MISSION IMPOSSIBLE(File.166666 愛ゆえに)

 

私は黄金聖聖闘士として、嘘偽りなく事の全容を余すことなく書き綴ることをここに誓う。

まず私は、この作戦を遂行するために仲間を集めた。
ターゲットの日ごろの行動に怪しさを募らせていた我々であったが、今現在、ターゲットは限りなく黒に近い白であり、それもすぐに明らかとなろう。我々の手にかかれば、不可能などない。
我々はターゲットを知るためにその行動を探った。我々の作戦を成功させる上で、これは欠かせないことだった。

我々は綿密な計画をたてたうえ、全ての条件がそろったこの日、それを決行することとした。

作戦は午前5時から行われた。各仲間達への根回しが、この作戦の鍵を握る。全ての条件をそろえなければ、この作戦の成功はない。←普段から早起きを心がけよ

我々はこの日をどれほど首を長くして待っていたことか。この作戦を遂行するにあたっての最低条件が、サガとアイオロスの二名の不在であり、全てがここから始まるのである。
執務当番及び二名の不在を確たるものとするため、我々はデスママ扮するデスマスクを双児宮に送り込むことにした。

以下はデスママの報告をまとめたものである。

デスママに扮したデスマスクは巨蟹宮にてアイオロスが降りてくるのを待つ。トレーニングの時間は前もって本人に確認した5時だ。
午前5時きっかり起床したであろうアイオロスは5時15分にアイオリアを連れて巨蟹宮まで降りくる。そこで作戦どおりデスママがアイオロスを双児宮の朝食に誘った。
口実は、

扶養家族のいるサガに、たまには楽をしてもらおうとしたデスママが、たまたま通りかかったアイオロスを、どうせサガとの執務当番日なのだから一緒に朝食を食べてそのまま出勤したらどうだ!

である。
名づけて、「扶養家族のいるサガに、たまには楽をしてもらおうとしたデスママが、たまたま通りかかったアイオロスを、どうせサガとの執務当番日なのだから一緒に朝食を食べてそのまま出勤したらどうだ!」作戦だ。←そのままではないか。鶏誘導作戦とでもしておけ

事前に用意しておいた誘い文句も聞かず、アイオロスは快諾した。

予定通り5時半に双児宮の潜入に成功。ここでターゲットを確認。ターゲットは散らかった自室で大口を開け、熟睡中であった。おそらくターゲットが昨晩遅くまで散らかしていたであろうリビングを片付け、デスママとアイオロスの分を合わせて4人分の朝食を用意。
午前6時。サガが起床後、即入浴する。
午後7時。サガの入浴が終了したとほぼ同時にアイオロスが双児宮に現れる。それとほぼ同時にターゲットも起床。早い。そして明らかに寝起きの機嫌悪さ以外の不機嫌さが伺える。

これはアイオロスが原因であると思われる。
我々が計画を練り始めてより数日間の調査の結果、ターゲットの普段の起床時間は早くても10時過ぎである。やはり7時は早いのだ。
また、これも推測の域を出ないところではあるが、潜入時の双児宮の状態、つまりリビングの散らかり様からして、ターゲットが就寝したのはおそらく深夜2時から4時の間だろう。我々の推測が正しければ、ターゲットの睡眠時間は4〜5時間である。これは睡眠時間が不十分であるといっていい。

恐らくターゲットは、アイオロスが双児宮に現れた気配を察し、起床したのであろう。そしてターゲットの不機嫌さもまたアイオロスが原因と思われる。なぜなら我々の調査の結果、いや普段からのターゲットの行動からも、ターゲットは何らかの理由でアイオロスを敵視している。性格の不一致という問題と、アイオロスがターゲットの兄を溺愛しているからであろう。これは嫉妬と兄を奪われるという恐怖及び、一人になる焦燥感からの嫌悪感であると思われる。←その通り

ようするに朝早くから来たアイオロスに兄を取られてたまるか!、とアイオロスによからぬ行動をさせないための予防線として、起床したというわけだ。

さて、いよいよ面子がそろったところで、両二名の不在を確たるものとするべく行動にでる。
3名が食事をはじめたのを見計らい、ターゲットを作戦に引き込むべくデスママは宴会に誘った。もちろん、両二名に聞こえるように言うのは忘れない。なぜならターゲットが不在となれば、アイオロスが必ず動くはずだからだ。←餓えておるからのぅ

