ミロたんといっしょ21(にいちゃんとあそぼう!)

 

アイオロス12歳とサガ13歳はシオンに呼び出され、執務室に来ていた。

教皇シオン「お前たち、後輩の育成はどうなっておる」

アイオロス「はい、教皇!まかせてください。ばっちりやってます!」

サガ「シュラもデスマスクもアフロディーテも、最近は見違えるほどに実力をつけてきました」

アイオロス「まぁ、アイオリアとミロはまだまだですけどね」

サガ「し、しかし、彼らも幼いながらに、しっかりと聖闘士を目指して修行に励んでおります。私たちの指導に至らない点はあるかと思いますが……」

教皇シオン「うむ、よろしい。しかしのぅ、お前たち二人はどうなのじゃ?」

サガ「は?私たち……?」

アイオロス「はい、教皇っ!そりゃぁ、もう。ばっちり、しっぽり、ラブラ………うおっ!!!!」

サガの鉄拳がアイオロスの顔面に食い込んだ。

教皇シオン「そのようなことは聞いてはおらん。確かに後輩を育てることは、お前たち二人にとっても得る物も大きい。しかし、それにかまけてお前たち自身の普段の修行を怠っておるのではあるまいな?」

サガ・アイオロス「ぎくりっ!」

教皇シオン「ほう、その顔は怠っておるという顔じゃのぅ」

アイオロス「そ、そんなことありませんよ、教皇!なぁ、サガ」

サガ「はい。私たちも日々訓練に励んでおります」

アイオロス「そりゃぁ以前にくらべたら、おろそかにしてるかもしれないですけど。でも、あいつらチビたちの面倒を二人だけで見るの大変なんですよ」

教皇シオン「見苦しい言い訳をするでない。お前たち二人は、かりにも黄金聖闘士であろう。そのようなことでどうするのじゃ。よかろうぅ、明日お前たちをテストしてやろう」

サガ「テスト?」

アイオロス「げっ!」

教皇シオン「そうじゃ。特に学力に関してのテストじゃ。体力、力、技は普段からしっかり磨いておるようじゃからのぅ」

アイオロス「げげっ!!ちょっと待ってください、教皇。俺たち、チビ達の面倒みるので大変なんですよ」

教皇シオン「だからなんだというのじゃ。以前よりも実力はあがっていて当然、明日の礼拝後、10時半に執務室に来るがよい。余が直々に作成した実力テストを行うから覚悟せい」

アイオロス・サガ「そ、そんなっ!!!」

この世の終わりのような表情をした二人に、シオンは仮面の下で苦笑をもらした。

教皇シオン「仕方ないのぅ。余はこれでも慈悲深い教皇じゃ。試験範囲くらいは教えてやろうかのぅ」

サガ「教皇さまっ、ありがとうございます!!」

アイオロス「そうこなくっちゃ、さすが教皇!!!」

教皇シオン「うむ、そうじゃのぅ……明日は理系関係にするかのぅ。試験範囲は理系じゃ、もちろん黄金聖闘士なら満点をとってあたりまえの簡単なテストじゃ」

アイオロス「範囲ってそれだけ!?」

サガ「満点をとれなかったら?」

教皇シオン「当然黄金聖闘士として失格、聖衣没収かのぅ」

アイオロス「しししししししっかくぅ〜〜〜?」

サガ「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼっしゅ〜〜!?」

二人は青い顔をして執務室を後にした。

 

