謎の回路で電子工作

 
 
YAMAMORI Takenori


簡単な回路ながら高感度のレフレックスラジオを、電子ブロック風の実験キットを使って作成してみました。
●「ELキット300in1」を使ってみる

電子回路の実験キットといえば「電子ブロック」や「マイキット」が思い浮かびますが、 ここでは「ELキット300in1」((有)カタリスト / Maxitronix) を使用します。(下の写真) 同キットは、バーアンテナ、単連バリコン、ボリューム、スピーカー、LED、スイッチ などがパネルに取り付けられており、 これらの部分は「マイキット」のようにスプリング端子にリード線をはさんで配線を行ないますが、 トランジスタや抵抗・コンデンサなどの部品は中央のブレッドボードに部品を挿して 配線します。特にブレッドボードの部分は、自分で抵抗のカラーコードを読んだり、 部品配置を工夫したりしなければならないため、「電子ブロック」などにくらべて あまり玩具的ではないと言えます。

●「ELキット300in1」で作成したレフレックスラジオ (都合によりモノクロ)
e300s.jpg
(トロイダルコアとゲルマニウムダイオードは手持ち品を利用)


●ラジオの回路例が少ない

「ELキット300in1」には、多数の回路の組み立て例が載ったマニュアル(英語および別冊の日本語訳) が付属しており、それには、アナログ系ではビブラートオルガン、 デジタル系では電子ルーレットといった面白そうな回路が多数載っています。 しかし、電子工作キットの回路の花形とも言えるラジオ(受信機)の回路は、 マニュアルにはProject 2,64,65,68のわずか4種類しか載っていませんでした。 これらは、ゲルマニウムラジオおよびそれに低周波増幅を付けただけの回路で、 高周波増幅やレフレックスの回路例はありません。


●レフレックスラジオを目標に

そこで、この「ELキット300in1」とは別に、 1999年頃に電子ブロック機器製造(株)から購入した 限定復刻版の電子ブロック「ST-100」の回路を参考にして、 「ELキット300in1」を使ってレフレックス方式のラジオを作ってみることにしました。

ちなみにレフレックス回路は、検波出力を帰還しながら高周波増幅と低周波増幅を 1石のトランジスタで行なうもので、発振を起こしやすいものの、 一般的なスーパーヘテロダインの回路のような複雑さがなく、 簡単な回路で高感度のラジオが実現できるという、自作キットに適した回路です。


●まずは低周波増幅から

電子ブロックの「ST-100」場合は低周波アンプの部分はすでにブラックボックス的に キット自体に組み込まれており、これに単に入力を加えればスピーカーが鳴るようになっています。 「ELキット300in1」ではそのようなものはないため、 まずは、スピーカーを鳴らすための低周波増幅回路を組み立てました。

これは、マニュアルのProject 137,138の、ICアンプ(BA546使用)の回路をほぼそのまま使いました。 これはかなりゲインが高く、入力にマイク代わりのクリスタルイヤフォンをつなぐと、 すぐにハウリングを起こすほど大きい音が鳴ります。

試しに、このICアンプの入力に、ゲルマニウムラジオの回路を そのままつないでみました。すると、これだけでもスピーカーから かすかに音が鳴ります。ただし、高周波増幅部分がないため、 感度はあくまでゲルマニウムラジオの低感度のままです。


●「電子ブロック」の回路を流用して…

このあと、電子ブロック「ST-100」の回路を流用して行きます。 まずは、レフレックスの前に、 NPNトランジスタ1石で普通の高周波増幅を付けて動作を確認しました。 この時点ではまだまだ低感度です。 次に、この高周波増幅回路をレフレックス回路に組み変えようとしたところ、 ひとつの壁にぶつかりました。


●4mHのコイルが無い! ゲルマニウムダイオードも2本要る!

レフレックス回路では、トランジスタのコレクタ負荷に 4mH のコイルが要ります。 しかし、「ELキット300in1」にはそのようなコイルが付属していないことに気づきました。 この 4mH のコイルは、抵抗等では代用できないことを 電子ブロック側であらかじめ実験して確認してあります。

さらにレフレックス回路では、倍電圧検波のため、ゲルマニウムダイオードが 2本要りますが、「ELキット300in1」にはゲルマニウムダイオードは1本しか付属していない ことにも気づきました。実はこれは1本に減らしても一応動作はするのですが、 1本ではかなり感度が低下してしまうのでやはり2本欲しいところです。 ゲルマニウムダイオードについては、たまたま手持ちの予備の部品が あったので、それを追加して使用することにしました。

一方 4mH のコイルについては、仕方がないので電子ブロックの部品にリード線を付けて そのまま流用することにしました。

※ このコイルは、あとでトロイダルコアにリード線を巻いて自作し、 置き換えました。

●発振に悩まされる〜自己バイアスで安定化

レフレックス回路を組み終え、さっそくラジオを受信してみると、 音は鳴ったもののなぜか感度が低く、ボリュームを上げるとすぐに「ピー」という 耳障りな音で発振してしまいました。

この発振対策にかなり長時間悩まされました。 結局、レフレックス用トランジスタがもともと固定バイアスになっていたのを、 自己バイアスに変更することで、発振が止まりました。 さらに、なぜか低周波部分からの回り込み発振も起きているようで、 出力のスピーカーにシリーズに100Ωを入れるとさらに安定しました。 このほか細かい部分で抵抗値などの回路定数を修正し、 発振しにくく、感度のよいレフレックスラジオが無事できあがりました。

ただし、前述の通り、4mHのコイルとゲルマニウムダイオードの追加分1本は 「ELキット300in1」の製品以外のものを使用しているので、 レフレックスラジオの実現のためにも、 ぜひこれらの部品をセットに含めて欲しいと思います。

以上、作成したレフレックスラジオの回路図を以下に示します。

●作成したレフレックスラジオの回路図
radio.gif


●4mH のコイルを作る

レフレックスラジオは鳴りましたが、4mH のコイルは電子ブロックのものを借りたままです。 このままでは体裁が悪いため、4mH のコイルを作ることにしました。

コイルは、たまたま手元にあったアミドンのトロイダルコア「FT-50-75」 を使いました。ちなみに、購入当時は3個セットで1,000円で、 中にはコイルの巻数の計算式などが書かれたマニュアルが入っています。

マニュアルによると、トロイダルコア「FT-50-75」で 4mH のコイルを作るには、

                    ____________
   巻数 = 1000 × √ 4mH / 2750  ≒ 38回

となり、38回巻けばよいことになります。手元にあった適当なエナメル線を使って コイルを巻きました。

そして、電子ブロックから借用した 4mH のコイルと置き換え、同様にレフレックスラジオが鳴ることを確認しました。 このページの上の写真はすでにこのトロイダルコアに置き換えたもので、 ブレッドボードの左上にあるドーナッツ状の部品がトロイダルコアです。


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