ミロたんといっしょ16(白羊宮の箱 その1)

 

ムウはよく、アルデバランから物を貰う。というより、アルデバランがムウにしょっちゅう物をくれる。菓子やケーキの類ならたまに外出したシュラやアフロディーテ、カミュやサガもくれたりするのだが、アルデバランはそれ以外にも物をくれるのだ。

今日もまた朝食を相伴しようと金牛宮からおりてきたアルデバランの手には、ムウへの貢物が握られていた。そしてムウは手渡されたそれに首をかしげた。

ムウ「これなんですか?」

アルデバラン「おみやげだ、ムウ。」

ムウ「そうですか、ありがとうございます。」

ムウの顔にぱっと笑顔が広がる。ムウはそれが何かも聞かずにエプロンのポケットにしまった。

 

その日の深夜2時

シュラとデスマスクとアルデバランのラテントリオは、ほろ酔い気分で十二宮の階段を上っていた。デスマスクとシュラは小さなビニール袋を一つずつぶら下げ、アルデバランはそのビニール袋を10袋もぶら下げていた。その袋には、『アミューズメントパーク アテネ』と書かれている。袋の中身はUFOキャッチャーなどのプライズゲームで獲得した景品が入っていた。
3人は飲みにいった帰りに、このゲーセンに行くのが日課になっていたのだ。

デスマスク「おうッ、アルデバラン。今日の収穫はどうでぇ?」

アルデバラン「えっとですね、大小あわせて35個ですかね。」

デスマスク「たった1時間で35個か・・・・。」

アルデバラン「はい。」

シュラ「お前、本当にそういうくだらない才能だけはあるよな。」

アルデバラン「そんなに誉めないで下さいよ。」

シュラ「ほめてねぇよ。」

デスマスク「で、お前、それ全部金牛宮に置いてるわけ?」

シュラ「全部おいてたら、そのうち金牛宮がUFOキャッチャーの筐体になるな。」

アルデバラン「そうなんですよ。溜まる一方で困っているんですよね。だから、ブラジルに帰るときに子供達のお土産としてもってかえっているんですよ。」

シュラ「ああ、なるほどな。さすがだな。」

アルデバラン「デスマスク達はどうしてるんですか?」

デスマスク「そのまま放置。たまったら、積尸気の穴に捨ててみたり・・・。」

シュラ「俺は夢の島に捨ててるぜ。」

デスマスク「夢の島?」

シュラ「通称、天蠍宮って呼ばれている所だ。」

デスマスク「ああ、あそこか。それはいいな。」

アルデバラン「えっ!?捨てているんですか?」

シュラ「だって、そうだろう?分けのわからないキーホルダーだの、フィギュアだのと、そんなもの使わないじゃないか。」

デスマスク「そうそう、この歳でぬいぐるみってーのもな。あと、貯金箱なんてもってのほかだぜ。」

アルデバラン「確かにそうですけどね。」

シュラ「大体さ、プライズマシンっていうのは、あれは欲しいから取るっていうよりも、取る快感に浸るものだろう。」

デスマスク「そうともよ。だから、取ったら捨てる!」

アルデバラン「だったら、彼女にあげたらどうですか?」

デスマスク「はぁ?お前な、あんな安いものあげて喜ぶ女がどこにいる。ああいうのはな、彼女が欲しがったときに、一発で取るのがかっこいいんだよ。」

シュラ「普通のデートで持っていったら、もろにいらないもの押し付けてるのバレバレだもんな。」

デスマスク「ってかよ、普段からゲーセンに行っている暇人だなんて思われたくねぇだろう。でなくても、俺達の職業怪しいのに、ゲーセン通いしてるように見られたらそれこそ・・・。」

デスマスクは業とらしく身震いをして、首を振った。

アルデバラン「そうですか?ムウは喜びますよ。」

シュラ「ムウ?」

アルデバラン「はい。いつも気に入った景品をムウにあげているんです。」

デスマスク「またまたまたぁぁぁ。ムウが食い物以外で喜ぶわけないだろう。」

アルデバラン「そんなことありませんよ。今朝、携帯のストラップあげたら喜んでいました。」

シュラ「はっ?携帯のストラップって、あの変なピンクのクマがついているやつか?」

デスマスク「なぁ、ムウって携帯持ってるのかよ?」

アルデバラン「持っているわけないじゃないですか。その前はですね、ぷよ〇よの貯金箱をあげたんです。」

シュラ「おいおい、ムウはそもそも金をもっていないだろう。」

アルデバラン「でも喜んでいましたよ。そのもっと前は、メモ帳、カレンダー、ライター、キーホルダーとか・・・。今までに数えきれないくらい、ムウにあげています。」

デスマスク「ふーん。ムウは全部喜んだのか?嫌な顔したことないのか?」

アルデバラン「ないです!」

シュラ「あいつ、貧乏性だからな。もらえるものなら、ゴミでもうれしいんだろう。」

デスマスク「ああ、なるほどな。」

シュラとデスマスクは妙な納得をし、金牛宮でアルデバランに別れを告げた。


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