★兄貴といっしょ(誕生日プレゼント)
そして数分後。
シオン「ありがとうございます。それでは、ごきげんよう」
シオンは一方的に話を終えると、シュラに電話を投げ返した。
受け取ったシュラは、おじーさま、おじーさまと騒ぐ携帯電話を片手にシオンを仰ぎ見る。
シオン「後はまかせる」
シュラ「申し訳ありません女神」
と心の中で呟いて、シュラは電源をオフにした。
デスマスク「で、女神はなんと?」
シオン「うむ、女神のほうでも相当手をやいておるそうでのう。来年からはサガは使わぬと申された」
サガ(なーーーーーーっ!?!? そ、そんな女神まで!?)
アフロディーテ「女神の財団で使ってもらえなくなったら、かなりの損失じゃない? サガは可哀想〜」
アイオロス「自業自得だ」
アイオリア「でもいくらなんでもやりすぎなんじゃないのかな?」
アルデバラン「サガは商売でやってるんだから、甘やかしは良くないと思うぞ」
シュラ「アマゾンで使ってるから、女神が使わなくてもいいんじゃないのか? 俺達の知ったことじゃない、アイオロスを怒らせるほうが悪いんだし」
サガ(アマゾン……か、仮面ライダー!?)
カノン「んでも、悪いことばっかじゃねーんじゃん?」
アイオロス「愚弟っ、……肩をつもりか!」
サガ(カノン……お前はなんていい子なんだ!! 兄さん、見直したぞ! そうだ双子の弟であるお前が一番、私のことをよく知っているんだ!)
カノン「ふんどしに触ると幸せになれるらしいぜ!」
サガ(なんだとーーーーっ!? 私がいつあんないやらしい下着をはいたというのだ!!)
ミロ「ぷっ、なんだよそれ。だったらシャカのふんどしのほうがいいんじゃん?」
シャカ「神がふんどしにはご利益が無いといっている」
ミロ「ご利益あるんだ!!」
デスマスク「これが一度限りってんなら、こっちだって怒らないけどな。なんせこの前、ゲームを予約したら発売日になっても届かないんだぜ。冗談じゃない、そんなら店頭いって買ったほうが早いじゃーねかよ!」
シュラ「俺のDVDなんて、発送の連絡から一ヶ月もかかってんだぜ。サガは本当に夜もヤってんのかよ!って」
サガ(だからやっておらん!!)
アルデバラン「ペリカンのほうが有能ですよね。私が頼んだ本は、発送から即日で着きました」
サガ(ぺ、ペリカン!? ペリカン座…?)
アイオロス「もうこの話はやめだ、やめ! 名前を聞くのも腹が立つ!」
サガ(アーーーーーイオロ……スッ……欝だ、死にたい……死のうっ……)
サガは抱えた膝の間に顔を埋めて号泣した。
ムウ「そこでなにをしているのですか、サガ?」
手洗いに行こうとしたムウは、廊下に座り込んでどよ〜〜んとしたオーラを出しているサガに、流石にぎょっとなった。
サガ「……死にたい」
ムウ「どうぞご勝手に。ただし、アイオロスの誕生日プレゼントは忘れないでくださいね。これ以上機嫌が悪くなっては困りますから」
サガ「無理だ……」
ムウは超欝マックスのサガに無い眉を引きつらせ、額に青筋を浮かべるとヤマ拓の声で怒鳴った。
ムウ「アイオロスッ、サガがキムコになってます。どうにかしなさい!!」
アイオロス「サ、サガが!?」
サガと聞いてアイオロスは光速で戸口まで走ると、膝を抱えて座り込んで小刻みに震えているサガを見て頬を引きつらせた。
アイオロス「ムウ、サガになにをした」
ムウ「なにもしてません。どうせ、出るもの出なかったとか、床を汚したとか、尿の切れが悪かったとか、血が出たとかで鬱になっているのでしょう。死にたければ、さっさと死になさい!」
アイオロス「待てムウ。これはいつもの構って欲しいから死にたいってやつと、なんか違う。本気で死にそうだぞ……」
アイオロスの言葉を聴いて、他の黄金聖闘士もぎょっとなって戸口に集まった。
デスマスク「ウンコがでねぇくらいで本気死になんて、尋常じゃねーな」
シュラ「サガに尋常な時なんてあるのか?」
アフロディーテ「ないわよ」
ミロ「また禿げでも悪化したかな?」
サガ「……」
アイオリア「やばいよ、いつもなら『まだはげてない』って言うのに」
アイオロス「サガぁ〜、どうしたんだ。死ぬことなんてないんだぞ。私は多分何も出来ないが、よかったら話をきいてやるぞ」
サガ「寄るな、アイオロス。私が死ねばいいといったのはお前ではないか」
アイオロス「は?」
サガが膝を抱えたまま小宇宙を燃やした。
カミュ「まずい! 逃げる気です」
カミュが言うよりも早く、アイオロスが小宇宙を燃やしてサガを逃がすまいと青銀の髪の毛を掴んだ。
アルデバラン「いつもならウジウジと死ぬ死ぬいって行動しないのに、小宇宙を燃やして逃げようとするとは」
シャカ「本気ということかね」
カノン「しかも髪を引っ張っても、禿げるって泣き喚かない」
アイオロス「サガぁぁぁ、どうしたんだ。皆にいえないなら、私にだけ教えてくれ。むやみに命を捨てるもんじゃないぞ」
サガ「……」
アイオロス「教皇、なんとかしてください!」
