★真実の仮面6(保護観察つき仮出所)
今日もスニオン岬に波の音だけが響いた。
脱獄から3ヶ月、投獄から計6ヶ月。さすがのシオンも限界に達していたが、それでも全く反省する気はないらしく、波にチャプチャプと浮かんでいた。
岩牢の前で瞑想を続ける童虎は、珍しい訪問者に目を開けた。
童虎「お、教皇。私はいつここから解放されるんでしょうか?」
教皇「シオンが反省するか、死ぬまでだ。」
童虎「はぁ・・・はやく死んでくれないかなぁ・・・・。」
教皇「シオン、まだ生きてるのか?」
潮が引いた岩牢でぐったりと座り込んでいるシオンに、教皇が声をかける。ゆっくりと顔を上げ、シオンは不敵に笑った。
シオン「・・・・これが不思議と死なないんだ。無罪だから死なないらしい。」
教皇「もう限界だろう。女神に謝れ。」
シオン「悪くないのに謝る必要はない。謝るくらいなら死んだほうがマシだ。」
教皇「ならば、死ね。」
シオン「ふふふふ、死んだら、積尸気経由で現世に戻ってやる。」
童虎「そんなことできるはずないだろう!」
シオン「冥界でスターライトエクスティンクションを自分自身に使えば、理論上は戻れる!ふふふ、はーーーはは!」
教皇「・・・・こいつならやりかねん。」
シオン「戻れなくてもいいさ。毎晩毎晩お前らの枕もとに化けて出て、卑猥な話をしてやるぞ。ははは!」
教皇「どうあっても反省する気はないようだな。」
シオン「無罪で何を反省しろというのだ!?」
教皇「悪くなくても謝らなければならぬときがある。」
シオン「私は正義を守る聖闘士だ。絶対に謝らない。」
教皇は首を横に振ると、スニオン岬からその姿を消した。
次の日
スニオン岬に大勢の声が響き渡った。教皇がレオとヴァルゴ、タウラス、そして、シオンも童虎も見たことがない男を伴っていた。
シオン「おお!私に男をくれるのか!」
教皇「お前に与える男などない!」
シオン「・・・・そいつは捕虜だな。」
レオとヴァルゴに両腕を抑えられた男を見て、シオンは不気味に笑った。
シオン「そいつをさっさとこの中へ入れろ。私がじくりと可愛がってやる。」
教皇「お前に与える男はないと言っただろう。お前は仮出所だ。」
シオン「何だと?!出すなら、そいつをいヤらせてからにしてくれ。」
タウラス「いい加減にしないか、シオン!!!せっかく出られるというのに、馬鹿なことを言うな!!」
タウラスが海に入り、岩牢前まで進むと、鉄格子は人が一人通れる分だけ姿を消した。岩牢に入り、シオンの痩せた体を抱きしめると、タウラスは声もなく涙を流した。
シオン「・・・・・・ふふふ、私は謝らなかったぞ。」
タウラスの広い胸の中で相呟くと、シオンは意識を失った。
全身に走る痛みでシオンは目を覚ました。体が動かない。半年に及ぶ岩牢生活は、黄金聖闘士であるシオンですらからも全身の自由を奪った。
重い瞼を開くよりも先に、枕に染み付いた匂いで自分の居場所を知ったシオンは、テレパシーで部屋の主を呼んだ。
タウラス「目がさめたか、シオン?」
シオン「(どうして私はお前のベッドで寝てるんだ?)」
タウラス「お前はな、俺が預かることになったんだ。」
シオン「(は?どういうことだ?)」
タウラス「しばらくは、お前が悪さしないように、俺が見張る事になったんだ。お前はこの金牛宮で暮らすんだぞ。」
シオン「(だから、私は悪いことなどしていない!)」
タラス「これは女神命令だ。岩牢に戻るのとどっちがいい?」
シオンは返事をしなかった。
タウラス「お前が欲求不満にならないように、これから毎日俺が可愛がってやるからな。ははは!」
シオン「(余計たまるわ!!!ボケ!)」
タウラス「腹へってるだろう。飯作ってやるからな。」