我々はこの日、必ずターゲットが宴会に参加するよう水面下で動きつづけていた。というほどこれは難しいものではなく、週に数回気まぐれに市内などに出て食事をかねた休息に、ターゲットをしばらく誘わなかっただけなのだ。ターゲットはこの聖域に友と呼べる者は少なく、いや、おらず、我々以外にはともに酒を飲む相手もいない。デスママの誘いに、案の定ターゲットは即、了承した。
そしてデスママは、アイオロスにターゲットが不在であるから今日は二人でゆっくりすることができると耳打ちした。

これでターゲットの確保及び、アイオロス、サガをターゲットから隔離する作戦はほぼ間違いなく成功だ。←作戦というレベルではあるまい

補足ではあるが、デスママがアイオロスに耳打ちした時点で、ターゲットは誘いにのったことを後悔したらしい。なぜならば、ターゲットはコーヒーカップをぶつけるかのようにテーブルに置き、且つ、デスママとアイオロスを睨みつけていた。ターゲットはデスママとアイオロスの会話を聞き逃さなかったのだ。これで、ターゲットが丸一日不機嫌になることは間違いなかった。

 

そして我々の作戦はいよいよ大詰めを迎えることになった。

まずはデスママに双児宮の全ての面倒を見させ、心置きなくサガがアイオロスと夕飯を、またその後の時間を過ごせるようにしておく。少しでもサガの気を引くような落ち度があれば、彼は必ず双児宮に戻ってきてしまうだろう。
もちろんターゲットの世話も忘れない。その際に、デスママがターゲットの不機嫌さを煽るのも怠らなかった。ターゲットは、サガとアイオロスのことを話せば必ず機嫌が悪くなるのを我々は心得ているのだ。←誰でも知っておる

ターゲットは、

アイオロスとサガは今ごろ二人仲良く執務だな!←その通り
アイオロスとサガは今ごろ二人で昼食中だな。あーんして、アイオロス!あーーん!、とかやってるんだろうな!←その通り
アイオロスとサガは今ごろ二人で三時のケーキに入刀中だな!←その通り

というデスママの言葉に過剰に反応し、家具などにあたり散らしていた。

 

さて、残された我々は、ターゲットの本性を暴く舞台を着々と整えていた。今回、宴会部長の異名を持つデスマスクはターゲット確保のために双児宮に拘束されており、我々がその代役を勤めねばならない。
処女宮の主に、久しぶりに宴会を行う旨を話し宴会場を確保し、準備を整える。アルデバランを傘下にいれ、といっても宴会の傘下であるが、シュラ主導の元で彼を買出しに走らせた。
場所及び酒類の準備はこれで万全である。残りは、野次要員である。我々3人だけでも、その威力は絶大であるが、やはりこれは数が多いほうがいい。しかも、数を増やすことによって、より多くの目撃者が増えるわけである。
我々はアイオロスとサガを除くほぼ全員に声をかけることにした。もちろん、ムウは対象外だということを言っておこう。しかし、我々が声をかけるのはただ一人でいい。そうすれば芋づる式に勝手についてくるからだ。

私は処女宮の宴席の準備をほぼ終えると、宝瓶宮に向かった。カミュを誘えば、ミロが必ずついてくる。そしてミロはアイオリアを必ず誘うというわけだ。
その際、『アイオロスとサガは執務で残業になるらしいから誘わないように』ということを言っておかねばならい。そうしなければ必ずカミュがサガを、アイオリアがアイオロスを宴会に呼んでしまうからだ。

そして計画どおり宴会は午後8時に開かれた。
因みに参加者は、下からアルデバラン、デスマスク、アイオリア、シャカ、ミロ、シュラ、カミュ及び、計画の考案者であるこのアフロディーテだ。もちろん、デスマスク、シュラを除いて、この宴会の真の目的を知るものはいない。

