ラダマンティスの十二宮突破(白羊宮編)

 

懲りずにカノンに会いに来たラダマンティスは、いつも白羊宮の前で、箒を持って仁王立ちしているチビがいないことに気付き、ニヤリと笑った。
貴鬼は沙織から賜った有り難い竹箒で、何度もラダマンティスを追払っていたのだが、今日はたまたま出かけていたようだった。

ラダ「ふっ・・・今日はあのガキはいないようだな。白羊宮とやら、通させてもらうぞ」

ラダマンティスは冥衣の音を響かせながら、白羊宮の階段をのぼり、宮殿の中へとさしかかった。

ムウ「あなたですか、カノンを追い回している変態というのは?」

ラダ「ん?!貴様?!」

ムウ「お前はあのときの?!」

ムウはラダマンティスに蹴り落とされたことを、もちろん忘れてはいなかった。

ラダ「その顔見覚えがあるぞ。お前がムウとやらか?」

ムウ「そうです・・・お前がラダマンティスとは・・・ふ、丁度いい。」

ラダ「貴様、またこの俺様にこってんぱんに倒せれたくなかったら、そこをどくのだな。俺様はカノンに会いに来ただけなのだ。」

ムウ「ハーデスの加護のないお前など、虫けら同然。いや、虫けら以下。今ここで、あのときの借りを返すとしよう。」

ラダ「ふ、聖衣もまとわず、この俺様を倒すだと?馬鹿も休み休み言ったらどうだ、この麻呂眉!」

ムウ「・・・ふふふふふふふふふふふふふ」

ラダマンティスは邪悪に釣り上がるムウの口元を見て、一瞬悪寒が走った。そして思わず後ずさりしようとしたが、体が動かないことに気付く。

ラダ「な、何?!体が動かん?!」

ムウ「ふふふ、お前の体は私のクリスタルネットで捕獲した。最早動くことはできん。」

ラダ「何がクリスタルネットだ、こんなもの?!」

小宇宙を爆発させても、ムウ執念のクリスタルネットを破壊することはできなかった。

ムウ「無駄だ。さぁ、どうしてくれましょうかねぇ・・・・・」

不気味に微笑むムウは、念動力で毛抜きを取り出す。

ムウ「まずは、その立派なかもめ眉を抜いて差し上げましょう。」

ラダ「!!!!、何をする貴様!よせ!!」

ムウはラダマンティスのヘッドパーツを取り外すと、毛抜きでラダマンティスの繋がった眉毛の眉間の部分を、綺麗さっぱり抜いてしまった。そして、念動力で手鏡を取り出し、ラダマンティスに見せる。

ムウ「今まで気付きませんでした。あなた、眉毛抜いたら、結構いい男ですね。」

ラダ「ぅおーーーーー!俺様自慢の一文字眉毛が!!!やめろ、この麻呂眉野郎!」

ムウ「そうですか、そんなに眉毛が自慢ですか・・・・ふふふふ。」

口には出さないが、ムウには当然眉毛へのコンプレックスがあった。そして、それを知らないラダマンティスは、ムウの神経を逆なでしまくっていた。

ラダ「よ、よせ!!貴様、正々堂々と闘え!それでも女神の聖闘士か?!」

ムウ「文句は私のクリスタルネットを破ってから言いなさい。ふふふふ・・・・」

ラダ「ぎゃーーーーーーーー!!!やめろーーー!」

ムウは容赦なく、毛抜きでラダマンティス自慢の眉毛を抜き始めた。情けない悲鳴が白羊宮に響き渡る。
10分後、すっかり細眉になった自分の顔を鏡で見せられて、ラダマンティスは絶句した。

ムウ「おや、細眉も似合うと思ったんですが、全然似合いませんね。こんな中途半端に生えてるくらいなら、全部抜いてしまいましょう。」

ラダ「何を考えているか、貴様!!!俺様の男らしい眉毛が羨ましいからといって、やっていいことと、悪いことがあるだろう。」

ムウ「五月蝿いですよ。」

にっこり微笑み、ムウは更にラダマンティスの眉毛を抜き始めた。もうほとんど抜く毛がなかった為に、その作業は程なく終わってしまった。

ムウ「ほら、きれいさっぱりなくなりましたよ。」

ラダ「おーーーのーーれーーー、この麻呂眉めーーー!」

ムウ「ふふ、それがどうかしましたか?眉なしさん。」

鏡を見せられ、長年見慣れた愛する眉毛を奪われたラダマンティスの怒りが増幅する。しかし、散々眉毛自慢をされたムウの怒りの方が上だった。

ムウ「さて、次はどこの毛を抜くとしましょうか。」

ムウはそういうと、聖衣修復用のハンマーと鑿を取り出し、上品に笑う。

ラダ「武器とはどこまでも卑怯な奴!!」

ムウ「これは武器ではありません。聖衣を修復する為の道具です。修復と解体は紙一重・・・・・」

ラダ「ま、まさか!貴様!!!」

ラダマンティスの予想通り、ムウはワイバーンの冥衣の胸元に鑿を打ち込んだ。たった一撃で、冥衣は音を立てて崩れ落ちる。ムウは裸になったラダマンティスの上半身を見て、不敵な笑いを浮かべた。

ムウ「随分立派な胸毛ですね。これは流石に毛抜きで抜くのは大変そうだ・・・」

ムウは口元に優雅な微笑みをたたえていても、その目はまったく笑っていなかった。そして、ムウの白い手からあわれたものは、ガムテープであった。

ムウ「私、胸毛がありませんので、わからないのですが、これって痛いんですか?」

びびびびび!とガムテープを引き伸ばし、ムウはクリスタルネットから脱出しようとしてもがき苦しむラダマンティスに微笑みかけた。

ラダ「んなこと、知るか?!ガムテープで胸毛を抜く奴がどこにいる?!」

ムウ「では、あなたで試してみましょう。」

ムウはラダマンティスのたくましい胸板に、ガムテープを真横に貼り付けた。当然一本では生い茂った胸毛をすべて蓋うことはできず、更に、びびびび!とガムテープを重ねばりする。合計6本のガムテープを貼られ、ラダマンティスはいつ毛を抜かれてもいいように、気合いを入れた。

ムウ「そんなに力まなくてもいいですよ。」

ラダ「うるさい!貴様こそ、こんな卑怯なことはやめろ!」

ムウ「あ、カノン!」

ラダ「え、どこ?!」

愛するカノンの名前に、ラダマンティスの気が緩んだ瞬間、ムウは胸に張られたガムテープを一気に引き剥がした。断末魔の悲鳴が白羊宮に響き渡る。

ムウ「体を鍛えても、胸毛を抜かれると痛いのですね。勉強になりました。」

ラダ「ハァハァ・・・・こ、この麻呂眉めぇ・・・揃いも揃って、この俺様を騙しおって・・・・」

ムウの瞳が黄金に光ると、ラダマンティスのアンダーウエァーはボロボロに破けて塵となった。あらわになったラダマンティスの下半身を見て、ムウは口に手を当ててクスリと笑う。

ムウ「ふっ・・・次はそうですね・・・ここにしますか。」

ラダマンティスはムウの高貴な微笑みに悪魔を見た。
麻呂眉・・・それはムウには決して言ってはならない言葉であることを、ラダマンティスは知らなかった。

 


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