シオン「知らぬ、勝手にさせておけ」
アイオロス「そんな冷たいこと言わないでくださっ…・・・サガ!!!」
アイオロスは突然サガに手を掴まれて、ぎょっとなってサガを見下ろした。
サガはそのままゆらりと立ち上がると、首を下にかしげ顔の前にカーテン状態になって垂れてる髪の毛の間から、アイオロスをねめつけた。
カノン「サ、サダコだ!! 兄貴がサダコになった!!」
ミロ「こわっ!!!」
アイオロス「サガぁ? 美人さんが台無しだぞ……(こわいっ!)」
アイオロスはサガに掴まれた手を引っ張られ、反射的に自分のほうに引き戻した。だが、サガの引っ張る力の方が強く、アイオロスの手はサガの左胸に引き寄せられていった。
サガ「そんなに私のことが嫌いで、自殺もさせぬというなら、殺せ! 私など死ねばよいのだろう!!」
アイオロス「あばばばばば、サガ、ちょっと待て。一体なにがあったんだ」
サガ「とぼけるな!! 全部聞いていたのだぞ。あんなに大きな声で怒鳴っておいて、聞こえてないとでも思ったのか!」
アイオロス「だからなにが?」
サガ「この期に及んでとぼけるのか!」
アイオロス「とぼけるもなにも……」
サガ「皆であんなに言っておいて、その上女神にまで捨てられた今、私がどうして生きていけるというのだ。どうせ私は使えないのであろう。私は24時間やりっぱなしの淫乱で、給料泥棒で、ふんどしがよいのだろう!!」
うわーーーーっと泣き崩れたサガに、一同は顔を見合わせた。
最初にプッと吹き出したのはムウだった。
ムウ「バカすぎですね」
シュラ「救いようがないほどのな」
カノン「……こいつと少しでも血が繋がっているかと思うと、恥ずかしいぜ」
アルデバラン「サガは面白いですねっ、はははははははっ」
シオン「愚かな」
ミロ「サガってたまにおもしれーよな」
アイオロスは頑張って笑いを飲み込むと、しゃがみこんでサガの肩に優しく手を置いた。
アイオロス「サガ。私たちが話していたのはお前のことじゃないんだぞ」
サガ「いばららぼーうぞい゛(いまさらもうおそい)」
サガは泣きじゃくりながら叫んだ。
アイオロス「サガ違いなんだよ、サガ。俺達が話していたのは、サガワっていう運送会社のことだ」
サガ「……!?」
デスマスク「アイオロス、このバカにはそんな風に説明しても理解できねーぜ」
サガ「???」
アイオロス「私の誕生日プレゼントがな、その運送会社のせいで届かないんだ」
カミュ「アイオロス。もっと分りやすく言わないと、ダメです。今のサガはかなりバカですから」
アイオロス「う、うーーーん。困ったな、私も難しいことは良く分らんし。シュラ、頼む」
シュラ「サガ。よぉく聞いてください。サガでも分るように説明してあげますから」
サガ「……」
シュラ「今回、アイオロスの誕生日を皆で買うことにしたんです。もちろんサガは特別なプレゼントがあるでしょうから、サガには負担してもらいませんでした。それで、インターネットを通じて通販したんです。本来なら今日までにそのプレゼントが届くはずなのに、運送業者のサガワの作業が遅れて届いてないんです。それでアイオロスが怒ってしまったんですよ」
サガ「……サガ……ワっ!?」
アフロディーテ「サガワの遅延は有名なんだってさ、サガぁ〜。だからサガは悪くないのよ、んふっ」
サガ「ア、アマゾンというのは? 聖闘士をやめて仮面ライダーにでもなれってことでは?」
カノン「なんでそんなくだらねぇマニアックなこと知ってるんだよ」
アルデバラン「通販のお店の名前がアマゾンなんですよ、サガ」
事実を知ったサガの顔がみるみる真っ赤に染まっていくのを全員が見た。
アイオロス「まぁ、大人気なく怒って怒鳴り散らした私が悪い、すまなかったなぁサガ。でも私には今夜はもっと素敵なプレゼント(サガ)があるから、安心してくれ」
アイオロスは満面の笑みを浮かべてサガを抱きしめようとした。
しかしアイオロスは、サガにおもいっきり突き飛ばされて尻餅をついた。
サガ「……欝だ、死にたい」
アイオロス「は?」
サガ「こんな生き恥をさらしてまで生きていけるかぁぁぁぁぁ」
アイオロス「ちょっ、……まっ!」
ミロ「あっ、逃げた」
涙をちょちょぎらせて光速で逃げたサガは、あっという間に豆粒になりアイオロスの視界から姿を消した。
シャカ「追いかけなくていいのかね」
アイオロス「ああ、大丈夫。あの泣き方は本気で死のうっていう泣き方じゃない……たぶん」
ミロ「でも、このまま放っておいたらサガとエッチできないんじゃん?」
アイオロス「あ゛っ!!」
シオン「はよう捕まえに行かぬと、サガからの誕生日ももらえぬのぅ」
アイオロス「サガーーーーーーッ!!」
アイオロスは絶叫を轟かせ、光速でサガの後を追いかけた。
シオン「もっとも、捕まえたとてサガからは何ももらえぬであろうがのう」
黄金聖闘士達は互いに顔を見合わせて苦笑を漏らした。
シオンの言葉どおり、アイオロスは結局誕生日プレゼントをもらえぬまま11月30日を終えたのであった。