飛び出せ!青春(バレンタイン デイ)

 

聖域の見回りを終えたモーゼスは白銀聖闘士の詰め所に戻ると、首をかしげた。仲間達が顔を引きつらせながら、親友のアステリオンを眺めているのである。

モーゼス「よぉっ、アステリオン。お前、さっきから何食ってんだ?」

アステリオン「何って?10時のおやつだよ、10時の!」

モーゼス「10時のおやつにチョコレートか?」

ダンテ「お前、甘いもの嫌いじゃなかったけ?」

バベル「そうそう。『男が甘い物好きなんてかっこ悪い!』っていつも言ってたよな」

アステリオン「え?そうだったけ?」

ミスティ「そうそう。甘い物なんて女子供の食べ物だって、いつもかっこつけてたもん」

アステリオン「ぎくっ・・・・・・き、気が変わったんだよ。偏見はよくないだろう。だからな……」

モーゼス「でも、そんなに食って体に悪いぞ、アステリオン」

モーゼスはアステリオンの前に山積みになったチョコレートの空の袋を見下ろした。

ミスティ「あら、本当・・・・・・。肌ニキビだらけになってる、きったないっ!!」

ダンテ「一体いくつ食ってんだ?」

アステリオン「え?そうだなぁ、今日はまだ5……7袋くらいかな」

バベル「バッカじゃないの、お前」

アステリオン「いいだろう、俺はチョコレートが凄い好きなんだ!!!」

カペラ「初耳だな」

アステリオン「そうか?。俺は昔からチョコレートは大好物だぜ。チョコレートさえあれば、生きてける!」

ミスティ「へぇ〜〜」

アステリオン「だからさ、お前達の故郷にも美味いチョコレートがあったら、俺に教えてくれよな」

バベル「ああ、わかった」

モーゼスたちは胡散臭そうにアステリオンを見ながら首をかしげた。

 

その日の夜。

夕飯を食べに食堂に向かったモーゼスたちは、先に来ているアステリオンが食べているものを見てギョっとなった。チョコである。

モーゼス「アステリオン、そんなにチョコが好きなのか?」

アステリオン「ああ、大好きだ」

バベル「しかし、いくらなんでも夕飯もチョコレートは体に悪いぞ。俺たち聖闘士は体が命だからな」

アステリオン「仕方ないだろう。好きなもんは好きなんだ」

ミスティ「あぁ、なんか昼よりもニキビ増えてるし、きったなーい」

ダンテ「ほれ、チョコレートやるよ」

ダンテはアステリオンにチョコレートを投げると、アステリオンは瞳を輝かせた。

アステリオン「おぉ、サンキュ!美味そうだな!」

ダンテ「ああ、俺は食ったことないけどな。さっき買い物行って見かけたから買ってきた」

アステリオン「ダンテぇぇ、お前いい奴だな。また頼むよ!!」

ダンテ「お、おうっ」

モーゼス「・・・・・・こりゃ中毒だな」

モーゼスたちはバクバクチョコを食べるアステリオンにあきれ返った。

 

 

翌日

白銀詰め所

今日もアステリオンはチョコを食べていた。

モーゼス「いい加減にしろよ、アステリオン。お前、体壊すぞ」

アステリオン「好きなもの食って体壊すなら本望だぜ。モーゼス、チョコレートよこせ!」

モーゼス「俺は持ってないって」

シャイナ「あ?なんか甘い匂いがすると思ったら、あんたか」

アステリオン「よぉ、シャイナ!」

シャイナ「げっ!!どうしたんだい、その顔?ブツブツだらけじゃないか、気持ち悪い」

ミスティ「チョコレートの食べすぎ!」

シャイナ「チョコレート?だってこいつ、甘い物嫌いだったじゃないか?あんなものは女子供の食い物だって、散々バカにしてたような」

バベル「心変わりしちまったようだぜ!!」

ダンテ「今じゃ、中毒状態だ」

アステリオン「おう、シャイナ。俺はすごーーーーーーーーいチョコレートが好きなんだ!」

シャイナ「あっ、そう。だから?」

アステリオン「いや、まぁ、この猟犬座のアステリオンがチョコレートが好きだってこと、覚えていてくれ!」

シャイナ「はぁ?」

 

