ミロたんといっしょ(みろたんと食堂のおばちゃん その1)

 

教皇の間がある教皇庁の建物には、図書館、礼拝堂、教皇執務室、教皇の私室等、さまざまな機関が設けられている。これは、数え切れないほどの機関のうちの一つ、教皇庁の食堂の話しである。

流石の聖域も、昼間ばかりは世の中と同じ動きをしているようで、昼になるとこの食堂も大勢の人間でにぎわう。

しかし、この食堂には暗黙のおきてが存在する。

食堂の営業時間は11時〜2時半までであるが、11時〜12時は白銀聖闘士、12時〜1時までが一般の神官や文官、武官、1時〜2時半までが黄金聖闘士が主に利用するという掟だ。

それを破ると何かあるというわけでは決して無い。ただ聖闘士達が食堂に来ると、神官たちが気を使ってしまうため、時間をずらして食事をとるようになっただけである。

 

ミロ「あれ?アルデバランじゃん。お前が食堂にくるなんて珍しいな。」

アルデバラン「いやぁ、ムウが仕事で不在でな。」

ミロ「そうなんだ。んで、なんで並んでるんだよ?黄金聖闘士なんだから並ばなくったっていいんだよ。」

アルデバラン「黄金聖闘士だからって、こういうものは・・・。」

ミロ「いいんだよ。行くぞ、アイオリア、アルデバラン。」

ミロと一緒に来たアイオリアも当然のごとく最前列に割り込んだ。並んでいた神官達のなかで文句を言うものは誰もいない。

3人は、カウンターにトレイを乗せランチを注文する。

ミロ「おっばちゃーーーーん!俺のにはピーマンとニンジンは入れないでっていつも言ってるじゃん。新しいオバチャンにも言っておいてよ。」

カウンターから身を乗り出し厨房を覗いたミロは、奥にいる古株の調理師のおばちゃんに文句を言った。どうやら、給仕をしてくれたのは新人の調理師だったようだ。

オバチャンA「何言ってんだい、ミロちゃん。好き嫌いばかりしていると大きくなれないよ。」

かれこれ30年近くも食堂で働いていて、ミロを幼い頃から知っている古株のオバチャンAは言った。

ミロ「これ以上大きくならなくていいんだよ!!」

アルデバラン「ああっ!!!」

アイオリア「どうしたアルデバラン?」

ミロ「なんだよ、素っ頓狂な声だして。」

アルデバラン「いや・・・・・、私のだけ大盛りだなぁ、と思って。」

アイオリア「ん?本当だ・・・・。」

ミロ「ちょっとおっばちゃーん。身体は大きくても、こいつとは食べる量は一緒だから。だから俺も大盛りね。」

ミロは新人の調理師に言うと、大盛りに料理を盛ってもらい満足そうに席についた。

 

アイオリア「ごちそうさま。」

ミロ「食った、食った!!」

ミロはテーブルから立ちあがり、トレイを下げるため再びカウンターへと向かった。カウンターのトレイ置き場の奥では、先ほどの新人調理師が食器洗いをしていた。

ミロ「ごちそうさまぁ〜♪・・・・あれ?さっきおばちゃんなんて言っちゃったけど、もしかして君、若い?」

ミロは、白衣に白いマスクをし、目深に三角巾をした新人調理師の顔を覗きこむ。

ミロ「あれれ?もしかしなくても、君、めちゃめちゃ可愛くない?」

新人調理師は緑色の澄んだ瞳をパチクリとさせミロを見ている。

ミロ「俺さ、スコーピオンのミロって言うんだ。黄金聖闘士なの。よろしくね。で、君の名前は?」

新人調理師は黙って首を横に振った。

ミロ「照れなくてもいいじゃん。教えてよ。

新人調理師「私語は禁じられてますから。」

ミロ「えー!?他のおばちゃんはそんなこと気にしてないよ。教えてよぉ!」

アルデバラン「ミロ。あまりしつこくするんじゃない。」

ミロ「ええええー!いいじゃん、ちょっとおっばちゃーーーーーん!」

ミロはカウンターから身を乗り出して、勤続28年の古株のオバチャンBに声をかけた。

オバチャンB「なんだい、ミロちゃん。」

ミロ「この子の名前なんていうのぉ?」

オバチャンA「おやおや、ミロちゃん。さっそく軟派かい?新しい子が入ってくるたびにミロちゃんは顔をだすからねぇ。」

ミロ「うっるさいな。そんなことより、この子の名前。教えてよ!!」

すると勤続27年の古株のオバチャンCが答えた。

オバチャンC「ミロちゃんは未だに彼女がいないのかい?なんだったらオバチャンの娘を紹介したあげようか?」

ミロ「えーー?オバチャンの娘なんていいよ。この子紹介してよ!!」

オバチャンA「本当にミロちゃんは昔から変わってないねぇ。」

アイオリア「ミロ、恥ずかしい真似をするなよ。皆見てるじゃないか。」

ミロ「うるせーな。お前は彼女がいるからいいだろう。ねーね、名前なんていうの?」

オバチャンC「モントーネちゃん。相手にするんじゃないよ。」

ミロはオバチャンCが新人調理師をモントーネと呼んだことを聞き逃さなかった。

ミロ「ふーーん、モントーネちゃんっていうんだ。可愛い名前だね。俺、ミロね。よろしくね。」

アイオリア「ほら、もういい加減にしろよ、ミロ。」

アルデバラン「いくぞ、ミロ。」

ミロ「明日もくるからねーーーーー。」

ミロは首根っこをつかまれ引きずられながら食堂をあとにした。

 

アイオリア「なんだよ、ミロ。明日も食堂に行くのか?」

ミロ「そうともさ。俺はモントーネちゃんをものにする!アイオリア、もちろん付き合えよ。アルデバラン、お前も一緒に行くか?」

アルデバラン「ああ、私も行くよ。お前の恋の行方が気になるからな。」

ミロ「そうこなくっちゃ!それじゃ明日1時にな!」

 

翌日の11時

白銀聖闘士達は早めの昼食をとりに、教皇庁の食堂に来ていた。

アルゴル「食堂にくるのも久しぶりだな。」

アステリオン「ここしばらく教皇庁での仕事はなかったからな。」

カペラ「あっ、すみません。俺、大盛りでお願いします。あっ!!」

カペラはカウンターから厨房に顔だすと声を上げた。

モーゼス「どうした、カペラ。」

カペラ「新しく入った人だと思うんだが、凄い可愛い!」

アルゴル「なんだと?」

皆、一斉にカウンターの中にいるモントーネを覗き見た。

モーゼス「どうしよう、俺。」

アステリオン「どうした?」

モーゼス「俺、あの子のこと気に入った。俺のことを見て恐がらなかった女の子ははじめてだ。しかもニッコリと微笑んでくれた。」

巨体のうえ隻眼のモーゼスは、厳つい顔を朱に染めて言った。

アルゴル「モーゼス、お前には悪いが、俺もあの子を狙うぞ。」

モーゼス「なんだと?それはずるいぞ。お前はかっこいいんだから、モテるだろう?俺にはあの子しかいないんだ。」

アステリオン「ちょっと待て、俺もあの子が好きだ。」

カペラ「俺も・・・・・。」

アルゴル・アステリオン・モーゼス・カペラ「かーのじょぉ、名前なんていうのぉ??」


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