MISSION IMPOSSIBLE(file.585857 黄金聖闘士雑兵生活)

 

『サガの金魚の糞よ。サガの雑兵への格下げ申請が出ておるようじゃが、一体どういうことじゃ?』

そんなこと知るかよ。
提出者本人に聞け。
俺がこたえると、また羽ペンを投げつけてきやがったので、華麗によけて投げ返してやった。←あたったではないか

『アイオロスが昨日これを申請したそうじゃ。奴に聞いても、「サガがどうしても雑兵になりたいというから」、しか言わぬ』

兄貴が雑兵になりたいってなら、雑兵にならせりゃいいだろう。
じーさんがグチグチと女の腐ったようにしつこいので、俺は説明してやった。←無礼者

 

多分3日くらい前。

兄貴の病院の帰り道でアイオロスとアイオリアの馬鹿兄弟が喧嘩をしていた。←道端でみっともない

もちろん俺は、仕事で兄貴の付き添いばっちりしてました。つことで、給料よろしく!

馬鹿兄弟の喧嘩は、なんか言い争いっぽい感じがしたが、兄貴は喧嘩をしていると思っていたようだ。

俺的には、奴らが喧嘩をしていたふうには見えなかったが、どうやら兄貴の偽善者魂に火がついたらしい。

『やめないか、お前たち』

出ました、お得意のでしゃばりが。←余計なおせっかいじゃのぅ

兄貴の顔をみてアイオリアが露骨に嫌そうな顔をした。

早く自分が嫌われているって気がつけ、兄貴。←そのとおり

『喧嘩はよくない。お前たちはたった二人の兄弟ではないか。一体なにが原因なんだ!』←お前もいつも喧嘩をしておるではないか

『聞いてくれ、サガ。アイオリアの奴、今でも雑兵として白銀聖闘士にいいように使われているんだ。だから、もっと黄金聖闘士として自覚を持てと注意していたところだ。そりゃ、下の者達と親睦を深めるのもいいことだが、コイツの場合は舐められているのが見え見えで、情けなくてな』←いかんのぅ

ということは、世間ではアイオリアは今でも雑兵で黄金聖闘士として認知されてないっていうことか?
イコール、未だに逆賊の弟?

このカノンさまなんて、今ではすっかり『聖戦時に冥界で大活躍をした双子座のカノンさま』だぜ。←逆賊その2じゃ。自覚せい

『別に兄さんには関係ないだろう』

『弟の分際で兄ちゃんに口答えするな!』←いかんのぅ

愚兄か愚弟の胸倉を掴んだ。
ちょっと早く生まれたくらいで、いい気になるな、馬鹿。←そのとおりじゃ

『やめろ、アイオロス。私が話しを聞こう』

でしゃばりが、愚弟と愚兄の間に入った。途端に愚弟の顔が見る見る凶悪に歪んだ。

『アイオリア。アイオロスに話にくいなら、私に言ってみるといい。お前は黄金聖闘士なのだから、雑兵の生活などしなくていいのだぞ』

『うるさい。あんたにそんなこと言われたくない。だいたい誰のせいで雑兵生活が身についたと思ってるんだよ』←サガじゃ

兄貴の顔色とアイオロスの顔色が見る見る青くなっていった。

アイオリアが雑兵になったのは、このでしゃばりのせいだからな。アイオリアが切れるのも無理は無い。

『馬鹿野郎、アイオリア!サガに謝れ!』←その必要はない

謝るのは兄貴だろう。←当然じゃ

兄貴がぷるぷる震えだした。

あー、今日はせっかく医者に『大分いいですね』っていう何がどういいんだかよく分からない診察を受けたところだったのに。

そろそろ来るか……。

いち、

にー、

さん、

だーーーーーっ!

『すまなかった、アイオリアーーーーーーーっ』

兄貴が滝涙と滝鼻水を流して、アイオリアの足にしがみついた。

お約束すぎる行動に、いい加減飽きられるか、新しいバリエーションを増やさないと、だれも同情してくれないと思った。←何をしようと同情に値せぬ

『お前が辛い子供時代を送ってしまったのは、私のせいだ。しかし、もう雑兵として生活などしなくてもよいのだ』

『うるさいな。俺の気持ちなんて、あんたに分かるわけないだろう!ほっておいてくれよ!!』

さすがに兄貴に泣かれるとやばいらしい。やっぱりその後は自殺っていうのが見え見えで、アイオリアはそのまま兄貴を怒鳴りつけて逃げていった。

今までの俺の調査によれば、どう考えても魔鈴と近づきたいがために雑兵生活をしているようにしか見えないんだが。

その後をアイオロスが鬼のような形相で追いかけようとしたが、なんとその足を兄貴が掴んで転ばせた。

『おあえにあのいがあう……。わらしをあいおいあとおないひょうぎゅうにああせてくれ』←宇宙語か?

ちゃんとしたギリシャ語喋れよ、兄貴。泣きながら鼻水たらして言ってたんじゃ、何を言っているかさっぱり分からなかった。

『しかし、サガ。それはいくらなんでも』

アイオロスには分かるのかよ、この宇宙語が。
兄貴がズビビビビビッと鼻をすすった。

『頼む、このサガの願いをきいてくれ、アイオロス。お願いだ。私は雑兵になりたいのだ!!!』

というわけで、兄貴はアイオロスに地に額をこすりつけて、拝んで雑兵生活入りを頼んだってわけだ。

分かったか、ジーサン。

 

納得したじーさんが俺に紙を投げた。

『愚弟よ。これがサガの雑兵入隊命令書じゃ。サガに渡してまいれ。本日12時より、サガは雑兵になる』

まじで!?

よっしゃーーーーーーーーーーっ!!

兄貴は雑兵に降格、俺はこれで晴れて正式に双子座の黄金聖闘士さまだ。←お前は海闘士じゃ

偉いぞアイオロス。偉いぞアイオリア!!

じーさんばんざいっ!

兄貴が雑兵になったら、双児宮付きの雑兵にしてくれ。たっぷりこき使っていびり倒してやる!!

俺はじーさんからその命令書を奪い取って、双児宮に光速スキップで帰った。

『兄貴、めでたいぞ!』

俺が帰ると、兄貴は相変わらず鬱だった。アイオロスがまた勝手に俺の家に上がりこんでいたが、無視!

俺が雑兵入隊命令書を兄貴の前につきつけてやると、兄貴の顔が明るくなった。

てっきり俺は、ますます鬱になるかとおもったが、どうやら本当に雑兵になりたかったらしい。←馬鹿じゃのぅ

『よかったな、サガ』

『アイオロス。お前のおかげだ、ありがとう……』

うれし泣きをする兄貴に手を握られたアイオロスが、顔を引きつらせていた。


next