真実の仮面その5(EV'RY TIME I WATCH YOU )

 

シオンをスニオン岬に閉じ込めた翌日、シオンを抜かした黄金聖闘士11人は教皇の間へと招集されていた。

教皇「シオンを監視する者が必要だ。お前達11人で相談して決めるがいい。」

童虎「教皇。シオンの監視というのは一体どういうことですか?」

教皇「うむ。女神のご命令だ。今後、シオンを四六時中監視することにした。二度とあのようなことがおこらぬようにとの達しである。」

童虎「しかし、監視というのはいくらなんでも・・・・。」

教皇「童虎、口答えは許さん。女神命令である。」

童虎は教皇にピシャリといわれて口を噤んだ。

 

そして、11人は教皇の間内の会議室で相談を始めた。

童虎「しかし、監視といってもな。」

キャンサー「俺は絶対にやらないからな!」

キャンサーは机を叩くと言った。キャンサーの腰は、ヴァルゴに施されたヒーリングによって既に治っている。

スコーピオン「俺もいやだぜ。」

ヴァルゴ「私もシオンに構っているほど暇ではない。」

カプリコーン「俺も絶対にごめんだ!」

キャンサー「皆、シオンには痛い目にあってるんだ。誰がやるかっていうんだ!」

キャンサーの言葉に一部のものが同意した。

タウラス「そんなの、シオンにヤられる方が悪いんだ。」

キャンサー「なんだと?!あいつにヤられた方が悪いって言うなら、みんな悪い事になるぞ?!」

タウラス「私はヤられてないぞ」

キャンサー「なんだと?」

タウラスの言葉に皆が一斉にタウラスに視線を向ける。

キャンサー「ちょっと待て。どういうことだ、タウラス。」

タウラス「そんなの、シオンにヤられる方が悪いんだ。本当に嫌なら、念動力でも小宇宙でも使って全力で逃げればいいだろう。逃げないって事は、お前がへっぽこか、シオンに気があるからだ。」

レオ「そんなことはない、シオンに騙された奴や無理矢理された奴だっているんだぞ!」

キャンサー「レオ、熱くなるな。いいか、ここでちょっとはっきりさせとこうじゃないか。」

アクエリアス「なにがだ?」

キャンサー「いいか、正直に答えろよ。俺たちの間で隠し事はなしだからな。」

皆の目がキャンサーに集まると、キャンサーは立ち上がって言った。

キャンサー「シオンにヤられたことがあるやつは、挙手!」

キャンサーが大きい声で言うと、皆渋々と手を上げ始めた。タウラス、ジェミニ、童虎以外の全員が手を上げた。

ヴァルゴ「きょ・・・・教皇!貴方まで?」

ヴァルゴは、部屋の上座にある教皇の椅子の上で教皇が小さく手を上げているのを見て、思わず声を上げた。

教皇「いや。すりすりと懐いてくるので、そのまま頂こうかと思ったら逆にヤられてしまってな。なぁ、サジタリアス!お前もその手に引っかかったんだよな。」

サジタリアス「あぁ。過ぎたことだ。」

カプリコーン「ピスケス。お前だけじゃない、教皇だってこのざまだ。落ち込むなよ。」

カプリコーンに慰められたピスケスは小さく頷いた。

キャンサー「・・・・。もう一つ聞きたいことがある。絶対にまかり間違ってもいないと思うが、シオンを掘ったことがある奴は、挙手!」

昨日シオンに掘られたショックで頭がおかしくなったのかという視線を、皆はキャンサーに送った。しかし、キャンサーの向かいでタウラスが手を上げるのを見て、皆、口をポッカーンとあけたまま、顔をタウラスに向けた。

タウラス「お前達、何を見ている。シオンは可愛いぞ。」

はぁ??

皆、開いた口がふさがらなかった。

タウラス「あんな可愛い奴は他にはいないぞ。なんで、皆シオンの魅力が分からんかな。いや、しかし、シオンの魅力に気がついたら、俺が大変だな。ライバルが増えたら大変だ。」

はぁぁぁぁ??

皆、口をあけたまま首をかしげた。

タウラス「頼むから、シオンが可愛いからって襲ったりするなよ。俺が許さないからな。」

皆、そのまま首を横にぶるぶると振った。

 

キャンサー「・・・・・・・・。シ・・・・シオンの網にかかっていないのは、ジェミニと童虎だけか。そういえば、お前達、アイツに名前を覚えてもらってるよな。シオンにヤられないのと名前になにか関係があるのか?」

キャンサーは我に返ると言った。

童虎「俺か?俺は人外だからな・・・・。」

レオ「じんがい?」

童虎「ああ。シオンにとって、俺は猿なんだそうだ。さすがのシオンも猿には欲情しないみたいだな。はっはっはっ!!」

ヴァルゴ「童虎、笑い事ではないだろう。」

スコーピオン「で、なんで名前を覚えてるんだ?」

童虎「ああ、あいつが俺に会うたびに、猿、猿言うから、頭に来て、教え込んだんだ。毎日顔を合わすたびに、シオンの両頬をつねって、こう『ど・う・こ』という形に無理矢理捻じ曲げるんだ。それを一年続けたら覚えたぞ。たまに、シオンの涎が手にかかるのが難儀だけどな。お前達もやってみらたどうだ?」

