ああ!女神さま!(沙織さんとジローさん)

 

早朝から風呂に入っていたシオンは、ない眉をぴくりと寄せると勢いよくバスタブから飛び出した。

シオン「ふむ。ムウよ、余はのぅ、今日は教皇の間で朝食を取りたい気分じゃ。」

風呂上りのシオンがそういって、髪の毛をびしょびしょにぬらしたままバスローブ姿で白羊宮から消えたのと、沙織が聖域に現れたのはほぼ同時だった。

白羊宮で朝食を食べていた面々は、突然現れた沙織に眼が点になった。朝帰りのまま白羊宮で朝食を食べていたミロは思わず寝ぼけているのかと目をこすった。ぐいっとその髪をアイオロスにつかまれ、慌ててその場にかしずく。

アイオロス「ア、女神よ・・・、突然いかがなされましたか。」

沙織「面をあげなさい、アイオロス。」

アイオロス「はっ。」

突然沙織は顔を上げたアイオロスのまだ髭をそっていない頬を、白魚のような手でナデナデと撫でさすった。

アイオロス「なっ!!な、なにをするのです。」

沙織「ふふっ、いい感じだわ。ムウ!」

ムウ「はい?」

呼ばれてキッチンから現れたムウの白いすべすべの頬を、沙織は白魚のような手でナデナデした。すべすべするムウの頬に沙織は溜息をついた。

沙織「ムウは駄目ね。」

ムウ「だ、だめ!?」

沙織「ミロ!」

ミロ「はいっ!」

呼ばれて立ち上がったミロのねこ髭のはえた頬を、沙織は白魚のような手で撫でさすった。

沙織「なにこれ!?変だわ!」

ミロ「え!?変!?」

沙織「カノンっ!」

カノン「はい!」

何故か珍しく朝から白羊宮にいたカノンも呼ばれて顔をあげると、沙織は白魚のような手でその顔を撫でさすった。

沙織「まぁまぁね。ふふっ。」

頬を撫でられた面々は、撫でられた頬に手を当てながら、首をかしげた。

沙織「アルデバランはどこにいるの?」

ムウ「アルデバランなら、ブラジルに出張中ですが。」

沙織「なんですって!?今すぐ呼び戻しなさい!」

ムウ「し、しかし、教皇命令で出張しておりますので・・・。」

沙織「いいから呼び戻しなさい。女神命令です!」

数秒後、女神命令で呼び出されたアルデバランは白羊宮に光速で帰ってきた。

アルデバラン「女神。いかがいたしましたか?」

沙織「ふふふっ。アルデバラン、無礼ですよ。私を誰だと思っているのです。」

満面の笑みでアルデバランを見上げる沙織に、アルデバランははっと短く返事をして跪いた。

アルデバラン「も、申し訳ありませんでした。」

沙織「ふふっ、いいのよ。面を上げなさい。」

やはり沙織は、顔を上げたアルデバランのごわごわに無精ひげの生えた頬を白魚のような手で撫でさすった。

沙織「す、すごいわっ!これだわ、これよ、これ!!!!」

アルデバラン「は?」

沙織「アルデバラン、脱ぎなさい。」

沙織の言葉に全員が悲鳴をあげた。

アイオロス「女神、いったい何を?」

カノン「女神も大胆だな・・・。」

ミロ「俺じゃ駄目ですかね?」

ムウ「・・・・。」

貴鬼「沙織さん、オイラじゃだめなの?」

沙織「ふふっ、貴鬼じゃまだ早いわぁ。」

アルデバラン「女神。私はこれでも女性の許容範囲は広いほうですが、ですが・・・、これでも私は女神に仕える聖闘士です。それだけはご勘弁を・・・。女神もどうぞ処女神という自覚をお持ちになって・・・。」

沙織「は?何を言っているの?とにかく脱ぎなさい。女神命令です。」

ドンッとニケの杖を床に打ち付け、沙織は跪くアルデバランを見下ろした。シーンと静まり返った白羊宮でアルデバランは小さくうめき声をもらして、立ち上がった。

アルデバランはジーパンのベルトに手をかけ、ジッパーをおろそうとした。

途端に、沙織の目が粒になった。

沙織「な、なにを考えているのです、アルデバラン!」

アルデバラン「は?女神が脱げとおっしゃるので・・・。」

ゴイン!

