビーオイルやオリーブオイルを浸したコットンをあててふやかしてからシャンプーや石けんで洗い流します。

 多くの赤ちゃんは1〜2カ月の経過で治癒していきますが、食べこぼしやよだれ、汗などが原因で赤くカサカサになることもありますが、なかには胸から腹部へ拡大し引っ掻き傷が見られるようになることもあり、アトピー性皮膚炎が疑われるようになることもあります。経過が長引く場合も病院受診を勧めます。

2007.2月号



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