にぃちゃんといっしょ(兄ちゃんとライオンキング その2)

 

デスマスク「ムウの充電完了にかんぱーーーーーーい!!」

デスマスクが叫ぶと、皆杯を高くあげ酒を一気に飲み干した。
サガはアイオロスに羽交い締めにされたまま動けないでいる。

数分後。

ミロ「そろそろいい感じかな。」

シュラ「うむ。そろそろだな。さて、行くか!!」

デスマスク「おう、お前ら獅子宮に行くぞ!!」

シャカ、サガ、アイオロスを除いた全員が獅子宮へと下りていった。

 

獅子宮。

すっかりカノンの囁きでその気になったアイオリアは、ぐっすりと眠るムウをベッドの上に横たえると、そのままムウに覆い被さりムウの唇にキスをした。

その途端、ムウが目を覚まし、アイオリアの額に鉄拳を食らわした。

ムウ「ふんっ。まったく何を考えているんだか・・・・。」

ムウはベッドの上で目を回しているアイオリアを一瞥すると、ニヤリと笑った。

ムウ「そこで見てないで入ってきたらどうですか?こうなったのも貴方達のせいですからね、少し手伝ってもらいます。」

ムウが寝室のドアに向かって喋ると、ドアは外側から開いた。そこには、シュラ達が立っていた。

シュラ「なんだ、もうお終いか。」

ミロ「で、手伝ってもらうって何??」

ムウ「耳を貸しなさい。」

ムウは6人に耳打ちすると、皆にやりと笑い頷いた。

 

シュラ「俺、ゴム持ってるぜ。」

シュラはズボンの後ろポケットから避妊具を取り出すと、皆に配る。皆、それの封を切ると、風船のごとく膨らませた。
獅子宮のキッチンから、泡だて器で何かをかき回せながら、ムウが寝室に戻ってきた。

ムウ「ふむっ、こんな感じでいいですかね。」

ムウが持っていた泡だて器をボールから持ち上げると、白く濁った液体がボール内に滴り落ちた。

デスマスク「ぐはははっ。流石ムウだな。」

ミロ「これをこの中に入れてと・・・。」

皆はボールからスプーンで白い液体を膨らました避妊具の中に入れ始めた。

カミュ「もう少し量があったほうが楽しくは無いか?」

デスマスク「ちょっと待ってろ、俺が今持ってきてやる。」

デスマスクは瞑想すると、自宮から更にもう一箱避妊具を念動力で取り出した。

皆は再び同じ作業を繰り返し、それをベッドや床に無造作に放り投げた。

カノン「で、その後どうするんだ?」

ムウ「あとは私がアイオリアの隣で裸で寝るだけです。」

アフロディーテ「ちょっと待って、アイオリアのズボンから出してあったほうがリアルだと思うけどぉ。」

アフロディーテがそういうと、ミロが倒れているアイオリアのズボンのジッパーを下ろし、アイオリアの股間を丸出しにした。

シュラ「ふむ。あとはムウの服が引きちぎられてたら、もっとリアルだな。」

ムウ「そうですね。それじゃ、ちょっと・・・・。」

ムウはそういうと自分で服を引きちぎろうとする。

アフロディーテ「ちょっと待って、ムウ。私がやってあげる。自分でやるのと他人がやるのだと、破れ方が違うでしょう?」

アフロディーテは「失礼。」とムウに声をかけ、一気にムウの服を引きちぎった。

デスマスク「これで完璧だな。」

カノン「おう。また朝くるからな、うまくやれよ!!」

皆はけらけらと笑いながら獅子宮を出ると、ムウはアイオリアに毛布を被せ、ボロボロになった服を脱ぐと、アイオリアの隣に寝べった。

 