まず我々は、ターゲットの本性を暴くべく、強い酒をターゲットに飲ませることにする。もちろん野次要員への酒もしかりだ。
案の定我々の計画どおり、サガが不在であるために不機嫌であろうターゲットは浴びるように酒を飲み始めた。←いかんのぅ。酒は飲んでも飲まれてはならぬ。
我々は未だ嘗て、ターゲットが泥酔した姿を一度も目撃したことがない。しかし、ストレスが溜まり久しぶりの宴席となれば、かならずやターゲットは本性をあらわすに違いない。我々は根気よく待ちつづけた。
しかしターゲットは他愛もない話に、聞いているのか聞いていないのかという様子で適当に話をあわせていた。心なしか落ち着かない様子が垣間見えるのは、やはりサガがこの場にいないからであろうか。しかしこのままでは、普段の宴会となんら変わりない。それどころか、年少達が先に酔い、我々の作戦を台無しにしかねない。

そこで我々は、話題の転換をはかることにした。これにターゲットが食らいつけば、我々の勝ちは決まったようなものだ。
デスマスクの合図で、計画第二段が遂行された。
彼はターゲットに酒を注ぎながら、話題を持ちかけた。するとターゲットの顔色はますます赤くなり、不機嫌に顔をゆがめた。どうやらデスマスクの話に食らいついてきたようだ。

話題はもちろん、この場にいないサガとアイオロスのことである。

「おいおい、お前。ちっとも飲んでいないじゃないか。もしかしたら、お兄ちゃんのことが心配か?」

というデスマスクの一言に、ターゲットはグラスいっぱいに入った酒を一気に飲み干し、デスマスクに食ってかかった。我々はそれを見逃さず、野次を飛ばしターゲットを煽る。ターゲットは思いのほか、いや普段から単純であるが、酒が入りますます単純になり、我々の予想通りの反応を示した。

以下は、ターゲットが切れる寸前まで交わされた会話の一部である。

「はぁ?ふざけるなよっ!俺が兄貴がいなくて、さびしい分けないだろう!」

「またまた。本当はさびしいくせに。今ごろサガはアイオロスとラブラブしていると思うと、泣きそうになるんじゃないのか?」←その通り

「冗談はやめろ。あんな変態ホモ兄貴が誰とどうなろうと俺には関係ない。」

「嘘ばっかり、お前がどんなにサガが好きか証拠を握っているんだぜ!」

「はぁぁぁ?」

と、惚けるターゲットに、外野はどよめき本来の仕事をこなし始めた。

「なんだよ、証拠って!」

とミロがデスマスクに言い寄れば、

「証拠とはなんだね?興味深い!」

と、シャカがシュラを促した。

「あなたはやはりサガを愛しているのか。」

と、カミュが薄笑いを浮かべると、

「やっぱりそうですか。もっと素直にならないとサガは鈍感だから分かってくれませんよ!」

と、アルデバランがターゲットの背中をたたき始めた。

ターゲットは明らかに動揺し始めたが、ここで逃げられる可能性も高い。我々はさらにターゲットを中心に円陣を組むように取り囲み、グラスに酒を注いだ。ターゲットは注がれるままに、酒を飲み干す。
我々は、ターゲットに休む時間を与えずに、酒を飲ませた。ターゲットは終に切れ、サガへの思いを我々に吐き出した。しかし、その内容は我々の期待とは裏腹に、いつものように兄を殺すだの、兄が嫌いだのという愚痴であった。

ターゲットの愚痴を簡潔にまとめると。

1.ターゲットの兄が、いつも彼をしかり、暴力をふるうこと。
2.ターゲットの兄が、ターゲットを幽閉し放置したことをまったく悔いていないこと。
3.ターゲットの兄が、ターゲットに厳しいこと。
4.ターゲットの兄が、風呂の時間が長すぎること。
5.ターゲットの兄はまじめすぎて、規律正しい生活をターゲットにも強要すること。
6.ターゲットの兄が勝手に自分の部屋を片付け、私物を廃棄すること。
7.ターゲットの兄に客が多く、在宅時に客を招き入れるために、常に第三者に干渉されているようで生活しにくいこと。
8.ターゲットの兄の食事がまずいこと。
9.ターゲットの兄の通院に、ついていかなければならないこと。
10.ターゲットの兄の二重人格の発作がでないように監視しなければならないこと。
11.ターゲットの兄がホモであり、自分がいる双児宮でターゲットの目もはばからず、男といちゃつくこと。
12.ターゲットの兄が日に2回のトレーニングを強要すること。
13.その他

さて、この不満を我々なりに分析してみることにする。


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