ムウちゃんといっしょ(ないものねだり  その1)

 

シオンよりも早く目を覚ましたムウは、自分の頭を抱えたままグースカピーと眠りながらも、頬をすり寄せてくる師に、露骨に嫌な顔をして毛のない眉を寄せた。

ムウ「・・・・?・・・ない。」

しかし、ムウはふと気付いた。眉毛がない事は今更気づくまでもない。

ムウはそのままシオンの頬に自分の頬を当て、スリスリとすりかえす。シオンの18歳のつややかな頬は、ムウにとって疑問を与えるに十分だった。

ムウは超能力でシオンの腕の中から逃げ出し、ジャミール服をまとうと、白羊宮から出て行った。

 

金牛宮

アルデバランは夢の中で、愛しいムウと乳繰り合っていた。

アルデバラン「ムウは可愛いなぁぁぁ〜〜〜。」

夢の中でムウは白い繊手でアルデバランの頬をいとおしげに撫でまわし、ふくよかな頬を摺り寄せ甘い声でおねだりをしている。

しかし、どうも夢にしては頬にあたる感触がリアルで、ムウの匂いがすると思い目を開けると、薄暗闇の中に輝く紫色の瞳に、アルデバランは驚いて飛び起きた。枕もとにいつの間にかムウが座っているのである。

アルデバラン「む、ムウ!!どどど、どうしたんだ!教皇様に折檻されて逃げ出してきたのか?!」

ムウ「おはようございます、アルデバラン。髭触らせてください。」

アルデバラン「ひげ?」

ムウ「・・・すごい・・・・昨晩はなかったのに・・・こんなに生えてる・・・。」

ムウはアルデバランの頬から顎を何度も摩りながら、つぶやいた。アルデバランの頬は、その髪の色と同じ黒く短い髭で覆われている。

アルデバラン「夕方にも剃ってるからな。」

ムウ「え?!二回も剃るんですか?!」

アルデバラン「でないと、クマみたいになってしまうからな。私の身長だと洒落にならんのだ。」

ムウ「一日二回・・・・。」

アルデバラン「ムウの頬はツルツルで可愛いなぁ。」

ムウ「つ、ツルツル?!」

アルデバラン「人形みたいで可愛いぞぉ〜〜〜ん〜〜〜〜。」

アルデバランはムウのつややかな頬にキスをしようと唇を近づけたが、その横っ面をムウにはたかれ目を丸くした。

アルデバラン「ど、どうしたんだ、ムウ?」

ムウ「ふっ・・・毛深い貴方に私の悩みなんてわからないでしょうね・・・・。」

ムウはそう言い残して金牛宮から姿を消した。

 

 

双児宮・浴室

ムウ「ごめんください。」

サガ「!!!!!!!」

突然目の前に現れたムウにサガは目が点になった。

ムウ「また自分の裸に陶酔していたんですか?。ちょっと髭触らせてください。」

全裸で硬直しているサガの頬をペチペチ叩いて、ムウはそう言うと、サガの頬から顎を何度も摩る。

ムウ「・・・・アオカビが生えてる・・・・。」

サガの顎には短く青い髭が所々に顔を出していた。

サガ「か?カビ?」

ムウ「青くてカビみたいです。汚い髭ですね。」

サガ「・・・・・。これから髭を剃るのだ、当然だろう。」

ムウ「やっぱり一日二回髭剃るんですか?」

サガ「いや、2日か3日に1度くらいだが・・・。」

ムウ「髭を剃るときにはカビ落しスプレー使うんですか?」

サガ「そんなものを使うわけなかろう。大体お前はこんな時間に何をやっているのだ。風呂に入ってる時は一人にさせてくれって、いつも言っているだろう。」

ムウ「全裸で説教しないで下さい。貴方こそこんな時間から風呂に入ってるのですか?馬鹿ですねぇ。あ、それとも朝帰りですかぁ?ご盛んですねぇ。」

サガ「う゛。」

図星をつかれたサガが再び硬直している間に、ムウは双児宮の巨大な浴室からスタスタと歩いて出ていった。

そして、ムウが向かった先は、カノンの寝室だった。

ドアを開けずに部屋に入ると、カノンが眠るベッドに腰をおろし、カノンの頬から顎を何度も摩る。

ムウ「・・・・カノンもアオカビが生えてる・・・・。」

サガとおなじくカノンの顎にも短く青い髭が所々に顔を出していた。

カノン「・・・う゛・・・・兄貴ぃ・・何するんだ、ゴラ!・・・」

ムウ「おやおや、私をサガと間違えているんですか。馬鹿ですねぇ。」

更にムウが頬を摩りつづけると、カノンは唸りながらようやく目を覚まし、薄暗闇の中に輝く紫色の瞳に気付いて飛び起きた。

カノン「ま!麻呂!なにやってんだ、ゴラ!!」

ムウ「髭の調査です。」

カノン「髭ぇぇ?!」

ムウ「カノンは一晩でカビが生えるんですか?」

カノン「カビ?」

ムウ「ひげですよ、髭。あ、貴方の場合、カビではなくコケですか。」

カノン「何だとゴラ?!んなもん生えるか!さっさと出て行け!」

ムウ「ふっ、さっき、サガに撫でられてると思っていましたね。」

カノン「何だと?!俺はホモじゃねぇ!てめーと一緒にするな!」

ムウ「『にぃさん〜〜もっと〜〜』とか、言ってたくせに。」

カノン「なななな!んなこと言うわけねぇだろ!出て行け!」

カノンがムウに枕を投げつけると、ムウは枕が当たる前にテレポートでその場から消え去った。

 

