シオンさまといっしょ(全員再特訓 その1)

 

黄金聖闘士(サガの弟も含む)は聖衣着用の上、第1闘技場に集合。

教皇の命令で、童虎を抜かす黄金聖闘士達がしぶしぶ顔をそろえた。
どうせ御前試合か何かでもやらされるのだろうと、早くもイカサマの打合せをはじめる者もいる。

一人遅れて、私服のまま現れたムウに、一同は眉をひそめた。そしてムウが手にもっている、聖衣修復の工具を見て、あれにだけは世話にならぬよう、念入りに準備運動をはじめるのだった。

程なくして現れた教皇を見て、ムウが教皇の命令に従わなかったことを理解した。
銀に輝く長い髪をなびかせ、教皇はお気に入りの18歳の体に牡羊座の聖衣をまとって現れたのだ。その異様なまでのシオンの迫力に、闘技場は水を打ったように静まり返った。

デスマスク「教皇・・・・そのお姿は一体?」

シオン「たまには聖衣を着てみようと思ってのぅ。やはり聖衣はいい。冥衣とは比べ物にならぬ。」

シュラ「あれは粗悪品ですからねぇ。」

冥衣に世話になったことのある者たちが頷いた。

聖衣を纏っていないムウとカノンも含めて整列させると、シオンは一同を見回す。普段シオンと、教皇の仮面越しにしか関わらない者たちは、シオンの妙に座った瞳と、不敵につりあがった口元に、ただならぬ恐怖を抱かざるをえなかった。

シオン「さて、今日は御前試合ではない。余と闘うのじゃ。お前達は弱すぎる。全員再特訓じゃ。」

聖衣を着用していないムウが一歩後ろに下がったのを見て、カノンもそれに倣った。相手が教皇で、しかも聖衣着用とあっては、聖衣なしで闘うことなど、自殺行為に等しい。

シオン「さて、一番手は誰じゃ?」

小宇宙というより、不気味な妖気を発しているシオンに、戦いを挑もうという勇気王は一人もいなかった。

シオン「サガよ、お主どうじゃ?」

名前を呼ばれたサガはビクリと肩を震わせ、目を下にそむけた。

シオン「・・・・・。余から一本とったら、特別休暇1ヶ月じゃ。」

サガは顔を上げた。

シオン「それに温泉旅行券をつけよう。どうじゃ?」

サガの眉が上がった。

アイオロス「はーい!はーーい!教皇!!!!!私とサガが一番手です!。」

サガ「何を言ってる、アイオロス!二人係とは卑怯だぞ!」

アイオロス「何を言っている、教皇なんて存在自体が卑怯みたいなものではないか。」

シオン「かまわぬぞ。二人でかかってまいれ。」

アイオロス「私たちが勝ったら、旅行券はペアチケットにして下さい!。」

シオン「よかろう。」

サガ「・・・・・・温泉・・・・・休暇・・・・。」

アイオロスとサガが一番手となり、他のメンバーは後ろに下がった。

 

シオンはムウに牡羊座のマスクを渡すと、両腕を組んだまま、二人を鼻で笑う。

アイオロス「サガぁぁぁ〜〜〜一緒に温泉行こうなぁぁ〜〜〜」

サガ「今は試合に集中しろ、アイオロス。」

アイオロス「温泉だぞ、温泉。1ヶ月休みだぞ〜〜〜〜!。」

サガ「だから、それは勝ってからにしろ!。」

アイオロス「あ!サガ危ない!」

アイオロスに気を取られているサガをめがけて飛んできたシオンの一撃を、アイオロスはシオンに背を向けるようにして、サガを庇った。しかし、シオンの拳は、アイオロス腕の隙間から伸びたサガの腕が受け止めていた。

