MISSION IMPASSIBLE(File.10000 俺の仕事番外編 セクハラカノン その1)

 

『カノン、私が席をはずしている間に、私の皿に何をいれた?』

兄貴は自分の皿のパスタを一口食べると俺を睨んだ。

しらね−よ。
俺が兄貴に答えると、兄貴は立ちあがり俺の胸倉を掴んだ。

『知らないわけ無いだろう。なぜタバスコの瓶が空になっている。お前がやったにきまってるだろう。食ってみろ。』

兄貴はフォークでパスタをすくうと、それを俺の口元に持っていった。
んな、タバスコまみれのパスタなんて食えるか。兄貴の分なんだから自分で食いやがれ!!

『この馬鹿。あれほど食べ物を粗末にしてはいけないと言っただろう。』←その通り

『だったら兄貴が全部食えばいいだろう。それは兄貴のパスタだ!』

『やっぱり仲が悪いんだね。サガとカノンは仲が悪いっと。』

俺達は、突然の声に振りかえった。見ると、リビングの入り口に荷物をしょった貴鬼が手にメモ帳を持って立っていた。
このガキ、いつのまに俺の家に?

兄貴は俺の胸倉から手を離すと貴鬼の元へ向かった。

『オイラ、調査にきたんだ。これが教皇の命令書。双子のオジサン達が仲良く暮らしているかの調査なんだって。だからオイラしばらくここにやっかいになるから。』

は?俺達が仲良く暮らしているか?なんだそれ?

『うん。沙織さんも心配してるよ。』←然様である

沙織さん?あっ、女神か。
くっくっくっ、そうか。なるほど。

『貴鬼。俺は兄貴のことが大好きだ。』

俺が貴鬼に言うと、兄貴は俺のことを振り返り、驚きの顔で俺を見た。

貴鬼が、俺の言葉を持っていたメモ用紙に書きとめると、兄貴の顔を見つめるので、兄貴も渋々と、貴鬼に俺が好きだと言った。

『俺は兄貴のことを愛しているんだ。どれくらい愛しているかというとだな、食べちゃいたいくらい愛してるんだ。ちゃんと書いておけよ、貴鬼。』←ほうほう

『うん、分かった。で、サガは?』

貴鬼は澄んだ目で兄貴を見上げた。兄貴は明らかにうろたえていた。
楽しい・・・・。

『わ・・・・わたしもカノンのことが大好きだと言っただろう?』

『ううん。そうじゃなくて。サガはカノンに食べられちゃいたいくらい愛してるの?だってカノンはサガのことを食べちゃいたいくらい愛してるって言ってるよ。』

兄貴は口をあんぐりとだらしなく開いて、俺を見た。俺は、兄貴ににこりと笑って手を振ってやった。
兄貴の顔、間抜け過ぎる。

『やっぱりカノンのこと嫌いなんだ。』

貴鬼は残念そうに言うと、メモを書き始めた。兄貴はそれを慌てて止め、俺に食べられちゃいたいくらい俺を愛していると言った。←ほうほう
そりゃそうだ、仲が悪いなんて女神にしれたら、兄貴の面目丸つぶれだもんな。
こりゃ、楽しくなりそうだぜ♪

しかし貴鬼の奴、白羊宮にムウを残してよくここに来る気になったな。俺が貴鬼に聞くと、ムウは日本に行っているから、ジーサンと二人きりになったムウが襲われる心配はないらしい。なるほど、でなければこのガキが双児宮に泊まる分けないよな。

兄貴は眉間にシワを寄せながら、冷めてしまったタバスコパスタと俺のパスタを片付けると、貴鬼の分と合わせて3人分の新しいパスタを作って持ってきた。
俺と兄貴は向かい合わせに座り、貴鬼は兄貴の横に座って夕飯となった。

 

『なんで何も喋らないの?』

貴鬼は黙って食事をしている俺達に不思議そうに聞いた。
あ?別に兄貴となんて話すことねーよ。
兄貴は、食事のときは静かに食べたほうがいいと、その場を繕ったが、そうは問屋が卸さなかった。

『いくらなんでも静か過ぎだよ。白羊宮の夕飯時よりも静かだもん。だって、ここは気を使う相手がいないんだから、もっとお話すればいいのに。やっぱり仲悪いの?』

食卓に兄貴と俺の乾いた笑いが響き渡った。

『そんなことはないぞ。なぁ、カノン。』

兄貴は引きつった笑顔で俺に言うと、俺もニッコリと笑い返してやった。そして、俺は、フォークにパスタを絡ませ、それにたっぷりのタバスコをかけて兄貴の前に差し出した。兄貴は怪訝な顔でそのフォークと俺を睨んだ。

『なんだよ、兄貴。あーーんだよ。あーーーん。仲のいい俺達はいつもこうやって飯をくってるだろう。ちゃんと書いておけよ、貴鬼。』←ほうほう

兄貴は嫌そうな顔をしながらフォークを見ていたが、その横で貴鬼が兄貴のことをジーーーッと見ていたので、兄貴は渋々と口を開いた。俺はその口にタバスコパスタを突っ込んでやった。兄貴は額から汗をダラダラ流しながら、必死に辛いのを堪え、俺を睨みながらパスタを飲みこむと、一気に水をがぶ飲みした。
俺はニッコリと笑って聞いた。

『兄貴、おいしいか?もっと食う?』

『いや、もう結構だ。可愛いお前の分がなくなってしまうからな。』

兄貴は俺のことを睨みながら心にも無いことを言った。

『俺は大丈夫だ。俺は愛しの兄貴が俺の手から飯を食ってくれるだけで幸せだ。』

俺は再びタバスコをたっぷりかけたパスタを兄貴の目の前に付きつけた。
兄貴は再び口を開いた。兄貴の口の中は真っ赤になっていた。ぷぷぷっ。
俺はあまりの楽しさに、笑いを堪えきれずへらへらと笑いながら兄貴の口にタバスコパスタを突っ込んだ。

『カノンは本当にサガのことが好きなんだね。今のカノン、凄く幸せそうだよ。サガも幸せ?』

貴鬼は目に涙を溜めてパスタを食っている兄貴の顔を覗きこんだ。兄貴は辛さで顔を真っ赤にして黙って頷いていた。
たっのし〜♪
兄貴は俺のコップに手を伸ばし、俺の水をがぶ飲みすると、今日はもう辛いのはいらないと言って自分のパスタを食べ、後片付けを始めた。

 

その後、兄貴はフラつきながら、風呂へと向かった。

『カノンとサガは一緒にお風呂に入らないの?』

貴鬼の一言に兄貴の足が止まった。兄貴は貴鬼の元に戻ると、自分は一人でゆっくりと風呂に入るのが好きだと説明した。しかし貴鬼は、

『サガはカノンとは一緒に風呂に入れないくらい仲が悪いの?』

と、小首を傾げて聞いた。
兄貴はどう答えていいか分からずにおろおろとしていたので、俺はその兄貴の腕を取り、兄貴の肩に顔を乗っけながら言った。

『へへっ。兄貴、一緒に風呂に入ろうぜ。俺は兄貴と一緒に風呂に入るのが大好きだ。貴鬼、ちゃんと書いておけよ!』←ほうほう

俺は、貴鬼に言うと、無理矢理兄貴の腕を引っ張り、風呂場まで連行した。貴鬼はまだ子供なので、俺達は貴鬼を連れて3人で入ることにした。


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