処女宮。

シャカ「君達、うまくいったのかね?」

デスマスク「おうよ、完璧だぜ。流石、ムウ。性格が悪いな!!」

カノン「あれ?兄貴とアイオロスはどこにいったんだ?」

ミロ「あっ、本当だ。サガの奴、お持ち帰りされちゃったのかな?」

シュラ「今ごろは、アイオロスのアトミックサンダーボルトで充電してもらってるのかもな!!」

カノン「おい、シャカ。兄貴はどうした!!」

シャカ「サガとアイオロスならあそこにいる!」

シャカが指差したほうを見ると、処女宮の柱の影にアイオロスの足が見えた。

カノン達がその柱まで駆け寄ると、サガが苦悶の表情を浮かべながら寝ていた。その腰にはアイオロスが腕をからませ、サガの尻を枕にして気持ちよく寝ている。

カミュ「なんだ、二人とも潰れたのか。」

デスマスク「なっさけねーな。よし、アイオリアが目を覚ますまで、飲みなおすぞ!!」

カノンはアイオロスに蹴りを入れてから、酒の輪の中に戻った。

 

翌早朝。

処女宮で酔いつぶれた黄金聖闘士達は、アイオリアの悲鳴で目を覚ますと、顔を見合わせてニヤリと笑い、獅子宮へと向かった。

デスマスク「どうした、アイオリア!!」

ベットの上で茫然自失のアイオリアは、皆が部屋に入ってきて我に返った。隣では、毛布を頭まで被ったムウがいる。

シュラ「お前、何やってるんだよ!!」

アイオリア「いや、違う。誤解だ!!」

ミロ「おいおい、こんなにヤっておいて誤解も何もないだろう?」

ミロの視線にアイオリアは凍りついた。その先には、大量に使われた避妊具が落ちていたからだ。

アイオリア「覚えてない・・・・。」

カミュ「ここまでしておいて、それは可哀想だな。」

アイオリア「でも、本当に覚えてないんだ。」

アフロディーテ「やだぁ、酒の勢いで押し倒しちゃったの?最低!」

カノン「あーあ、ムウも可哀想にな。酔った所をアイオリアの性欲処理の為に襲われるとはな。」

アイオリア「そ・・・そんな。だから誤解だって。何かの間違いだ!!」

デスマスク「アイオリアぁ〜〜〜〜。まずはそれをしまってからにしたらどうだ!?」

アイオリアはデスマスクの視線に、自分の股間に目を移し仰天し、慌ててソレをしまいこんだ。

シュラ「ここまでしておいて誤解もなにもないよな。」

アイオリア「ど・・・・どうしよう。ムウが妊娠しちゃったら・・・・。」

は??

黄金聖闘士はアイオリアの呟きに茫然となった。ベッドで毛布を被っていたムウも、たまらず声を殺して笑った。

アイオリアは、未だに貴鬼がムウの子宮から生まれた子供で、ムウを孕ませた相手がシオンだと信じていた。

デスマスク「だ、大丈夫じゃねーか?ほら、避妊具つけてたみてーだし。」

シュラ「あっ、でもこれ破けてるぞ。」

シュラは足で床に落ちた避妊具を、足先でつついて言った。

アフロディーテ「あっ、ムウが泣いているよ。」

ミロ「よっぽど恐かったんだな。可哀想に。」

ムウを覆った毛布が小刻みに震えているのを見て、アイオリアはますます青くなった。だが、ムウは笑いを堪えているだけである。

アイオリアは、まるでサガのように鬱に入ってしまっていた。

カノン「あーあ、教皇に知れたら大変だぞ、アイオリア。」

カミュ「間違いなく殺されるだろうな。」

アイオリアは恐怖で身体を震わした。

 

そこに、ようやく目を覚ましたアイオロスとサガが現れた。

サガ「お前達、何をやっているんだ!!」

アイオロス「アイオリア・・・・お前、本当にムウをヤっちまったのか?」

アイオリア「兄さん。どうしよう、俺・・・・・。ムウを無理矢理・・・・・。」

サガ「ムウ、大丈夫か?」

サガは、ベッドで横になっているムウのそばに駆け寄り声をかけると、ムウは小さく頷いた。

サガ「アイオロス、私はムウを白羊宮に連れてかえるから、アイオリアを頼んだぞ。お前達はもう帰れ。このことは誰にも言うなよ。わかっているな!」

サガは、ワードローブから新しい毛布を取り出し、裸のムウを覆って抱き上げると、獅子宮を出て行った。

アイオロス「アイオリア、そんなに落ち込むな。お前だって男だ、仕方ない。やっちゃったものを後からくよくよしても仕方ないだろう。後はサガがなんとかしてくれるからな。」

