真実の仮面その3(TALKY MASK

 

シオン「だせーーー、出しやがれ!!!」

今日もスニオン岬にシオンの声はむなしく響く。

 

童虎「シオン、もういい加減そこにいるのも飽きただろう?女神に謝れ!」

シオンはスニオン岬の岩牢前に現れた童虎に声をかけられ、鉄格子にしがみついた。

シオン「まだ飽きてはいない。謝らない!」

童虎「お前がそこに入って2ヶ月だぞ。もういい加減にしたらどうだ?」

シオン「ふむ、もうそんなになるのか。そうか・・・・2ヶ月か。ふふふふっ・・・・。」

童虎「いきなり笑い出してどうした?ついに気でも狂ったのか?」

シオン「聞いてくれ、童虎。記録更新だ!」

童虎「はぁ?」

シオン「今までの記録は1ヶ月と23日だったのだ!」

童虎「言っていることがよく分からんのだが・・・・。」

シオン「だからな。今まで散々ここに閉じ込められたのだが、2ヶ月も入っていたのは初めてなんだ。どうだ、凄いだろう!」

童虎「お前、ここに閉じ込められたのは、今回が初めてではないのか?」

シオン「ああ、そうとも。小さい頃から、何度も何度もここにはお世話になっている!」

童虎「・・・・・・・・・・・。お前、本当に馬鹿だな。」

シオン「なんだと?お前に言われたくないわ!」

童虎「飽きれて物が言えん・・・。」

シオン「おい、童虎!待て。私のスニオン岬岩牢武勇伝を聞いていけぇーーー。」

 

別の日。

スコーピオン「おぉ、シオン。本当にここにいたのか。」

アクエリアス「あいつの話しは本当だったんだ・・・。」

シオン「蠍!水瓶!!久しぶりだな!!山羊に私のことを聞いてきたのか?あいつも気が利くな!」

アクエリアス「シオン、大丈夫か?」

シオン「水瓶、私の心配をしてくれるのか?だったら、ここまで来い!」

スコーピオン「何で、そこまで行かなくちゃいけないんだよ!お前の考えていることは分かってるんだぞ!!」

シオン「だったら、何をしにきた!」

スコーピオン「うん、見学!」

アクエリアス「すまん、シオン。こいつがどうしても、お前が岩牢に閉じ込められている姿が見たいって言うから・・・。」

アクエリアスは長い髪を潮風になびかせながら、困ったように肩をすくめた。

スコーピオン「それでさ、ついでにランチもここでしようと思ってさ。ほら、お弁当持ってきたんだ!」

スコーピオンはアクエリアスの制止を無視し、大地に腰を下ろすと意地の悪い笑いを浮かべて、持ってきたパンやチーズを食べ始めた。

スコーピオン「ほら、お前も食べろよ!」

スコーピオンは無理矢理アクエリアスの手を引っ張り、アクエリアスに腰を下ろさせた。

シオン「・・・・・、あいつら、ここから出たら、また毎日2人いっぺんにヤってやる。」

シオンは呟くと、岩牢の奥へと入り腰をおろした。ここからなら、外の様子は見えない。

アクエリアス「・・・・・ん・・・・・駄目だ。・・・・こんな所で・・・・。」

スコーピオン「そんなこと気にするなよ。」

アクエリアス「・・・・あぁ・・・・・・。」

シオンは思わず鉄格子に駆け寄った。見ると、スコーピオンとアクエリアスがお楽しみ中であった。

シオン「くそっ!あいつら、この私が手出しできないと思って・・・・・・・。」

スコーピオンは横目でシオンをいやらしく見ながら、アクエリアスの首筋にキスをした。アクエリアスは嫌がりながらも、スコーピオンに身を任せていた。

 

スニオン岬の岩牢前に3人目の男があらわれた。シオンよりもやや背の低い、長髪のその男は私服であったが、何故か聖衣のヘッドパーツを抱えていた。

ジェミニ「やめないか!お前達!!シオンが可哀想だろう。」

ジェミニののんびりとした口調で怒られたスコーピオンはシオンにアカンベをすると、アクエリアスを連れて去っていった。

 

シオン「おぉ、お前か!!待っていたぞ!!さっさっ、こっちへ早く来てくれ!」

ジェミニ「それは出来ない。」

ジェミニは相変わらずゆっくりとした口調で答えた。

シオン「なに?やっと私のものになる気になったのではないのか?」

ジェミニ「いいや。君がそこで寂しい思いをしていると思ってさ・・・・。」

シオン「?」

ジェミニ「本当は、私がここで君の話相手になってあげればいいんだが、それをすると女神に怒られるから・・・。」

シオン「話相手などいらん。お前がこの格子の前まで来てくれればいい!」

ジェミニはシオンの言葉を聞いてないのか、わざと無視したのか、言葉を続けた。

ジェミニ「だから、この子達をここへ置いていくよ。これで君も寂しくはないだろう?」

シオン「この子達??」

シオンはジェミニが地面に置いた物を見て、ギョっとした。

ジェミニ「それじゃ、私はもういくから。お前達、シオンを頼んだぞ。」

シオン「まて。行くな!行くなら、それをもって行けーーーーー!!」

ジェミニが去った後、波の音だけがスニオン岬に響いた。シオンはジェミニが置いていったもの、双子座の聖衣のヘッドパーツをじーっと見つめた。ヘッドパーツには何の変化もない。シオンはホっと胸を撫で下ろし、岩牢の奥へと向きを変えた。その途端、ヘッドの恐相の面の目に光がさした。

