ミロたんといっしょ15(香る季節 その1)

 

昼頃。ミロは無人のはずの宝瓶宮に主の小宇宙を感じ、自宮のベッドから飛び起きた。

ミロ「カミュ、帰ってきたのか!?」

愛しのカミュがシベリアに帰ってきたのかと、ミロはジーンズだけを慌ててはくと、天蠍宮を飛び出した。

 

宝瓶宮

シベリアから帰ってきたカミュは、光速で飛び込んできたミロに抱きつかれた。

ミロ「カミュ、お帰り。」

カミュ「ああ、ただいま。ミロ。」

カミュはミロの顎を片手で掴むと持ち上げ、いつも通り唇にキスをした。

ミロ「ん・・・・・。」

ミロから口を離すと、カミュはそのまま唇を首筋へ移動し、愛撫する。

久しぶりの情事とあって、ミロはカミュに身体を預ける事にした。

が、その動きをふと止め、カミュは二股眉をしかめた。

ミロ「どうしたんだ、カミュ?」

カミュ「くさい。」

ミロ「え!?」

カミュ「お前、臭うぞ。くさい!!」

ミロ「えっ、そんなことないって。続きしてくれよ。」

カミュ「いや、くさい。入ってきたときから、少し気になってはいたのだが。やはり、駄目だ!ミロ、いつ風呂に入ったのだ?!」

ミロ「えっと、昨日の夜寝る前。」

カミュ「朝は?」

ミロ「今起きてきたばかりだし・・・・、まだ。そんなことより、早く続きしようぜ、カミュゥ〜〜。」

カミュはゴロゴロと擦り寄ってくるミロを、小宇宙を込めて押しのけた。

カミュ「近寄るな!!くさいといっているだろう!」

ミロ「な、なんだと!!そんな言い方ないだろう!お前こそ、フランス人なんだから、くさいのは同じじゃないか!」

カミュ「ふんっ。私はくさくなどない!」

嗅いでみろ!、と言わんばかりにカミュが胸を反らしたので、ミロはカミュの首筋から、脇、腹部にかけて、クンクンと嗅いでみた。

ミロ「く、くさくない。」

カミュ「ふっ。凍気が匂いを消してくれるのだ。」

ミロ「っていうか、お前、冷凍庫の匂いがする。」

カミュ「え゛っ!?」

ミロ「ああ、やっぱり冷凍庫くせぇーぞ、お前。」

カミュ「な、なんだと!?。くさいお前に、そのようなことを言われたくない!!出て行け!!」

ミロ「な、なんだとぉーーーーっ!?」

カミュ「くさい!近寄るな!!」

ミロ「う、うわーーーーーーーーーーん。」

最愛のカミュにくさい、出て行けと言われ、ミロは悔し涙をちょちょぎらせて、宝瓶宮から出て行った。

もちろん、何故か上に向って駆け出す癖のあるミロが飛び込んだ先は、双魚宮である。

 

双魚宮

アフロディーテ「あら、坊や。またカミュと痴話喧嘩?」

ミロ「俺、くさいかな?」

アフロディーテ「う゛っ・・・・・・・。」

アフロディーテは、数メートル先にいるミロの匂いをかぐと思いっきり顔をゆがめた。

アフロディーテ「くっさぁぁぁぁ!!!」

ミロ「え゛!?」

アフロディーテ「あんた、ちゃんと風呂に入ってるの!?」

ミロ「昨日入った。」

アフロディーテ「はぁ、まったく相変わらずのダメダメ坊やだね。」

ミロ「っていうか、なんでお前はくさくないんだよ!!」

アフロディーテ「ふんっ、この私がくさくてどうする、この馬鹿!!」

嗅いでみろ!、と言わんばかりに、ふんぞり返るアフロディーテに鼻を近づけ、ミロはアフロディーテの首筋から、脇、腹部にかけて、クンクンと嗅いでみた。

ミロ「あっ、薔薇くせぇ!!」

アフロディーテ「くさいとは失礼な。芳しきこの香が分からないとは、まだまだお子様だね。」

ミロ「なんだと!?だいたい、なんでそんなに薔薇くせぇんだよ!」

アフロディーテ「ふふ〜ん♪。そりゃ、私は朝夕、ローズバスに浸かってるし、アフロ特製ブレンドの香水・ロイヤルデモンローズを使っているからね。」

ミロ「俺にもくれ!」

アフロディーテ「はぁん?。冗談じゃないね。これは私の香なんだ。私だけの特別の香!!だれがションベンくさい小僧になど、くれてやるものか!」

ミロ「なんだと!?このケチオカマ!!」

アフロディーテ「だれが、ケチだと、この小僧!!出て行け!!」

ミロ「言われなくとも、こんな薔薇くせぇ、便所みたいとな所出て行ってやる。」

アフロディーテ「べ・・・・ト、トイレェ!?このクソ坊主、死んで詫びをいれろ!ロイヤル・・・・・!!!」

ミロは慌てて双魚宮から逃げ出すと、宝瓶宮と通り抜け、磨羯宮へと逃げ込んだ。

 