シオン「(今すぐ私を白羊宮に戻せ!毎日掘られてたまるものか!)」
ベッドから動くことの出来ないシオンの唇にキスすると、タウラスはシオンの抗議のテレパシーを無視して部屋から出て行った。
ジェミニ「やぁ、シオン。お目覚めかい?」
間のぬけた声に、シオンは瞼をパチリと開いたが、体が言うこと聞かず、タウラスと入れ替わりに部屋に入ってきたジェミニの姿を見ることは出来なかった。
シオン「(おお、ジェミニか。目覚めの一発とはタウラスも気がきくな。)」
ジェミニ「動けないくせに何言ってるんだ。あまりタウラスを悲しませることばかりするんじゃないぞ。海水で汚れていた君を、全部綺麗に洗ったのもタウラスなんだからな。」
シオンは自分の体から潮の匂いがしないことに気づいた。
シオン「(では、ここで何している?)」
ジェミニ「君が金牛宮から逃げ出さないように、見張りだよ。」
シオン「(ほうほう。)」
ジェミニ「私を襲おうと思っても無駄だぞ。トムとジェリーもいるし、ライブラもサジタリアスもいるからな。」
シオン「(何で猿に人馬もいるのだ?!)」
ジェミニ「みんな君の見張りだよ。」
シオン「(お前はいい、猿と人馬はいらん。)」
ジェミニ「本当に君は全然反省していないんだね。嫌ならはやく女神に謝って、監視を解いてもらうんだな。」
シオン「(おいこら!待て!ジェミニ!掘らせろ!行くな!!!)」
こうして金牛宮で牡羊座、牡牛座、双子座、天秤座、射手座の5人による、奇妙な共同生活が始まった。
1週間後、タウラスの手厚い看病により、ようやくベッドから体を起こすことができるようになったシオンは、今日も元気に吠えていた。
シオン「めしーー!はらへったーーー!めしーー!男でもいいぞーーー!よこせーー!」
サジタリアス「うるさいぞ、シオン。いまジェミニが買い物に行ってるから、もうしばらく寝てろ。」
タウラスの寝室の扉を開けたサジタリアスは、シオンの姿を見てニヤリと笑った。
サジタリアス「随分色っぽい格好をしているじゃないか。」
シオン「なんだ、また私に掘られたいのか?」
裸のままベッドの上で枕に寄りかかり、手招きするシオンに近寄ると、サジタリウスはシオンの銀色に輝く髪をつかんだ。中身は凶悪なシオンだが、見た目だけは類稀な美しい容姿をしている。
サジタリアス「立てないくせに何に言ってる。」
シオン「ふん、立てなくとも上に乗せることはできるぞ。」
サジタリウスは掴んだ手に力をこめて、シオンをベッドへうつ伏せに沈めると、靴を脱がずにシオンの背中にまたがった。
シオン「ぎゃーー!やめろ!私の上に乗るな!」
サジタリアス「乗せられるっていうから、乗ってやったんじゃないか。掘らせてもらうぞ、シオン。あのときの仕返しだ。」
シオン「お前に掘らせる尻はない!」
サジタリアス「おーい、タウラス!。お前の可愛いシオンをちょっとばかし掘らせてもらうぞ。」
開いたままの扉の向こうに声をかけると、サジタリアスはシオンの髪を払いのけ、うなじに舌を這わせた。
シオン「うぎゃゃぁぁぁぁ!!!やめろって言ってるだろう!」
サジタリアス「いつもお前が他の奴らにやっていることだ。なんだ、首は感じないのか?やはり尻じゃないと駄目か?」
後ろに手を回し、サジタリアスがシオンの尻をなでまわすと、シオンは手足をバタバタさせて暴れたが、筋力の回復していない体で抵抗するのは難しかった。
タウラス「シオンはまだ動けないんですから、からかうのはやめてください。」
タウラスに上から見下ろされ、サジタリアスは唇を吊り上げて笑った。
サジタリアス「動いてもらっちゃ困るんだ。ちょっとこいつを掘らせてもらってもいいか?」
タウラス「何言ってるんですか。貴方にはジェミニがいるでしょう。」
