★ ミロたんといっしょ22(ミロたん初めての手術 その1)
双児宮の私室でカノンが一人でダラダラしていると、しょんぼりとした顔のミロが現れた。
ミロ「カノン、どうしよう。俺、デキちゃった」カノン「ふぁっ!? できちゃった、だと!?」
ミロ「うん、どうしよう」
カノン「まじか!? いや、でもありえないだろう、それ。勘違いじゃないのか」
ミロ「勘違いなわけないだろう、日に日に大きくなっていくのにさ!!」
カノン「いやいや、そんな自然の法則無視しちゃいかんだろう。だが待てよ、俺たちの存在自体がそんな法則無視なわけで、神の力があれば男だって……」
ミロ「何ぶつぶつ言ってんだよ!! 俺の心配してくれよ!」
カノン「すまん、すまん。で、アイオリアにはちゃんと言ったのか」
ミロ「言ったよ、そしたら怖いって拒否られた」
カノン「まじで!? 俺が拒否るならまだしも、アイオリアがそんなことを言うとは思えん。まぁ、男が妊娠しちまって、しかも初めての子供ってことでパニックにでもなったんだろう」
ミロ「は? 妊娠? って、誰が? えっ、アイオリアのやつ、誰を妊娠させたの!? なにそれ、そんな話知らない!!」
カノン「お前こそ、何を言ってるんだ。妊娠したのはお前だろう?」
ミロ「なんだと!?」
カノン「え? 違うのか?」
ミロ「俺は妊娠なんてしてないっての。いいか、カノン。男は妊娠できないんだぞ、そんなことも知らないなんて恥ずかしいから、きちんと覚えておけよ」
カノン「馬鹿野郎、そんなことは知ってる。だが、お前がデキちゃったって言うから。どうしようって、困ってたから」
ミロ「言ったけど、それは尻に出来たデキモノのこどだけど」
カノン「じゃぁ、日に日に大きくなるってのも」
ミロ「うん、そのオデキのこと」
カノン「アイオリアが拒否ったって」
ミロ「病院に行ったら手術で取るって言われて、怖いから付き添ってくれと頼んだら断られた」
カノン「なるほどな。ていうか、紛らわしい言い方してんじゃない!」
ミロ「いて! 殴ることないだろう。勝手に勘違いしといてさ!」
カノン「お前の言い方に問題があるんだろうが」
ミロ「俺のせいにするなよ」
カノン「で、なんで俺のところに来たんだ」
ミロ「だから、手術に付き添ってくれよ」
カノン「手術って、そんなにデカいのか?」
ミロ「うん、オデキは結構デカい、小指の先くらいだって。10分程度の簡単な手術であっという間に取れるって言われたから、これから行くんだ」
カノン「それくらいなら付添いなんていらないだろう、子供じゃあるまいし」
ミロ「でも怖いじゃん。手術だぞ?」
カノン「人の体に孔を空けるような技を使う奴が言うセリフとは思えんな」
ミロ「だって手術なんてしたことないし、これがシュラのエクスカリバーとかアフロディーテのバラが刺さるとかなら全然問題ないんだよ。でも聖闘士でもなんでもない医者が俺の体に刃物入れるんだぜ、怖いじゃん。だからお願い、付き合ってくれよ」
カノン「それなら兄貴に頼めよ。兄貴ならよしよしって撫でながら手術に付き合ってくれるだろうよ」
ミロ「無理無理無理無理。サガになんて頼んだら、大げさに心配して面倒くさいことになるだけだから。手術終わるまで外で待っててくれるだけでいいから。お願いお願いお願いお願いおねがーーーーい」
手をすりすりして頭を下げるミロに、カノンは仕方なく頷いた。
病院。
オデキの摘出手術は、麻酔をいれて10分もかからずに終わった。