童虎の話を聞いて、皆首を横にブルブルと振った。そんなことをしたら、そのまま押し倒されるに決まっているからだ。

 

キャンサー「ジェミニ!お前は?いつものほほんとしているお前が何故シオンに襲われないのだ!」

ジェミニ「え?わたし?私にはトムとジェリーがいるから・・・・。」

アクエリアス「トムとジェリー?。」

ジェミニ「ああ。こっちがトムでこっちがジェリーだ。」

ジェミニは膝の上に置いていた、双子座の聖衣のヘッドパーツをテーブルの上に置き、皆に説明した。

レオ「いや、それに名前がついていて、喋るのも知っているが・・・・。」

ジェミニ「シオンが近寄ってくると、トムとジェリーが教えてくれるんだ。だから、トムとジェリーの言葉に従ってシオンとは一定距離を置くようにしてる。夜寝ていいても、シオンが来ると起こしてくれるんだ。」

カプリコーン「しかし、トムとジェリーにいつも口を開かれたら五月蝿くないのか?」

ジェミニ「この子達は普段は喋らないよ。ほら、今だって静かにしているだろう。シオンが近寄ってくるときと戦いの時くらいしか喋らないんだ。あとは私が話し掛けたときくらいかな。あっ、兄さんにも話すよね。」

そう言って、ジェミニは教皇に同意を求めた。

教皇はジェミニの双子の兄であった。先代の教皇はシオンに教皇の座を譲りたがったが、その下半身の奔放さに呆れて、皆の信頼も厚かった当時双子座の聖闘士が選ばれていた。

ヴァルゴ「だから君は、いつもそれを持っていたのか。」

アクエリアス「それで、貴方はなんで名前を覚えてもらっているんです?」

ジェミニ「うーーーん、なんでだろう。この前、聖衣を直してもらう為に一週間預けた後から、私の名前を呼ぶようになったけど・・・。」

教皇「トムとジェリーが一晩中、お前の名前を叫んでいたのであろう。そうだな、トムとジェリーよ。」

ジェリー「そうだ!名前を呼んでもらえないのは不憫だからな。」

トム「四六時中名前を連呼したら、流石のアノ馬鹿も覚えよった。人間などチョロいわ!」

一同は人間のものとは程遠い声にビクリと肩を震わせ、双子座のヘッドパーツを凝視した。

スコーピオン「俺、これが喋ったの初めて見た・・・・。」

ジェミニ「そんなに、名前を覚えてもらいたいならトムとジェリーを貸してあげようか?」

ジェミニはヘッドパーツを撫でながら言った。

教皇・サジタリアス「それは駄目だ。その間に、お前がシオンにヤられる!」

ジェミニ「あっ、そうか。ごめん。トムとジェリーは貸せないみたいだ。」

ジェミニの話を聞いて、皆首を横にブルブルと振った。そんなことをしたら、ジェミニがそのまま押し倒されるに決まっているからだ。
そしたら、ジェミニを可愛がっている教皇とサジタリアスの怒りは爆発するだろう。

 

タウラス「シオンが俺の名前を覚えているのはだなぁ。毎晩毎晩、耳元で囁いてやってるからだ。だからって真似をするなよ!」

キャンサー「誰が真似をするか!」

カプリコーン「っていうか、誰もお前になど聞いてない!」

タウラス「そんな冷たいことを言うな。シオンは可愛いんだけどな・・・・。」

 

教皇「で、誰が監視することになったのだ?答えは出たか、キャンサー?」

キャンサー「はい。童虎が適任かと思います。」

童虎「は?なんで俺が!?」

キャンサー「それと、ジェミニとタウラスでローテーションを組ませてみてはいかがかと・・・。」

教皇・サジタリアス「ジェミニだと?」

キャンサー「いえ、タウラスと童虎にしましょう、教皇。」

教皇「ふむ。タウラスと童虎か・・・。しかし、タウラスはシオンに甘いからな。よし、童虎、お前が監視役だ。」

童虎「え?」

教皇「タウラスはシオンに甘すぎる。よって童虎が適任だ。心配するな、ちゃんと食事や睡眠等の時間は他の者と交代させる。」

童虎「しかし・・・・。」

教皇「これは命令だ。お前は、あの岩牢の前に黙って座ってシオンを監視するのだ。よいな、童虎。」

童虎「・・・・・・・・・・・・・はい、承知いたしました。」

 

シオン「だせーーー!だしやがれーーーーー!!」

スニオン岬にシオンの悲鳴は木霊する。

シオンはスニオン岬の岩牢前に現れた童虎の姿を見て、鉄格子にしがみついた。

シオン「童虎。私はまだ反省してはいないからな。」

童虎「・・・・・・・・・・。」

シオン「どうした、童虎。何故黙っておる。」

童虎「今日から、ここでお前を監視することになった。お前とは口を利くなという命令だ。すまんな、シオン。」

そう言って、童虎は満潮になっても潮が来ないところに腰をおろすと瞑想を始めた。

シオン「なんだと?それはどういうことだ??何か喋れ、童虎!!!!!」

スニオン岬にシオンの悲鳴だけが空しく木霊した。


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