恐相の面トム「よう、シオン!」

シオンは人間のものとは程遠い声にビクッとし、振り返った。双子座の聖衣の頭部が喋ったのである。もちろんシオンは双子座の聖衣が喋ることを知っていたが、大迷惑であることも知っていた。

頭部の二つの顔にはそれぞれ名前がついており、恐相の面をトム、優相の面をジェリーといった。この二人は非常に仲が悪く、一度喋り始めると、永遠と兄弟喧嘩をするのである。修復の際に、何度も耳ざわりな聖衣の兄弟げんかをきかされて、シオンはこの兄弟があまり好きではなかった。

トム「今度は何をしてそこに閉じ込められた?」

シオン「お前には関係ない!」

トム「そんなことをいうなよ。お前と俺達の仲じゃないか!!」

次に優相の面の目に光がさした。

優相の面ジェリー「シオン。君がそんなことでどうする?君の師匠はきっと泣いておられるぞ。」

トム「呆れているの間違いだろう!」

ジェリー「そんなことを言うものじゃない、トム!」

シオン「えーーい、うるさい。黙れ!!」

トム「なんだ、何を怒っている、シオン。」

ジェリー「このような所に閉じ込められて、気が立っているんだろう。」

トム「これだから、人間っていう奴は駄目なんだ。お前も何百、何千年も聖衣ボックスの中に入ってみろ!そうすれば、そこがパラダイスに思えるようになるぞ!」

ジェリー「人間があの中に入ることは無理だ。馬鹿なことを言うんじゃない、ジェリー。」

トム「ところで、シオン。お前はまだ双子座の聖闘士をものに出来ないのか?」

シオン「誰のせいで、ものに出来ないと思っている。」

トム「ぎゃははは!やっぱりまだなのか。」

シオン「いつもお前達が引っ付いているから、私が手出しできんのだ。聖衣のくせに、人間なんぞに飼いならされおって。」

ジェリー「何を言っている、シオン。私達聖衣は持ち主を危険から守るのも、役目の一つなんだ。彼を君の餌食にするわけにはいかない。彼だって、君さえ襲ってこなければ、常に私達を肌身放さず持っていることもなくなるんだ。」

トム「そうだ!お前のせいだ、シオン!」

シオン「うるさい、うるさい!!いつも私の邪魔ばかりしおってからに!!」

トム「当然だ、あれはお前にのものには絶対にならんぞ。あれはサジタリウスのものだからな!!」

シオン「どういうことだ??」

トム「おや、おや。シオンは知らなかったのか?あれが毎晩、毎晩サジタリウスに可愛がって貰っていることを・・・・。」

ジェリー「トム、やめるんだ。」

シオン「ジェリーは黙れ。トム、話を続けろ!」

トム「なんだ、もう興奮しているのか、シオン?まだまだ若いな!!」

シオン「いいから、話を続けろ!!」

トム「そうか、そうか。そんなに聞きたいか。あれがどういう顔で喘ぐのか、どういう声を出すのか、どこが感じるのか・・・。サジタリウスの攻め方はどんなものか・・・・。お前にはいつも修復してもらったりしてるから、特別に話してやろう!!」

ジェリー「いい加減にしないか、トム。」

シオン・トム「お前は黙れ!」

 

 

一週間後。

シオンは相変わらずスニオン岬の岩牢にいた。岩牢の前には双子座の聖衣のヘッドパーツが置かれている。シオンは目を真っ赤にし、真っ黒な隈をこさえていた。息も心なしか荒い。

シオン「・・・・・。先代のジェミニも、先々代も、そのまた先々代のジェミニの話も、もういい!!。いいかげんに今の話をしろ、今の!!私は今のジェミニのことを知りたいのだ!」

トム「なんだ、これからがいいところなのに。そんなに今の話が聞きたいか。一週間、寝ずに俺の話を聞いた褒美に話してやろうか?」

ジェリー「もう、シオンをからかうのはやめないか。トム!」

ジェミニ「シオーーーン。」

聖衣を纏ったジェミニが現れ、シオンはトムとジェリーから目を離した。

ジェミニ「ごめん、シオン。」

シオン「どうした?やっと私のものに・・・・。」

一週間の痴態話ですっかり興奮していたシオンは、ジェミニの姿を見ると鼻息を荒くした。

ジェミニ「これから仕事なんだ。だから、トムとジェリーを連れていくよ。」

シオン「ちょっと待て。もうしばらく、おいていけ!」

ジェミニ「そんなに、トムとジェリーのことが気に入ったのかい?だったら、また貸してあげるから今回は我慢してくれよ。」

シオン「おい、お前。射手とはどうなってるんだ!」

ジェミニ「え?どうなってるって?」

サジタリウス「おい、何をしている。早く行くぞ!」

岩陰に現れたサジタリウスが、苛立ち気にジェミニに声をかけた。

ジェミニ「ごめん。話の続きは君がここを出てからだ。」

シオン「待て!まだ、いくな!!私の質問答えろーーーーーーーーー!トムゥーーーーー!」

今日もスニオン岬にシオンの声がむなしく響いた。


Next