巨蟹宮

デスマスクは夢の中で、美人の彼女と乳繰りあっていた。

デスマスク「ん〜〜〜〜ジェニファ〜〜〜」

夢の中で彼女は日に焼けた繊手でデスマスクの頬をいとおしげに撫でまわし、甘い声でおねだりをしている。

しかし、どうも夢にしては頬にあたる感触がリアルで、嫌な予感がすると思い目を開けると、薄暗闇の中に輝く紫色の瞳と至近距離で目が合い、デスマスクは驚いて飛び起きた。枕もとにいつの間にかムウが座っているのである。

デスマスク「ままままままままままままままままままま!麻呂!!!」

驚愕の余りデスマスクはベッドから飛びのき、そのまま床に尻餅を着く。

ムウ「また新しい彼女が出来たんですか?あんまり浮気ばかりしていると聖衣に見捨てられますよ。」

デスマスク「な!な!な!!!!なにしにきた!夜襲とは卑怯だぞ!」

ムウ「貴方と一緒にしないで下さい、髭の調査です。」

デスマスク「髭?」

ムウ「ふ・・・予想通り毛蟹ですね。」

デスマスク「当たり前だ。かっこいいイタリア人には髭が似合うのだ。」

ムウ「貴方も一晩でボーボーになるんですか?」

デスマスク「当然だ、女が俺に頬擦りしながら『デッちゃんの髭が当たって気持ちイイ(はぁと)』とうっとりするのだ。」

ムウ「うっとり・・・するんですか。」

デスマスク「ぐははははっ!!これが男の色気ってやつだ!女どもはこの俺の髭にもうメロメロだぜ!!」

ムウ「はぁ・・・・・・やっぱり、男は髭ですよね・・・。」

デスマスク「麻呂、お前は髭はえねぇのか。」

ムウ「・・・・生えないんです。」

デスマスク「くくく、お子様だな。」

ムウ「お、おこさまぁ?!」

デスマスク「エジプトじゃ髭の生えてない男は大人として認められんのだ。」

ムウ「ここは、聖域です!」

デスマスク「ああ、そうだったな、ここでは男として認められていないんだったな、ぐはははは!」

馬鹿笑いするデスマスクにムウはスターダストレボリューションをぶち込むと、巨蟹宮から姿を消した。

 

獅子宮

アイオリアは夢の中で、愛しい魔鈴と乳繰り合っていた。

アイオリア「魔鈴〜〜聖域で結婚式だぁぁぁ〜〜〜。」

夢の中で魔鈴は聖衣を装着した手でアイオリアの頬を撫でまわしている。

しかし、どうも夢にしては頬にあたる感触がリアルで、魔鈴にしては乱暴じゃないと思い目を開けると、薄暗闇の中に輝く紫色の瞳と至近距離で目が合い、アイオリアは驚いて飛び起きた。枕もとにいつの間にかムウが座っているのである。

アイオリア「?!?!?!?!?!!!!!!ムムムムムムム、ムウ!?!」

確か昨日は酒も飲んでないし、ムウを連れ込んだ記憶もない。アイオリアはまたムウを襲ってしまったのではないかと顔を青くする。

アイオリア「・・ムウ、その、あの、おおお、俺はお前を襲ったりしていないよな?」

ムウ「はぁ?私は貴方に襲われるほどヘッポコではありません。」

アイオリア「じゃあ、俺のベッドで何をしているんだ?」

ムウ「髭の調査です。」

アイオリア「ひげ?」

ムウ「顔に鬣が生えてますね・・・・・。喉までつながってる。どこからどこまで髭で、何所から何所まで胸毛なんですか?」

ムウはアイオリア頬を撫でる手を顎から喉へ、そして胸へと滑らせる。そのしなやかな指の動きに、アイオリの顔は青から赤へと変わっていった。

ムウ「どうしてこんなに毛が生えてるんですか?」

アイオリア「おおおお、男なんだから髭が生えていて当然だろう・・・・うっ。」

吹き出しそうになる鼻血をおさえようと、鼻に手を持っていった瞬間、アイオリアはムウの鉄拳で顔面を殴られ、そのまま鼻血を吹き出した。殴られて鼻血が出たのか、興奮して鼻血が出たのかの判別はつかない。

ムウ「ふっ・・・そんなに私を男として認めたくないんですか。全身レオの貴方に私に悩みなんてわからないでしょうね・・・・。」

そう言い残してムウは獅子宮から姿を消した。


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