磨羯宮

ミロ「シュラは毛深いし、見るからにくさそうだよな。おーい、シュラ!」

シュラ「なんだ、小僧。ヤってほしいのか!?」

ミロ「馬鹿、そうじゃないって。」

シュラ「?」

ミロ「ちょっと匂い嗅がせてくれ。」

シュラ「はぁ?」

ミロ「お前さ、くさそうじゃん?毛深いし。」

シュラ「誰がくさいだと?このクソ坊主!」

ミロ「だって、見るからにくさそうだもん。」

シュラ「ふんっ、人を見た目で判断するな!!」

嗅いでみろ!、と言わんばかりに、ふんぞり返るシュラに鼻を近づけ、ミロはシュラの首筋から、脇、腹部にかけて、クンクンと嗅いでみた。

ミロ「あれ?。なんかいい匂いがする。」

シュラ「当然だ。色男というものは、常に自分の清潔さを心がけなければならんのだ。もちろん俺だって、それなりに体臭はあるさ。だがな、それを消す為に、香水をつけているのだ。」

ミロ「こ、香水だと!?男のくせに、そんなものつけているのかよ?」

シュラ「ふっ・・・、これだから、純聖域培養の田舎者は困るぜ。」

ミロ「い、田舎者だと!?」

シュラ「男が香水をつけるなど、常識だぞ。くさいお前には分かるまいがな。」

ミロ「そうなんだ・・・・、常識なんだ。知らなかった。」

純聖域培養のミロは、やっぱり世間に疎かった。

シュラ「小僧。風呂に入って出直して来い!!そしたら俺が可愛がってやる!!」

ミロ「誰がお前になんか可愛がってもらうか、この万年発情山羊!!」

ミロは尻に危険を感じ、慌てて磨羯宮から飛び出した。

 

人馬宮

ミロ「ふふーーーん、アイオロスはくさそうだよな。いつも上半身裸だし、筋トレしているし・・・・。って、あれ?」

人馬宮に目的のアイオロスがいないので、ミロは渋々下へと降りていった。

 

処女宮

相変わらず、蓮の台座の上で空中浮遊をしながら瞑想しているシャカに鼻を近づけ、ミロはクンクンと匂いを嗅いだ。

途端、顔をゆがめる。

ミロ「くさっ!!なんだこの匂い・・・。」

シャカ「何をしているのだね?」

ミロ「ああ、ちょっと匂いの調査をな。」

シャカ「で、調査の結果はどうだったのかね?」

ミロ「カミュは冷凍庫くさいんだ。アフロディーテは薔薇くさくって、シュラはいい匂いがしたな。」

シャカ「で、君はどうなのだね?」

と、シャカは思いっきり鼻の穴を広げ、息を吸った。そして、思いっきり眉をしかめた。

シャカ「・・・・・・・・・・・・。」

ミロ「やっぱりくさいかな、俺?」

シャカ「アゴラ!シヴァ!、来るのだ!!」

シャカに呼ばれて現われた弟子2人を見て、ミロが眉を潜めた。

ミロ「なんだ、この濃いインド人は?」

アゴラ・シヴァ「お呼びでございましょうか、おシャカさま!」

シャカ「くさいのだ!」

その一言で全てを察した濃い弟子2人は、そそくさと処女宮の4隅に小さな壺のような物を置くと、なにやら火をつけ始めた。

ミロ「なぁ、シャカ。あいつら何をやってるんだ?」

シャカ「見てわからぬのかね?」

ミロ「分からないから、聞いているんだが・・・・・。ん??」

アゴラ「おシャカさま。本日は桃の香でございます。」

シャカ「よかろう。」

ミロ「香?」

ミロが首を傾げていると、どこからともなく匂いのついた煙が漂ってきた。

シャカ「ふっ、これでくさくはなかろう。」

斜に構えて悦に入るシャカに、ミロはますます眉をしかめた。

ミロ「お前さ。いつもこうやって、香を炊いてるのか?」

シャカ「当然だ!」

ミロ「あぁ、だからくさいんだな。」

シャカ「どういうことだね?」

ミロ「シャカさぁ、お前風呂に入ってないだろう。香の匂いでごまかすのはいいんだけどさ、いろんな香の匂いが染み付いて、すんげぇくさいんだけど。」

シャカ「なんだと?」

ミロ「お前、風呂に入ったほうがいいよ。あと、その袈裟も洗ったほうがいいと思うけど。香とカレーの匂いで、マジでくさいぞお前!!」

シャカ「!?く、くさいだと!!アゴラ、シヴァ!もっと香を炊くのだ!」

アゴラ・シヴァ「はい!」

ミロ「やめろ、やめろ!余計にくさくなる!!」

ミロはあまりのお香くささに耐え切れず、処女宮を飛び出した。

 


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