きょうのわんこ

 

シオン「犬が欲しいのう〜」

執務中に突然たわごとを言い始めたシオンを、その日の補佐をしていたアイオロスとサガは思いっきり無視した。

シオン「犬が欲しいのじゃ、無視するでない」

アイオロス「はぁ? 犬なら以前貴鬼が懸賞であてたのを、ムウの足にしがみついて腰振ったからと言って追い出したじゃないですか。もうボケましたか?」

シオン「無礼者っ、ぼけてなどおらぬ。余が欲しいのはムウに欲情せぬ犬じゃ」

アイオロス「しかし、欲情しなくても犬は舐めますよ。ペロペロと」

シオン「うむ、だから欲情もせず、舐めぬ犬がよいのぅ。きちんとしつけてあれば、大丈夫であろう。あれは貴鬼が適当にしつけたからいかんのじゃ」

アイオロス「またムチャクチャなことを言って」

シオン「どんな犬がよいかのぅ」

シオンは超能力をつかって本棚からファイルを取り出すとぺらぺらと捲った。どうやら図鑑かなにからしい。

アイオロス「どうせなら大きいのにしましょう」

シオン「小さいのもカワユイぞ」

アイオロス「小さいのじゃ聖域では生きていけませんよ」

シオン「うむ……、番犬がよいのう」

アイオロス「やっぱり大きいのですね!」

シオン「猟犬もおる」

アイオロス「狩りするんですか!? まさか男狩りじゃないでしょうね」

アイオロスは机の上のファイルを覗き込んだ。

アイオロス「げっ!? きょ、教皇、まさか!」

サガ「?」

シオン「命令じゃ、犬を連れてまいれ」

アイオロス「ムチャ言わないでください」

シオン「ではサガを飼うかのう」

アイオロス「今すぐ連れて行きます、サガ行くぞ」

サガ「は?」

アイオロス「教皇と二人だけになりたいのか?」

アイオロスはサガを無理矢理犬選びに連れて行った。

 

一方…。

詰め所でくつろぎまくっていた白銀聖闘士たちは、突然現れたサガとアイオロスに土下座をしてガクブルと震えた。

アイオロス「アステリオン、ダンテ。教皇の勅命だ。今すぐ教皇の間へ出頭しろ」

アステリオン「へ?」

アイオロス「詳しくは……、教皇直々に説明してもらうがいい、気の毒にな」

ダンテ「き、気の毒!?」

サガとアイオロスは顔を見合わせて、無理に笑顔を作った。

サガ「まさかお前達のこととはな……頑張るのだぞ」

アステリオン「……ま、まさか、ついに俺たち、教皇の手篭めにされるんですか?」

ダンテ「だったらミスティとかアルゴルとか、もっとそっちに向いてそうなのがいるじゃないですか!」

アルゴル「ふざけんなっ! お前は仲間を売るのか!」

アステリオン「助けてください、アイオロスさま。サガさま!」

ダンテ「あんた、俺たちを散々だまくらかしておいて、今度は教皇に売るつもりですか!!」

サガ「う゛っ! べ、べつに売ったつもりなど」

アイオロス「つべこべいうな!」

ダンテ「いでぇ!」

アイオロスはサガにすがりついたダンテを思いっきり蹴り上げた。

アイオロス「お前ら、行くのか行かないのか?」

アステリオン「いやです! 俺には好きな女の子がいるんです!」

ダンテ「俺たちの青春を奪おうっていうんですか!?」

アステリオン「俺、ノン気ですよ、アイオロスさま!」

アイオロス「残念だが、そんなもの教皇には関係ない」

ダンテ「あ!? デスマスクのアニキが、教皇はノン気もなにも関係ないっていってた! 俺たち、調教されちまうんだ!!」

アイオロス「あながち間違ってはいない」

アステリオン「うぉぉぉ、冗談じゃない。教皇のナニは9本あって、全部それぞれサイズも違うって話じゃないか!」

ダンテ「伸縮自在で、機械仕掛けって本当っすか!? 俺たち殺されます!!」

アイオロス「殺しはしないから大丈夫だ」

アステリオン・ダンテ「うぉぉぉぉぉ」

二人は泣き崩れたので、アイオロスはぎょっとなった。

アステリオン「あなた、それでも次期教皇ですかぁぁぁ」

ダンテ「俺たちが何をしたっていうんです。俺たち、こんなに地味に真面目に働いてるのに」

アステリオン「地味で目立たないから、一人や二人減ったところで分らないと思ってるんですか!」

ダンテ「あれですか! 俺たちがあっけなく青銅のガキにやられた罰を、今頃あたえようっていうんですか!」

アステリオン「これなら、まだアーレスさまの時代のほうがよかった」

アイオロス「うるせー。つべこべ言わずにさっさと教皇の間に出頭しろ!」

モーゼス「さらば友よ」

カペラ「お前のなきがらは命がけで拾ってやるからな」

アイオロスはアステリオンとダンテの首根っこを軽々と掴みあげると、外にほっぽりだしたのであった。

 