沙織はアルデバランの頭にニケの杖を振り下ろした。

沙織「何を勘違いしているのです。私は、貴方の胸がみたいのです。」

アルデバラン「胸?」

沙織「そうです。胸です、胸。」

アイオロス「女神。それでしたら、私の筋肉を見てください。」

既に上半身裸のアイオロスはここぞとばかり筋肉ポーズをとってアルデバランと沙織の間に割って入る。

沙織「まぁ・・・・・。貴方では全然役立たずだわ。」

アイオロス「や、役立たず!?」

カノン「じゃ、俺はどうですか?」

カノンもTシャツを脱ぎ、筋肉ポーズをとる。

沙織「ふっ、カノンのもいまいちね。」

カノン「い、いまいち!?」

ミロ「はいっ、はいっ、はーーーーーいっ。俺はどうですかね?」

ミロがTシャツを脱ぎ、またまた筋肉ポーズを取る。

沙織「話にならないわ。」

ミロ「がーーーーーーーーん。」

三人は自慢の肉体を鼻で笑われ、愕然と地に崩れ落ちた。

沙織「私は、アルデバランのが見たいの。早く見せてちょうだい!」

アルデバラン「は・・・・はぁ。」

アルデバランが着ていたシャツを脱ぐと、沙織の目が輝いた。

沙織「これだわ、これ!!!!!ああ、凄い。」

沙織は胸の前で両手を握り、うっとりとアルデバランの胸を眺めた。悪い気がしないアルデバランも調子に乗って筋肉ポーズを取る。

沙織「さぁ、アルデバラン。行きましょう!」

アルデバラン「行く?、と申しますと。」

沙織「双児宮よ、双児宮。」

アルデバラン「は?」

沙織「双児宮のお風呂が十二宮で一番大きいでしょう。女神神殿や教皇の間のお風呂だと、おじーさまにおこられちゃうからね。」

アイオロス・ミロ・カノン・ムウ・アルデバラン・貴鬼「ふ、ふろぉぉぉ〜?」

沙織「何を驚いているの?貴方達もいくのよ。」

素っ頓狂な声をあげる黄金聖闘士達を無視し、沙織はアルデバランの手をひっぱった。

 

双児宮

突然現れた沙織に、一人で朝食を食べていたサガは唖然となった。沙織が連れているアルデバランはもとより、アイオロス、ミロ、カノンまでもが半裸なのである。
アイオロスの影響かと頭を抱えたサガは、さらに唖然となった。

沙織「おはよう、サガ。お風呂かしてちょうだいね。」

サガ「は?」

沙織「あのね、今からアルデバラン達とお風呂に入るから。貴方もいらっしゃい。」

サガ「はぁぁぁ?」

沙織「さっ、行きましょう!」

なすがままに風呂に連れて行かれるアルデバランを呆然と見送ったサガは、その後をついていく辰巳、アイオロス、ミロ、カノン、ムウを見てさらに棒立ちになった。

双児宮浴室

沙織「辰巳〜っ。」

辰巳「はい、お嬢様」

沙織「椅子っ!」

辰巳「はい、お嬢様」

頭を下げた辰巳が、双児宮のリビングの椅子を持ったサガと戻ると、沙織は微笑を浮かべて手招きをした。
そして、サガの頬を白魚のような手でナデナデする。

沙織「あら?」

サガ「ア、女神、一体なにを?」

ナデナデ

沙織「あれれ?・・・ちょっとカノン、こっちにいらっしゃい。」

カノン「はい。」

沙織は右手でサガの頬を撫で、左手でカノンの頬をなでた。

沙織「双子でも違うのねぇ〜。」

カノン「なにがでございますか?」

沙織「お髭。」

サガ「ひ、ひげ!?」

沙織「そう。お髭。カノンはちょっとざらざらだけど、サガはすべすべなのね。」

二人は同時に自分の頬を撫でた。

沙織「あら、サガのほうは顎だけざらざらだわ。カノンは頬もざらざらね。」

顎を撫でられた感触に双子は思わず身ぶるいした。

サガ「あの、女神。私は今朝、剃りましたので。」

カノン「ああ、そういえば、俺はまだ剃ってません。」

沙織「え゛っ!!!もう剃ってしまったの!?」

サガ「はい。身だしなみですから・・・。」

沙織「サガって、本当役立たずねぇ〜。」

サガ「や、やくたたず・・・・。」

沙織「ついでだわ。あなたも服を脱ぎなさい。」

サガ「は?」

沙織「胸を見せなさいと言っているのです。」

サガは渋々とローブの胸元をはだけると、沙織は半裸のカノンとサガの上半身はしげしげと見比べた。

沙織「カノンと一緒なのね・・・、やっぱり役立たずだわ。」

サガ「(い、いくらこの私が裏切り者だかとはいえ、この仕打ちはご無体な・・・。)」

サガはよろよろと大好きな風呂のタイルの上に崩れ落ちた。


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