シオン「何?!それはどういうことだ?!お前らデキてるのか?!」
サジタリアス「さぁてね、お前に教えてやる義理はない。」
シオンはサジタリアスに頭を押さえつけられてベッドに顔をうずめながらも、ギャーギャーと射手座と双子座の関係に文句をつけていた。
タウラス「おい、シオン。どうせお前が誘ったんだろう。あれでは足りなかったのか?」
サジタリウス「ぶぶぶ、やっぱりお前、こいつに毎晩可愛がってもらってるのか?。」
シオン「うるさい!余計なお世話だ!。」
タウラス「まったく、お前は・・・・。あとは私が可愛がってやりますので、貴方はどうぞお引き取りください。」
サジタリアスはシオンの尻をパシンと叩くと、ベッドの上から飛び降りた。
タウラス「可哀想だからと思って手加減してやれば、まったく。」
シオン「私は掘られたいのではなく、掘りたいのだ。ジェミニをよこせーーーーー!」
サジタリアス「おい、こいつが減らず口叩けなくなるまで掘ってやれ。」
タウラス「言われなくてもそうしますよ。」
サジタリアス「今度減らず口叩いたら、教皇と俺とでまわしてやるからな、おぼえておけよ!」
シオン「ぎゃーーーー!やめろーー!!ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
シオンの悲鳴に、台所から駆けつけた童虎は、開けっ放しの扉から中を覗いて絶句した。タウラスに腰を抱えあげられ、後ろから逞しい雄に攻め立てられているシオンは、その髪と同じ銀色の瞳に涙を浮かべて、切なげな声で喘いでいたのだ。
タウラスとシオンの情交を目撃してしまった童虎は、落としそうになった中華包丁を持ち直し、サジタリアスが開けっ放しにしていった扉を静かに閉めた。
童虎「・・・・俺は女の方がいいけどなぁ。もしかして、俺って異常?。」
童虎の呟きに、ダイニングの椅子に腰をおろしていたサジタリアスがゲラゲラと笑った。
サジタリアス「聖域は女がほとんどいないから、仕方ないんだよ。シオンやピスケスのぼうやなんか、その辺の女よりかはよっぽど綺麗な顔をしているしなぁ。」
童虎「いや、いくら顔が綺麗でも、俺はやっぱり女の方がいいですね。」
サジタリアス「気にするな、それが正常だ。」
童虎は首をかしげながら台所に戻って、昼食の仕度を続けた。
その日の午後、本当に現れた教皇の姿を見て、尻に危険を感じたシオンは、真剣にリハビリに励もうと心に誓った。
教皇「立てないというのは本当だったのだな。」
シオン「なんだ、あんたまで私を犯しにきたのか?」
教皇「おまえと一緒にするな。聞きたいことがある。」
シオンは教皇から、自分と入れ替わりにスニオン岬の岩牢に入った捕虜が死亡したことを聞き、鼻で笑った。
教皇「自殺したのと、溺死したのでは事情が大きく異なってくるのでな。」
シオン「あんたも一度あそこに入ってみれば解るさ。満潮時にはすっぽり水の中に沈んじまうんだぜ。溺死だよ、溺死。」
教皇「お前は半年も入っていたではないか?」
シオン「ぶはは!私を基準に投獄したのか?!愚かだな。」
教皇「では、お前はどうやって生き延びたのだ?」
シオン「私は子供の頃から何度もあそこに世話になってるからな。慣れだよ、慣れ。今更溺れるわけないだろう!。」
教皇「・・・・なるほど。」
部屋から去ろうとする教皇にシオンのほうから声をかけた。
シオン「なぁ、死んだのは冥界の鼠だろう。」
教皇「何故そう思う?」
シオン「星の動きがよくない。聖戦が近いな。」
教皇「・・・そうおもうなら、さっさと体を治せ。」
星を見て正確に未来を予言できるものは少ない。先代の教皇がシオンを次期教皇に切望していた理由を、教皇は知った。