 

教皇の執務室

アイオロスとサガに引きずられるように現れたアステリオンとダンテにシオンは色めきたった。

シオン「ほうほう、カワユイのう。プルプル震えておる」

アイオロス「教皇、お手柔らかに。黄金聖闘士とは違うんですから」

シオン「分っておる。まずはしつけからかのう」

アステリオンがシオンに頬を撫でられ硬直すると、ダンテはそれを見て悲鳴をあげた。

シオン「ほうほう、なかなか立派な体躯じゃ。ほう〜、犬歯も綺麗に生えておるのぉ」

口の中に手をいれられたアステリオンは、涎をたらしながらちびりそうになった。

シオン「お手!」

シーン

シオン「お手じゃ、お手!」

アステリオン「(だ、誰か助けて……)」

シオン「ふむ、やはり厳しいしつけが必要かのう、お手も理解できぬとは、いかんのう」

アステリオン「え? えっ? え!?」

ダンテ「(どういうことですか!?)」

ダンテが振り向いてアイオロスに助けを求めるが、アイオロスとサガはワザとらしく目をそらせた。

シオン「こっちのカワユイのはどうかのう。ほう、なかなか勇ましい容姿をしておる、さすが番犬じゃ。毛並みもばっちり、筋肉もしっかりついておるのぉ」

頭を撫でられ、腕や足を触られたダンテは恐怖のあまりちょっとちびった。

シオン「こやつはお手はできるかのう、お手」

シーン

シオン「お手じゃ、お手!」

シーン

シオン「いかんのう」

シオンはダンテの手をいやらしく掴むと、自分の手の上に乗せた。

シオン「よいか、これがお手じゃ。分ったか?」

ダンテ「……??」

シオン「ふむ、出来の悪い犬達じゃのう。これは本格的にしつけなばならんな」

アステリオン&ダンテ「???」

アイオロス「教皇、今は仕事中です。そういうことは仕事を終えられてから、お願いします」

シオン「むっ、一丁前の口をきくでない」

アステリオン「(いいぞ、次期教皇もっといってくれ!)」

アイオロス「しかしですね、一応仕事をなさっていただかないと困ります」

ダンテ「(もっと言ってくれ、次期教皇ッ!)」

シオン「黙れ、ひよっこ。一日くらい遅れても、問題ない。余を誰だと思うておる」

アイオロス「お言葉ですが、そう言いながら、いつも夢中になって一週間は帰って来ないじゃないですか!」

シオン「むうっ」

アステリオン「(次期教皇かっけーーーっ!)」

アイオロス「それに、老師からも教皇を甘やかさないように言われてるんです」

ダンテ「(超頼りになるぜ、次期教皇!)」

シオン「わかった」

ダンテ&アステリオン「やった!」

シオン「余はこれから正式な休暇にはいる」

アイオロス「またそういうことを!」

シオン「アイオロス、お前が代理として教皇を務めよ」

アイオロス「教皇、いい加減にしてくださいっ!」

シオン「ほうほう、いやなのか? サガが補佐につくのだぞ」

アイオロス「……んんーーーっ!?」

サガ「え?」

アステリオン「(おいおい、次期教皇首ひねないでくれよ!)」

シオン「二人だけで仕事ができるのだぞ」

アイオロス「んーーー?」

サガ「は?」

ダンテ「(そこで考えないでくれ、次期教皇!)」

アイオロス「どうぞごゆっくり休暇を楽しまれてください。あとはこのアイオロスにお任せを!!」

アステリオン&ダンテ「なにぃぃぃぃぃ!?」

シオン「よいよい、ではしつけといこうかのう」

シオンは超能力でアステリオンとダンテの目の前に移動すると、二人の肩に手を置いて再び超能力で執務室から消えたのであった。

 

 