結局心配で付き添いに来たアイオリアと待合室で待っていたカノンは、 看護婦に手招かれ処置室に入った。
そこには下半身を剥き出しにして、尻にカーゼをあてたまま俯せに寝ているミロがいた。
ミロ「あっ、こっちこっち。一緒に説明聞いてくれよ」
カノン「説明?」
アイオリア「説明が必要なくらい悪性のデキモノだったのか?」
カノン「たかがオデキだろう、大袈裟な」
ミロ「そうじゃなくて、薬の塗り方とか説明があるから、一緒に聞けっての。特にカノン、お前はよく聞いておいてくれ、お前がやるんだからな」
カノン「はぁぁぁぁ? なんで俺が。こいつにやらせろよ」
アイオリア「俺?」
アイオリア&ミロ「無理無理、不器用だから」
カノン「だったら自分でやれ」
ミロ「いくら俺でも自分のケツは見えないから無茶言うな」
看護婦は露骨に嫌そいうな顔をしているカノンにびくつきながら、患部への処置をアイオリアとカノンに説明しはじめた。
ミロ「カノン、分かったか? このドデカイ綿棒に薬をつけて、傷口に塗るんだぞ。そんで、このガーゼをを貼るんだ」
ミロは背を反らせながら、看護婦が手にしている綿棒を指さした。
軸部分が15センチ程もある大きな綿棒である。カノン「聞いていたから、いちいち繰り返さなくたって分かる。ていうか、そこまで頼まれた覚えはないんだが」
ミロ「いいじゃん、乗りかかった船だし」
カノン「てめぇのケツなんて見たかないんだよ」
アイオリア「俺からも頼む、カノン。お前なら安心だし」
カノン「普段は人の事を胡散臭い奴を見るような目で見てるくせに、都合のいい時だけ頼ってくんだな」
アイオリア「だからこそ、カノンが本当はいいやつだっていう証拠を見せるチャンスだ」
カノン「お前……」
ミロ「ということで、頼んだよ!」
数日後の天蠍宮
カノン「おう、今日もわざわざ薬をつけてにきてやったぞ」
ミロ「毎日助かるよ、悪いね」
カノン「まぁ、いいって。俺は俺で結構楽しんでるから」
ミロ「頼むから真剣にやってくれよ」
カノン「やってるだろうが、さっさと尻を出せ」
ミロはしょぼんと情けない顔をしながらパンツをずりさげて尻を丸出しにすると、ソファに俯せになった。
筋肉で引き締まった尻の割れ目の近くにガーゼが貼ってある。それを乱暴に引きはがすと、ミロが身体をびくりと震わせた。
ミロ「だから、優しくっていってんじゃん」
カノン「分かった、分かった」
カノンは医者から処方された軟膏の瓶を手にとり、大きめの綿棒にそれをたっぷりとつけ、二つの丸い丘の内無傷の方に手を添え、尻を割り開いた。
カノン「よし、塗るぞ」
ミロ「おう、ちゃっちゃとやってくれ」
カノン「まかせろ」
ミロ「……」
ミロはギュッと瞼を閉じた。
ミロ「……」
カノン「……」
ミロ「………」
カノン「………」
ミロ「…………って、焦らすなよ。怖いじゃんか!」
カノン「ははははは、悪い悪い。お前が怖がってるのが楽しくてな」
カノンはミロの右の尻の、太ももの付け根あたりにぽっかり空いたクレーター状の傷口にその綿棒をぎゅっと押し当てた。
ミロ「んぎゃーーーーーっ!!!!」
カノン「我慢しろ」
ミロ「ううううっ、沁みるだってば。すごい痛いんだって!! だからもっと優ししてくれって言ってるじゃん」
カノン「うるせー、朝夕毎日面倒みてやってるだけでも感謝しろ」
ミロ「感謝してるって――、からもっとっさ、んぉぉぉぉぉぉぉ」
カノンはぐりぐりと綿棒を傷口に押し付け、ミロが悲鳴を上げる。
カノン「だからいちいち悲鳴をあげるなって。聖闘士なんだから、こんなの痛くないだろうが」