その日の夜、聖域の某所。

アイオロスは普段生活に使っている家の書斎で大きな唸り声をあげていた。

頭にはいつもの赤いバンダナではなく、「必勝(ギリシャ語)」のはちまきがまかれていた。

そして両脇に山積みになったテキストの壁に囲まれて、一心不乱に生物のテキストを丸暗記していた。

そこにシュラ8歳が部屋に飛び込んできた。

シュラ「アイオロス、たいへんだ!アフロディーテが!」

アイオロス「ああ゛!?こっちも大変なんだ」

シュラ「でも。アフロディーテがデスマスクと喧嘩して、部屋中バラだらけにしちゃって……」

アイオロス「そんなもん、自分たちで片付けろ!!」

シュラ「はいっ」

シュラはアイオロスに怒鳴られて部屋を飛び出していった。

しばらくして今度はデスマスクが飛び込んできた。

デスマスク「おい、アイオロス!!!てぇへんだ(大変だ)!アフロディーテとシュラが喧嘩しはじめた!」

アイオロス「はっ?知るかっ、勝手にやらせておけ!」

デスマスク「でも、部屋中バラの花びらの細切れだらけになっちまって……」

アイオロス「自分たちの責任なんだから、自分たちでどうにかしろ、馬鹿っ!」

デスマスクはアイオロスに怒鳴られて、慌てて部屋を飛び出した。

しばらくして今度はアフロディーテが飛び込んできた。

アフロディーテ「ちょっとっ、アイオロス」

アイオロス「なんだ」

アフロディーテ「デスマスクとシュラが喧嘩して困ってんだけど、どうにかして!」

アイオロス「ことの発端はお前だろうが、さっさと部屋を片付けろっ!」

アフロディーテ「なんだって!?サガならそんなこと言わないのに、この鶏!!」

アフロディーテはブーブー怒って出て行った。

しばらくして……。

アイオリア「にいちゃん、おなかすいた」

アイオリアがオドオドしながら部屋に入ってきた。

アイオロス「知らんっ。勝手に食え。シュラ達に作ってもらえ」

アイオリア「シュラ達、喧嘩してるもん」

アイオロス「だったら今日の飯はなしだ」

アイオリア「にいちゃん、腹減ったよ」

アイオロス「だったらどっかに飯食いにいけ」

アイオリア「にいちゃん……」

アイオロス「アイオリアっ!!兄ちゃんの言うことがきけないのか!!」

アイオリア「……はい

アイオリアは涙目になりながら部屋を出て行った。

しばらくして、今度は聖域にきたばかりのミロが飛び込んできた。

ミロ「おい、アイオロズ!!オツムさ悪いから、ベンキョしてると??」

アイオロス「ああ、悪かったな。お前と違って馬鹿なんでな!」

アイオロスはやけっぱちになっていた。

ミロ「なぁ、ご飯はどうなっとるだよ?」

アイオロス「シュラたちに面倒みてもらえ」

ミロ「あいつら馬鹿だから喧嘩してるべよ」

アイオロス「だったらアイオリアと二人でなんとかしろ」

ミロ「アイオリア?アイオリアなら部屋の隅でいじけてるがよ」

アイオロス「だったら今日の飯はなしだ」

ミロ「なぁなぁ、アイオロス。そげな冷たいことぬかさんといておくれやす。おなかすいたってばよぉぉぉぉ」

ミロはアイオロスのズボンを引っ張った。

アイオロス「うるさいっ!!!!」

ミロ「あんだよ、アイオロスのけち!!」

ミロはぷぅと膨れて部屋を出て行った。だが、ミロは部屋のドアを閉じるのを忘れていた。

デスマスク「このオカマもどき!!ろくすっぽ技も使えねぇクセに、中途半端に技だそうとしてんじゃねぇよ!」

アフロディーテ「なんだと、この田舎者!だいたいあんたが最初にアイオロスの様子見に行けってえらそうに命令したんだろうが!!」

シュラ「お前等、怒られるのは俺なんだから、やめろよ!」

デスマスク「うわっ、てめぇ、シュラ!物なげんじゃねぇよ!!」

ゴイン!

アイオリア「うっ、うっ、うっ……にいちゃん……」

ミロ「うっ、うっ、うっ、うわーーーーーーーん」

シュラが投げたケチャップのビンが部屋の隅でいじけていたアイオリアの頭にクリーンヒットし、アイオリアが泣き始めると、腹が減ってひもじくなっていたミロも泣き始めた。

ぎゃ−ぎゃ−と騒がしいリビングに勉強どころではなくなったアイオロスがついに立ち上がり、リビングに顔をだした。

アイオロス「てめぇら、うるせーーーーーーーーーーー!少しは静かにしろっ!!!

ピタッと全員の動きがとまると、全員が恨みがましい視線でアイオロスを睨みつけた。

アイオロス「いいか、お前たち。俺は明日、試験があるんだ。分かるか?テストだ、テスト。だから静かにしろ。いいな!」

その恐ろしい形相に、デスマスク、シュラ、アフロディーテ、アイオリア、ミロはコクリとうなづいた。

ミロ「でも、ご飯は?」

アイオロス「……、ミロ。俺が言ったこと分からなかったのか?」

ミロ「分かるけっども、腹へってるがよ。ご飯食べたいっての!」

アイオリア「にいちゃん、ボクも……」

シュラ「おなかすいた、アイオロス!」

デスマスク「オレも腹へった!」

アフロディーテ「僕も!」

アイオロス「お前たち、俺がいないと何もできないのか!!」

シュラ「だっていつもはサガが何でも指示してくれるし……俺たち聖闘士じゃないから、神官とかに頼めないし……」

ミロ「おい、アイオロスっ!サガは今日はどこさいっただよ!」

アイオロス「サガはいない」

デスマスク「なんだ、ついに愛想つかされたのか?」

アイオロス「サガは今日は家に帰ってるんだ」

シュラ「離婚か?離婚?」

アイオロス「お前等黙れ!デスマスクとシュラは飯の準備をしろ。お前たちならなんか作れるだろう。それから、アフロディーテは部屋を片付けろ。ミロとアイオリアは風呂にはいってこい!訓練から帰ってきたら風呂に入れとサガにいつも言われてるだろうが!!」

アイオロスはそう言うと、一人でプリプリ怒って部屋に戻っていった。

アイオロス「あの卑怯者めぇぇぇ、ガキどもを全部俺におしつけやがってぇぇぇぇ!!!!!覚えてろよ、サガぁぁぁぁ」

アイオロスの体から怒りの小宇宙があふれた。

今日は家に帰ると言ってシュラ達の世話を全部押し付けた、この場にいないサガに向かってアイオロスが叫ぶと、その迫力にシュラ達は縮み上がり、命令どおり食事の準備をはじめたのであった。


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