白羊宮

シオン「というわけで、今日から犬を飼うことになったのじゃ」

いつものように執務から帰ってきたシオンに、ムウと貴鬼、その他居候は、その後ろに控えるアステリオンとダンテに首をかしげた。

ミロ「俺にはどうみても白銀聖闘士に見えるんだけど」

カノン「お前の目は間違ってない。じーさんもとうとうぼけたな」

アルデバラン「いえいえ、教皇さまの考えることですからきっと理由が」

童虎「あるわけなかろう」

アルデバラン「ですよね」

ムウ「なるほど、猟犬座と地獄の番犬座で犬ですか」

シオン「さすが余のムウ、賢いのう」

貴鬼「へへへ〜ん、お兄ちゃんたち犬なんだぁ〜(ニヤリ)」

アステリオン「うげっ!?」

シオン「貴鬼や、私怨での動物虐待はいかんぞ。動物愛護団体からクレームがくるからのう」

貴鬼「チェッ」

アルデバラン「人権擁護は、問題にならないんですか」

カノン「ジーさんは俺達聖闘士を人間扱いしてねぇだろう」

ミロ「俺達に人権なんてねーよ。俺達教皇の性奴隷みたいなもんだもんな」

ダンテ「ひぇぇぇ、やっぱり俺達・・・…」

ミロ「まぁ、これで俺達のケツはしばらく安泰ってことだな」

カノン「ていうか、教皇は白羊宮に他の野郎を住まわせるってことか?」

ミロ「尻奴隷だから、いいんじゃん?」

カノン「白銀がムウに発情にしたりとか……て、あんなに怯えてちゃ無理か」

シオン「余の犬はしつけがなっておる、ムウに発情などせん」

童虎「ぷっ」

シオン「童虎、貴様今笑ったであろう」

童虎「お前のしつけなどたかがしれておるでな」

シオン「ふふふっ、余をみくびるでないぞ。今日一日たっぷりしつけてやったからのう」

シオンは不適に笑った。

シオン「犬、お手じゃ!」

アステリオン&ダンテ「はいっ!」

アステリオンとダンテが同時にシオンの手に右手を乗せた。

童虎「ほう」

シオン「犬! おかわり!」

アステリオン&ダンテ「はい!」

アステリオンとダンテが左手をシオンお手にのせた。

ミロ「すげぇ!」

シオン「犬! お回り!」

アステリオン&ダンテ「はい!」

二人は華麗にくるくると回った。

カノン「まじで犬だぜ」

シオン「犬っ、お座り!」

アステリオン&ダンテ「はい!」

二人は同時に膝をついた。

ムウ「さすがシオンさま、では、とうぜん(ニヤリ)」

シオン「もちろん出来るのじゃ(ニヤリ)」

ミロ「??」

シオン「犬っ、」

アステリオン「え゛っ!?」

シオン「犬や、どうしたのじゃ。昼間教えたであろう」

ダンテ「こ、ここでやるんですか?」

シオン「飼い主の命令は絶対である」

アステリオン「し、しかし」

童虎「シオンのしつけもこの程度か」

シオン「むむっ! 犬っ、余のいうことがきけぬというか?」

ダンテ「びくっ!」

シオン「昼間教えたであろう。出来ぬのなら、しおきをせねばならぬのぉ」

アステリオン「お、お、お、お、お」

ダンテ「おおおおおおし、おひっ!」

シオン「ちんちんっ!」

アステリオン&ダンテ「はいっ!」

アステリオンとダンテはガクブル震えながらズボンを下ろした。

ミロ「すげぇぇぇぇ」

シオン「ははははっ、余の調教は完璧じゃ!!」

ムウ「美味しそうな尻ですね」

シオン「これ、余の犬においたをするでない」

ミロ「え? ここまでさせておいて?」

アステリオン「うぉぉぉぉぉーーー!!」

ムウ「!?」

ミロ「どうした!?」

ダンテ「俺たちやっぱり食べられるんだぁぁぁ。さらば青春」

アステリオン「さらば俺の貞操」

シオン「何を泣いておる。余は犬は食わぬ」

ミロ「え?食わないの?もったいない」

アステリオン「本当ですか?」

シオン「犬を食うのは童虎じゃ」

ダンテ「え゛っ!?」

童虎「わしは食うぞ、犬は美味い」

シオン「野蛮人め」

アステリオン「教皇、俺、一生教皇についていきます」

ダンテ「俺もです!」

シオン「よいよい、カワユイのう。ムウや、余の犬に悪戯するでないぞ、犬を食うのは野蛮じゃ」

ムウ「(ちっ)分りました」

こうしてアステリオンとダンテは白羊宮の番犬と猟犬として飼われることになった。


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