シオンさまといっしょ(24時間シオンライブ その1)

 

執務当番のシュラとアイオリアが執務室で書類と格闘していると、突然シオンがブルッと震えた。

アイオリア「ん?」

シオン「来る!」

シュラ「どうされました、教皇?」

シオン「来たのじゃ!!」

カタカタと震えるシオンとは正反対に、シュラとアイオリアは互いに顔を見合わせた後、珍しく微笑をうかべた。シュラとアイオリアも、シオンと同様に暖かい自愛に満ちた小宇宙を感じたのである。

シュラ「ああ、女神が聖域にお戻りになられましたね。」

アイオリア「教皇、お出迎えにいかなくてよろしいのですか?」

シオン「何を言うておる!出迎えよりも逃げるのが先じゃ!!」

シュラ「何をおっしゃっているのですか、教皇。」

シオン「な、なにをいうておる、山羊と獅子。逃げねば女神に捕まるではないかっ!」

シュラ「なにを訳のわからないことを言ってるんですか。逃げるなんて、いけませんよ。」

後ろからシュラとアイオリアに羽交い絞めにされたシオンは、さすがにうろたえた。

シュラ「俺たちは女神の聖闘士です。その頂点たる貴方が女神を出迎えずしてどうするのですか。」

シオン「放せ、無礼者!!」

シュラ「あっ、また勝手に闘技場に自家用ジェットで乗りつけたみたいですね。いま、アイオロスが女神をお迎えにいってます。」

シオン「は、はなせ!!」

アイオリア「兄から、絶対に教皇を放なしてはいけないと、たった今小宇宙が送られてきました。」

シオン「う、うろたえるなぁーーーーーーーこ……。」

ガチャ

沙織「シ〜オ〜ン♪」

シオン「あっ、これは女神。ご機嫌麗しゅう存じます。一言、このシオンに申してくだされば、アイオロスではなくこのシオン自らお出迎えを……。」

咄嗟にシュラとアイオリアが『うろたえるな小僧』に身構えたとき、沙織がアイオロスとともに執務室に現れ、シオンはころっと態度を変えて地に額をこすりつけた。

沙織「いいのよ、気にしないでちょうだい。シオン。」

シオン「はっ。ところで本日はどのようなご用向きでございましょうか?」

沙織「あのね。シオンにプレゼントを持ってきたの」

シオン「プレゼントとな?(どうせまた女神の等身大パネルやポスターであろうな…)な、なんとありがたい。しかしながら、女神よ。余は女神からプレゼントを頂いてばかりおりますゆえ、時にはアイオロス達にも……。」

沙織「いいのよ、シオンにあげたいの。辰巳ぃ〜。」

辰巳「はい 、お嬢様。」

沙織「シオンにれいのものを。」

辰巳「はい、お嬢様。」

辰巳は一抱えもあるダンボール箱をドンッと執務机の上に置いた。

シオン「なんですかのぅ?」

シュラ「こ、これは!?!?」

アイオロス・アイオリア「???」

沙織「パソコンよ。今年の春に我がグラード・エレクトロニック・カンパニーが発売する次世代型ノートパソコンよ。」

シュラ「(すげぇ……。)」

アイオロス・アイオリア・シオン「???」

沙織「辰巳、セッティングしてあげてちょうだい。」

シオン「女神よ、そのグラードなんとかパン とはいったいなんのことですかのぅ?」

シュラ「教皇、パソコンですよ、パソコン。」

アイオロス・アイオリア「(パソコン?)」

シオン「ほうほう、電算機でございますか。しかし女神、せっかくですが余にはそういった現代機器は不要ですのじゃ。」

沙織「何言ってるの、シオン。いまどきのおじーちゃんはパソコンくらい使えなくちゃダメなのよ。」

シオン「しかしですのぅ……。」

沙織「だめよ、シオン。出来ないって思い込んでいたら、いつまでたっても出来ないわ。」

シオン「ですが、女神。聖域の仕事は電算機など必要ございませぬ。」

沙織「あら、別に仕事に使わなくてもいいのよ。これはね、私とのメール用なの。」

アイオロス・アイオリア「(メール?)」

シオン「メール……??手紙ですかのぅ?」

沙織「まぁ、似たようなものね。私はね、いつでもシオンとお話がしたいの。だからいいでしょ?」

シオン「(ふむ、どんなとんでもないことを言い出すかと思うたら、手紙か。聖域の郵便事情なら月に一回届けばいいほう。まぁ、それくらいはよしとするかのぅ。)」

沙織「シオン?」

シオン「分かりました女神。このシオン、女神からのお手紙を心より楽しみにしております。」

沙織「まぁ、シオンったら。大好き♪」

シオン「ぎゃー!抱きつくのはご勘弁ください、女神。」

アイオロス・アイオリア・シュラ「ぎゃー?」

シオンの極度の女嫌いをこのときまだ知らなかった黄金聖闘士たちは、断末魔の悲鳴に首をかしげた。

辰巳「では、教皇殿。こちらへ……。」

シオン「は?」

沙織「パソコンの使い方勉強しなくちゃ分からないでしょ?」

シオン「は、はぁ…?」

沙織「安心して、シオン。このパソコンはね、シオンみたいなお年よりにも安心して使えるように、ディスプレイをペンでなぞるだけで文字が打てるのよ。本当はね、キーボードを打ったほうがボケ防止にもいいんだけどぉ、でもシオンには無理でしょう?」

シオン「はぁ……。」

沙織「ほら、ディスプレイとキーボードがわかれるから、ノートみたいにして文字を書くこともできるのよ♪」

シュラ「すげぇーーー。タブレットPCっすね!!さすが天下のGEC、女神!」

アイオロス・アイオリア「たぶれっとぴぃしぃ?」

日本製の最新型パソコンに、シュラは思わず沙織とシオンの間に見を乗り出し、筋肉兄弟は不思議そうに首をかしげた。

沙織「あら?シュラはパソコン使えるの?」

シュラ「はい。まかせてください。聖闘士といえども、パソコンの一つや二つつかえねば、世界の平和は守れません。って、実は、こういうの好きなんです。」

沙織「まぁ、それは丁度いいわ。私もね、あまり良く知らないのよ。辰巳ぃ〜。」

辰巳「はい、お嬢様。」

沙織「シュラに、このパソコンの使い方教えてあげて。それから私のメールアドレスも。」

辰巳「はい、かしこまりました。」

沙織「ある程度基礎知識があれば簡単よね、シュラ。」

シュラ「はい、お任せください。」

沙織「よかったぁぁぁ。じゃあ、シュラに任せるわ♪」

シュラ「え!?このBECのパソコンを私にいただけるのでしょうか??(まじかよっ!!!)」

沙織「やだぁ、違うわよ。これはシオンのよ。シュラがシオンにパソコンを教えてあげて。お年寄りは一日で覚えられないでしょ??それに説明書の字もちょっと小さいのよね。発売時にはもうちょっと大きい字の説明書にしなくちゃだめよね。」

シュラ「(な、なんだ……もらえないのかよっ。)」

沙織「よろしくね、シュラ。発売になったら、貴方にも送ったあげるわ。」

シュラ「(やったぜ、女神大好き!)はい。お任せください。もっとも女神に忠誠の厚いカプリコーンのシュラ、教皇をパソコンのエキスパートに鍛え上げて見せますとも。」

沙織「さすがシュラ。頼もしいわぁぁぁ。」

 


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