ミロ「痛いもんは痛いんだよ、闘いの痛みと全然違うんだって」
カノン「足をじたばたさせんな、薬が塗りにくくなる!」
ミロ「だったらもっと沁みないように、丁寧かつ優しくしてくれってば」
カノン「そんなの無理に決まってるだろう、我慢しろ」
瞳を涙で潤ませながらミロはヒーヒー悲鳴を上げた。
綿棒で薬を塗り終わったカノンは、次に大きめの絆創膏を貼る。カノン「よし、終わりだ。今日から絆創膏だから、これで少しは動きやすくなるだろう」
ミロ「ありがとう……」
カノン「いいってことよ、ただ、今夜は野暮用があって来れないから、兄貴に代わりをたのんだ」
ミロ「えっ!? サガに!? サガに話したのか!! 誰にも離すなって言ったのに!」
カノン「じゃぁ他に誰に頼んだら良かったんだ」
ミロ「……」
カノン「きっと兄貴なら、もっと沁みないようにやってくれるんじゃね」
ミロ「……ならいいけど」
カノン「それじゃぁな」
カノンはミロの尻を盛大にパチンと叩いた。
人馬宮の階段を下り、天蠍宮に足を踏み入れたアイオロスは、くくくっと笑声をあげて私室からでてきたカノンに首をかしげた。そのカノンの笑顔のなんという極悪さよ。アイオロスは興味にかられてミロの私室を訪ねることにした。
するとなんとミロが尻を丸出しに俯せに寝ながら瞳に涙をためているではないか。
アイオロス「ミロ、どうした!」
ミロ「アイオロス!?」
ミロは咄嗟に体をひねらせ患部を隠した。
アイオロス「おい、ミロ。大丈夫か!?」
ミロ「大丈夫って、なにが?」
アイオロス「いや、だって涙が……」
ミロ「あははは、これね。欠伸しちゃった。なんかまだ眠くてさ」
ミロは咄嗟に嘘をついて、涙を拭った。
ミロ「で、アイオロスこそどうしたんだよ。俺に何か用?」
アイオロス「いや、そうじゃないんだが……カノンが出てきたから」
ミロ「ああ、カノンね。サガから頼まれて俺に朝ごはん持ってきてくれたんだ、なんか作りすぎちゃったんだって」
アイオロス「朝ごはん? ――ってどこに?」
ミロ「もう食っちまったよ、あははは」
ミロが不自然な笑い声をあげ、アイオロスは腕をう組んで疑惑の視線をミロに向けた。
アイオロス「お前、アイオリアとはうまくやってるか?」
ミロ「やってるよ。なんでそんな事聞くんだ?」
アイオロス「だってカノンが今までいたんだろう……」
ミロ「え? カノンがいただけで、アイオリアの仲を心配しに来たの? それなら何でそんな心配してるか分からないけど、問題ないよ。心配ならアイオリア本人に聞いてくれよ」
アイオロス「そうか。何か悩みがあるなら……私に言えないなら、サガにでも相談するんだぞ」
ミロ「えっ!? う、うん、分かった。悩みなんてないけどな」
ミロの態度がいまいちに腑に落ちなかったアイオロスは、そのまま獅子宮に下りた。
獅子宮
アイオロス「アイオリア。お前、ミロと喧嘩したのか?」
アイオリア「え? してないよ」
アイオロス「そうか。ミロとはうまくやってるか?」
アイオリア「なんだよ、突然。どうしたんだ?」
アイオロス「俺の質問に答えろ」
アイオリア「もう……、うまくやってるって。恥ずかしいこと言わせないでくれよ」
アイオロス「本当か?」
アイオリア「うん、問題ない」
アイオロス「ミロの様子が最近おかしいとか、ないか」
アイオリア「ないよ。ていうか、今日も午後からミロの所に行くし、なんで兄さんがそんな心配してるか分からない」
アイオロス「そ、そうか。ならいいんだが」
アイオリア「???」