にいちゃんといっしょ(童虎の誕生日)

 

デスマスク「おうシャカ!、場所借りるぞ」

デスマスクは蓮華の台座の上に浮んでいるシャカに声をかけると、大量の老酒とつまみを台座に置き、全員に声をかけた。

デスマスク「おう、おめぇら!いつもの儀式行くぞ」

デスマスクをはじめ、アイオロス、カノン、ミロ、カミュ、シュラ、アフロディーテ、アルデバラン、ムウ、カミュ、アイオリアはシャカに跪き、一斉に拍手を打ち、手を組んで祈った。

デスマスク「おシャカさま、今晩も処女宮で、酒盛りさせて頂きます!」

シャカ「よかろう!」

全員に祈られて悦に入っているシャカは、こうして毎晩快く酒盛りの場所を提供してくれるのであった。

デスマスク「よし、おめぇら。今日は特別な日だ、わかってんな!」

ムウ「言われなくてもわかってます、つべこべ言わずにさっさと準備をはじめなさい」

デスマスク「うっせー、麻呂は黙れ!」

ムウ「では、誕生日ケーキや料理はなくていいんですね?きっと料理が少ないと、老師さまはお怒りになりますよ」

シュラ「馬鹿、デスマスク。今日だけはムウに謝っておけ」

デスマスク「ちっ……、悪かったよ。さっさとはじめようぜ」

デスマスクが口を尖らせると、童虎の誕生日の準備を始めたのであった。

1時間後。

すっかり準備が整った処女宮では、あとはシオンと童虎を迎えるだけになった。

と思ったら、デスマスクが突然立ち上がり、

ここは神聖な処女宮、おシャカさまのお膝元。飲むならヤるな、ヤるなら帰れ!

と、柱に貼られた飲み会の注意書きをペリペリとはがし始めた。

ミロ「え!? 今日は乱交誕生日パーティ!?」

デスマスク「ばっきゃろー。んなわけねぇだろう!」

デスマスクは注意書きの下に更にマジックで言葉を追加した。

ホモ厳禁!!
話題も厳禁、妖怪ネタ厳禁、無礼講といわれても無礼講にあらず

サガ厳禁

ミロ「なんか、注意書き多くてつまんねぇよ」

デスマスク「おう、別に俺っぴはおめぇが老師の怒りをかって百龍覇でぶっとばされてもかまわねぇけどな。ただな、場の空気が悪くなるのは、この宴会部長がゆるさねぇ」

ミロ「ひゃ、ひゃくりゅうは……」

デスマスク「それだけならいいが、教皇まで怒らせてうろたえるな小僧まで出ちまったら、それこそ老師の誕生日パーティーが台無しだからな。特に小僧!」

ミロ「お、おおおおれ?」

デスマスク「ハメはずして馬鹿なことしたら、ただじゃすまねぇからな!」

ミロ「わ、わかったよ」

ムウ「デスマスクの『ただじゃすまない』では、たかが知れてますけどね」

アルデバラン「ムウ、本当のことは言っちゃいかんぞ」

デスマスク「牛!てめぇには言われたくねぇ!!」

アイオロス「ちょっと待て、デスマスク」

デスマスク「なんでぇ!」

アイオロス「この『サガ厳禁』ってなんだ?」

デスマスク「読んで字のとおりだ。サガ厳禁!」

アイオロス「……は?」

デスマスク「は?、じゃねぇよ。サガは誕生日の間、処女宮に立ち入り禁止、話題にするのも禁止ってことだ!」

アイオロス「ばっかやろーーーー!」

アイオロスの馬蹴りがデスマスクの後頭部に炸裂した。

シュラ「落ち着いてください、アイオロス」

アイオロス「これが落ち着いていられるか!なんでサガだけ仲間はずれにする!」

アイオリア「老師がサガのことを嫌ってるからだろう?」

アイオロス「は? 馬鹿なことをいうな」

シュラ「馬鹿なことじゃありませんよ、アイオロス。老師はサガが大嫌いなんですから、老師の希望でサガは呼んでいないんです」

アイオロス「老師がそんな差別するか、馬鹿」

アフロディーテ「でも、サガはいっつも老師にねちねち嫌味を言われて虐められてるじゃない」

シャカ「老師がサガに言うことは、全て本当のことだから、しかたないのだよ!」

カミュ「老師はああ見えて聖闘士の鑑のような正義のお人だ。サガは裏切り者で、極悪人だから、それを未だに許せないのだろう」

アイオロス「だったら、なんでこいつはここにいるんだ」

アイオロスがカノンを指差した。

カノン「俺?俺は当然だろう?なんてったって、お供する仲される仲ってな!」

ムウ「大人気ないマネはおやめなさい、アイオロス」

アイオロス「大人気ないのは老師だろうが!」

シオン「見苦しいぞ、アイオロス」

そこに童虎よりも先にシオンが現れた。

シオン「まったく童虎が来る前から騒々しいと思ってきてみれば……」

アイオロス「サガが来ないって、どういうことですか!」

シオン「童虎が嫌だというからじゃ。今日の主役は童虎であるぞ、なぜにサガに気をつかわねばならぬ。あやつは大罪人、嫌われて当然。お前のようにサガを好む物好きのほうが稀なのじゃ」

アイオロス「し、しかし!」

シオン「しかしもかかしもない。世の中全ての人間が、お前の好みと同じであると思うな、アイオロス」

ムウ「さすがわが師シオンさま、すばらしい説教です」

ムウが笑顔で拍手を送ると、アイオロス以外全員がシオンに拍手をおくった。

シオン「どうしても納得がいかぬなら、お前自ら童虎を説得してみよ。まぁ、やるだけ無駄であるがのう」

デスマスク「というわけで、これで一件落着でいいですかね、教皇?」

シオン「よい。童虎はもうそこまできておる、早々に席につき童虎を迎えよ」

デスマスク「はっ!」

こうして、アイオロスが一人納得いかないまま、童虎の誕生日パーティは始まったのであった。

誕生日パーティ−といっても、通常なら教皇の間の大食堂や白羊宮が主流であるが、童虎がラフに行きたいというので普段の飲み会の形式をとったのである。ゆえに誕生日パーティーというよりは、ただの酒盛りに近かった。

童虎「ほうほう、皆の者すまぬのぉ。この老いぼれのためにこんな盛大なぱぁちーを催してくれて。ここは一つ、わしが一肌脱がねばならんのぉ」

シオン「どうしてそこで脱ぐ必要がある!」

デスマスク「まぁまぁ、教皇。今日の主役ですから、好きなように……」

童虎「見るがよい、この美しい彫り物を!」

童虎は虎の生首を意気揚々と見せながら、高らかに笑った。

シオン「おぬし、もしや既に一杯ひっかけておるのか?」

童虎「うむ、ちっと待ち時間が長すぎたからのう」

シオンの額に青筋が浮かんだのを見て、デスマスクが慌ててグラスを持ち上げた。

デスマスク「ではでは、老師の誕生日を祝って、かんぱーーーーい!」

皆は乾杯の音頭と共に、一気にグラスを空ける。そこからは、もう自由である。手酌で飲むもよし、酌をして回るもよし、ラッパで飲むもよし……。


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