シャイナが仮面の下で眉をひそめると、トレミーとアルゴルが出張から帰ってきた。

トレミー「うっ、なんだこの甘い匂いは」

シャイナ「犯人はこいつだよ」

アステリオン「よぉ、お帰り、トレミー、アルゴル」

アルゴル「げっ!?どうした、その顔?」

シャイナ「このバカ、チョコの食いすぎで顔にクレーター作ってんのさ」

トレミー「チョコ?お前、甘い物嫌いじゃなかった?あんなものは女子供の食いもんだって、いつも無駄にかっこつけてただろ?」

アステリオン「だ、だから。あれは撤回する。今、めっちゃめちゃチョコはまってんの。今までこんな美味いもの食わなかったなんて、俺ってバカだよなぁ〜」

そう言うアステリオンを見て、トレミーの頭に電球がともった。

トレミー「バレンタインだ!!!」

シャイナ「なに!?冥闘士がどうした!!」

アステリオン「ぎくりっ!」

アルゴル「あっ、そういえば冥闘士にもそんな名前の奴がいたらしいな。そうじゃなくて、今月はバレンタイン・デイがある」

トレミー「間違いない、それだな」

アルゴル「ああ、間違いない」

トレミーとアルゴルは互いに目を合わせるとニヤリと笑った。

アステリオン「ぎくりっ!」

モーゼス「それがどうかしたのか?お前達、まさか俺たちを差し置いて、プレゼントを上げる女か男がいるっていうのか!?」

ダンテ・バベル・ミスティ・カペラ・シャイナ「なにぃ!?!?

トレミー「あばばばっ、ちっがうよ、ばか!!俺達、昨日までアンドロメダ島に出張にいってただろう?そこでさ、青銅の小僧に聞いたんだ」

シャイナ「瞬からかい?あいつ、確か日本の女神の屋敷にいるはずだろう?」

トレミー「それがさ、アンドロメダ島に逃げてきたんだよ」

ミスティ「話が良く見えない・・・・・・」

アルゴル「なんでも、日本で女神が死ぬほどまずいゴキブリも食わない大量殺人兵器なチョコレートケーキを作っていて、毎日味見させられるからだって」

モーゼス「それとバレンタインとアステリオンのどういう関係がある?」

トレミー「ああ、んでな、なんで女神自らケーキなんておつくりなってるかって聞いたら、バレンタインだからだそうだ。日本では、バレンタインに、女の子が愛の告白の意味を込めて好きな男にチョコレートを渡すらしいぜ」

シャイナ「なにぃ!?!?あの女(アマ)、またでしゃばったマネを・・・・・・」

ダンテ「アマ?」

シャイナ「……いや何でもない」

シャイナは慌てて仮面の口を押さえた。

カペラ「んで、それとアステリオンとどういう関係が・・・・・・」

カペラ・モーゼス・ダンテ・バベル・ミスティ「あっ!!!」

アステリオン「どきっ!!」

モーゼス「分かった、魔鈴だ!!」

ダンテ「そうか、魔鈴のチョコレート欲しいんだろう、お前!!」

バベル「え?え?どういうことだ??」

ミスティ「バカだねぇ。だから、アステリオンは、日本人の魔鈴からチョコレートが欲しいんだって」

バベル「だからって、なんでチョコレート食ってんだ?」

カペラ「チョコレート好きを皆に知らせることによって、魔鈴からチョコレートを貰おうって魂胆だ!」

バベル「あっ、なるほど。だから、昨日から俺達にもチョコレートくれっていってたのか」

ミスティ「そうそう。それが魔鈴の耳に入って、美味いこと魔鈴からチョコゲットしようってことだ」

カペラ「ぶはははははははっ、バッカじゃねぇの!!!」

アステリオン「うるせーーー。俺は魔鈴からチョコが貰いたいんだ!!もらえる可能性ゼロの奴が、笑うんじゃねぇ!!!」

ダンテ「お前、魔鈴から貰える可能性あるのか?」

アステリオン「ぎくっ!?可能性がないわけじゃないと思いたい……

モーゼス「魔鈴はアイオリアさまと恋仲じゃないのか?」

アルゴル「いや、それは違うだろう。断じて違う。なんかあの二人、全然進展なさそうだし……」

カペラ「よかったなぁ、アステリオン。お前、ちょっとは、ほーーーーーーーーんのちょっとだけど、可能性あるみたいじゃないか。ぷっ……ぶははははははっ」

 


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