アイオロス「大丈夫か?サガぁぁ〜〜〜?」

サガ「頼む・・・そこをどいてくれ。」

アイオロスによって視界をさえぎられているサガは、次のシオンの拳を見切ることが出来ず、アイオロスごと一緒に吹っ飛ばされた。

アイオロス「サガぁぁぁ!!!怪我はないか!」

サガ「・・・・、どけ、アイオロス。」

自分に圧し掛かっているアイオロスを振り払うと、サガはすぐさま立ち上がった。そして、教皇に片手を上げると、試合の一時中断を申し入れた。

サガ「・・・、邪魔だ。アイオロス。」

アイオロス「何を言っているんだ、サガ。」

サガ「お前は、邪魔だ。私は一人で闘う。」

アイオロス「え?」

サガは眉間に縦皺を走らせ、アイオロスの一の子分、シュラを呼んだ。

サガ「シュラ、アイオロスを連れて行け。」

シュラ「アイオロス、さ、いきましょう。サガは一人で闘うそうです。」

アイオロスの腕をとり、シュラは外野へ戻ろうとする。

アイオロス「おい!私はサガと一緒に温泉旅行に・・・はなせ、シュラ。」

シュラ「タイマンですよ、タイマン。サガは教皇とタイマンはりたいんですって。さ、おとなしく見学しましょう。」

アイオロスが外野に引っ込んだのを見ると、サガはカノンを呼んで預けたマスクを被り、マントをはずして手渡した。

 

シオン「やっと本気になったか、余の急所はここだぞ。」

シオンはかつてサガに刺された左胸を指して、サガを挑発すると、外野から一斉に野次が飛んだ。

デスマスク「いいぞーーー!殺ッちまえーー!サガ!プスリと刺しちまえ!」

ミロ「スターヒルリターンズだ!殺っちまえーーー!。」

サガ「うるさい、お前ら。聖闘士に同じ技は二度通用しない。」

カミュ「・・・素敵だ、サガ。」

アフロディーテ「サガ〜〜〜すてきぃぃぃ〜〜〜〜」

アイオロス「サガぁぁぁ一緒に温泉だぞ、温泉!温泉行こうなぁぁぁ!」

カミュ「ハァハァ・・・・、サガ・・・なんて素敵なんだ・・・・ああ・・・掘りたい!。」

サガ「うるさい、お前ら!!!!。私の小宇宙に語りかけるな!。」

外野に気を取られた瞬間、サガはシオンの超能力で吹っ飛ばされた。アイオロスはシュラの手を振り切って、猛ダッシュでサガの元へ駆け寄る。

アイオロス「サガ!サガ!サガ!血が出てるぞ!!!大丈夫か!」

サガ「邪魔だ!どけ!!!!勝負はこれからだ!」

サガは切れた唇を手で拭い、口中に溜まった血を吐き飛ばす。再び教皇に一時中断を申込み、シュラとアイオリアを呼んで、アイオロスを外野へ連行させた。

 

眉間に何本も皺を走らせ、気合を入れて少宇宙を燃やすサガはカノンそっくりだった。

シオン「サガよ、温泉だぞ、温泉。」

サガ「温泉旅行、頂きます、教皇!!!!」

デスマスク「おお!サガの小宇宙に湯煙が見えるぞ!」

ミロ「すげぇぇ!岩風呂が見える!!あれは物欲の小宇宙だな。」

アイオロス「サガァァァ!!いっしょに温泉入ろうなぁ!!」

アフロディーテ「サガ〜〜〜〜!スパ行きましょ〜〜〜!スパ〜〜〜!」

アイオロス「サガァァァァ愛してるぞーーーー!!!温泉へ新婚旅行だ!」

外野から大声で届いたアイオロスの愛の告白に、気を取られた瞬間、サガは再び吹っ飛ばされた。今度はシオンの光速拳が直撃し、マスクが宙を舞う。

アイオロスは聖衣の羽を鶏のようにパタパタ羽ばたかせ、サガの名前を連呼しながら、地面に叩きつけられたサガに駆け寄った。

アイオロス「サガァァァァァァァ!!!サガ!サガ!サガ!サガ!!!!大丈夫か!!!」

サガ「・・・・・・・うるさいぞ・・・アイオロス。」

シオン「サガよ、集中力が足りんぞ。」

サガ「・・・・・・はい・・・・。」

シオン「そなたが、余に勝つ方法を教えよう。先ずアイオロスを殺すのじゃ。」

シオンの言葉に首を振ると、サガはアイオロスの腕の中で白目をむいて気を失った。

 


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