カミュ「ちょっと待ってください。」

アイオロス「お前たち、いつまでここにいるんだ。とっととでていけ!」

カミュがネタをばらそうと声をかけたが、アイオロスに一喝されてしまい、皆、獅子宮から出ていった。

アイオロス「アイオリア。サガにまかせておけば大丈夫だって。ほとぼりが済んだら、サガに礼をいいにいけ、なっ。」

アイオロスは、後悔の念にさえ悩まされて震えているアイオリアを優しく抱きしめて言った。アイオリアは兄の腕の中で黙ってうなずいた。

 

白羊宮。

サガは、抱きかかえたムウを白羊宮のソファに下ろした。

サガ「ムウ。大丈夫か?」

毛布に包まり頭しか見えていないムウは、コクリと頷いた。

サガ「取り合えず、風呂に入って汚れを落とせ。一人で風呂に入れるか??」

ムウは内心、

人をいくつだと思ってるんだ、ごらぁ。風呂くらい一人で入れるわ!!

と、思ったが、黙って頷き、風呂に入ることにした。

毛布にくるまったままのムウが、トコトコと風呂に向かう姿を確認すると、サガは少し安心した。腰が立たなくなるほど、アイオリアにはやられていないらしい。

しかし、今回のことは、明らかに自分達年長組2人の監督ミスである。

まさか、アイオリアがたった5分のカノンの囁きで、あんな行動にでるとは・・・。しかし、あれだけ短時間で引っかかるということは、アイオリアにもその気持ちが少なからずあったとういことである。

サガは思わず、アイオリアはやはりアイオロスの弟なのだと、思わざるを得なかった。

 

サガは風呂から上がったムウを、自分の隣に座らせた。テーブルにはサガが入れてくれたコーヒーが置いてある。

サガ「ムウ。本当に大丈夫か?その、なんと言ってよいか分からんが・・・・・。」

ムウ「大丈夫です。こういうことには慣れていますから。」

サガ「だからといって、アイオリアがしたことは許されるべきことではない。もちろん、それをそそのかした連中もそうだし、それを止められなかった私達にも・・・・。」

あまりにもサガが真剣にはなすので、ムウは少々慌てた。

ムウ「サガ。アイオリアやカノンを攻めないでやってください。私は、気にしてません。お酒の席での話ですから・・・・。」

サガ「ムウ、お前・・・・。」

ムウはサガが大粒の涙を流し始めたのを見て、ギョッとなった。サガは怒涛の涙を流しながらムウの肩を抱いた。

サガ「ムウ、無理をするな。辛い時は辛いと言え。そうやって自分の中に全部閉じ込めるんじゃない。私達はお前に何もしてやることができないかもしれんが、話くらいは聞いてやれるんだ。」

酒の席での話。ムウはそれでサガが全てを理解してくれると思っていた。これが、全部酔っ払いが仕組んだお遊びだということを・・・。

しかしサガは、酒の席で酔っ払い、前後不覚になってしまっていたのだから仕方ないという意味で捕らえてしまったらしい。

ムウ「(・・・・サガも馬鹿ですねぇ。)」

サガ「ムウ。もし、私になど話せないというのなら、アルデバランやアイオロスでもいい。自分を殺すんじゃない、ムウ。お前まで私みたいに黒い人間になってしまうぞ。」

サガはムウを抱きしめながら号泣した。

ムウはサガの腕の中で、自分が黒くなったら妖気でも出るのかな?と、考えていた。

 

そのころ、獅子宮では、アイオリアがアイオロスの腕に抱かれてすすり泣いていた。

そしてそのころ処女宮では、デスマスク達がサガとアイオロスまでもを騙したと、皆で祝杯をあげていた。

 

結局、サガとアイオロスの勢いにおされ、誰も真実を話すことができず、アイオリアとムウの間には、大地溝帯が出来たのだった。


end